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建築基準法はどのような法律?ポイントを分かりやすく解説

建築基準法はどのような法律?ポイントを分かりやすく解説

建築にまつわる基本的な法律として、建築基準法が挙げられます。今回は建築基準法の目的や基本的な内容を把握するために、全体像から重点的なポイントをピックアップして解説します。

また、2024年4月以降に施行が予定されている建築基準法の改正内容についても、併せて詳しく見ていきましょう。

目次[非表示]

  1. 1.建築基準法とは
  2. 2.建築基準法の目的
    1. 2.1.建築基準法第1条(目的)
    2. 2.2.建築物とは
  3. 3.建築基準法の内容を分かりやすく解説
    1. 3.1.単体規定と集団規定
    2. 3.2.建築確認および完了検査について
    3. 3.3.違反建築物に対する罰則
  4. 4.2024年4月以降に改正予定の内容
    1. 4.1.3,000平米超の大規模建築物の木造化を促進する防火規定の合理化
    2. 4.2.大規模建築物における部分的な木造化の促進
    3. 4.3.防火規定上の別棟扱いの導入による低層部分の木造化の促進
    4. 4.4.防火壁の設置範囲の合理化
    5. 4.5.建築物の長寿命化・省エネ改修などにおける現行基準の遡及適用の合理化
    6. 4.6.接道義務・道路内建築制限の遡及適用の合理化
    7. 4.7.4号建築物の範囲縮小(2025年4月施行予定)

建築基準法とは

建築基準法とは、建物を建てる際の敷地・構造・住宅設備・用途などについて、最低限の基準を定めた法律です。具体的には建物の構造基準、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどがそれぞれ細かく規定されており、建築基準法によって、建物の耐久性や防火性能などが担保されています。

建築基準法自体は1950年に制定された法律ですが、技術の進歩や社会情勢の変化などに伴い、たびたび改正が行われています。代表的な改正として挙げられるのは、「1981年に施行された耐震基準に関する改正」「2000年の木造住宅に関する改正」などです。

また、2024年の4月1日にも改正法が施行されました。こちらについては、内容や経緯を後ほど詳しくご紹介します。

建築基準法の目的

建築基準法の具体的な内容に入る前に、まずは第1条で定義されている「目的」について確認しておきましょう。

建築基準法第1条(目的)

建築基準法の第1条では、この法律の目的が以下のように定められています。

■建築基準法第1条(目的)

この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。


民法では、土地の所有者はその土地を自由に使用収益できるのが原則とされています。しかし、土地の所有者が無制限に建物を建ててしまえば、建物の倒壊や隣接する建物との間で起こる近隣トラブル、景観の破壊といったさまざまなトラブルが生じます。

そこで、建築物における最低限の基準を定めることで、著しく性能が低い建物や他者の権利を脅かすような建物の建設を防ぎ、安全性や経済性、公共の福祉を確保するというのが建築基準法の基本的な目的です。

建築物とは

建築基準法の対象となる「建築物」とは、具体的にどのような建物を指すのでしょうか。建築基準法第2条では、次のように定義されています。

■建築基準法第2条(用語の定義)

土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。


つまり、以下の例外を除き、実質的にはほとんどの建物が建築基準法の対象になるということです。

■建築基準法の適用対象外

・文化財保護法によって国宝・重要文化財に指定された建築物など
・既存不適格建築物(建築基準法の施行前から存在している建築物)
・鉄道の跨線橋、プラットホームの上家など

建築基準法の内容を分かりやすく解説

建築基準法の内容を理解するためには、全体的な構造を把握したうえで個別の条文に触れていくのが近道です。ここでは、規定の内容や建築確認、罰則などについて見ていきましょう。

単体規定と集団規定

建築基準法における規制は、大きく「単体規定」と「集団規定」の2つに分類されています。

■単体規定
単体規定とは、建物そのものの安全性や衛生確保に関する規定であり、全国どこでも適用されるのが特徴です。単体規定の内容は「敷地に関するもの」「建築物の構造耐力に関するもの」「防火・避難に関するもの」「衛生に関するもの(居室の採光・換気に関する規定やアスベストやトイレに関する規制など)」「地方公共団体による制限の附加・緩和」の5つに分かれています。

■集団規定
集団規定とは、都市計画において環境向上を目的として建築物の秩序を保つため、安全で合理的な土地利用などのために設けられている規定であり、用途地域などによって適用されるかどうかが決まります。

集団規定のおもな内容は、「接道規制」「用途規制」「形態規制」の3つです。接道規制はいわゆる「接道義務に関する決まり」、用途規制は「用途地域に関する決まり」、形態規制は「都市計画区域および準都市計画区域における建築物の制限(建ぺい率や容積率など)」に該当します。

建築確認および完了検査について

建築基準法では、建築確認および検査が必要な建築物についても定義されています。
 
■建築確認および検査が必要な建築物

1

以下のいずれかの用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が100平方メートルを超えるもの

・商業施設、展示場、キャバレー、カフェ、バー、ダンスホール、遊技場など
・劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会所など
・学校、体育館など
・病院、診療所、ホテル、旅館、下宿、寄宿舎、共同住宅など
・倉庫など
・自動車車庫、自動車修理工場など
2

以下のいずれかに該当する木造建築物

・3階建て以上
・延床面積500平方メートル超
・高さ13メートル超
・軒の高さ9メートル超
3

以下のいずれかに該当する木造以外の建築物

・2階建て以上
・延床面積200平方メートル超
4

以下のいずれかの区域に建てられる建築物

・都市計画区域
・準都市計画区域
・準景観地区

・都道府県知事が指定する区域


建築確認とは、建築工事に着工する前に申請を行い、建築主事による書類などの審査・確認を経て「確認済証」の交付を受ける手続きを指します。完了検査とは、工事完了直後に建築主事又はその委任を受けた地方公共団体の吏員によって行われる完了検査のことです。

