ウッドショック高騰から3年、建築資材価格の2024年以降の見通し
建築資材価格は「為替」動向による変動の余地あり
建築資材の価格は近年、さまざまな要因が絡み合って上昇してきました。そのなかでも記憶に新しいのは木材価格の上昇の一因となった「ウッドショック」です。新型コロナウイルスが蔓延し始めた2020年、在宅勤務、テレワークといった場所にこだわらない働き方が世界的に浸透しましたが、米国などでは都心部で働いていたエンドユーザーを中心に、郊外のより広い住宅のニーズが急増しました。
住宅建設用の木材の需要もおのずと高まり、この余波が日本にも届いて木材の調達に苦心する住宅会社も出てきました。直近の木材価格は落ち着いていますが、コロナ禍を経て価格が上昇した資材、原材料は多数あります。
2024年、建築資材価格に関わる要因の一つとして挙げられるのは、「為替相場」の変動です。資材に関わる原材料の多くを輸入に頼っていることもあり、為替相場がこの価格に与える影響も大きいです。
日本円はというと、周知のとおり、この数年において円安が続いています。米ドルに対しては2021年の年始が103円、その後円安が続き、2023年11月には151円台の値をつけました。昨今、円安基調にある要因の一つには、日本と諸外国との金利差があります。この数年、インフレ抑制を目的に金利を引き上げてきた諸外国に対して、日本はマイナス金利政策を継続して低金利を維持してきました。結果として金利の高い他国の通貨のほうが買われやすく、日本円が売られやすい状況が続き、円安となりました。
しかし、2024年を迎えてから、円安基調の状況に変化する兆しが出てきました。それが、今年見通されているマイナス金利の解除です。日本全体に長らく染みついてしまったマイナス金利ですが、これが解除となって金利が正常化するとなれば、日本円の需要が以前よりも高まるはずです。さらに、米国などは現在、インフレの状況を鑑みつつ、利下げのタイミングを見計らっているところです。日本が金利を上げ、他国が金利を下げればこの差が縮まり、円高に向かう可能性がより高くなります。
金利動向以外の要因ということでは、2024年からの新NISAも少なからず為替相場に影響するかもしれません。投資対象として声が上がりやすいは、「S&P500」や「オール・カントリー」などを対象とするいわゆる海外株式インデックスファンドです。日本人の投資マネーが国外に流れれば、これも外国の通貨価値の上昇に相対的につながり、円安圧力となりかねません。今のところ新NISAをきっかけとする円安影響は微小という見方が優勢ですが、今後の動向を注視していきたいところです。
コスト面は「人件費」「物流費」の上昇危惧
資材価格について言及してきましたが、住宅会社にとってのコストという観点では「物流費」や「人件費」の上昇が必至です。まず、「物流費」。多様な部材を工事現場等で使用する住宅会社にとって、物流は言うまでもなく重要なファクターの一つです。
しかしながら、2024年問題を背景に既に物流単価の上昇は始まっています。さらに3月8日に政府が実施した「建設業団体との賃上げ等に関する意見交換会」において、岸田首相は「3月下旬に、資材輸送を担う運送業の標準的運賃をプラス8%上げる」と発言しました。住宅会社にとっての影響は必至といえます。
住宅会社にとっては、従業員などの「人件費」も増えることになりそうです。日本社会は2022年に長期に続いたデフレを脱し、本格的なインフレへ転換しました。消費者物価指数の上昇率は2022年4月に2%台に到達し、その後、直近の2024年1月まで22ヶ月連続で2%以上を推移しています。
2023年については前年比3.1%に達し、国民の懐事情に影響しています。住宅会社としても従業員の賃金増の取り組みは必須です。賃金増は人材の定着、採用のためにももちろん重要で、さらに残業時間の削減、休日日数の確保も同時に進めていかなくてはなりません。マンパワーでは限界があり、IT、DXといったテクノロジーの導入、運用は欠かせません。
住宅価格はこの数年で急上昇してきました。そして、現在のインフレ下でこの価格が下がることは想定しにくいです。住宅購入検討者にとっても、実質賃金の停滞が続いて住宅購入資金がつくりにくい状況のはずです。
しかしながら、そのなかで住宅をお得に購入できるのは常に「今」であり、住宅会社としてもお客さまに満足して住宅を購入いただけるよう、インフレ下における営業の新しいノウハウを蓄積してきたいところです。
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