建築・施工管理

隣地境界線とは?確認方法と建築時に隣地境界線のトラブルを回避する方法

隣地境界線とは?確認方法と建築時に隣地境界線のトラブルを回避する方法

土地に建物を建てる際は、トラブルを避けるために「どこまでが自身の土地なのか」を明確化しておく必要があります。土地に関する権利を行使するうえで、「隣地境界線」は必ず確認しておかなければならない項目の一つです。

この記事では、隣地境界線に関する基本的なルールと確認方法について解説します。また、隣地境界線に関するトラブル事例をチェックしながら、予防するためのポイントも見ていきましょう。

目次[非表示]

  1. 1.隣地境界線とは
    1. 1.1.隣地境界線の重要性
    2. 1.2.隣地境界線に関する主なルール
  2. 2.隣地境界線を確認する方法
    1. 2.1.境界確認の書面をチェックする
    2. 2.2.現地で境界標を確認する
    3. 2.3.地積測量図を取得する
    4. 2.4.筆界特定制度を利用する
    5. 2.5.土地家屋調査士に測量してもらう
  3. 3.道路境界線と敷地境界線についても押さえておこう
    1. 3.1.道路境界線とは
    2. 3.2.敷地境界線とは
  4. 4.隣地境界線で起こりやすいトラブル
    1. 4.1.工事で境界標がずれた
    2. 4.2.自然災害で境界標が消失した
    3. 4.3.建物が隣地に越境してしまった
  5. 5.隣地境界線のトラブルを回避する方法

隣地境界線とは

「隣地境界線」とは、隣り合った土地同士の境目を表わす線のことです。ここではまず、隣地境界線に関する基本的なポイントについて見ていきましょう。

隣地境界線の重要性

隣地境界線は、隣地との境界に設置された境界杭や境界標を目印に判断するのが一般的ですが、必ずしもこれらが設置されているとは限りません。垣根や塀によって区切られている場合もあるほか、相続などで土地を取得した際には、そもそも目に見える境界線がないケースもあります。

しかし、隣地境界線には法的な効力があり、法律で定められたさまざまなルールに関係しています。不明瞭な状態で権利を行使すれば、法律に抵触する可能性があるので注意が必要です。

隣地境界線に関する主なルール

民法第234条では、「建物を築造するには、境界線から50cm以上の距離を保たなければならない」と定められています。さらに、続く第2項では、違反した場合には、隣地の所有者が建築の中止・変更、損害賠償請求を行えるとされています。

つまり、隣地境界線があいまいなまま建物を建てれば、大きなトラブルに発展する可能性があるということです。また、建築基準法第63条では、「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる」と規定されています。

外壁の位置によって建物の面積が決まってしまうため、こちらも設計全体に関わる重要なルールといえるでしょう。

(出典:e-Gov法令検索『民法第234条』)
(出典:e-Gov法令検索『建築基準法第63条』)

隣地境界線を確認する方法

隣地境界線の確認方法にはさまざまなアプローチがあります。ここでは、5つのパターンについて、それぞれの方法やポイントをご紹介します。

境界確認の書面をチェックする

元の所有者が境界確認書や境界確定図などの書類を作成している場合は、書面をチェックすれば隣地境界線を把握することができます。境界確認書を作成するには、隣地の所有者や役所の担当者、土地家屋調査士に立ち合ってもらい、双方が納得したうえで署名・押印をする必要があります。

境界確認書がある時点で、隣地の所有者との合意を図れていることが分かるため、スムーズに隣地境界線をチェックできるでしょう。ただし、境界確認書は法律で義務付けられた書類ではないため、作成されていないケースも少なくありません。

現地で境界標を確認する

土地に境界標がある場合は、それを目印に確認することができます。写真やデータのみで判断するのではなく、必ず現地に足を運び、境界標が簡単に移動しないかどうかも含めてチェックしましょう。

そのうえで、境界確認書がなく、境界標のような目印もない土地では、次にご紹介する3つのアプローチが考えられます。

地積測量図を取得する

もっとも手軽なのは、法務局で「地積測量図」を取得する方法です。地積測量図とは、土地の面積や境界線に関する項目が記載された図面のことです。

最寄りの法務局に足を運んで取得できるほか、インターネットや郵送でも入手でき、費用も数百円程度なので、まずは地積測量図の取得が第一の選択肢となります。しかし、古い測量図には記載項目に誤りがある場合もあり、正確なデータが取得できないケースもあります。

地積測量に関する法律はたびたび改正されているため、古いものであればあるほど、信頼性が損なわれてしまうのが実情です。また、古い土地を相続した場合などでは、そもそも地積測量図がないケースもあります。

現行のルールが適用されているのは、「平成17年(2005)3月7日以降」のものであるため、それ以前の場合は改めて測量を実施するなどの方法を考えるほうが無難といえます。