いずれも、建築基準関係規定に適合しているかをチェックする重要な検査であり、これらのプロセスを経なければ使用収益が行えないとされています。

違反建築物に対する罰則

建築基準法では、違反建築物に対する罰則についても定められています。法に違反する建築等が行われた場合、対象者には「特定行政庁による措置命令(是正措置や工事の停止など)」と「刑事罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)」が科せられる可能性があります。

罰則の対象者は設計者や施工者が基本ですが、建築主による行為が問題である場合は建築主も処罰の対象です。また、企業の従業員などが違反を犯した場合は、両罰規定によって法人も罰せられることとなっています。

2024年4月以降に改正予定の内容

2024年に施行される建築基準法の改正は、おもに「脱炭素社会実現のための建築物のエネルギー消費性能の向上」と「地域の自主性及び自立性を高めるための改革推進」が目的とされています。ここでは、おもな改正内容を簡単にご紹介します。

3,000平米超の大規模建築物の木造化を促進する防火規定の合理化

従来の内容では、3,000平米超の大規模建築物については、「壁・柱等を耐火構造にする」「3,000平米ごとに耐火構造体で区画する」といった規定が設けられていました。改正後は、防火区画の強化や大断面のもえしろ設計により、木材の「あらわし」(構造部材の木材をそのまま見せるつくり)による設計が可能となります。

大規模建築物における部分的な木造化の促進

従来は耐火建築物の主要構造部は、すべて耐火構造とする必要がありました。改正後は防火上・避難上支障がない範囲であれば、部分的に木造でつくることが可能となります。

たとえばメゾネット住戸内の中間床や壁・柱、最上階の屋根や柱・梁などは、適切と認められる範囲内であれば部分的に木造化することができます。

防火規定上の別棟扱いの導入による低層部分の木造化の促進

従来の規制では、一つの建築物に対して全体に同一の耐火性能が求められていました。しかし延焼を遮断する耐火壁などで区画し、高層棟と低層棟を別棟として扱う措置をとった場合、異なる防火規定を適用できるようになります。

これにより、たとえば高層棟は耐火建築物で、低層棟は準耐火建築物で建てるなど、柔軟な設計が可能となります。

防火壁の設置範囲の合理化

改正前は木造などの非耐火部分と一体で耐火・準耐火構造の部分を計画する場合、耐火・準耐火構造部分にも、1,000平米以内ごとに防火壁で区画することが求められていました。しかし、改正後は木造などの非耐火構造部分との間を防火壁で区画された耐火・準耐火構造部分には防火壁の設置を不要とすることができるようになります。

建築物の長寿命化・省エネ改修などにおける現行基準の遡及適用の合理化

従来の決まりでは、建築物の増改築などを行う際には、原則として現行の基準が適用されることとなっていました。しかし、エネルギー効率の観点から、建築物の長寿命化や省エネ性能の向上に伴う一定の改修工事に対しては、遡及適用外となります。

接道義務・道路内建築制限の遡及適用の合理化

改正前は、接道義務や道路内建築制限による既存不適格建築物は、現行基準に適合しなければ大規模修繕やリフォームなどを行えない決まりとなっていました。しかし、改正によって、市街地環境への影響が増大せず、安全性も確保されると認められる範囲であれば、接道義務や道路内建築制限の遡及が緩和されることとなっています。

4号建築物の範囲縮小(2025年4月施行予定)

4号建築物とは、建築基準法第6条第1項第4号に該当する建築物を指します。具体的には「木造2階建て」や「木造平屋建て等」が対象です。

これらについては、原則として審査省略制度の対象となっていたため、建築確認の際に構造関係などの審査を省くことが可能とされています。この決まりは「4号特例」と呼ばれており、木造住宅のスムーズな施工実現を助ける仕組みとなってきました。

しかし、改正後は「木造2階建て」や「延べ面積200平米超の木造平屋」が審査省略制度の対象外となり、「延べ面積200平米以下の木造平屋のみ」が審査省略制度の対象となります。また、確認申請時には構造・省エネ関連の図書の提出が必須になり、木造住宅における構造基準や省エネ基準への適合が厳格化される運びとなっています。

■変更内容のまとめ


改正前

改正後


名称

4号建築物

新2号建築物

新3号建築物

建築物の範囲

・木造2階建て
・木造平屋建て等

・木造2階建て
・木造平屋建て
(延べ面積200平米超)

・木造平屋建て
(延べ面積200平米以下)

建築確認・審査のルール

都市計画区域内等に建築する際は建築確認・検査が必要

すべての地域で建築確認・審査が必要

改正前と同様

必要な提出書類・図書

確認申請書・図書
(一部図書省略)

・確認申請書・図書
・構造関係規定等の図書
・省エネ関連の図書

改正前と同様


​​​​​​​●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:建築基準法の目的とは?
A:
「建築物」における最低限の基準を定めることで、国民の安全や財産、公共の福祉を確保するというのが建築基準法の基本的な目的です。なお、建築物には重要文化財や国宝などの例外を除き、ほとんどの建物が含まれています。

Q:建築基準法の内容は?
A:
単体規定(建物そのものに関する規定)と集団規定(都市計画との整合性を保つための規定)、建築確認と検査、違反建築物に対する罰則などから構成されています。

Q:2024年の建築基準法改正で何が変わる?
A:
おもな内容としては、大規模建築物における木造化の促進や、各種規定の合理化、建物の長寿命化・省エネ性能向上促進のための遡及の緩和などが挙げられます。


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編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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