住宅会社におけるブランディングの重要性と意識すべきポイントとは?
住宅の購入は人生における特別なイベントです。ほとんどの方は住宅会社と関わる機会も初めてとなるため、家づくりをどこに頼めばよいのか具体的なイメージを持ちづらいものです。
そうしたなかで顧客から選ばれるには、自社の存在を正しく認識してもらい、信頼や好感を抱いてもらう必要があります。今回は、住宅会社がブランディング戦略を立てるうえで意識すべきポイントをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.よくある悩み:「特徴や個性が見出しにくい」
- 2.なぜブランディングが必要?
- 2.1.そもそもブランディングとは
- 2.2.ブランディングを行うメリット
- 3.どの会社にも特徴や強みはある! ブランディングの基本的なポイント
- 3.1.コンセプトの明確化と社内共有
- 3.2.ターゲットをイメージした広告展開
- 3.3.地域内でのシェア率拡大
- 4.ブランディングに取り組むときのステップ
- 4.1.市場分析・顧客分析に基づくターゲッティング
- 4.2.ペルソナの設定
- 4.3.カスタマージャーニーマップの作成
- 4.4.プロモーションの実施
- 5.この記事を監修した人
- 5.1.三輪 歩己
よくある悩み:「特徴や個性が見出しにくい」
住宅業界はそもそも小売業やその他のサービス業と比べて、顧客の利用体験を重ねてもらいにくいという性質があります。住宅購入の経験がない状態で依頼先を選ぶケースがほとんどであり、価格も高価であるため、「失敗を避けたい」という心理が強く働きやすいのです。
そのため、企業の知名度やイメージは、その他の業界以上に大きな影響力を持つといえるでしょう。そのうえで、住宅業界には競合も多いため、他社との差別化を図るのが難しい面もあります。
中小の住宅会社では、営業エリアや細かなサービスで違いを作り出すことはできても、決定打となる「個性や特徴」を持てないという悩みが生まれやすいです。ただし、個性を出しにくいという悩みは、自社だけでなく他社も同じように抱えています。
そのため、ブランディング戦略を見直し、「〇〇といえば□□」というイメージを作り出せれば、その時点で大きな競争優位性を確立することができます。
なぜブランディングが必要?
住宅会社にとって、ブランディングはどのような価値を持っているのでしょうか。ここではブランディングの重要性について解説します。
そもそもブランディングとは
ブランディングとは、端的に言えば自社のブランド価値を高めるための取組みのことです。ブランディングというと、一般的には誰もが知るような有名ブランドがイメージされるため、中小の会社にはあまり関連がないと感じてしまうかもしれません。
しかし、ブランディングの概念をより具体的に分解すると、「自社の強みやメリットを明確化する」「他社との差別化を図る」「対象となる特定のターゲット層に価値を認識してもらう」という3つの方向性に分かれます。これらはいずれも、中小企業にこそ重要な観点といえるでしょう。
また、ブランディングでは世間一般への認知よりも、「特定のターゲット層」を対象とすることが重要とされています。ターゲットをピンポイントに絞ることができれば、中小の事業者でも十分な競争力を持てると考えられるのです。
ブランディングを行うメリット
企業がブランディングを行うメリットとしては、以下の点が挙げられます。
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ブランディング戦略が機能すれば、競合との差別化が実現でき、顧客に分かりやすい個性をアピールすることが可能です。現代ではSNSなどの拡散力のある媒体が活用できるため、共感を呼ぶような個性が確立されれば、それほどコストをかけなくても知名度や認知度の向上が期待できます。
また、ブランディングでは自社のイメージアップを図るとともに、顧客とのつながりも大事に育てていきます。そのため、自社のファンを拡大し、長期的な関係づくりも実現可能です。
一度自社のファンになってもらえれば、口コミや友人紹介などで売り上げに貢献してもらえたり、リフォームや住み替えのときに再び自社を選んでもらえたりするなどのメリットが期待できます。
どの会社にも特徴や強みはある! ブランディングの基本的なポイント
住宅会社に限らず、ブランディングの基本的な考え方はどの業界でもある程度共通しています。ここでは、まず押さえておくべき基本的なポイントを確認しましょう。
コンセプトの明確化と社内共有
ブランディングの第一歩は、「コンセプトの明確化」にあります。とはいえ、自社の文化に馴染まないものや不得意なものを無理に取り入れる必要はありません。住宅会社として、自社がどのような強みを持っているのかを分析し、その個性に合ったコンセプトを生み出していくことが大切です。
また、自社のブランドイメージは、社内で共有しておく必要もあります。実際にブランドイメージを体現するのは企業の従業員一人ひとりであるため、徹底してコンセプトを浸透させることが重要です。当然ながら、営業などで外部のリソースを活用する際には、自社のブランドイメージを損なわないかどうかも欠かせない判断材料となります。
ターゲットをイメージした広告展開
