建築・施工管理

コンクリート技士とは?仕事内容・試験概要・取得するメリットについて分かりやすく解説

コンクリート技士とは?仕事内容・試験概要・取得するメリットについて分かりやすく解説

コンクリートは建設・土木の分野で欠かせない材料の一つであり、高層ビルから公共施設、インフラ設備まで幅広い工事に使用されています。コンクリートに関する専門性を高めれば、自身のキャリアを確立するうえで有力な武器となるでしょう。

今回はコンクリートにおける代表的な資格として、「コンクリート技士」をご紹介します。仕事内容や試験の概要、資格を取得するメリットについて詳しく見ていきましょう。

目次[非表示]

  1. 1.コンクリート技士とは
  2. 2.コンクリート技士の仕事内容
    1. 2.1.コンクリートの製造
    2. 2.2.コンクリート施工の品質管理
    3. 2.3.生コンクリートの試験
  3. 3.コンクリート技士の資格を取得する3つのメリット
    1. 3.1.コンクリートに関するスキルや専門性を証明できる
    2. 3.2.収入アップにつながる
    3. 3.3.キャリアアップの足がかりになる
  4. 4.コンクリート技士の試験概要
    1. 4.1.受験資格
      1. 4.1.1.■受験資格が認められる資格
      2. 4.1.2.■実務経験による受験資格
      3. 4.1.3.​​​​​​​■学歴による受験資格
    2. 4.2.科目・出題範囲
    3. 4.3.その他の情報
  5. 5.コンクリート技士に関連した資格との違い
    1. 5.1.コンクリート主任技士
    2. 5.2.コンクリート診断士

コンクリート技士とは

「コンクリート技士」とは、「公益社団法人日本コンクリート工学会」が認定する資格です。コンクリートの製造から施工・配合設計・検査・管理にいたるまで、コンクリートに関する幅広い業務を遂行する能力を保有していることが証明され、資格の取得者は、いわばコンクリートのプロフェッショナルとして仕事をすることができます。

コンクリートはビルやマンションなどの高層建築物はもちろん、ダムやトンネルなどの公共土木建造物、道路、船舶といった幅広い用途で活用されています。そのなかでも、特に生コンクリートを取り扱う現場でコンクリート技士の資格が必要とされ、多様な産業分野で重宝されるのが強みです。

(出典:公益社団法人日本コンクリート工学会

コンクリート技士の仕事内容

コンクリート技士の役割は、大きく3つに分けることができます。ここでは、コンクリート技士の主な仕事内容について見ていきましょう。

コンクリートの製造

コンクリート技士の重要な役割として、コンクリートそのものの製造が挙げられます。一口にコンクリートと言っても、用途によって求められる品質は異なり、強度やセメント比もバラバラです。

たとえば、一般構造用の「普通コンクリート」なら「セメント1:砂3:砂利6」の割合で配合されますが、超高層マンションなどではセメントを増やして強度を高めた「高強度コンクリート」が用いられます。また、ダムやプールなどの施工では、透水性を低減させた「水密コンクリート」が使われます。

このように、依頼内容に沿ったコンクリートを製造するためには、水や砂、砂利などの適切な配合を計算しなければなりません。さらに、コンクリートが用いられる場所の気候や土地の材料の状態なども考える必要があるため、製造には高度な専門性が求められます。

コンクリート施工の品質管理

建築や土木の現場では、コンクリート施工の打設や品質管理を担当するのもコンクリート技士の重要な役割です。調達されたコンクリートの品質が要望に適合しているかどうかをチェックしたり、施工後に問題がないかと確認したりと、コンクリートに関する知識を活かせる場面は少なくありません。

また、コンクリート施工には時間的な制約があるケースも多く、決められた条件で滞りなく作業を完了させるのにもコンクリート技士の視点やアドバイスが役立ちます。

生コンクリートの試験

上記のもの以外にコンクリート技士の知識が活かせる業務として、生コンクリートの試験が挙げられます。たとえば、コンクリートの代表的な試験には、凝固する前の流動性をチェックする「スランプ試験」があります。