筆界特定制度を利用する

「筆界特定制度」とは、土地の所有者の申請により、法務局が主体となって境界を特定する制度のことです、具体的には、法務局の筆界特定登記官が、外部の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえながら、実地調査や測量などを行ったうえで筆界を明らかにします。

結果が分かるまでには半年から1年程度の期間がかかりますが、法務局による公的な判断が得られるため、隣地の所有者の協力が得られなくても筆界を明確化できるのがメリットです。筆界は土地の所有権を特定するものではないため、隣地の所有者が納得しない場合は、後から裁判を起こせる余地があります。

しかし、結果の信頼性が高いため、筆界が境界確定訴訟で変更される可能性は少ないとされています。

(出典:法務省『筆界特定制度』)

土地家屋調査士に測量してもらう

隣地所有者の協力が得られる場合は、土地家屋調査士に測量を依頼し、確定測量を行ってもらうのが効果的です。土地の面積や形、境界線を正確に把握することができ、作成された図面は不動産売買などでも使用できるほどの信用性を持ちます。

測量には数十万円単位の費用がかかり、結果が出るまでには3~4ヶ月程度を要するため、依頼する場合は予算やスケジュールを正確に把握しておくことが大切です。

道路境界線と敷地境界線についても押さえておこう

土地の境界線は隣地境界線以外にも、「道路境界線」と「敷地境界線」と呼ばれるものがあります。ここでは、それぞれの違いについてご紹介します。

道路境界線とは

道路境界線とは、土地と土地に接した道路との境界線のことです。道路境界線に私道は含まれないため、境界線の外側は公道ということになります。

そのため、当然ながら道路境界線をはみ出して建物を建てることはできません。そのうえで、道路境界線は敷地境界線と異なり、状況によって変動する可能性があります。

原則として、接した道路の幅が4m未満である場合には新たに建物を建てることができないため、道路境界線を内側に移動させて法に適合させるケースが存在します。これを「セットバック」と呼び、敷地や建てられる建物の広さが狭くなるため注意が必要です。

敷地境界線とは

敷地境界線とは、敷地の外周を囲んだ境界線のことです。隣地・道路・河川・公園などと、隣接地の種類にかかわらず、単に自分の土地と外部の敷地との境目を表した言葉です。

そのため、敷地境界線の一部に、隣地境界線や道路境界線も含まれていると捉えるのが正確といえます。

隣地境界線で起こりやすいトラブル

隣地境界線は土地の権利に関する重要な要素であることから、トラブルの原因になるケースもあります。ここでは、境界線に関してよくあるトラブルについて見ていきましょう。

工事で境界標がずれた

境界標はきちんと固定しておくのが前提ですが、工事などによってまれに動いてしまうケースがあります。この場合、境界標を目視で確認しただけでは正しい位置が分からず、後から大きなトラブルにつながるリスクが発生します。

自然災害で境界標が消失した

長らく無人になっていた土地では、過去の自然災害などで境界標がなくなってしまっている場合もあります。あまり管理されていなかった土地を相続した場合などでは、境界があいまいになっているケースもあるため、権利の取得時にきちんと調査をする必要があります。

建物が隣地に越境してしまった

不正確な境界線をもとに工事をした結果、建物が隣地にはみ出してしまったというケースも代表的なトラブル事例です。先にも述べたように、建築時には境界線から50cm以上の距離を保たなければならないとされており、違反すれば隣地の所有者から建築中止や変更を求められる可能性があります。

また、すでに建物が完成している場合は、損害賠償請求に応じなければならないリスクもあります。たとえば、庇や屋根の一部、樹木、給排水管などが越境してしまうことは決してめずらしくはありません。

建築の中止や損害賠償に発展すれば、多額の損失が生まれてしまうので注意が必要です。

隣地境界線のトラブルを回避する方法

隣地境界線を巡るトラブルを回避するには、正確に作成された地積測量図と照らし合わせて、すべての境界線が正しく設置されているかを確認しておくことが大切です。万が一境界標がずれていたり、なくなっていたりする場合には、速やかに専門家に相談して、隣地とのコミュニケーションを図りましょう。

なお、地域によっては、隣地との距離に異なる基準が適用されている場合があります。無用なトラブルを避けるためにも、地域特有のルールも含めてあらかじめチェックしておくことが重要です。

●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:隣地境界線とは?
A:
隣り合った土地との境界線を示すラインであり、隣地境界線には法的な効力があります。隣地境界線があいまいなまま建物を建てれば、建築の中止や変更、損害賠償を求められるリスクもあるので注意が必要です。

Q:隣地境界線の調べ方は?
A:
境界確認書や地積測量図がある場合は、書類の内容をチェックすれば隣地境界線を調べることができます。ただし、古い地積測量図は内容に誤りがある場合もあるため、作成された日付も含めて確認することが重要です。「これらの書類がない」「内容に信頼性がない」場合は、土地家屋調査士に測量を依頼するのが一般的です。


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編集部
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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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