電気工事士になるには?第一種・第二種電気工事士の違いと独学で取得する場合の勉強方法を解説
電気工事はどんな建物にも欠かせない必須のプロセスです。工事には専門的な技能が求められるため、きちんとスキルや知識を身につければ、建築分野におけるキャリアを大きく開拓することにつながります。
今回は電気工事の専門資格である「電気工事士」について、主な仕事内容や取得するメリット、第一種と第二種の違いについて見ていきましょう。また、独学で取得する場合の流れや勉強方法もご紹介します。
目次[非表示]
- 1.電気工事士の仕事内容
- 1.1.電気工事の独占業務
- 1.2.建築電気工事の主な作業内容
- 2.第一種と第二種の違いは?電気工事士の資格の種類
- 2.1.第二種電気工事士が扱える工事の範囲
- 2.2.第一種電気工事士が扱える工事の範囲
- 3.電気工事士の資格を取得するメリット
- 3.1.幅広い需要がある
- 3.2.学歴・年齢・職歴を問わず誰でも受験可能
- 3.3.比較的に資格を維持しやすい
- 4.電気工事士になるための独学での勉強方法
- 4.1.試験の概要
- 4.2.独学でも十分に合格を狙える
- 4.3.合格後の手続き
電気工事士の仕事内容
「電気工事士」とは、電気設備の工事や取り扱いに関する作業を行うための国家資格です。ここではまず、電気工事士の仕事内容について見ていきましょう。
電気工事の独占業務
「電気工事法」では電気工事の欠陥による災害を防ぐために、「軽微な工事」を除いた電気工事については、電気工事士にしか従事することができないとされています。一般用電気工作物、小規模事業用電気工作物および500kW未満の需要設備である自家用電気工作物の電気工事については、その種類ごとに資格を持つ人が作業を行わなければなりません。
そのため、電気工事士は代表的な業務独占資格の一つとして扱われています。電気工事士の主な仕事内容は、「建築電気工事」と「鉄道電気工事」の2つに分けることができますが、ここでは建築電気工事について詳しくご紹介します。
建築電気工事の主な作業内容
建築電気工事では、住宅やオフィス、ビルなどのさまざまな建設物において、電気設備の設計・施工を行います。主な作業内容としては、建物に電気を送り込むための「外線配線工事」、建物内の配線、設計・管理を行う「屋内配線工事」、「冷暖房設備工事」などが挙げられます。
また、既存の電気設備の保守・点検を行う「ビルメンテナンス」も代表的な業務の一つです。
第一種と第二種の違いは?電気工事士の資格の種類
電気工事士には、第一種と第二種の資格が設けられており、それぞれに扱える工事の範囲が異なります。ここでは、第一種と第二種の特徴についてご紹介します。
第二種電気工事士が扱える工事の範囲
電気工事法および電気工事法施行令第1条では、「電気工事のうち軽微な作業」と「電気工事に該当しない軽微な工事」に含まれない電気工事を行うには、電気工事士の資格が必要とされています。
600ボルト以下の低圧で受電できる電気設備である「一般用電気工作物」や、500kW未満の「小規模事業用電気工作物」の工事は、少なくとも第二種電気工事士以上の資格がなければ扱えません。これらには、たとえば「一般住宅」や「小規模な商店」における電気設備の工事が該当します。
(出典:経済産業省『電気工事士等資格が不要な「軽微な工事」とは』)
第一種電気工事士が扱える工事の範囲
第一種電気工事士は、第二種電気工事士が従事できる業務に加えて、ビルや工場などの「自家用電気工作物」(500kW未満の需要設備)の電気工事を行うことができます。多くの電気工事を行える独占資格であり、建設現場における需要も安定しているのが特徴です。
ただし、「ネオン工事」や「非常用予備発電装置工事」などの特殊電気工事を行うには、経済産業省による「特殊電気工事資格者」の認定を受けなければなりません。特殊電気工事資格者は、いずれも電気工事士の免状が公布されてから実務経験を積み、所定の講習課程を修了する、あるいは経済産業大臣が定める判定試験に合格することが要件となっています。
電気工事士の資格を取得するメリット
電気工事士はこれからキャリア形成を行う方にとって、さまざまな魅力を持つ国家資格です。ここでは、電気工事士の資格を取得するメリットを3つご紹介します。
幅広い需要がある
経済産業省が公表している「自家用電気工作物設置件数全国計(2020)」によれば、自家用電気工作物は約92万件あるとされています。そのうち、工事に第一種電気工事士の資格が必要になる自家用電気工作物(最大電力500kW未満)は、全体の90.5%にあたる約83万件です。
ほとんどの電気工事に第一種電気工事士の資格が必要であり、自家用電気工作物の設置件数は年々増加傾向にあることから、幅広い活躍が期待できるのが大きなメリットです。
(出典:経済産業省『自家用電気工作物設置件数全国計』)
学歴・年齢・職歴を問わず誰でも受験可能
電気工事士試験には、受験資格がありません。国籍・学歴・職歴・年齢などを問わず、誰でも受験が可能であるため、幅広い方にチャンスがあるのが特徴です。
