用途地域とは?13種類の特徴と制限、調べ方について分かりやすく解説
土地の利活用を考えるうえで、「用途地域」はすべての土台となる基本的なポイントです。用途地域によっては、建築が認められていない建物もあるので、最初に目を向けるべき項目ともいえるでしょう。
今回は用途地域の基本を確認したうえで、全13種類の特徴と制限について分かりやすくご紹介します。また、用途地域の調べ方も併せて見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.用途地域の基本となるポイント
- 2.用途地域の2つの制限
- 2.1.建築可能な建物の種類
- 2.2.建ぺい率と容積率
- 3.13種類の用途地域の特徴を解説
- 3.1.第一種低層住居専用地域
- 3.2.第二種低層住居専用地域
- 3.3.第一種中高層住居専用地域
- 3.4.第二種中高層住居専用地域
- 3.5.第一種住居地域
- 3.6.第二種住居地域
- 3.7.準住居地域
- 3.8.田園住居地域
- 3.9.近隣商業地域
- 3.10.商業地域
- 3.11.準工業地域
- 3.12.工業地域
- 3.13.工業専用地域
- 4.用途地域の調べ方
- 5.用途地域の指定がない場合の対応
- 6.この記事を監修した人
用途地域の基本となるポイント
「用途地域」とは、都市計画法第8条1項によって指定された都市計画区域のことです。都市計画区域とは、都市計画法に基づいて都道府県知事や国土交通大臣が指定したエリアのことであり、基本的には市や町村の中心的な地域が該当します。
このエリアでは、都市としての機能を整備・開発・保全するために、計画的な市街地の形成が重視されます。そのため、建築物の規模や用途を制限することを目的に設けられているのが、用途地域というルールです。
建築物には住宅や商業施設、工場、学校などのさまざまな種類があり、無秩序に建てられれば都市機能の低下を招く恐れがあります。そこで、周辺環境の調和を保つために、用途地域が設定されているのです。
用途地域は地域の実態に応じたものである必要があるため、おおむね5年に一度の頻度で見直しが行われています。
(出典:e-Gov法令検索『都市計画法第8条』)
(出典:国土交通省『用途地域』)
用途地域の2つの制限
用途地域は、主に「建てられる建物の種類」と「建物の面積・容積(建ぺい率・容積率)」の2つにもっとも大きな影響を与えます。ここでは、具体的な制限の内容について見ていきましょう。
建築可能な建物の種類
用途地域によって、建築可能な建物の種類には一定の制限が行われます。たとえば閑静な住宅街にあたる「第一種低層住居専用地域」では、住宅や一定の高さ以下の共同住宅、寄宿舎、公共施設(大学・病院は除く)以外の建物を建てることはできません。
高層の建物や騒音が発生するような建物があれば、住宅地としての機能を損なってしまうため、特に厳しい制限が設けられています。このように、用途地域によって、ある程度建物の種類は限定されているのです。
建ぺい率と容積率
建物を建てる際には、用途地域ごとに定められた「建ぺい率」と「容積率」の基準を満たす必要があります。建ぺい率とは、「敷地面積に対する建築面積(上から見たときの建物の面積)」の上限を定めた数値です。
また、容積率は「敷地面積に対する延床面積」の上限を定めた数値です。建ぺい率が敷地に対する平面の割合を制限しているのに対し、容積率は立体の大きさを制限しています。
ここからは、全13種類の用途地域について、建てられる建物の種類や建ぺい率・容積率の制限を詳しく見ていきましょう。
13種類の用途地域の特徴を解説
都市計画法では、以下のように13種類の用途地域が定められています。それぞれ住宅に適した「住居系」、商業施設に適した「商業系」、工場などに適した「工業系」の3つに大別することができます。
■用途地域の区分
区分 |
該当する用途地域 |
住居系 |
第一種低層住居専用地域 |
商業系 |
近隣商業地域 |
工業系 |
準工業地域 |
