建築・施工管理

積算とは?積算と見積もりの違いや仕事内容・業務フローについて徹底解説!

積算とは?積算と見積もりの違いや仕事内容・業務フローについて徹底解説!

建設業において、積算は経営の土台ともいえる重要な業務です。建設業の工事にはさまざまな費用が発生するため、正確な積算を行うことで、はじめて予算の把握や利益の安定した確保が行えます。

今回は、積算の重要性や見積もりとの違い、具体的な業務の流れ、必要なスキル・資格などをまとめてご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.積算とは
    1. 1.1.積算の方法
    2. 1.2.積算の役割と必要性
  2. 2.積算と見積もりの違い
  3. 3.積算に関する仕事内容
    1. 3.1.材料費の計算
    2. 3.2.人件費の計算
    3. 3.3.建築工事の原価管理
    4. 3.4.書類作成
  4. 4.積算のおもな構成要素
  5. 5.積算の業務フロー
    1. 5.1.各作業における労務費の算出
    2. 5.2.材料費の算出
    3. 5.3.総工費の算出
    4. 5.4.書類作成
  6. 6.積算業務に必要なスキルと資格
    1. 6.1.必要なスキル
    2. 6.2.役に立つ資格

積算とは

「積算」とは、工事に必要な具体的項目や費用を積み上げて全体の工事原価を算出することです。ここではまず、積算の基本的な方法や必要性について解説します。

積算の方法

積算は、設計図や仕様書に基づき、建物の施工環境なども踏まえて実際にかかる費用を算出していきます。おもな費用としては、人件費・材料費・工事費などが挙げられ、それぞれ具体的な条件に基づいて金額を計算します。

積算のやり方は工事や建物の種類によっても異なり、建築工事や電気設備工事、機械設備工事といった工事内容の違いによって算出方法が変わります。

積算の役割と必要性

積算を行う目的は、工事をするうえで必要な資材や数量、労務人数・時間などを的確に把握し、それをもって工事原価を算出することです。建設業の場合は、製造業などの業界と比較して、案件ごとに必要な費用が大きく変動する傾向にあります。

施工内容は施工環境や必要な人員数などが毎回異なるため、おおまかな勘定で計画を立ててしまった場合、重大な損失や利益の取りこぼしにつながりかねません。積算によって正確な費用を算出することで、適切な予算が見極められ、利益の見通しが立てられるのです。

また、正しい積算が行われていれば的確な工事項目・工事費用を見積書に反映させられるため、発注者からの信頼獲得にも結びつきます。

積算と見積もりの違い

積算と類似した言葉に「見積もり」があります。一般的には見積もりのほうが頻繁に使用されるため、積算も見積もりと同じ意味として混同されるケースが多いです。

しかし、見積もりは発注者に対して提示する請負金額のことであるため、工事に必要な原価に利益や一般管理費を上乗せして算出する必要があります。それに対して、積算は利益などを上乗せせず、工事に実際にかかる費用のみを算出する業務です。

つまり、積算によって算出された原価に、利益や経費などを上乗せしたものが見積もりであるということです。そのため、見積もりが発注者などの外部に向けて行われるものであるの対し、積算は基本的に社内に向けて行うものと言い換えることもできます。

いずれにしても、正確な積算が実行されていなければ適切な見積もりも行えないため、工事においては欠かせないプロセスといえます。

積算に関する仕事内容

積算を行う際の業務内容は、大きく4つに分けることができます。

材料費の計算

まずは、設計図や仕様書をもとに、工事に必要な材料費の計算を行います。工事の種類や規模、環境、工事期間などのさまざまな要因を考慮したうえで、各材料の必要数量を計算し、正確な費用を算出する必要があります。

人件費の計算

作業員の人件費については、人工(にんく)と呼ばれる単位で計算します。人工は1日8時間における人件費のことであり、工事の要件によっても変わります。

正確な数値を割り出すには、設計図・仕様書から細かな条件を確認し、それに合わせた人工の把握が必要です。

建築工事の原価管理

材料費や人件費を割り出したら、そこから総工費を算出して積算の基本的な流れは完了となります。しかし、積算の担当者は単に工事の費用を計算するだけでなく、建築工事の原価管理も行うのが一般的です。

書類作成

積算の結果は、内訳明細書・単価比較表・仕訳票などの書類に落とし込みます。工事ごとに規格や数量、単価を正確に記載し、漏れやミスがないことを確認したら、一通りの積算業務は完了となります。

積算のおもな構成要素

積算を行う際には、各構成要素を一つずつ明確にし、計算結果を積み上げていく必要があります。積算のおもな構成要素は次のとおりです。

構成要素

費用の内容

総工費(純工事費)


直接工事費

材料費

各材料の仕入れ値(数量×単価)

労務費

歩掛を用いて算出した人件費など

直接経費

現場における水道光熱費、機械経費

間接工事費

共通仮設費

足場や仮囲い、仮設トイレなどの費用

現場管理費

現場管理のために必要な労務費、福利厚生費などの経費

販売費および一般管理費(販管費)

