住宅トレンド

インフレ思考のエンドユーザーが住宅購入に動いている?単月受注最高更新のビルダーも

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消費者物価指数によると、2022年より日本の経済はデフレからインフレへと本格的に転換しました。さらにそれからの数年間にわたって為替が円安に動いたこともあり、輸入コストが上昇しており、これもインフレの一因となっています。為替動向につきましては、この7月末に日本と米国による日米協調介入によって円高に振れることもありましたが、この8月中旬時点で円安脱却にはなっておらず、足元ではドル円160円内外で推移しています。

住宅業界も建材や原料の一部を輸入に依存しているということもあり、住宅価格は近年上昇傾向が続いています。さらに今年に入ってからは中東情勢の緊迫化を背景とする「ナフサショック」が価格上昇に拍車をかける形となりました。加えて住宅ローン金利も上昇傾向にあり、住宅価格の先高感を警戒するエンドユーザーの間で、住宅購入を急ぐ動きが顕在化しています。

中東情勢緊迫化で顕在化した「ナフサ」の重要性

米・イランの関係悪化をはじめとする中東情勢の緊迫化は、住宅業界に直接的な影響を与えました。決定的な出来事は、今年2月末のイランによるホルムズ海峡の閉鎖です。日本が輸入する原油の7割超が、このイランに面するホルムズ海峡を経由するため、この原油が日本に入ってこなくなる可能性が高まったことから「第三次オイルショック」というワードも出てきました。その後、6月15日に戦闘終結に向けた覚書が米・イランの間で交わされましたが、依然として予断を許さない状況が続いています。

この原油から精製され、住宅に欠かせない原料の1つが「ナフサ」です。汎用性が極めて高く、断熱材や樹脂サッシ、防水シート、ユニットバスなどの水まわり設備まで、非常に多くの建材に使用されています。そのナフサ不足の影響は大きく、実際に雨樋などの塩ビ樹脂製品や断熱材の供給が逼迫し、「納品が遅れ、そして完工、引き渡しも遅れる」といった状況に陥った住宅会社もありました。価格改定を発表する建材メーカーも多く、「ナフサショック」は住宅業界に大きな影響を与えました。

ナフサ影響で受注どうなる?大手ハウスメーカーの状況

ナフサショックの影響が資材の調達や住宅の建設においてあったものの、住宅会社の受注動向を見てみると比較的順調に推移しています。積水ハウスや大和ハウス、セキスイハイムといった大手ハウスメーカーの月次受注動向を見ると、最初のホルムズ海峡封鎖の報道があった翌3月から前年同月比プラスに転じ始め、直近7月まで同比プラスを維持している会社が目立ちます。
この受注動向に表れているように、中東情勢の緊迫化以降、住宅購入に動くエンドユーザーが実際に増えているようです。このようなユーザーの多くはこの数年のインフレ、そしてナフサショックにより、「将来、購入ハードルはさらに高くなる。もはや購入の決断ができなくなるかもしれない」という住宅価格の先高感を警戒しているとのことです。

エンドユーザーが住宅購入に走る?先高感警戒

最近、住宅会社から耳にすることの多い事柄の中に、注文住宅部門において住宅購入の本気度の高い顧客ほど、商談スピードが上がっていることがあります。建物価格の上昇だけなく、昨今続いている金利の上昇も背景にあります。初回商談を行ってから1ヶ月以内の受注というケースが増えてきているようです。その点で最近の商談のポイントが施工力です。このような顧客が気にしているのは、引き渡しの時期です。金利の確定が一般的には完成時となるため、その間の金利上昇を警戒する顧客にとっては引き渡しまでのリードタイムも会社選びの基準の1つであるようです。

ユーザーの中には建売住宅を選ぶケースも増えています。販売価格が定まっているため、さらに住宅ローン金利も早期に確定しやすいことから、建売住宅を第一候補とするようです。年間3,000棟以上の建売住宅を販売しているポラスグループは、4月から6月の3ヶ月間の販売実績が過去最高だったとのことです。
足元の受注好調はポジティブなことですが、これは「需要の先食い」である可能性も高いです。住宅会社には、今回の特需が一巡した後に訪れる市況の変化を見据えた施策構築も求められます。住宅価格、金利が下がるという見通しが立ちにくい中で、いかにエンドユーザーに納得してもらって住宅購入に動いてもらうか、資金面の将来不安を払拭できるかが今後の事業成長のカギとなるはずです。

株式会社住宅産業研究所(JSK)
株式会社住宅産業研究所(JSK)
1976年設立、住宅業界専門の調査会社。「月刊TACT」などの情報誌・調査資料・セミナー・研修・コンサルティングなどを通じて全国の住宅会社に情報を提供する。

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