(出典:国土交通省『用途地域』)
ここでは、それぞれの主な特徴について解説します。
第一種低層住居専用地域
「第一種低層住居専用地域」とは、低層の住宅に特化した住宅地を形成するための地域です。2階建て以下の一戸建てが集まる閑静な住宅街というイメージであり、駅などの中心地からは少し離れたエリアが多いのも特徴です。
■主な特徴
|
建ぺい率が比較的に小さく、敷地に対して建築面積が小さくなるため、全体としてゆとりのある景観が保たれます。また、住宅以外のほとんどの施設が不可とされているため、静かで人通りの落ち着いたエリアになるのも特徴です。
第二種低層住居専用地域
「第二種低層住居専用地域」は、第一種と比べるとやや制限が緩やかになり、一定規模以下の店舗や喫茶店を設置できるのが特徴です。
■主な特徴
|
※日用品販売店舗、喫茶店、理髪店、建具屋等のサービス業用店舗のみ。かつ2階以下
第一種と同じように閑静な住宅街ではありますが、150m2以下の小さな店舗は設置できるため、少し利便性が向上しているのがメリットです。
第一種中高層住居専用地域
「第一種中高層住居専用地域」は、マンションなどの中高層住宅を想定したエリアです。
■主な特徴
|
※日用品販売店舗、喫茶店、理髪店、建具屋等のサービス業用店舗、物品販売店舗、飲食店、損保代理店・銀行の支店・宅地建物取引業者等のサービス業用店舗のみ。かつ2階以下
建ぺい率は低層住居専用地域と同様ですが、容積率が大きく設定されているため、比較的に高さのあるマンションを建てることができます。ただし、住居としての環境を重視するため、店舗には種類や階数の制限が設けられています。
第二種中高層住居専用地域
「第二種中高層住居専用地域」は、第一種中高層住居専用地域よりも少し店舗の条件が緩められ、利便性の向上を実現させたエリアです。
■主な特徴
|
※2階以下
第一種住居地域
「第一種住居地域」は、住宅地としての環境を守りつつ、さまざまな商業施設の建築が許可されているエリアです。
■主な特徴
|
ほとんどの公共施設が建築可能であり、店舗も3,000m2までの比較的に大規模なものが設置を認められています。また、オフィスビルや一定規模以下の自動車修理工場、倉庫なども建てることができます。
第二種住居地域
「第二種住居地域」は第一種よりも、さらに商業施設の要件が緩和されているエリアです。
■主な特徴
|
大規模な娯楽施設やカラオケボックスなども設置可能なため、人通りが多く、明るくにぎやかな街並みが形成されます。一方、危険性や環境悪化の恐れがある工場は不可とされているので、住宅地としての環境も確保されるのが特徴です。
準住居地域
「準住居地域」とは、主に幹線道路沿いに広がる住宅地を指します。基本的には、高層マンションとロードサイド店舗が共存するような利便性の高い街並みが特徴です。
■主な特徴
|
田園住居地域
「田園住居地域」とは、その名のとおり田園などの農業地と低層住宅地の調和を図るエリアのことです。基本的な条件は低層住居地域と共通していますが、農作物の直売所や農業機械用の倉庫、農業レストランなどを設置できるのが特徴です。
■主な特徴
|
近隣商業地域
「近隣商業地域」は商業系地域の一つです。主に近隣の住民が日用品などの買い物をするための地域とされており、住宅や店舗、小規模の工場が建てられます。
■主な特徴
|
商業系地域はほとんどの制限が外れているのが大きな特徴であり、利便性を重視した開発が可能となります。
商業地域
「商業地域」は建物の種類に関するほとんどの制限が外れており、自由度の高い開発が行えます。また、容積率1,300%まで可能とされているので、大型百貨店などの設置も可能であり、主に駅周辺の利便性の高いエリアが該当します。
■主な特徴
|
準工業地域
「準工業地域」は工業系地域の一つですが、住宅や店舗の設置も認められているエリアです。そのため、基本的に工場・倉庫は設置が認められていますが、危険性や環境への影響が大きい工場は許可されません。
■主な特徴
|
