ナフサショックは建材価格にどう影響する? 工務店が押さえたい対策

原油価格や為替が動くと、工務店が仕入れる建材にも影響が及びます。なかでも見落としやすいのが、断熱材や配管材、塗料などに使われるナフサ由来の原料です。
値上げ通知が届いてから見積もりを直すだけでは、粗利や工程、施主への説明にしわ寄せが出ます。
この記事では、ナフサと建材の関係を確認したうえで、価格変動に備える実務上の対策を整理します。
目次[非表示]
- 1.そもそもナフサとは?
- 2.住宅建築で使われるナフサ由来の主な建材まとめ
- 2.1.断熱材
- 2.2.配管材・電気配線まわり
- 2.3.内外装・防水・接着まわり
- 2.4.住宅設備・樹脂部品
- 3.ナフサショックで工務店に起こりやすい影響
- 3.1.見積もり後の価格上昇で利益が圧迫される
- 3.2.建材の納期遅延が工程全体に影響する
- 3.3.標準仕様の固定化で代替提案が難しくなる
- 3.4.施主への説明不足が不信感や失注につながる
- 3.5.契約前のリスク説明と書面整備が重要になる
- 4.工務店がナフサショックに備えるための対策
- 4.1.仕入れ先と価格改定情報を共有する
- 4.2.見積もり有効期限と契約条項を見直す
- 4.3.標準仕様を複線化する
- 4.4.施主説明用の資料を整備する
- 4.5.集客・商談時の訴求を価格以外へ広げる
- 5.LIFULL HOME'S 注文住宅で価格高騰時の集客導線を整える
- 6.記事のおさらい
- 7.執筆者
- 7.1.瀧澤 成輝(二級建築士)
そもそもナフサとは?
ナフサは、原油を精製する過程で得られる石油製品の一つです。建材の名称として目にする機会は多くありませんが、住宅に使われるさまざまな製品の上流に位置しています。
石油化学工業では、ナフサを分解してエチレンやプロピレンなどの基礎化学品を作ります。そこから合成樹脂、合成繊維、合成ゴム、塗料、接着剤などが生産されます。住宅分野では、断熱材、塩化ビニル系の配管材、防水材、樹脂部品などに関係してきます。
ナフサ価格を動かす要因は、原油価格、為替、国際的な需給、輸送コスト、産油国の情勢などです。海外の市況変化が国内の住宅建築コストへ波及しやすいのは、日本が原油や石化原料の多くを海外に依存しているためです。
もっとも、すべての建材が同じ幅で値上がりするわけではありません。原材料の構成比、メーカー在庫、契約条件、代替原料の有無は製品ごとに異なります。工務店が確認したいのは、ナフサ価格の数字だけではありません。自社が採用している建材への影響を把握しましょう。
住宅建築で使われるナフサ由来の主な建材まとめ
住宅1棟を見渡すと、石油化学製品を原料とする建材はさまざまなところに使われています。
影響を受けやすい箇所を、部位別に見ていきましょう。
断熱材
最初に確認したいのが断熱材です。発泡ウレタン、押出法ポリスチレンフォーム、フェノールフォームは発泡プラスチック系に分類され、壁、屋根、床などに使われます。
2025年4月以降に着工する住宅などは、省エネ基準への適合が義務付けられています。
値上がり時に代替品へ変更する場合も、価格だけで選ばず、必要な断熱性能を満たしているか確かめてください。
配管材・電気配線まわり
配管材・電気配線まわりでは、塩化ビニル系部材の動きに注意しましょう。給排水管、排水継手、電線保護管などは完成後に見えにくいものの、工程を止めないために欠かせない資材です。
メーカーの品番変更や納期遅延が起きれば、先行配管や内装前検査の日程までずれ込む可能性があります。代替品の有無は、価格とあわせて早めに押さえておきましょう。
内外装・防水・接着まわり
内外装・防水・接着まわりは、対象品目が多くあります。
ビニールクロス、クッションフロア、床材の一部、塗料、シンナー、接着剤、シーリング材、防水シート、ルーフィング材などが該当します。
住宅設備・樹脂部品
住宅設備では、製品本体だけでなく付属部材も確認しましょう。
