建設業で女性がキャリアアップする方法と役に立つ資格7選
従来の建設業界は、どちらかといえば男性の仕事というイメージが強く、ほかの産業と比べても女性の就業割合の低さが課題となってきました。しかし、現在では国と業界が一体となって女性活躍の取組みを進めており、キャリアアップを支援する制度も構築されつつあります。
今回は、建設業で女性がキャリアアップを目指すための方法や考え方、キャリア形成に役立つ資格についてご紹介します。
目次[非表示]
- 1.建設業における女性活躍の取組み
- 2.建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?
- 3.建設業でのキャリアアップの捉え方
- 4.キャリアアップに役立つ資格7選
- 4.1.建築士(一級・二級・木造)
- 4.2.建築設備士
- 4.3.インテリアプランナー
- 4.4.施工管理技士
- 4.5.建築CAD検定
- 4.6.建築積算士
- 4.7.測量士
建設業における女性活躍の取組み
建設業界では、女性人材が働きやすい産業づくりを目指し、国や行政と手を組んでさまざまな取組みが実行されてきました。特に大きなきっかけとなったのは、2014年に国土交通省と5つの建設業団体が共同で策定した「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」です。
官民一体となって積極的な施策が打ち出された結果、約5年で建設業における女性技術者は1.64倍、女性技能者は1.19倍に増加するなど一定の成果が上がりました。その後、建設業界を取り巻く環境の変化を踏まえて、さらにブラッシュアップされたものが2020年に策定された「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」です。
新計画では、働き方改革などの大きな流れを受け、女性の定着に向けて次の3つの柱を主要な目標に掲げています。
■「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」における3つの柱
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女性が「働き続けられる」というテーマには、「育児や介護との両立がしやすい環境づくり」や「復職に向けたサポート環境の整備」「女性にとって魅力のある業務内容、労務環境」といった幅広い取組みが含まれます。そして、重要な施策の一つとして、「女性のキャリアアップ」を支援する仕組みの構築も挙げられています。
特に「建設キャリアアップシステム(CCUS)」を女性のキャリア形成に役立て、多様なキャリアパスを実現していくことが新計画の大きな軸といえるでしょう。
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは、具体的にどのような制度なのでしょうか。ここでは、基本的な仕組みとメリットについて解説します。
基本的な仕組み
CCUSとは、建設技能者が自身の技能・経験に応じて適切に処遇されることを目指してつくられたシステムのことです。技能者の資格や現場での就業履歴などを登録・蓄積して、客観的な能力評価を可能にすることで、キャリアの幅を広げたり、適材適所な配置を実現したりするのが目的です。
具体的には、まず技能者が本人であることを確認したうえでシステムに登録し、一人ひとりにIDが付与されたCCUSカードが交付されることからスタートします。その後は、どの職種や立場でどの現場で働いたのかが就業履歴として細かく記録され、本人の経歴として蓄積されていきます。
さらに、資格の取得や講習の受講履歴などの記録も同時並行で登録され、客観的な基準で能力評価が行われるという仕組みです。CCUSカードは技能レベルに応じて4段階に分かれているため、すぐにキャリアの現在地を把握できるのが特徴です。
主なメリット
建設業の就業者にとって、CCUSのメリットは、柔軟にキャリアプランを立てやすくなる点にあります。IDに業務経験や資格の取得がキャリアとして蓄積されるため、出産や育児で休業してもリセットされることはありません。
復帰をする際には、CCUSのレベルに応じて休業前のキャリアからリスタートできるので、特に出産や育児を控える女性にとっては大きな安心感につながります。また、自身の経歴が可視化されるため、現在地を客観的に把握しやすくなり、資格取得などへの意欲が向上するのもメリットです。
一方、事業者にとっても、CCUSがあれば過去の経歴がすぐに確認できるため、技能やスキルに応じた採用を行いやすくなるのが利点といえます。さらに、交付されたICカードは現場の入退場などに活用できるため、入場管理などの効率化につながるのもメリットです。
建設業でのキャリアアップの捉え方
建設業のキャリアでは専門知識や実務経験が重視されるため、まずはCCUSの仕組みを正しく理解しておきましょう。産休・育休をとる予定がない方でも、複数の企業を渡り歩いたり、一度建設業を離れたりする場合にはCCUSが大きな効果を発揮します。