第一種電気工事士の試験そのものは誰でも受けることができますが、免状を取得するためには一定の実務経験が必要となります。そのため、まずはすぐ実務を積める第二種電気工事士を取得し、そこからステップアップを目指すのが一般的です。
比較的に資格を維持しやすい
第二種電気工事士の資格には有効期限がありません。そのため、一度取得をすれば、長期にわたって活用できるのがメリットです。
ただし、第一種電気工事士は、5年おきに講習の受講が必要となります。免除については特に更新制度はありませんが、交付を受けた日から5年以内に経済産業大臣の指定する者が行う定期講習を受けなければ、義務違反として返納を命じられてしまう可能性があります。
講習そのものは一日あれば受けることができ、全国47都道府県で開催されているので、決してハードルは高くありません。オンラインによる受講も可能なため、スケジュール調整がしやすく、資格を維持する負担が小さいのもメリットといえるでしょう。
電気工事士になるための独学での勉強方法
電気工事士になるためには、まず第二種電気工事士を取得し、実務経験を積んだうえで第一種電気工事士の取得にチャレンジするのが一般的です。ここでは、試験の概要と独学での勉強方法について見ていきましょう。
試験の概要
電気工事士の試験は、第一種も第二種も「学科試験」と「技能試験」の2段階方式で行われ、年2回受験することができます。学科試験については、マークシートに記入する筆記方式、あるいはパソコンで解答するCBT方式を選択でき、問題はすべて四肢択一方式です。
第二種電気工事士の学科試験については、高等学校・高等専門学校・大学で経済産業省令によって定められた電気工学の課程を修めた卒業者、その他一定の条件を満たした方と、前回の学科試験の合格者を対象に、免除制度が設けられています。また、第一種電気工事士については、電気主任技術者免状の交付を受けている方と前回の学科試験の合格者が免除の対象です。
技能試験は作業用工具を持参し、支給された材料を用いて、配線図で与えられた問題を時間内に完成させる方式で行われます。
独学でも十分に合格を狙える
電気工事士はメジャーな資格であり、アプリやテキストなどの学習教材が豊富にそろっているので、独学でも十分に合格を狙えます。第一種も第二種も学科合格率は例年50~60%程度となっているので、試験までの学習計画を立て、参考書や過去問題集に繰り返し当たれば合格は可能です。
電気工事士は所定の課程を修めた学生が受けることも多いですが、仕事をしながら受験をする方も決して少なくありません。スキマ時間を有効活用して、着実に勉強を続けていくことが合格のポイントです。
ただし、電気工作などの経験がない方は、技能試験の対策につまずいてしまう可能性があります。技能試験の候補問題は、あらかじめ公表されているので、一通り製作したうえでポイントをつかんでおくことが大切です。
必要な材料は市販されており、Webでも購入が可能です。本番で焦ってしまわないためにも、実際に手を動かしながら時間内で完成させる経験を重ねていきましょう。
また、独学では難しいという場合には、講習会などに参加するのも一つの方法です。
合格後の手続き
最後に、電気工事士試験の合格後に必要な手続きについて確認しておきましょう。第二種電気工事士に合格した後は、管轄の都道府県知事あるいは事務を委託された電気工事工業組合に免状の交付を申請する必要があります。
第一種電気工事士についても基本的な手続きは同じですが、申請時に「実務経験証明書」を添付しなければなりません。免状を取得するには、試験の合格だけでなく「3年以上の実務経験」が必要となるため、工事を行った会社や団体の代表者に証明書を発行してもらう必要があります。
実務経験については、「第二種電気工事士として経験を積む」「第一種電気工事士の試験合格後に認定電気工事従事者として経験を積む」「電気主任技術者の資格を取って事業用電気工作物の工事や保安業務に就く」「電気主任技術者がいる施設で事業用電気工作物の工事に従事する」といった方法で習得するのが一般的です。自身の環境やキャリアプランに合わせて、最適な選択肢を探ってみましょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q: 電気工事士の仕事内容は?
A:電気工事の多くは、電気工事士にしかできない独占業務となっています。電気工事士の仕事は、「建築電気工事」と「鉄道電気工事」の2つに大別でき、それぞれに幅広い業務が存在しています。
Q:第一種電気工事士と第二種電気工事士の違いは?
A:第二種電気工事士と比べて、第一種電気工事士は扱える業務範囲が広がります。国内における電気工事の多くは、第一種電気工事士にしか扱えないものとされているため、第一種を取得することで仕事の幅を大きく広げられます。
Q:電気工事士は独学でも合格できる?
A:学科試験については、参考書や過去問題集を繰り返し学習することで、独学でも十分に合格が狙えます。技能試験についても公表されている候補問題に触れ、実際に製作を行うことで独学でも対応は可能ですが、不安な方は講習会などに参加してみるのも一つの方法です。
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