ユニットバス、トイレ、キッチン、サッシまわりの樹脂部材、換気・空調設備の部品などが対象です。
メーカーや品番によって状況が異なるため、標準仕様には複数の選択肢を用意しておきましょう。
ナフサショックで工務店に起こりやすい影響
建材価格が上がると、影響は仕入れ額だけにとどまりません。
見積もり、発注、工程管理、施主説明がつながっているため、どこか一つの対応が遅れると別の業務にも負担がかかります。
工務店で起こりやすいケースを整理します。
見積もり後の価格上昇で利益が圧迫される
見積もり提出から発注・着工までの間に単価が変わると、予定していた粗利を確保できないことがあります。値上げ分を工務店側で吸収する状態が続けば、経営への影響も小さくありません。
見積有効期限を長く設定したままにせず、資材単価の更新時期とそろえて見直しましょう。
建材の納期遅延が工程全体に影響する
断熱材、配管材、内装材、防水材は、現場へ入れる時期がそれぞれ異なります。一部の資材が届かないだけでも、後工程へ影響が及ぶ場合があります。
特定メーカーや単一商社への依存度が高い場合は、着工前に代替品と別の仕入れ先を確認しておきましょう。納期遅延が発生してから探すよりも、選択肢を残しやすくなります。
標準仕様の固定化で代替提案が難しくなる
標準仕様を固定しすぎると、原価が上がったときに提案の余地が狭くなります。同等性能の代替品があっても、事前に整理していなければ施主への説明に時間がかかります。
断熱材、内装材、設備部品などは、価格帯や納期が異なる複数パターンを用意しておくと、状況に応じて選び直せます。
施主への説明不足が不信感や失注につながる
施主が知りたいのは、金額が上がることだけではありません。どの建材に影響があり、なぜ変更が必要なのかを説明できないと、工務店の都合による値上げと受け取られる恐れがあります。
ナフサから樹脂、塗料、建材へ波及する流れを簡潔に伝え、代替案もあわせて示しましょう。変更する部分と、性能を維持する部分を分けて説明すると伝わりやすくなります。
契約前のリスク説明と書面整備が重要になる
資材価格の変動が大きい時期は、契約前の説明を口頭だけで済ませないことが大切です。
見積有効期限、価格改定が必要になった場合の協議方法、対象となる建材の範囲を明記しておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。
国土交通省も、資材高騰時の価格転嫁や契約変更協議に関する取り組みを進めています。見積書や契約書には補足資料を添え、施主が後から確認できる形で残しておきましょう。
工務店がナフサショックに備えるための対策
価格変動への対応を担当者任せにすると、見積もりや発注へ反映するタイミングに差が出ます。営業、設計、積算、現場が同じ情報を見られる運用へ切り替えておきましょう。
仕入れ先と価格改定情報を共有する
メーカー、商社、問屋から届く価格改定の通知は、社内で一元管理しましょう。担当者のメールボックスに情報が残ったままだと、見積単価や標準仕様への反映が遅れやすくなります。
一覧表には、価格改定日、対象建材、出荷制限の有無、代替品の有無を記録しておきましょう。営業・設計・積算・現場で共有し、見積単価表を更新する担当者と更新タイミングもあらかじめ決めておくと安心です。
見積もり有効期限と契約条項を見直す
見積書には、有効期限と、価格変動があった場合の再見積もり条件を明記しておきます。対象となる建材を示さずに金額だけを提示すると、値上げ時の協議が難しくなる恐れがあります。
建設業法では、受注者が資材価格高騰の恐れを把握している場合、契約締結前までに「おそれ情報」を注文者へ通知することが求められています。説明は口頭だけで済ませず、書面として残しておきましょう。
標準仕様を複線化する
断熱材、配管、内装、防水、設備機器は、代替候補をあらかじめ整理しておきます。価格だけでなく、納期も含めて比較できる状態にしておくと判断が早まります。
