建築・施工管理

3D CADとは?建築業界における3D CADの導入メリットと活用方法

3D CADとは? 建築業界における3D CADの導入メリットと活用方法

設計支援ツールである「CAD」(Computer Aided Design)は、元々は製造業やエンジニアリングなどの分野で広く活用されてきたものです。高度な設計を手軽に実現できることから、建築分野においてもさまざまなメリットがあります。

今回は3D CADの基本的な特徴やメリット、建築業界における具体的な活用方法について見ていきましょう。

目次[非表示]

  1. 1.3D CADとは
  2. 2.2D CADとの違い
    1. 2.1.2D CADの特徴
    2. 2.2.3D CADの特徴
  3. 3.建築系の3D CADの種類
    1. 3.1.ハイエンドCAD
    2. 3.2.ミッドレンジCAD
    3. 3.3.ローエンドCAD
  4. 4.3D CADを導入するメリット
    1. 4.1.視覚的に分かりやすくなる
    2. 4.2.より詳細な情報を簡単に得られる
    3. 4.3.プロトタイプを手軽に作成できる
    4. 4.4.複雑な形状のデザインにも対応できる
  5. 5.3D CADの具体的な活用例
    1. 5.1.環境シミュレーション
    2. 5.2.作業効率の向上
    3. 5.3.仮想現実(VR)との連携

3D CADとは

「CAD」はコンピューター内で起動するソフトウェアの一種であり、設計図などの図面の作成・監理をパソコン上で行える仕組みです。

CADの歴史は古く、1963年にアメリカの計算機科学者によって開発された2D CADソフト「Sketchpad」が始まりとされています。プログラミングの必要がなく、ペンを動かすだけで直感的に図を描ける操作性が大きな衝撃を与え、徐々にコンピューターを用いた製図技術が発展していきました。

1970年代に入ると、立体的な図面の作成が行える3D CAD(3次元CAD)も開発され始めます。3D CADは平面だけでは表現しきれない詳細なイメージを描き出せ、解釈のズレやミスリードの防止に大きな効果を発揮します。

開発当初はハード面のスペック不足や高額なコストなどにより、一般企業には普及が進んでいきませんでしたが、近年では安価で操作性の高いものも増え、中堅・中小企業にも普及・定着するようになっています。

2D CADとの違い

2D CADは設計物のすべてが平面的ですが、3D CADは設計物を立体的に表すものです。端的な違いはこの点のみですが、次元の違いによって製図の仕方や特徴は大きく異なります。

2D CADの特徴

2D CADでは、平面上で立体を表現するため、第三角法(正面・平面・側面の三面図で製図を行う方法)を用います。すべての情報が平面で表現されるので、設計物の形状や細かな仕様を解説するのに適した方法です。

また、手書きの図を取り込む際も、スキャンをすればそのまま移行できるのが特徴です。一方で、読み手が図面を理解するまでには一定の技術や経験が必要であり、図面の変更や修正にも手間がかかるのが難点とされています。

3D CADの特徴

3D CADは、コンピューター上の仮想空間に立体的な構造を描き出すことができます。従来の2D CADでは伝えづらかった立体的な情報や空間の構造も、3D モデルを通じて直感的に理解できるのが大きな利点です。

設計物の状態を「見たまま」理解できるため、設計図を見慣れていない相手にもすぐにイメージをつかんでもらえます。

建築系の3D CADの種類

明確な定義があるわけではありませんが、3D CADは大まかに3つの種類に分けることができます。ここでは、それぞれの特徴について見ていきましょう。

ハイエンドCAD

もっとも豊富な機能を持ち、高いスペックを備えているのがハイエンドCADです。大規模な組み立て品でも高速処理が可能であり、扱えるデータも多く、高度な機能と汎用性を兼ね備えたCADソフトといえます。

そのため、自動車・航空機・船・デザイン家電/家具といった、高度なデザイン性が求められる設計に活用されています。ハイスペックであるために、ソフトウェア自体が高額であり、ソフトを扱えるだけのハードをそろえるのにもコストがかかるのがデメリットです。

ミッドレンジCAD

ハイエンドCADには機能面で及ばないものの、CADとしての主要な機能は一通り備わっているミドルクラスのCADソフトです。ある程度の作業であれば難なくこなせることから、主に家電・OA機器の試作で活用されます。

ミッドレンジCADには、ハイエンド寄りのものからローエンド寄りのものまでさまざまな種類があるため、導入する際は搭載されている機能や処理速度などをしっかり見極める必要があります。