ブランディングにおいては、「誰もが共感する広告やコピー」を目指すよりも、自社が狙ったターゲットにきちんと訴求できるかどうかが大切です。たとえば、自社のターゲットを「サステナビリティに関心の高い若い夫婦世帯」と設定するか「バリアフリーを考えている中高年の夫婦世帯」と設定するかで、ふさわしい広告展開はまるで違ったものになります。
そのため、まずはターゲットを明確化し、その層が持つニーズを徹底的に分析する必要があります。
地域内でのシェア率拡大
中小の住宅会社にとっては、自社の商圏を意識したブランディングも重要な視点となります。実際に施工可能なエリアは限られているため、たんに認知を広げるだけでなく、自社が施工可能な地域でのシェア率を拡大できるようにターゲットを絞り込むことが大切です。
ブランディングに取り組むときのステップ
企業のブランドイメージを確立するためには、ブレのない取組みによって一貫性を持たせることが大切です。そのため、ブランディングを行う際には、しっかりと下準備を行ってから計画的に施策を進める必要があります。
ここでは、ブランディングの基本的なステップを確認しておきましょう。
市場分析・顧客分析に基づくターゲッティング
ブランディングを行う際には、マーケティングで用いるフレームワークを用いて、自社を取り巻く市場や顧客の状況を分析することが大切です。代表的なものとしては、外部環境を「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」4つの要素から紐解く「PEST分析」、経営環境を「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの要素で読み解く「3C分析」、自社の内外の環境を「機会と脅威」「強みと弱み」の2つの物差しで分析する「SWOT分析」が挙げられます。
これらの分析を行えば、次のような事実が浮かび上がっていきます。
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これらの分析結果をもとにすることで、より精度の高いターゲッティングを行えるようになります。
ペルソナの設定
「ペルソナ」とは、自社の商品・サービスを利用する典型的な顧客のキャラクター像を指します。ターゲットとする顧客を明確にイメージすることが特徴であり、年齢や性別、家族構成、居住エリア、収入、価値観、趣味嗜好、悩み、情報収集の手段といった細かなポイントを具体的に設定します。
また、住宅会社の場合は、住まいに対する思いや不満、将来的なライフプランなども設定するといいでしょう。ペルソナを設定することで、顧客のニーズが鮮明に把握できるようになり、精度の高いブランディングがしやすくなります。
さらに、チーム内でも共通のイメージを持ちやすくなるので、ブランディングに自然と一貫性が生まれていきます。
カスタマージャーニーマップの作成
「カスタマージャーニーマップ」とは、設定したペルソナの行動や思考の動きを時系列で描き出したものです。住宅の検討から購入までの過程を想定し、実際のストーリーとして可視化することで、自社がどのようなアクションをすべきかを把握します。
カスタマージャーニーマップが完成したら、チーム内で共有しながら、各プロセスの施策へと落とし込んでいきましょう。
プロモーションの実施
ブランディングの方向性が定まったら、プロモーションを行って顧客への認知を広げていきます。このときに重要となるのは、普段行っている販促活動とは別に、企業そのものの認知度を高めるための広告を打ち出すという点です。
商品・サービスを売り出すのと、企業のイメージアップを図るのとでは広告の内容が大きく異なります。たとえば、企業そのものを好きになってもらうという軸で考えると、「担当者の顔や人柄が分かるようなブログの発信」「地域密着型のイベント開催」なども効果的な施策となり得ます。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:住宅会社がブランディングを行うメリットは?
A:主な目的としては、「競合他社との差別化」「知名度、認知度の向上」「自社のファンの拡大」「リピート率のアップ」が挙げられます。住宅会社の場合は、ファンとのつながりを大切にすることで、口コミや友人紹介による成約件数の増加や、リフォーム、建替え時の再依頼なども期待できます。
Q:住宅会社のブランディングのやり方は?
A:まずはマーケティングの分析手法を用いて、市場や顧客を分析し、ターゲッティングを行いましょう。そのうえで、ペルソナの設定やカスタマージャーニーマップの作成を行い、プロモーションなどの施策へと落とし込んでいくことが大切です。
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この記事を監修した人
三輪 歩己
不動産鑑定士、宅地建物取引士、日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)、 相続診断士、J-REC公認不動産コンサルタント
名古屋市立大学薬学部卒。 大学在学中に不動産鑑定士2次試験合格。日本土地建物株式会社にて、 不動産鑑定や不動産証券化業務に従事。その後外資系不動産ファンド等にて 物件購入・管理・経営企画等業務に従事。約20年間の鑑定・宅地建物取引業の 経験を活かし、2020年に不動産パートナーズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。 同社では、不動産鑑定業・宅地建物取引業に加え、不動産専門の相続診断士として 活動を行う。