住宅トレンド

ウッドショックの影響と工務店・ビルダーの対応策

工務店・ビルダーをはじめとして、住宅業界で問題になっている“ウッドショック”。アメリカでは、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)拡大によって、2020年の一時期は住宅建設需要が落ち込みました。ところが、同年5月のロックダウン解除後以降は、新築住宅需要が増加傾向にあります。

さらに、同国では財政出動と低金利政策が取られたため、住宅購入やリフォームの流れが進み、住宅建築需要も伸びているのが現状です。

世界の建築用木材の需要が増加したことで、日本国内の工務店・ビルダーにも大きな影響が出ています。「木材不足で着工が遅延している」「木材価格が高騰して困っている」などと、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

今回は、ウッドショックが発生した原因をはじめ、工務店・ビルダーへの影響や対応策について解説します。

(出典:経済産業省『新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響』)

目次[非表示]

  1. 1.ウッドショックとは
  2. 2.ウッドショックが工務店・ビルダーへ与える影響
    1. 2.1.①木材の供給遅延
    2. 2.2.②木材の価格高騰
  3. 3.工務店・ビルダーの対応策
    1. 3.1.①地域型住宅グリーン化事業
    2. 3.2.②DXで業務効率化
    3. 3.3.③日本政策金融公庫に相談
  4. 4.まとめ

ウッドショックとは

ウッドショックとは、主に住宅の柱や梁(はり)に使用される輸入木材の受給がひっ迫して、価格が高騰・急騰する問題です。国内におけるウッドショックの背景の一つに、木材自給率の低さが挙げられます。

日本の木材自給率は、2003年以降は上昇傾向にありますが、現在でも約60%を輸入に頼っている状況です。

画像引用元:林野庁『​​木材需給の構成

ウッドショックが起こる主な原因は、2つ挙げられます。

▼ウッドショックが起こる主な原因

 1 .米国における木材需要の増加

 2.コンテナ不足による国際物流の混雑・遅延

原因についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

≫  2021年はウッドショックで木材が不足? 展望と工務店・ビルダーに求められる対応

ウッドショックが工務店・ビルダーへ与える影響

世界に波紋を広げたウッドショックは、木材を輸入に頼る日本の住宅業界にも大きな影響を与えています。

なかでも、建築資材を輸入木材に頼っている工務店・ビルダーでは、特に影響が大きい傾向があります。

現時点では、ウッドショックがいつまで続くのか、収束の見通しが立っていません。

ここからは、ウッドショックによる工務店・ビルダーへの影響について解説します。


①木材の供給遅延

ウッドショックが工務店・ビルダーに与える影響として、木材の供給遅延が挙げられます。

国土交通省『中小工務店における木材の供給遅延の影響について(12月末調査実施)』によると、2021年12月に木材の供給遅延が発生した中小工務店は56%となっています。

画像引用元:国土交通省『中小工務店における木材の供給遅延の影響について(12月末調査実施)

2021年7月には95%と大半を占めていましたが、現在は減少傾向にあることが分かります。それでも、いまだに全体の約半数の中小工務店では、木材の供給遅延が生じている状況です。

実際に、新規の契約を見送ったり、資金繰りが厳しくなったりしている中小工務店は20〜30%ほど存在しています。

また、2021年12月時点で工事の遅れが生じた工務店は49%となっており、同年5月の31%から増加傾向にあります。木材の供給が遅れた影響で、工事の遅れが増えていると考えられます。

(出典:国土交通省『中小工務店における木材の供給遅延の影響について(12月末調査実施)』)


②木材の価格高騰

ウッドショックは、木材の価格高騰にも影響を与えています。

林野庁 木材貿易対策室『木材輸入の状況について(2022年3月実績)』によると、輸入木材の平均単価は2021年12月をピークに下降していますが、依然として高いままです。

画像引用元:林野庁 木材貿易対策室『木材輸入の状況について(2022年3月実績)

特に、販売価格を抑えることが重要視されるローコスト住宅・建売住宅においては、安い輸入木材に頼ることが難しくなるため、ウッドショックの影響を受けやすいといえます。

さらに、輸入木材の高騰のあおりを受けて、国産木材も価格が高騰傾向にあります。

画像引用元:農林水産省 大臣官房統計部『木材流通統計調査 木材価格(令和4年3月)

国産木材の価格高騰の背景には、ウッドショックをきっかけに国産木材の需要が高まったことがあると考えられます。一方で、供給不足や構造的な問題によって、輸入木材から国産木材への切り替えが難しいという事情もあります。

