【建築設備士の資格取得】建築設備士とは?仕事内容・資格難易度・勉強方法を解説
建築設備士は、その名のとおり建築設備に関する広範な知識やスキルを備えたスペシャリストです。建築設備はすべての建物に備わっていることから、建築に関わる資格のなかでも、特に活躍の機会が多い資格といえます。
今回は建築設備士の主な仕事内容と資格の難易度、試験に合格するための勉強方法などをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.建築設備士とは
- 2.建築設備士の仕事内容
- 3.建築設備士の資格を取得するメリット
- 3.1.1.建築設備の専門家として信頼を得やすい
- 3.2.2.ほかの資格への足がかりになる
- 4.建築設備士試験の難易度は?
- 4.1.建築設備士の受験資格
- 4.2.建築設備士試験の出題範囲
- 4.3.建築設備士試験の難易度
- 5.建築設備士になるための勉強方法
建築設備士とは
建築設備士とは、空調・換気・給排水などの建築設備全般に関する知識や技術を備えた有資格者のことです。建築士法に基づく国家資格であり、設備の設計や施工、保守・監理を行ったり、建築士に対して建築設備についての設計や工事監理のアドバイスをしたりするのがおもな役割です。
一口に設備といっても、空調設備や換気設備、給排水設備、衛生設備、電気設備、エレベーターなどの昇降機設備など、その種類は多岐にわたります。また、エネルギー効率や環境負荷といった分野にも精通している必要があり、そうした意味でも設備に関するスペシャリストといえる存在です。
特に近年では、建物の省エネ性能に対する関心が国際的にも高まっており、建築設備士の重要性が増しているといえるでしょう。
建築設備士の仕事内容
建築設備士のおもな仕事内容は、建築設備の計画・設計、工事監理です。また、設備の分野における建築士への助言行為も重要な業務の一つです。
建築設備士のアドバイスによって建築士が設備の設計・工事監理を行った場合には、建築確認申請書などにその旨を記載しなければなりません。また、建築士事務所が施主から設計などの委託を受けた際、施主に交付する書面には、業務に従事する建築設備士の氏名を記載する必要があります。
建築設備士には建築士のように独占業務が設定されているわけではありませんが、書類に氏名の記載が求められるシーンも多いことから、取得者が重宝される場面も十分にあるといえます。
建築設備士の資格を取得するメリット
建築設備士を取得するメリットには、大きく分けて2つのポイントがあります。
1.建築設備の専門家として信頼を得やすい
一つ目のメリットは、建築設備に関する専門家として信頼を得られる点にあります。建築設備は、建物の安全性や快適性を左右する重要な分野であり、設計において欠かせないポイントです。
また、大規模な建築物になれば設備設計も複雑になるため、より高度な専門知識が求められます。設備の専門家である建築設備士は、こうした建設工事において幅広く重宝される職業といえるでしょう。実際のところ、建設会社や設備を取り扱うメーカーでは一定の手当を支給するケースも多い資格です。
2.ほかの資格への足がかりになる
建築設備士の資格を取得することで、ほかの資格にも挑戦しやすくなるのも重要なメリットです。建築設備士の資格がそのまま活かせる代表的な資格が建築士です。
建築系の学歴がない方が二級建築士や木造建築士の試験を受けるためには、7年以上の実務経験が必要となります。しかし、建築設備士の資格を持っていれば、これらの要件を問われずに受験資格が得られます。
さらに、建築設備士として4年以上の実務経験を積んでいれば、そのまま一級建築士の受験が可能です。そのうえで、一級建築士の資格を取得すれば、さらに上位資格にあたる「設備設計一級建築士」を目指すこともできます。設備設計一級建築士は特に希少性が高い資格であることから、取得できれば競合他社との明確な差別化が実現できるでしょう。
建築設備士試験の難易度は?
