第3回【工務店の施工事例集の記事制作】施工事例をもっと「好き」になってもらうには、“ストーリー”がたいせつ
前回、施工事例の撮影とインタビューについて触れました。最もたいせつなのは写真、そして、せっかくならお施主様へのインタビューも同時に行って紹介記事に活かしましょう、という話でした。
今回は、施工事例の紹介記事のほうにフォーカスして、どのように記事をつくればお施主様の心に響くのか、ということを考えてみたいと思います。ポイントは「共感の接点」を提供すること。人は共感を得ると気持ちがぐっと近づくからです。そのためには施工事例の“ストーリー”がたいせつなのでは、という視点です。
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写真だけだと「いいね」止まり。読んで初めて「好き」になる
施工事例の紹介は写真が最もたいせつ。そこでまずはお施主様の頭の中で「いいね」を押してもらったとします。でもこの時点ではまだたくさんの他社と同じ土俵に乗った状態。そこからさらに進んで「好き」になってもらうには、紹介記事に力をいれましょう。
前回、お施主様インタビューでぜひとも聞きたい質問項目を掲載しました。振り返ってみます。
■お施主様に聞きたい質問項目
注文住宅を考えはじめたきっかけは?
会社探しはどのように?
当工務店に決めた理由
~~プラン関連のことはわかっているでしょうから割愛~~
(間取りや性能面で)住み心地はいかがですか?
思い描いていた暮らしは叶いましたか?
最後に、私どもに一言お願いします
さて、今回の視点は“ストーリー”。この中で「共感の接点」となりうるポイントはどこかというと、家づくりの前後。つまり、<契約前>と<引き渡し後>のお話です。該当する質問項目を抽出します。
■お施主様に聞きたい質問項目(ストーリー用に抽出)
<契約前>
- 注文住宅を考えはじめたきっかけは?
- 会社探しはどのように?
<引き渡し後>
- (間取りや性能面で)住み心地はいかがですか?
- 思い描いていた暮らしは叶いましたか?
中でも、<契約前>のストーリーが「共感の接点」にはたいせつです。なぜなら、ご覧になっているお施主様たちはみな、(どの工務店とも)契約前だからです。
<契約前>と<引き渡し後>のストーリーを「丁寧に」書く
それでは<契約前>の質問項目を追って考えていきます。
「注文住宅を考えはじめたきっかけは?」
この質問のアンサーで読む人に感じてもらいたいのは、「あたしも!」という共感です。
自分と同じような状況の人がこんなふうに考えて注文住宅を選んだんだ、という共感を抱いてもらいます。
■例 |
この例は、工務店をなさっている方にはよくあるパターンだと思いますが、そこをきちんと書いて伝えることで読んだ人は「あたしも!」や「わかる~」などといったように感情が動きます。
それでは、次の質問とアンサー。
「会社探しはどのように?」
■例 |
このフェーズでは、読む人に「あたしも!」や「わかる~」の先、「へぇ~」という気付きや発見をしていただけるよう留意します。つまり読む人に疑似体験していただくわけですね。そうなればぐっと感情が寄ってくる。次が気になってくる。この動きが「共感の接点」です。
また、こういった話はユニークである必要はありません。ただただ、ほんとのことを丁寧に文章に起こせばいいのです。意識するべきは、主人公であるAさまが「どう考え」「どんな行動をして」「どうなったのか」ということ。そこを「丁寧に」紡いでいくことで、ストーリーになります。
次に、<引き渡し後>です。
ここからは読む人にとってはストーリーの結末。ハッピーエンドで終わって「よかったね」と共感してもらえればいいですね。この2つの質問のアンサーは連動することが多いのでまとめて考えてみます。また、ここはいわゆるお施主様の“感想”フェーズですので、お施主様言葉で書くといいでしょう。
「(間取りや性能面で)住み心地はいかがですか?」
「思い描いていた暮らしは叶いましたか?」