今後どのように木材を調達していくか見極めるために、輸入・国産木材の価格や市場の動向から目が離せません。

(出典:林野庁 木材貿易対策室『木材輸入の状況について(2022年3月実績)』/農林水産省『木材流通統計調査 木材価格(令和4年2月)』/経済産業省『新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響』

工務店・ビルダーの対応策

木材が供給遅延・価格高騰しているいま、工務店・ビルダーにできる対応策として、補助金の活用と資金の確保が挙げられます。

ここでは、工務店・ビルダーのウッドショックへの対応策について解説します。


①地域型住宅グリーン化事業

中小工務店や建材流通事業者など、国土交通省の採択を受けたグループが建てる条件を満たした住宅であれば、“地域型住宅グリーン化事業”の補助金を利用できます。

補助対象と補助限度額は、以下のとおりです。

▼補助対象・補助限度額

補助対象となる事業

補助限度額

長寿命型(長期優良住宅)

110万円/戸

高度省エネ型(認定低炭素住宅または性能向上計画認定住宅)

70万円/戸

ゼロ・エネルギー住宅型(ゼロ・エネルギー住宅)

140万円/戸

省エネ改修型(省エネ基準(既存)を満たす住宅)

50万円/戸

優良建築物型(認定低炭素建築物等一定の良質な建築物)

1万円/m2

国土交通省『地域型住宅グリーン化事業』『令和3年度地域型住宅グリーン化事業 グループ募集の開始 ~地域の中小工務店等が連携して取り組む良質な木造住宅等の整備を支援します~』を基に作成

補助金を受けることで、ウッドショックで値上がりした木材価格の負担をカバーできるケースがあります。

なお、地域型住宅グリーン化事業の詳細は、国土交通省のホームページ、または『地域型住宅グリーン化事業(評価)』のページで確認できます。

(出典:国土交通省『地域型住宅グリーン化事業』『令和3年度地域型住宅グリーン化事業 グループ募集の開始 ~地域の中小工務店等が連携して取り組む良質な木造住宅等の整備を支援します~』)


②DXで業務効率化

DXで業務の効率化によるコスト削減を図るのも対応策の一つです。DXによるコスト削減を実現することで、木材の価格高騰の影響を軽減します。

たとえば、工務店・ビルダーでDXを推進することで、次のようなことを実現できます。

▼DXで実現できること

  • クラウドサービスを活用して、見積もり作成や原価・顧客管理などを自動化する
  • ITを活用したデータの蓄積・分析により、顧客ニーズに沿ったアプローチを行う
  • クラウドツールを活用して、従業員の負担軽減や生産性の向上を図る など

また、DX推進にあたっては、補助金・助成金制度も有効活用できます。詳しくは、経済産業省『IT導入補助金とは』で確認できます。

さらに、工務店・ビルダー向けのDXについては、こちらの記事もご覧ください。

≫  工務店・ビルダーで期待されるDXとは? 背景や具体的な取り組みを解説


③日本政策金融公庫に相談

ウッドショックによって木材が価格高騰していることで、資金繰りに苦労している工務店・ビルダーは少なくないのではないでしょうか。

資金についてお悩みの場合は、木材の調達にかかる資金に関して、日本政策金融公庫に相談できます。

国土交通省では、住宅用木材の価格高騰・供給不足の影響を受けた工務店・ビルダーに対して、資金繰りに対する支援制度を設けています。これを受けて、日本政策金融公庫では、資金繰りが難しくなった工務店・ビルダーからの相談を受け付けています。

建設業許可を受けていない小規模な工務店でも相談が可能です。

なお、工務店・ビルダーが日本政策金融公庫等の支店へ借り入れ申込み書等を提出した後、審査を経て融資が実行されるまでには、一定の日数を要します。借り入れ申込み書等の作成方法も含めて、早めに相談することが重要です。

詳細は、日本政策金融公庫の『お客様窓口』へ問合せて確認できます。

(出典:国土交通省 住宅局 住宅生産課『住宅用木材の価格高騰・不足を踏まえた木造住宅供給事業者等における業務の対応について』)

まとめ

この記事では、工務店・ビルダー向けに、以下の項目を解説しました。

  • ウッドショックとは何か
  • ウッドショックが工務店・ビルダーへ与える影響
  • 工務店・ビルダーの対応策

現在、ウッドショックは世界規模の問題となっています。コロナの影響で輸入木材の遅延や価格高騰が起きたことで、ダメージを受けている工務店・ビルダーも少なくありません。

ウッドショックの解消はいまだに目途が立っていませんが、対応策を講じることが重要です。経済状況や住宅業界の動向を注視しつつ、今回紹介したような対応策を取り入れてみてはいかがでしょうか。

LIFULL HOME’Sでは、工務店向けのお役立ち情報を掲載しています。ぜひこちらもご一読ください。

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