また、安定的にキャリアを積むためには、やはり長く働ける職場を見極めることも大切です。近年では、建設業界全体における意識改革が進んでおり、女性の受け入れを積極的に行う企業も増えてきています。
女性が働きやすい職場であるかどうかは、「育児経験のある女性比率が高い」「管理職が育児を経験している」「コンプライアンスやハラスメントへの意識が高い」といったさまざまな点から見極められるので、就職先選びは慎重に行いましょう。そのうえで、キャリアアップを目指すためには、やはり資格の取得が有効策となります。
建設業にはさまざまな専門資格があり、実務経験が問われるものもあるので、キャリアプランに合わせて最適な資格を見極めることが重要です。
キャリアアップに役立つ資格7選
建設業界でのキャリア形成に役立つ資格として、ここでは代表的な7つの資格をご紹介します。
建築士(一級・二級・木造)
建築士は建築の専門家として建物の設計・工事監理を行える国家資格です。一級、二級、木造の3種類に分かれており、資格に応じて設計・監理ができる建物の規模・構造などが異なります。
特に一級建築士はすべての建築物の設計・工事監理が行える高度な資格であり、取得者を設置することで企業の評価も高まるため、キャリアアップにも大きく役立ちます。
建築設備士
建築設備士は、建築設備(空調・換気・給排水衛生・電気等)の専門的な知識・技能によって、建築士に対して設計・工事監理のアドバイスを行える資格者です。建築士への助言を行った際には、公的書類に建築設備士としての記名が行えます。建築設備はすべての建物に必要な要素であることから、活用の機会が多い資格とされています。
インテリアプランナー
インテリアや建築に関する専門知識が問われる資格であり、室内装飾や施工設備などの幅広い知識を持っていることの証明になります。インテリアプランナーは民間資格であり、職業そのものは資格がなくても就くことができますが、インテリアプランナーを持っていることでほかの試験を受験する際に優遇措置が受けられます。
施工管理技士
施工管理に関する国家資格であり、土木や建築、管工事といった7つの分野にそれぞれ特化した専門の資格が設けられているのが特徴です。たとえば、電気工事施工管理技士は電気工事の施工管理に関する専門資格であり、造園施工管理技士は造営計画の策定や施工管理に関する専門資格となっています。
各試験種目には1級と2級の区分があり、1級を取得すれば特定建設業の専任技術者・一般建設業の主任技術者および監理技術者になることができます。また、2級を取得すれば一般建設業の専任技術者、主任技術者になることが可能です。
工事によっては技術者の設置が義務付けられることもあるため、施工管理技士が重宝される場面は数多くあります。さらに、施工管理技士を置くことで企業の評価も高まるため、公共工事受注などの際には企業の利益拡大に大きく貢献できるのが強みです。
建築CAD検定
一般社団法人全国建築CAD連盟が実施する民間資格です。試験にはマークシートなどの筆記がなく、実技によるCADを用いた製図能力のみが問われるため、合格すればそのまま建築CADスキルの証明につながるのがメリットです。
建築積算士
建築積算士は、設計図から必要な人件費や予算を割り出し、工事費を算出する「積算」のスペシャリストです。工事を請け負ううえでは正確な積算が必要であり、特に公共事業の入札などに参加する際は必要不可欠なプロセスとなります。
そのため、建築積算士の資格を資格手当の対象としている企業もあります。また、建築積算士には「建築コスト管理士」という上位資格が存在するため、じっくりと知識を習得してさらなるステップアップを目指すのも一つの方法です。
測量士
測量士は測量法に基づく国家資格であり、土地の面積や距離、位置などを測量する専門家です。もっとも大きな特徴は、測量業務という有資格者にしか認められていない独占業務があることです。
測量業務を行う企業は、必ず1名以上の測量士を配置しなければならないこととされているため、比較的に安定したキャリア形成を行えるのがメリットです。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?
A:技能者の就業履歴や資格などを登録・蓄積して、客観的な能力評価を可能にするシステムのことです。個人のIDに細かな経験や資格取得、講座の受講といった履歴が残るため、計画的なキャリア形成につながる仕組みとなっています。
Q:建設キャリアアップシステムは女性にどんなメリットをもたらす?
A:CCUSカードに自身の経歴が記録されるため、出産や育児などで休業してもキャリアが途切れる心配がありません。復帰する際には、休業前のキャリアからリスタートできるので、安心してキャリアアップを目指せるのがメリットです。
Q:建設業のキャリアアップに役立つ資格は?
A:代表的なものとしては、「建築士」や「施工管理技士」などの国家資格が挙げられます。また、独占業務を持つ国家資格である「測量士」も安定したキャリア形成につながります。その他民間資格としては、「インテリアプランナー」や「建築CAD検定」などもキャリアの幅を広げる武器になり得ます。
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