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キラーパルスとは? 危険視される理由と対策

日本は地震大国と呼ばれており、これまでにも大きな地震によって家屋の倒壊や土砂災害などの甚大な被害を受けてきました。

なかでも“キラーパルス”と呼ばれる地震動は、比較的低層の家屋や木造住宅にダメージを与えやすいといわれています。

生活の拠点となる住宅では、地震による建物の損傷や倒壊などのリスクに備える対策が欠かせません。工務店・ビルダーにおいても、新築住宅の建築や既存住宅のリフォームを行う際には、キラーパルスの対策についてきちんと説明を行っておくことが重要です。

この記事では、キラーパルスの詳細をはじめ、危険視される理由や必要な対策について解説します。

(出典:気象庁『地震から身を守るために』/総務省消防庁『地震動の周期とその影響』)

目次[非表示]

  1. 1.キラーパルスとは
  2. 2.キラーパルスが危険視される理由
  3. 3.キラーパルスへの住宅の対策
    1. 3.1.①耐震等級3への対応
    2. 3.2.②制震技術の採用
    3. 3.3.③構造計算の実施
  4. 4.まとめ

キラーパルスとは

キラーパルスとは、地震の揺れの周期のうち、1〜2秒周期のやや短い震動のことを指します。

地震の周期には、ガタガタと揺れる短い周期の揺れと、ゆっくり繰り返す長い周期の揺れが同時に起こっています。この揺れの周期は、地震学において以下の6つに区分されています。

▼地震の周期区分

  1. 極短周期
  2. 短周期
  3. やや短周期
  4. やや長周期
  5. 長周期
  6. 超長周期

上記のうち、キラーパルスについては、3の“やや短周期”の地震動に該当します。一般的に、このような地震の揺れの周期が建物の固有周期に近いほど、建物が大きく揺れやすいとされています。

また、短い周期の地震の揺れの場合には、低層の建物が大きく揺れやすく、長い周期の地震の揺れの場合は、高層ビルや海・川を跨ぐ長い橋などの大きな建物が揺れやすくなります。

▼建物の固有周期と地震の揺れとの関係

画像引用元:文部科学省『地震がわかる!Q&A

(出典:文部科学省『地震がわかる!Q&A』/総務省消防庁『地震動の周期とその影響』)

キラーパルスが危険視される理由

キラーパルスが危険視される理由として、低層や木造の住宅への被害が大きくなりやすいことが挙げられます。

一般的に短周期の揺れは、たとえ小さな揺れであっても、建物・設備と共振することで建物への被害が大きくなると考えられています。なかでもキラーパルスに当たる“やや短周期”は、低層の家屋や木造住宅が被害を受けやすいとされているため、地震の際には特に警戒が必要です。

実際に、過去に起きた阪神・淡路大震災、新潟県中越地震および新潟県中越沖地震では、1〜2秒の短周期地震動が観測され、住宅への被害が多く見られました。

一方、東日本大震災においては、地震の振動による建物への被害は比較的少なかったと報告されています。

東日本大震災の地震動周期は主に1秒以下で、キラーパルスが少なかったことが理由と考えられています。

(出典:文部科学省『地震がわかる!Q&A』/総務省消防庁『地震動の周期とその影響』)

キラーパルスへの住宅の対策

キラーパルスによる建物への被害を防ぐためには、住宅の耐震・制震の対策と、構造計算が重要となります。ここでは、住宅設計における対策について解説します。


①耐震等級3への対応

キラーパルスによる建物の基礎・構造躯体の倒壊を防ぐための対策の一つとして、耐震等級3に適合した住宅を建てることが挙げられます。

国土交通省の『住宅の品質確保の促進等に関する法律』では、住宅の性能を評価するための“住宅性能表示制度”が定められており、施主への提案や性能比較に用いられています。

住宅性能表示制度では、地震の力に対して住宅の崩壊・倒壊しにくさを評価する耐震等級が3段階で定められています。

▼耐震等級

等級3

等級1の1.5倍の力に対して倒壊・崩壊しない程度

等級2

等級1の1.25倍の力に対して倒壊・崩壊しない程度

等級1

極めてまれに発生する地震による力に対して倒壊・崩壊しない程度

上記のうち、現行の建築基準法で定められた耐震基準を満たすのが等級1です。

2023年1月現在、地震に耐えうる強度のうち等級3がもっとも高いとされるため、キラーパルスに対策するには、等級3を満たす住宅設計が望まれます。

(出典:e-Gov法令検索『住宅の品質確保の促進等に関する法律』/国土交通省『新築住宅の住宅性能表示制度ガイド』『第2節 評価の方法の基準(性能表示事項別) 』)


②制震技術の採用

耐震等級3への適合に加えて、制震技術を取り入れることもキラーパルスの対策として有益な方法です。

制震とは、地震の揺れによって加わる建物への衝撃を吸収して揺れを抑制することです。建物の壁や柱などにダンパー(制振装置)を設置して地震の揺れを吸収することで、キラーパルスによる建物へのダメージを抑えることが可能です。

耐震構造と組み合わせることでさらに効果を発揮するため、地震による建物への被害を軽減することが期待できます。工務店・ビルダーでは、キラーパルスの対策として、耐震+制震での住宅設計を提案することが重要といえます。


③構造計算の実施

キラーパルスに対応した地震に強い住宅を建てるには、建物の構造計算を行うことも重要です。

構造計算とは、建物への荷重や地震・風圧によって受ける力を計算して、強度・安全性を検討することです。建物にかかる荷重によって住宅がどのように変形して、どのような応力が発生するのかを確認します。

具体的には、壁量や部材、地盤、基礎などの強度を計算して、建物が崩壊・倒壊しないかどうかを検討します。

まとめ

この記事では、キラーパルスについて以下の内容を解説しました。

  • キラーパルスとは何か
  • キラーパルスが危険視される理由
  • 住宅設計におけるキラーパルス対策

地震の揺れには短い周期と長い周期があります。なかでもキラーパルスと呼ばれるやや短周期の地震の揺れは、低層や木造の住宅に被害が及びやすいとされています。

実際に、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震および新潟県中越沖地震では、キラーパルスによる建物への被害が多く見られました。

工務店・ビルダーは、地震に備える住宅づくりを顧客に提案するために、耐震等級3への対応を図るとともに、制震技術を取り入れたり、構造計算を実施したりすることが重要です。

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なお、住宅の耐震基準についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

 ≫ 【建築基準法の耐震基準】旧耐震・新耐震の違いと支援制度を解説

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編集部
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