スランプ値を確かめることで、打設作業の難易度や効率性が判定できるため、作業全体のスケジューリングを行う際に重要な試験です。そのほかにも、含有空気量を確認する「空気量試験」や、鉄筋コンクリートに使用する際の鉄筋腐食リスクをチェックする「塩化物含有量試験」、圧縮強度を調べる「強度試験」など、目的に応じたさまざまな試験があります。

それぞれ試験の方法や基準値には細かな規格が決められているため、いずれもコンクリート技士としての専門性が求められます。

コンクリート技士の資格を取得する3つのメリット

コンクリート技士の資格は、自身のキャリアを大きく広げてくれる武器になり得ます。ここでは、資格を取得するメリットを3つに分けてご紹介します。

コンクリートに関するスキルや専門性を証明できる

コンクリート技士の資格を取得するには、コンクリートに関する技術力や専門知識を身につけ、試験に合格する必要があります。試験対策を行う過程で、コンクリートに関する知識が身につくとともに、合格すれば一定以上のスキルを持っている証明にもなります。

収入アップにつながる

資格を取得する直接的なメリットとしては、収入や待遇の向上が期待できる点が挙げられます。職場によっては、コンクリート技士の資格取得者を対象に資格手当が支給されるケースもあります。

また、詳細は後述しますが、コンクリート技士の試験は合格率30%台と決して易しいものではありません。幅広い知識を体系的に習得する必要があるため、資格を持っていれば転職などにおいても有利に働きやすいといえるでしょう。

キャリアアップの足がかりになる

コンクリート技士は、さらなるキャリアアップの第一歩として活用できるのも特徴です。上位の資格であるコンクリート主任技士や、関連資格であるコンクリート診断士の試験では、コンクリート技士に合格していれば必要な実務経験が短縮されるなどの優遇措置が受けられます。

コンクリート技士の試験概要

コンクリート技士の試験概要として、ここでは2024年度に実施された試験をもとに、詳しい内容を見ていきましょう。

受験資格

コンクリート技士の受験資格は、「資格の保有」「実務経験」「学歴」の3種類に区分されています。

■受験資格が認められる資格

  • コンクリート診断士
  • 一級建築士
  • 技術士(建設部門)
  • 技術士(農業部門・農業農村工学)
  • 土木学会認定(特別上級・上級・1級)土木技術者
  • 建設コンサルタンツ協会認定RCCM(鋼構造およびコンクリート)
  • プレストレストコンクリート工学会認定コンクリート構造診断士
  • 1級土木施工管理技士または1級建築施工管理技士


■実務経験による受験資格

以下の業務において、コンクリート技術関係業務の実務経験3年以上

  • コンクリート構造物の計画・設計・施工・維持管理・解体・更新
  • コンクリート試験・研究・技術開発
  • レディーミクストコンクリートおよびコンクリート製品の製造
  • コンクリートの品質管理・施工管理
  • コンクリートに関する技術支援・コンサルタント


​​​​​​​■学歴による受験資格

<大学・短期大学・高等専門学校・高等学校卒業>

  • 特定科目(コンクリート工学・土木材料学・建築材料学・土木構造学・建築構造学・セメント化学・無機材料工学など)の履修
  • コンクリート技術関係業務における2年以上の実務経験


<大学院修了>

  • 大学または高等専門学校(専攻科)において特定科目(コンクリート工学・土木材料学・建築材料学・土木構造学・建築構造学・セメント化学・無機材料工学など)の履修
  • 大学院でコンクリートに関する研究を行っていた期間を実務経験とみなす


上記のように、コンクリート技士の試験を受けるには、基本的に実務経験が必要となるので注意が必要です。ただし、大学院修了者のみ、大学院での研究を実務経験とみなして受験をすることもできます。

