【建築業界の基礎知識】建築基準法における避難階段とは?設置基準と構造について解説
避難階段は火災時などに、多くの人が安全に避難できるように設計された地上への直通階段をいいます。建築基準法をはじめとした法令の基準を満たす必要があり、避難階段の種類や構造などについて、しっかりと把握しておくことが重要です。
この記事では、建築基準法における避難階段の種類や設置基準、構造などを解説します。
目次[非表示]
- 1.避難階段とは? 主な役割と種類
- 2.避難階段の構造を種類別に解説
- 2.1.屋内避難階段
- 2.2.屋外避難階段
- 2.3.特別避難階段
- 2.4.消防庁告示第7号の屋内避難階段
- 3.避難階段の設置が必要とされる建築物
- 4.任意で設けることも可能? 避難階段の設置免除
- 5.この記事を監修した人
避難階段とは? 主な役割と種類
避難階段とは一般的に非常階段と呼ばれていますが、防火性能などを高めた直通階段のことを指します。地震や火災などが発生したときに、安全に避難が行えるように設けられる階段のことであり、地上に直接通じている必要があります。
避難階段は「屋内避難階段」「屋外避難階段」「特別避難階段」「消防庁告示第7号の屋内避難階段」の4種類があり、主な特徴についてまとめると次のとおりです。
■避難階段の種類
種類 |
特徴 |
屋内避難階段 |
・屋内に設けられた避難階段 |
屋外避難階段 |
・屋外に設けられた避難階段 |
特別避難階段 |
・通常の避難階段よりも、さらに安全な構造・仕様を備えたもの |
消防庁告示第7号の屋内避難階段 |
・屋内避難階段の例外として認められるもの |
それぞれの避難階段について、さらに詳しく見ていきましょう。
避難階段の構造を種類別に解説
避難階段および特別避難階段の構造に関する基準は、建築基準法施行令の第123条で定められています。また、消防庁告示第7号の屋内避難階段も、定められた要件を満たす必要があるので、どのようなルールとなっているかを解説します。
屋内避難階段
屋内避難階段は建物の屋内に設けられる避難階段のことであり、建築基準法施行令第123条において定められており、以下のすべての基準を満たす必要があります。
■屋内避難階段の構造基準
一 階段室は、第四号の開口部、第五号の窓又は第六号の出入口の部分を除き、耐火構造の壁で囲むこと。
二 階段室の天井(天井のない場合にあっては、屋根。第三項第四号において同じ)及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。
三 階段室には、窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。
四 階段室の屋外に面する壁に設ける開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く)は、階段室以外の当該建築物の部分に設けた開口部並びに階段室以外の当該建築物の壁及び屋根(耐火構造の壁及び屋根を除く)から九十センチメートル以上の距離に設けること。ただし、第百十二条第十六項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
五 階段室の屋内に面する壁に窓を設ける場合においては、その面積は、各々一平方メートル以内とし、かつ、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものを設けること。
六 階段に通ずる出入口には、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるものを設けること。この場合において、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖する戸又は戸の部分は、避難の方向に開くことができるものとすること。
七 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること。
(引用:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」)
屋内避難階段は、開口部や屋内に面する窓、出入り口部分を除いて、耐火構造の壁で囲む必要があり、内装においては天井・壁の仕上げ材と下地を不燃材料で造らなければなりません。また、採光に必要な窓の確保、予備電源を有する照明設備と防火設備の設置が求められています。
階段自体も耐火構造でなければならず、避難する階まで直通になっていることも基準として挙げられます。
屋外避難階段
屋外避難階段は、建物の屋外に設ける避難階段のことであり、煙などが充満しないことが特徴として挙げられます。建築基準法施行令第123条に基準が定められており、以下のすべての基準を満たさなければなりません。
■屋外避難階段の構造基準
一 階段は、その階段に通ずる出入口以外の開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く)から二メートル以上の距離に設けること。
二 屋内から階段に通ずる出入口には、前項第六号の防火設備を設けること。
三 階段は、耐火構造とし、地上まで直通すること。
(引用:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」)
屋外避難階段においては、階段から2m以内の範囲に出入り口以外の窓や給排気口を設けてはいけないことが定められています。また、防火設備を備えることや、階段を耐火構造として地上までつなげることを基準としています。
特別避難階段
特別避難階段は、通常の屋内避難階段よりもさらに安全性の高いのが特徴であり、階段の入り口部分に、排煙窓や排煙口を備えた付室、あるいはバルコニーなどが設けられたものです。建築基準法施行令第123条に基準が定められており、以下のすべてを満たす必要があります。
■特別避難階段の構造基準
一 屋内と階段室とは、バルコニー又は付室を通じて連絡すること。
二 屋内と階段室とが付室を通じて連絡する場合においては、階段室又は付室の構造が、通常の火災時に生ずる煙が付室を通じて階段室に流入することを有効に防止できるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
三 階段室、バルコニー及び付室は、第六号の開口部、第八号の窓又は第十号の出入口の部分(第百二十九条の十三の三第三項に規定する非常用エレベーターの乗降ロビーの用に供するバルコニー又は付室にあっては、当該エレベーターの昇降路の出入口の部分を含む)を除き、耐火構造の壁で囲むこと。
