<新着>隣地境界線をめぐるトラブルどうすればいい?裁判なしで解決できる「筆界特定制度」について解説!
目次[非表示]
- 1.隣地境界線とは
- 1.1.(1)筆界と所有権界の違い
- 1.2.(2)隣地境界線、敷地境界線、道路境界線の違い
- 2.隣地境界線に関するルール
- 3.隣地境界線に関するルールに違反した場合
- 3.1.(1)建築の差し止めや変更
- 3.2.(2)損害賠償義務
- 4.隣地境界線を特定できる「筆界特定制度」
- 4.1.(1)「筆界特定制度」の概要
- 4.2.(2)筆界特定のメリット
- 4.3.(3)筆界特定の申請方法
- 5.執筆者
隣地境界線とは
隣地境界線とは、隣接する土地の所有者同士が共有する土地の境界を指します。この境界線は、土地の権利や管理において非常に重要な役割を果たしています。境界線に関する理解を深めるためには、以下のようなポイントを押さえる必要があります。
(1)筆界と所有権界の違い
筆界は土地の公法上の境界を指し、土地が法務局に初めて登記されたときに、その土地の範囲を区画するものとして定められています。一方、所有権界は、土地の所有者の権利が及ぶ範囲を区切る境界を指します。
所有権界は土地の所有者間で自由に移動させることができます。筆界と所有権界は一致するのが通常ですが、土地の一部についてほかの方に譲り渡したり、ほかの方が時効によって所有権を取得したりした場合には、筆界と所有権界が一致しないこともあります。
筆界と所有権界の2つが一致しない場合には、紛争が生じることがあります。
(2)隣地境界線、敷地境界線、道路境界線の違い
隣地境界線は隣接する土地同士の境界を指し、敷地境界線は建物や構造物が設置されている敷地の範囲を示します。また、道路境界線は公共の道路と私有地との境界を示します。それぞれの役割が異なるため、正確に理解することが必要です。
隣地境界線を明確にすることは、土地所有者間のトラブルを防ぐうえで重要です。
隣地境界線に関するルール
隣地境界線に関しては、以下のような法律や規則が適用されます。これらのルールを守ることで、土地所有者間のトラブルを未然に防ぐことができます。
(1)建物と隣地境界線との距離に関するルール
建築基準法では、建物と隣地境界線との間に一定の距離を保つことが求められています。この距離は、地域の用途地域や建物の種類によって異なります。たとえば、一般的な住宅地では、建物を境界から50cm以上離す必要があります。
(2)塀やフェンスと隣地境界線に関するルール
塀やフェンスを設置する際にも、隣地との境界線から一定の距離を保つ必要があります。また、塀の高さや構造にも規制がある場合があります。これに違反すると、隣地の所有者から違反状態を是正するように請求される可能性があります。
これらのルールを守ることで、土地所有者間の信頼関係を維持することができます。
隣地境界線に関するルールに違反した場合
隣地境界線に関するルールに違反した場合、以下のような法的な問題が発生する可能性があります。
(1)建築の差し止めや変更
境界線に違反して建築物が設置された場合、隣地所有者は裁判所に差し止めや変更を請求することができます。裁判所がこれを認めた場合、違法な建築物を取り壊す必要が生じる場合もあります。
(2)損害賠償義務
境界線違反によって隣地所有者に損害が発生した場合、違反者は損害賠償を求められる可能性があります。損害額は、侵害された相手の所有地の面積や、日照り・風通しが遮られた度合いなどによって算定されることになります。
これらのリスクを避けるためには、境界線に関するルールを遵守し、必要に応じて専門家の助言を求めることが重要です。
隣地境界線を特定できる「筆界特定制度」
隣地境界線をめぐるトラブルを解決するための方法として、「筆界特定制度」があります。
この制度を利用することで、裁判を経ずに境界線を明確にすることが可能です。
(1)「筆界特定制度」の概要
筆界特定制度とは、土地の所有者の申請に基づいて、筆界特定登記官が、専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における土地の筆界の位置を特定する制度です。
筆界特定とは、新たに筆界を決めることではなく、実地調査や測量を含むさまざまな調査を行ったうえで、過去に定められたもともとの筆界を筆界特定登記官が明らかにすることです。
(2)筆界特定のメリット
土地の筆界をめぐる問題が生じたときには、裁判(筆界確定訴訟)によって筆界を明らかにするという方法もありますが、その場合、筆界を明らかにするための資料の収集は、所有者自身が行わなければなりません。
他方、筆界特定制度を活用することによって、公的な判断として筆界を明らかにできるため、隣地所有者同士で裁判をしなくても、筆界をめぐる問題の解決を図ることができるため、費用の負担も少なく済みます。また、当事者の資料収集の負担も軽減されるというメリットもあります。
さらに、民間の専門家の意見を踏まえた判断であり、証拠価値が高いことから、土地の筆界に関する問題の解決やトラブル防止を図ることが期待できます。
(3)筆界特定の申請方法
筆界特定を利用するためには、土地の所有者または利害関係者が法務局に申請を行います。申請には、土地の登記情報や地図、公図などの資料が必要です。申請後、法務局が調査を行い、筆界を特定します。
詳細は以下の政府広報オンラインおよび法務局のウェブサイトをご参照ください。
- 政府広報オンライン「土地の境界トラブルを裁判なしで解決を図る『筆界特定制度』」
- 法務省「筆界特定手続の流れ」
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:隣地境界線をめぐるトラブルを解決するために「筆界特定制度」とはどのような制度ですか?
A:筆界特定制度とは、隣地境界線をめぐるトラブルを裁判なしで解決するための手続きです。土地の所有者が法務局に申請を行い、筆界特定登記官が専門家の意見を踏まえて、土地の筆界を特定します。この制度は、過去に定められた筆界を調査し、明確にするもので、裁判よりも費用負担が少なく、資料収集の負担が軽減されるメリットがあります。
Q:隣地境界線のルールに違反した場合に生じるリスクは何ですか?
A:隣地境界線のルールに違反した場合、建築物の差し止めや変更、損害賠償義務が発生する可能性があります。たとえば、境界線に違反して建築物が設置された場合、隣地所有者が裁判所に差し止めや変更を請求できるほか、損害が発生した場合には賠償義務を負います。これらのリスクを回避するためには、境界線に関する法律や規則を遵守し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
●関連コラムはこちら
≫ 隣地境界線とは?確認方法と建築時に隣地境界線のトラブルを回避する方法
≫ 土地の越境物には“覚書”が重要! 記載内容を紹介
執筆者
弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)
単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。