■例 「『リビングに家族が集まる家』が夢でした。階段をリビングインにしたのはそのためでしたが、それよりも、工務店に提案してもらったカウンター付き小上がりのある広いリビングが大正解。テレビを見るならソファで、スマホで動画をみたり漫画を読んだりするなら小上がりで、宿題は小上がりのカウンターでもダイニングテーブルでもOK。そんな感じで家族それぞれがしたいことに応じていられるスペースがあるので、みんなが自然とリビングにいるんです。オープンキッチンからその様子を見渡せるので私も安心。ほんとに寝る時以外はみんなリビング周りにいるんですよ」 |
「ああ、よかったね~」と思いませんか?ここに記した例は実際に現場でお施主様に聞いた話を今回の掲載用に編集したものです。だからベースは本当の話です。こういう話はたくさんありますよね。お施主様それぞれにあります。そこを丁寧に書くと、読んだ人の心が動きます。
「よかったね~」の他にも、「なるほどな~」とか「これマネしたいな」とか「私ならこうするかな~」などと思うかもしれません。そこまで心が動いたら成功です。読んでいる本人は気が付かないうちにこの事例のこと、さらには工務店のことを「好き」になり始めています。どんなに少なく見積もっても、工務店の名前はインプットされました。
また、こういう話は工務店にとってもうれしいお話ですよね。そういう意味でもインタビューはおすすめです。社長並びに担当スタッフのモチベーションがあがること、請け合いです。
生の声ってつまるところ“口コミ”。かぎかっこで括ってコメントにするのもアリ
お施主様から生の声を聞けたということは、それってリアル“口コミ”が聞けたといえます。かぎかっこで括ってコメントとして紹介してはいかがでしょうか。また、口コミコメントとしてアピールするなら、前述した質問項目に加えて、次の質問もしたいですね。
「当工務店に決めた理由」
「対応でよかったところ・わるかったところ」
これらのアンサーはインタビュー取材中に自然と話に出てくることも多いので、その時に拾っておければいいのですが、インタビュー中に出てこなければ、最後に直接聞いてみましょう。
材料が集まったらコメントですからかぎかっこで括ります。できればお施主様がお話してくださったとおりの表現のままにしたいですね。コメントですので多少表現が行き過ぎていても大丈夫。違和感なくすんなり入ってきます(差別表現など一般的な表現規制にはもちろんご注意ください)。
以下に、第三者表記とコメント表記を併記してみました。印象の違いを感じてみてください。
■例
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こういうコメントはどこに掲載するのがいいでしょうか。施工事例集ですから、まずは該当事例のお施主様集合カットのキャプションにするのが王道です。が、思い切ってメインのキャッチコピーにしてもインパクトが出て目を惹きます。ただキャッチコピーにするとコメントの内容勝負になってきますので、よほど気を惹くナイスなコメントじゃないと他の事例との差別化が難しくなります。
また、コメントをキャッチコピーにした場合は、その記事をウェブに展開するときに、新着情報欄に施工事例のキャッチコピーのみを自動表示させるようにしておくのもおすすめ。かぎかっこのコメントがズラリと並ぶので、口コミ多数の印象を与えることができます。
お施主様の写真がたくさんあれば、さらなる共感が得られる可能性大
施工事例の外観・内観写真を撮影するときに、お施主様も写真に入っていただくと、見ている人は共感しやすくなります。お施主様に承諾が得られたらぜひ撮影させていただきましょう。
特にポーズを考える必要はありません。顔がきちんと見えている必要もありません。後ろ姿でも動きが早くてブレてしまってもOKです。“いつもの暮らし”をしている瞬間を切り取ったような自然な雰囲気になるよう、意識しましょう。