四 階段室及び付室の天井及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。
五 階段室には、付室に面する窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。
六 階段室、バルコニー又は付室の屋外に面する壁に設ける開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く)は、階段室、バルコニー又は付室以外の当該建築物の部分に設けた開口部並びに階段室、バルコニー又は付室以外の当該建築物の部分の壁及び屋根(耐火構造の壁及び屋根を除く)から九十センチメートル以上の距離にある部分で、延焼のおそれのある部分以外の部分に設けること。ただし、第百十二条第十六項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
七 階段室には、バルコニー及び付室に面する部分以外に屋内に面して開口部を設けないこと。
八 階段室のバルコニー又は付室に面する部分に窓を設ける場合においては、はめごろし戸を設けること。
九 バルコニー及び付室には、階段室以外の屋内に面する壁に出入口以外の開口部を設けないこと。
十 屋内からバルコニー又は付室に通ずる出入口には第一項第六号の特定防火設備を、バルコニー又は付室から階段室に通ずる出入口には同号の防火設備を設けること。
十一 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること。
十二 建築物の十五階以上の階又は地下三階以下の階に通ずる特別避難階段の十五階以上の各階又は地下三階以下の各階における階段室及びこれと屋内とを連絡するバルコニー又は付室の床面積(バルコニーで床面積がないものにあっては、床部分の面積)の合計は、当該階に設ける各居室の床面積に、法別表第一(い)欄(一)項又は(四)項に掲げる用途に供する居室にあっては百分の八、その他の居室にあっては百分の三を乗じたものの合計以上とすること。
(引用:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」)
特別避難階段は、「バルコニー型」「自然排煙方式の付室型」「機械排煙方式の付室型」の3種類に分けられます。バルコニー型は屋外に設置されたバルコニーを経由して基準を満たす方法です。
自然排煙方式の付室型は、排煙するための開口部を付室に設けるものであり、機械排煙方式の付室型は付室に機械排煙設備を設置する方法となります。建築基準法で定められた避難時の歩行距離を確保するため、避難階段を建物のどこに設置するかによって選ぶ方式は違ってくるといえるでしょう。
消防庁告示第7号の屋内避難階段
消防庁告示第7号の屋内避難階段とは、通常の屋内階段であっても、一定の要件を満たすことで屋内避難階段として認められるものをいいます。主な要件として、次の点が挙げられます。
■消防庁告示第7号の屋内避難階段の主な要件
一 開口部の開口面積は、二平方メートル以上であること。
二 開口部の上端は、当該階段の部分の天井の高さの位置にあること。ただし、階段の部分の最上部における当該階段の天井の高さの位置に五百平方センチメートル以上の外気に開放された排煙上有効な換気口がある場合は、この限りでない。
(引用:消防庁「消防法施行規則第四条の二の三並びに第二十六条第二項、第五項第三号ハ及び第七項第三号の規定に基づく屋内避難階段等の部分を定める件」)
所轄の消防署によって、どのように判断するかは異なるため、事前に確認を行っておくようにしましょう。
避難階段の設置が必要とされる建築物
避難階段の設置基準については、建築基準法施行令の第122条などに定められています。「5階建て以上の建物」「地下2階以上の建物」「3階以上の階を物品販売店舗とする建物」については、避難階段の設置が必要です。
また、特別避難階段については「15階建て以上の建物」「地下3階以上の建物」「5階以上の階を物品販売店舗とする建物」であることが基準となっています。
(参照:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」)
任意で設けることも可能? 避難階段の設置免除
一定の構造を備える建物については、避難階段を設置することが義務付けられていますが、場合によっては避難階段を設置しなくてもよい緩和措置が認められることもあります。たとえば、「主要な構造部分が準耐火構造または不燃材料で造られている建物」かつ「5階以上の階または地下2階以上の階の合計床面積が100平米以下」の場合は、避難階段の設置は免除できます。
また、「主要な構造部分が耐火構造の建物」かつ「床面積の合計が100平米(共同住宅の場合は200平米)以内ごとに耐火構造の床や壁、特定防火設備で区画されている」場合にも設置は不要です。任意で設けた階段は原則として直通階段として取り扱われますが、2つ以上の直通階段において緩和措置を受ける際は、避難階段の設置が必要になるので注意しましょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:避難階段とは?
A:地震や火災などが起こったときに、人々を安全に避難させるために設けられた地上への直通階段のことをいいます。「屋内避難階段」「屋外避難階段」「特別避難階段」「消防庁告示第7号の屋内避難階段」の4種類があり、それぞれ設置基準や構造が異なります。
Q:避難階段は必ず設けなければならない?
A:緩和措置の要件に該当する場合は、必ずしも避難階段を設置する必要はありません。ただし、2つ以上の直通階段で緩和措置を受けるときは、避難階段の設置が必要になります。
●関連コラムはこちら
≫ 建築基準法における6つの道路種別を分かりやすく解説
≫ 平面図と立面図とは? 設計図書の基本を解説
この記事を監修した人
岩納 年成(一級建築士)
大手ゼネコン会社にて、官公庁工事やスタジアム、免震ビル等の工事管理業務を約4年経験。その後、大手ハウスメーカーにて注文住宅の商談・プランニング・資金計画などの経験を経て、木造の高級注文住宅を主とするビルダーを設立。
土地の目利きや打ち合わせ、プランニング、資金計画、詳細設計、工事統括監理など完成まで一貫した品質管理を遂行し、多数のオーダー住宅を手掛け、住まいづくりの経験は20年以上。法人の技術顧問アドバイザーとしても活動しながら、これまでの経験を生かし個人の住まいコンサルテイングサービスも行っている。