住居との調和も重視されているため、どちらかと言えば小さな工場やサービス施設が集まったエリアになるのが特徴です。
工業地域
「工業地域」では、すべての工場の設置が認められたエリアであり、主に湾岸地域などが該当します。住宅も建てることは可能ですが、工場の利便性が優先されているので、基本的には影響の小さい高層マンションなどが中心となります。
■主な特徴
|
また、騒音や環境への影響などを踏まえ、工業地域では学校や病院などを建てることができません。
工業専用地域
「工業専用地域」とは、その名のとおり工場専用のエリアです。住宅を建てられない唯一の用途地域であり、そのほかの建物についても許可されているのは「事務所」「10,000m2以下のカラオケボックスなど」「郵便局・派出所、寺社・寺院・教会、公衆浴場、診療所・保育所等、自動車教習所」といった特定のもののみです。
■主な特徴
|
用途地域の調べ方
用途地域は、自治体の窓口やインターネットで簡単に調べることができます。資料は「都市計画図」や「用途地域地区等図」などの名称で扱われており、区分によって色分けされているので、調べたいエリアやその周辺がどの用途地域に該当するかが一目で分かる仕組みとなっています。
(出典:東京都都市整備局『都市計画情報等インターネット提供サービスについて』)
複数の用途地域にまたがっている場合
対象の土地が複数の用途地域にまたがっている場合、建物の種類については「その土地の半分以上を占める用途地域」が適用されます。また、建ぺい率・容積率については、それぞれの用途地域で建てられる規模を加重平均によって計算したものが、その敷地に建てられる大きさとなります。
一方、防火地域と準防火地域にまたがる場合は、より厳しいエリアの制限が適用されるので注意が必要です。
用途地域の指定がない場合の対応
都市計画区域内であっても、土地によっては、用途地域が指定されていない場合もあります。こうしたエリアを「非線引き白地地域」と呼び、該当する土地では用途地域による制限を受けません。
しかし、指定がないとはいっても無制限に建物を建てられるわけではなく、自治体によって最適と判断された各種制限が設けられています。用途地域の制限と比べると、基準は比較的緩い傾向にありますが、なかには建物の建築そのものが認められていないケースもあります。
そのため、非線引き白地地域の取り扱いに関しては、事前に自治体へ確認しておくことが大切です。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:用途地域とは?
A:計画的な市街地を形成するために、都市計画区域内に設定される用途別の区域分けのことです。建築可能な建物の種類や建ぺい率・容積率に応じて、13種類の用途地域が存在します。
Q:用途地域の種類は?
A:13種類の用途地域は、「住居系」「商業系」「工業系」の3つに大別でき、それぞれ良好な住居環境の実現、商業的な利便性の確保、工業的な利便性の確保を目的としています。
Q:非線引き白地地域とは?
A:都市計画区域内のうち、用途地域が指定されていないエリアのことです。非線引き白地地域については、用途地域とは異なる自治体独自の制限が設けられています。
●関連コラムはこちら
≫ 建築基準法における42条2項道路とは?必要なセットバックと実施する際の注意点
≫ 建築基準法における6つの道路種別を分かりやすく解説
この記事を監修した人
岩納 年成(一級建築士)
大手ゼネコン会社にて、官公庁工事やスタジアム、免震ビル等の工事管理業務を約4年経験。その後、大手ハウスメーカーにて注文住宅の商談・プランニング・資金計画などの経験を経て、木造の高級注文住宅を主とするビルダーを設立。
土地の目利きや打合せ、プランニング、資金計画、詳細設計、工事統括監理など完成まで一貫した品質管理を遂行し、多数のオーダー住宅を手掛け、住まいづくりの経験は20年以上。法人の技術顧問アドバイザーとしても活動しながら、これまでの経験を生かし個人の住まいコンサルテイングサービスも行っている。