例えば、リビングのソファでじゃれる親子とわんちゃん、キッチンで食事の支度を手伝う父と娘、庭で水を撒く母と走り回る子どもたち、眺めのいい窓から外を眺めている夫婦など、“暮らしを楽しまれている様子”が想像できる感じがいいですね。
特に子どもの写真は、目が留まるもの。小上がりに腰かけて足をぶらぶらさせて一人もくもくとおもちゃで遊んでいる姿だけでも、見ていてほっこりしますよね。
そういった写真をところどころに散りばめてレイアウトすれば、読む人は自分(の未来)を投影して、「いいな~」とか「自分だったら」とか、自分のこととして暮らしを想像できます。それが共感につながり、印象をより濃いものとしてくれます。
こうなればどこかに小さく、お施主様の集合写真を入れたいですね。もちろん笑顔で。現場でなんとか笑わせてください。その瞬間をパチリ。カメラの連写モードで何枚も撮るのがおすすめです。そしたらそのキャプションには、先ほどのコメントを入れましょう。びっくりマークをがっつり使って。
さらにその横にスタッフ写真とコメントがあるとgoodです。家づくりそのものに一体的な幸福感が醸し出されます。お施主様ご家族と担当者が一緒に写っているのもいいですよね。仲がよさそうな雰囲気が出せれば、この工務店なら怖くない、って思ってもらえます。
その場合はカメラ目線ではなくて、なにか楽しそうに談笑しているシーンなんかもいいですね。ハッピーエンドストーリーの空気感が伝わってきます。
施工事例集の紹介記事の構成・レイアウトのアイデア3選
施工事例の紹介記事を“ストーリー”という視点から考えてきましたが、最後に、そのストーリーをどうやって施工事例集に落とし込むのか、レイアウトするのか、という話を少しだけします。
前提として、紙幅は限られていますので、取材した内容をすべて掲載することはできません。何を優先させるか、何を割愛するか、という観点がたいせつです。
これは家づくりと似ている部分といえるのではないでしょうか。ページ数・予算に合わせて優先順位を決めていくフェーズです。ここでの注意点は欲張ってすべての情報を薄ーく網羅してはいけないこと。前回も書きましたが、言いたいことは2つ、多くて3つに絞りましょう。薄い内容は読む人の印象に残らず、共感が得られにくくなってしまいます。
実際にはここからはプロのデザイン制作会社に依頼することが多いとは思いますが、工務店の皆さまにも「情報を絞って優先順位を決める」という意識をもっていただければ、きっと素敵な施工事例集ができると思います。ここでは3つのパターンを提示します。
1.順を追った段組み文章で「読み物雑誌風」に
読み物系雑誌でよくある段組みという文字レイアウトで文章をたくさん入れるパターンです。時系列に沿って話を進めやすいので、まさに物語のような記事ができます。ストーリーに惹きがある施工事例の紹介に向いています。
メリット = ストーリーを余すことなく掲載できる
デメリット= 写真は厳選するため点数は少なくなる
2.ブロック分けして見やすく「情報誌風」に
文章を見出し付きのブロックに分けて、情報を整理するレイアウトです。例えば1ブロックは「家づくりのきっかけ」。2ブロックは「住まいの特長」。3ブロックは「住み心地」といった具合です。
メリット = 見たい情報を見つけやすい
デメリット= 長いストーリーは割愛される
3.本文と建物説明を分けて「ビジュアル重視」に
本文はストーリーだけを追って簡潔に。建物の説明は本文ではせずに写真の下などに置くキャプションのみに。その分、写真を大きくしてビジュアルで見せるパターンです。
メリット =かっこいい写真で見た目勝負できる
デメリット=建物の説明がやや不足しがちになる
さて、というわけで、今回のタイトルは、【工務店の施工事例集の記事制作】施工事例をもっと「好き」になってもらうには、“ストーリー”がたいせつ でした。
少しでも工務店の皆さまのお役に立てば幸いでございます。
それではまた次回、お会いしましょう。
<次回のテーマ>
第4回【工務店の施工事例集に入れるべき物件データ】お施主様は「リアルなスペックを教えてほしい!」