建築設備士になるには、建築設備士試験に合格する必要があります。試験実施団体が公表している情報を基に、受験資格や試験の概要、難易度について解説します。
建築設備士の受験資格
建築設備士の受験資格には、大きく分けて「所定の学歴+実務」「所定の資格+実務」「実務のみ」の3つのパターンがあります。学歴と実務で受験資格をクリアする場合には、最終卒業学校に応じて以下の実務経験が必要となります。
▼学歴+実務でクリアする場合
最終卒業学校(建築に関する所定の課程) |
卒業後実務経験年数 |
---|---|
大学 |
2年以上 |
短期大学・高等専門学校・旧専門学校 |
4年以上 |
高等学校 |
6年以上 |
■専修学校(専門課程) 修業年限4年以上、かつ120単位以上の修了 |
2年以上 |
■専修学校(専門課程) 修業年限2年以上、かつ60単位以上の修了 学歴・資格等なし |
4年以上 |
■専修学校(専門課程) 上記2パターン以外の専修学校(専門課程) |
6年以上 |
・職業能力開発総合大学校または職業能力開発大学校(総合課程、応用課程または長期課程) ・職業訓練大学校(長期指導員訓練課程または長期課程) |
2年以上 |
・職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校または職業能力開発短期大学校(特定専門課程または専門課程) ・職業訓練短期大学校(特別高等訓練課程、専門訓練課程または専門課程) |
4年以上 |
・高等学校を卒業した後、職業訓練施設(職業訓練短期大学校を除く) (高等訓練課程、普通訓練課程または普通課程) |
6年以上 |
資格と実務経験の組み合わせでクリアする場合には、以下の資格と「2年以上の通算実務経験年数」が必要となります。なお、資格と合わせて求められる実務経験は、「資格取得後ではなく前後通算可能」となっているのが特徴です。
▼資格+実務でクリアする場合
以下の資格に加えて2年以上の通算実務経験が必要 |
・一級建築士 |
建築設備士の試験は、実務経験のみで受けることも可能です。
▼実務のみでクリアする場合
・建築設備に関する実務経験9年以上が必要 |
なお、実務経験として認められるものには、以下のような業務・研究が挙げられます。
▼実務経験として認められるもの
・設計事務所、設備工事会社、建設会社、維持管理会社等での建築設備の設計・工事監理 (その補助を含む)、施工管理、積算、維持管理(保全、改修を伴うものに限る)の業務 |
建築物の設計や工事監理を行っていても、建築設備に関する業務に直接携わっていない場合は、実務経験として認められません。また、建築設備に関わっていても、作業員としての単純労働は実務経験とみなされないため注意しましょう。
建築設備士試験の出題範囲
建築設備士試験は、学科と設計製図の2つの区分から構成されています。建築に関する基本的な知識と関連法規、設備に関する幅広い知識が問われる試験となっており、設計製図では実践的なスキルも求められます。
▼学科試験の出題範囲
建築一般知識 |
建築計画、建築一般構造、建築材料、建築施工、環境工学、構造力学 |
建築法規 |
建築士法、建築基準法、その他関連法規 |
建築設備 |
建築設備設計計画、建築設備施工 |
▼設計製図試験の出題範囲
建築設備基本計画(必須科目) |
建築設備に関する基本計画の作成 |
建築設備基本設計製図(選択科目 |
空調・換気設備、給排水衛生設備、 電気設備のうち、任意の分野における建築設備設計製図の作成 |
建築設備士試験の難易度
建築設備士試験を扱う「公益財団法人建築技術教育普及センター」のデータによれば、建築設備士試験の過去5年(令和元年~令和5年)の総合合格率はいずれも20%以下となっており、やや難関であることが分かります。受験者のすべてが一定以上の学歴や実務経験を持っていることを考えると、試験に向けた本格的な学習や対策を行わなければ、合格は難しい資格と考えられるでしょう。
建築設備士になるための勉強方法
最後に、建築設備士試験の勉強方法について見ていきましょう。
一次試験対策
一次試験対策としては建築一般知識、建築法規、建築設備の3つの分野について学習する必要があります。原則として、最低合格基準は建築一般知識30問中13点、建築法規は20問中9点、建築設備は50問中30点以上とされており、全体では70点以上の取得が合格の目安となります。
そのため、やはり建築設備に関する対策を重点的に行わなければなりません。また、建築一般知識や建築法規は、建築士などの試験でも問われる観点であるため、キャリアアップを踏まえてじっくりと取り組みたい分野です。
いずれの分野においても、参考書で基本的な知識を身につけたら、過去問を繰り返し解いて解法や出題傾向をつかんでいくのがコツです。
二次試験対策
二次試験では実践的なスキルが問われるため、独学で高得点を目指すのはやや難しい面があります。効率的に合格を目指すのであれば、資格取得を専門に扱うスクールでの講義や、「一般社団法人日本設備設計事務所協会連合会」と「一般社団法人電気設備学会」が共同で主催する公式講習会を受講するのがおすすめです。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:木造建築士とは?
A:建築設備士とは、建築設備全般に関する知識や技術を備えた有資格者のことです。建築士法に基づく国家資格であり、設備の設計や施工、保守・監理を行ったり、建築士に対して建築設備についての設計や工事監理のアドバイスをしたりするのがおもな役割です。
Q:建築設備士をとるメリットは?
A:建築設備に関する知識やスキルは需要が高く、さまざまな現場で必要とされる存在になり得ます。また、一級建築士や設備設計一級建築士の受験資格にも関係しているため、前向きなキャリア形成にもつながります。
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