ただし、安価品への単純な置き換えは避けてください。省エネ性能、防火・耐火性能、保証、施工性を確認したうえで、採用できる仕様パターンを作りましょう。
施主説明用の資料を整備する
施主説明用の資料では、値上げへの不安を煽らず、必要な判断材料を絞って伝えることが大切です。
たとえば、「原油 → ナフサ → 樹脂・塗料 → 建材 → 住宅価格」という流れを図解すると、建材価格が変動する理由を短時間で説明しやすくなります。
集客・商談時の訴求を価格以外へ広げる
建築費が上がる局面では、安さだけを前面に出す訴求が難しくなります。資材調達力、仕様提案力、情報開示の姿勢、資金計画支援、標準仕様の柔軟性も、相談先を選ぶ材料になります。
Web上では、施工事例に加えて、標準仕様や価格への考え方、資材高騰時の対応方針を発信しましょう。LIFULL HOME'S 注文住宅のような住宅ポータルも、注文住宅検討層との接点づくりに活用できます。
LIFULL HOME'S 注文住宅で価格高騰時の集客導線を整える
建築コストが上がる局面では、問合せの質や商談効率にも目を向けます。価格に敏感な見込み客が増える一方で、現在の相場を踏まえて具体的に相談したい層もいます。
LIFULL HOME'S 注文住宅は、注文住宅を検討しているユーザーに工務店やハウスメーカーの情報を届けられる住宅ポータルです。公式情報では、来場予約機能、商圏に絞った集客、反響数に応じた掲載料金などが案内されています。
資材高騰時は、施工事例や標準仕様、価格への考え方、代替仕様の提案力を見込み客に伝えましょう。
LIFULL HOME'S 注文住宅を活用すれば、自社の強みを整理して発信し、広告費を管理しながら相談の接点を作りやすくなります。
記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで振り返っておきましょう。
Q:ナフサショックは、なぜ建材価格や工務店の実務に影響するのですか?
A:ナフサは、樹脂や塗料、接着剤などの原料につながる素材であり、原油価格や為替の変動が建材価格にも波及します。値上げ通知を受けてから対応するだけでは、粗利の圧迫や工程変更につながりやすいため、自社で採用している建材への影響を早めに確認することが重要です。
Q:住宅建築では、どのような建材が影響を受けやすいですか?
A:特に影響を受けやすいのは、断熱材、塩化ビニル系の配管材、内外装材、防水材、接着剤、住宅設備に使われる樹脂部品などです。製品ごとに原材料や供給状況が異なるため、部位別に価格と納期を確認しておきましょう。
Q:ナフサ由来建材の価格変動によって、工務店にはどのようなリスクがありますか?
A:工務店では、見積もり提出後の値上げによる粗利圧迫や、納期遅延による工程変更が発生しやすくなります。さらに、標準仕様の整理や施主への説明準備が不十分な場合、代替提案や契約前の調整にも時間を要する可能性があります。
Q:工務店はナフサショックにどのように備えるとよいですか?
A:まずは、価格改定や納期情報を社内で一元管理し、見積もり有効期限や契約条項へ適切に反映することが基本です。加えて、標準仕様の複線化や説明資料の整備まで進めておくことで、価格変動時にも納得感のある提案につなげやすくなります。
Q:価格高騰時の集客では、何を伝えることが大切ですか?
A:価格高騰時は、単に価格の安さを訴求するだけでなく、資材調達力や仕様提案力、情報開示の姿勢を伝えることが重要です。LIFULL HOME'S 注文住宅を活用すれば、自社の強みを整理しながら発信でき、見込み客との相談接点も作りやすくなります。
執筆者
瀧澤 成輝(二級建築士)
住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。
大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。
特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。