科目・出題範囲

コンクリート技士の試験では、以下の項目に関する知識が求められます。

1.土木学会コンクリート標準示方書・日本建築学会建築工事標準仕様書・JASS5 鉄筋コンクリート工事
2.コンクリート用材料の品質・試験および管理
3.コンクリートの配合(調合)設計
4.コンクリートの試験
5.プラントの計画管理
6.コンクリートの製造および品質管理
7.コンクリートの施工
8.コンクリートに関わる環境問題
9.関係法令


コンクリートに関する基礎知識から、配合や試験、施工といった実務的な内容まで幅広く専門的な内容が問われるのが特徴です。

その他の情報

コンクリート技士の試験は全国各地で行われており、基本的には札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、沖縄の全国9ヶ所で行われます。受験料は、願書代金として1部税込み1,000円、受験そのものの費用が税込み1万2,100円で、合計1万3,100円です。

なお、2024年度の試験における合格率は「30.4%」となっています。原則として受験者の全員が実務経験を積んでいることを踏まえると、決して高い数値ではないといえるでしょう。

コンクリート技士に関連した資格との違い

先にも述べたように、コンクリート技士の資格を取得した後には、コンクリート主任技士やコンクリート診断士などの資格を目指すのも一つの方法です。ここでは、2つの資格について基本的な特徴と受験要件を見ていきましょう。

コンクリート主任技士

コンクリート主任技士は、コンクリート技士の上位に位置付けられる資格です。取得すれば、コンクリート技士のスキルに加え、さらに深い研究や指導などを実施できる能力を持っていることが証明されます。

試験の範囲はコンクリート技士と同様ですが、各論点についてより深い理解が求められるとともに、実務経験に基づいた小論文が加わるのが特徴です。合格率も10%台と低く、取得すれば希少性と専門性の高いスペシャリストとして活躍が期待できます。

コンクリート技士の資格を取得している場合は、取得後に2年以上の実務経験があれば受験することができます。

コンクリート診断士

コンクリート診断士は、コンクリートの品質や施工管理をチェックするだけでなく、すでに建設されている建築物の点検や維持管理を対象としているのが特徴です。民間資格でありながら、国土交通省の技術者資格登録制度に担当技術者として登録されており、高い信頼性のある資格といえます。

コンクリート診断士試験を受けるには、公益法人日本コンクリート学会が主催する「コンクリート診断士講習eラーニング」を受講し、さらに一定の資格保有や学歴、実務経験が必要となります。コンクリート技士も受験が認められる資格に含まれているため、合格後はキャリアを広げる選択肢として、コンクリート診断士試験への挑戦を考えてみるのもよいでしょう。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:コンクリート技士の仕事内容は?
A:
コンクリート技士の仕事は、主に「コンクリートの製造」「コンクリート施工・品質管理」「生コンクリートの試験」の3つに大別できます。いずれもコンクリートに関する深い知識が必要であり、建築・土木では重要性の高い役割です。

Q:コンクリート技士の資格を取得するメリットは?
A:
コンクリートに関する知識とスキルを客観的に証明でき、評価や収入の向上につながりやすくなるのがメリットです。また、上位資格であるコンクリート主任技士や、関連資格であるコンクリート診断士などに挑戦できる足がかりにもなります。


●関連コラムはこちら

 ≫ 建築施工管理技士とは? 業務内容や技術検定について解説
 ≫ 【建築業界の基礎知識】建築におけるボリュームチェックとは?具体的な方法・期間・費用をチェック

  LIFULL HOME'S (ライフルホームズ)注文住宅で集客を強化しませんか! | LIFULL HOME'S Business 注文・分譲一戸建て ライフルホームズ注文住宅はハウスメーカー・工務店・建築設計事務所向けの総合情報サイトです。対応可能なエリア内で注文住宅の検討顧客を集客でき、固定費を抑えた料金体系なので予算に合わせて運用が可能です。集客から来場・成約までまで様々なノウハウも幅広くサポートいたします。 LIFULL HOME'S Business 注文・分譲一戸建て


編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

関連する最新コラム