ローエンドCAD

3つのクラスではもっとも安価であり、3D CADのエントリーモデルに該当するのがローエンドCADです。ミッドレンジCADと比較すると機能やスペック、汎用性といった点で劣るため、実際の業務で幅広く活用するのは難しい面もあります。

しかしコスト面での導入ハードルは低いため、CADを試用してみたい場合や、限定的な機能でも十分に目的を果たせる場合には適したモデルといえます。

3D CADを導入するメリット

3D CADはもともとエンジニアリングや製造業といった分野で利用されるのが一般的でした。しかし高度な設計が可能であり、設計図を理解するのにも役立つことから、近年では建築の分野でも導入されるケースが増えています。

ここでは、建築の分野で3D CADを導入するメリットをご紹介します。

視覚的に分かりやすくなる

2D CADと比べて、3D CADは立体的な完成品を「見たまま」で伝えられるのが特徴です。2次元の図面では、平面の情報を頭のなかで立体に組み立てる必要があり、不慣れな方には適切な情報を伝えるのが難しいといえます。

3D CADであれば、実物に近い状態で設計を確認できるため、相手を選ばずにスムーズな情報共有が行えます。経験の浅いスタッフはもちろん、営業担当やマーケティング担当といった他部門のメンバー、依頼をしてきたお客さまにも情報伝達が円滑に行えるのが大きなメリットです。

より詳細な情報を簡単に得られる

多くの3D CADは、設計されたモデルから自動で体積、表面積、質量、重心などの情報を算出する機能を備えています。2D CADでは、これらの情報を得るために図面から複雑な計算を行わなければならず、計算の労力や計算ミスの発生によるタイムロスがありました。

3D CADでは、これらのデータをリアルタイムでチェックしながら設計を調整できるので、生産性の大幅な向上が期待できます。

プロトタイプを手軽に作成できる

2D CADでプロトタイプ(試作品)を作成する際には、設計図の細かな計算を行ったうえで、丁寧に組み立てを行う必要がありました。それに対して、3D CADはバーチャルでリアリティのある試作品を製作できるため、簡単にアイデアを具体化できます。

プロトタイプの作成にかかる時間や労力を大幅に削減できるため、大胆なアイデアも実行に移しやすいのがメリットです。

複雑な形状のデザインにも対応できる

3D CADは設計の編集がしやすいため、複雑な形状のデザインにも対応しやすいのが特徴です。2D CADでは平面で設計を行う関係上、どうしても組み立て時に部品同士の干渉などが起こりやすい状態がありました。

3D CADであれば曲面などの複雑な形状も設計しやすく、部品の強度などもソフトウェア上で確認することが可能です。

3D CADの具体的な活用例

3D CADは建築分野の仕事にさまざまな可能性をもたらすツールです。ここでは、現時点での建築業界における代表的な活用方法を3つご紹介します。

環境シミュレーション

建築系の3D CADでは、日当たりや風の流れなどの環境シミュレーションが行えます。この機能を活用すれば、リアリティのある環境下で建物の設計を最適化できます。

作業効率の向上

3D CADで施工図のデータを作成すれば、情報伝達が円滑になり、現場での作業をスムーズに進められるようになります。設計上のミスもすぐに発見できるため、早い段階から精度の高いモデルを作成することが可能です。

仮想現実(VR)との連携

3D CADデータはVRと組み合わせることで、さらに使い方の幅が広がります。たとえば、VR技術を用いれば、まだ建設されていない建物に入り込み、実際に内見するように内部を確認することができます。

設計段階でお客さまに確認してもらえば、要望のチェックや変更の希望を早い段階でくみ取ることができ、プランニングの精度が高まるでしょう。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:3D CADとは?
A:
3D CADは「CAD」(コンピューターによる設計支援)の一種であり、設計図を立体的に描き出せるソフトウェアのことです。もともと製造業やエンジニアリングなどで活用されていましたが、近年では建築分野での導入も進んでいます。

Q:建築分野で3D CADを導入するメリットは?
A:
設計図を見たまま理解できるため、イメージの共有がスムーズに行えるのがメリットです。また、複雑な形状も手軽に実現でき、修正なども速やかに行えるので、試作品をアウトプットしやすいのも特徴です。

Q:建築分野での3D CADの活用方法は?
A:
3D CADで設計図のイメージ共有をスムーズに行えることで、全体的な作業効率の向上に役立てられます。また、日当たりや風の流れといった環境シミュレーション、VRと組み合わせたサービスの実現なども代表的な活用例です。


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