宣伝広告費や事務所の賃料、事務員の人件費、会社経費など

粗利益

税引前利益


このうち、積算の対象となるのは「総工費」(純工事費)です。そして、見積もりを行う際には、ここに販管費と粗利益を乗せて金額の計算を行います。

積算の業務フロー

積算の構成要素を把握したところで、ここからは具体的な業務フローを確認していきましょう。

各作業における労務費の算出

まずは、人工を算出し、直接工事費のうちの労務費を明らかにします。人工は「歩掛(ぶがかり)」と呼ばれる基準を用いて計算します。

歩掛とは一つの作業にかかる手間を数値化したものです。今回は、以下の条件を想定して、ある設備(設備A)の取り付けの人工を計算してみましょう。

■シミュレーションの条件

・設備Aの取り付けに一つあたり1時間30分かかる

・工事では設備Aを4つ取り付ける
・作業員の1日あたりの人件費を1万5,000円とする


​​​​​​​この場合、設備Aを一つ取り付ける際の人工は「(1人×1.5時間)÷8時間=0.18」と計算できます。このとき、設備Aの歩掛は「0.18」となります。

工事を行うにあたり、設備Aを4つ取り付ける場合、人工は「0.18(歩掛)×4つ=0.72」となります。作業員の1日あたりの人件費は1万5,000円なので、設備Aの取り付けにかかる労務費は「1万5,000円×0.72=1万800円」です。

このように、歩掛が分かれば、そこから具体的な労務費を割り出すことができます。なお、歩掛については、国土交通省が定めている「標準歩掛」を参考にするのが一般的です。

国土交通省の「公共建築工事標準単価積算基準」に、具体的な施工内容における標準歩掛が記載されているので参考にしてみてください。

材料費の算出

続いて、各工事における材料費の算出を行います。図面や仕様書から必要な材料と数量を正確に割り出し、副資材が発生する可能性がある場合は発注者や設計者に問合せて確認します。

この作業は「拾い出し」と呼ばれており、正確な積算を行ううえで欠かせないプロセスです。次に、材料の正確な単価を確認する「値入」という作業を行います。

材料費の算出を行う際にも、「標準歩掛」を参考にするのがおすすめです。

総工費の算出

労務費と材料費を算出したら、それに直接経費を加算し、直接工事費を求めます。続いて、間接工事費の算出を行い、直接工事費と合算して総工費を求めましょう。

間接工事費の計算方法には、国土交通省の「公共建築工事共通費積算基準」を利用する方法と、「過去の実績などに基づいた共通費の比率」で計算する方法の2つがあります。

書類作成

必要な数値やデータがすべてそろったら、内訳明細書や単価比較表・仕訳票などの書類を作成します。作成時には過去につくったフォーマットを用いるか、初めて積算を行う場合は無料で利用できるテンプレートを活用するのがおすすめです。

確認したうえで、内容に問題がなければ印刷・製本を行います。

積算業務に必要なスキルと資格

最後に、積算業務を行うのに必要なスキルと、関連する資格について見ていきましょう。

必要なスキル

積算の業務では、当然ながら正確な計算スキルが必要となります。また、どのような工事があり、それぞれどのような仕組みで成り立っているのかを知っておく必要があるため、建築工事に関する専門知識も求められます。

そのうえで、実務においてはコミュニケーション能力も重要なスキルです。費用の正確な算出を行うには、現場監督者や材料の仕入先ともやりとりをする必要があるため、円滑にコミュニケーションを図れるだけのスキルとマナーも欠かせない資質といえます。

役に立つ資格

積算業務自体は、必ずしも資格を持っていなくても行うことは可能です。しかし、実務においては専門的な知識が求められるため、資格の取得を通じて体系的に学習する機会を設けることは重要です。

積算に関する資格としては、建築積算士や建築コスト管理士などが挙げられます。また、施工管理技士や建築士の資格を取得すれば、さらにキャリアの可能性を広げることができます。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:積算とは?
A:
積算とは、工事に必要な費用を積み上げて全体の費用を算出することです。総工費(純工事費)を求める業務であり、正確な費用を把握したり、利益確保の見通しを立てたりするうえで欠かせない作業です。

Q:積算の業務内容は?
A:
人件費や材料費を正確に割り出し、総工費を算出するのがおもな役割です。また、積算結果に基づく書類作成や各工事の原価管理なども、積算の担当業務に含まれます。

Q:積算の費用項目にはどんなものがある?
A:
積算では直接工事費(労務費・材料費・直接経費)と間接工事費(共通仮設費・現場管理費)からなる総工費(純工事費)を求めます。ここに販売費および一般管理費と粗利益を加えて工事の見積もりを行うこととなります。


●関連コラムはこちら

≫ 建築基準法の“床面積”とは? 2つの種類と床面積の算定に含まれない部分を解説
≫ 【建築基準法の接道義務】接道長さや測り方について解説

編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

関連する最新コラム