住宅建築事業主が知るべき住宅トップランナー制度とは
現代は省エネ性能を持った住宅の建築が国から求められており、省エネ住宅に関わる制度ができています。
今回は、住宅づくりに関わる人が知っておくべき住宅トップランナー制度(2020年4月10日時点)についてご紹介します。
目次[非表示]
- 1.住宅トップランナー制度が誕生した背景
- 1.1.日本はエネルギー資源を輸入している
- 1.2.東日本大震災による原発の停止
- 1.3.建築物のエネルギー消費が著しい
- 2.住宅トップランナー制度とは?
- 2.1.省エネ性能向上のための誘導
- 2.2.特定の事業主は目標水準が課せられる
- 3.トップランナー基準を満たす住宅とは?
- 3.1.建物全体で見たエネルギー消費量の削減
- 3.2.地域によってトップランナー基準は異なる
- 3.3.対象設備について
- 4.トップランナー基準を満たした住宅は消費者の関心を引きやすい
- 4.1.夏は涼しく冬は暖かい
- 4.2.節税や金利優遇
- 5.住宅トップランナー制度は快適な暮らしにもつながる制度
住宅トップランナー制度が誕生した背景
住宅トップランナー制度は、2009年に制定されました。近年では、温暖化現象など地球規模での環境の変化に伴い、世界的に地球環境を守るための対策として省エネが求められている背景もありますが、日本ならではの事情もあります。
なぜ省エネのための住宅トップランナー制度が必要なのか、背景を確認しましょう。
日本はエネルギー資源を輸入している
そもそもエネルギーは石油や天然ガス、石炭などのエネルギー資源を必要とします。これらの資源には限りがあると同時に、日本では資源の大半を海外から輸入しているという現状があります。
1970年代のオイルショックでは原油価格が高騰し、深刻な混乱が起こりました。オイルショックは、輸入に頼らずに自国でエネルギーをつくるきっかけになった事件ともいえるでしょう。
東日本大震災による原発の停止
エネルギーの多様化として造られた原発が、災害によって停止となった影響で、エネルギー消費の抑制がさらに求められることになりました。
また、原発の危険性も明らかとなったことで、別の方法でつくるエネルギーに注目せざるを得ない状況となっています。
建築物のエネルギー消費が著しい
企業や家庭などの建築物では、エネルギーの消費量が著しく、全体の3分の1を占めているという状況が明らかになっています。
このような背景もあることから住宅の省エネルギー化に焦点が当てられ、住宅トップランナー制度ができた要因となっています。
住宅トップランナー制度とは?
住宅トップランナー制度とは、住宅事業建築主が供給する住宅の省エネ性能の向上を促進する制度です。住宅トップランナー制度の具体的な内容を確認しましょう。
省エネ性能向上のための誘導
住宅トップランナー制度は、建築物省エネ法のひとつであり、機械や器具を対象として、エネルギー消費を抑えるための努力義務をするよう定めている制度です。
省エネルギー効果が性能レベルを満たしているかということを判断できるように“トップランナー基準”という目安が設定されていることも特徴です。
住宅トップランナー制度の対象機器は幅広く設定されており、乗用車や家電などのほか、住宅建築に関わる機器では具体的に、サッシやガラス、断熱材、温水機器、調理機器、LED照明、空調機器などの各設備が対象となっています。
特定の事業主は目標水準が課せられる
住宅トップランナー制度では“年間150棟以上の住宅を供給する事業主”に対して、年度ごとに全住戸の平均がトップランナー制度の目標水準を達成することを求めています。
これは、事業主がコストを下げるために建売住宅に省エネ性能を設置しないという選択を避けるためで、もしも目標水準を達成するための努力がなされていないとなれば、性能の向上に対して国土交通大臣から勧告されます。
勧告したにもかかわらず従わなかった際には、公表や命令、罰則を下すことが許されており、特定の事業主は住宅トップランナー制度をクリアすることが求められます。
トップランナー基準を満たす住宅とは?
トップランナー基準を満たす省エネ性能な住宅とは、どのような条件があるのでしょうか。トップランナー基準について見ていきましょう。
建物全体で見たエネルギー消費量の削減
2008年時点での一般的な住宅設備と比べて、エネルギー消費量が10%相当削減できていることがトップランナー基準です。しかし、これは2019年までの基準で、2020年からはさらに省エネを強化した15%の削減が求められます。
断熱性能だけを見た“外皮基準”も加わるため、トップランナー基準は高いレベルを求められています。
地域によってトップランナー基準は異なる
日本は暮らす地域によって気候が大きく変化するため、住宅に求められる断熱性能も異なります。トップランナー基準についても地域ごとに異なった基準が定められ、地域の特色を加味しながら基準値が定められています。
対象設備について
住宅で使用する設備には洗濯機や調理家電などにも省エネ製品がありますが、トップランナー基準では、給湯設備・照明設備・換気設備・空調設備が対象です。
また、エネルギーをつくりだす太陽光発電の設備も対象となり、算定方法が設備によって詳細に定められている点も特徴です。
トップランナー基準を満たした住宅は消費者の関心を引きやすい
高い省エネ効果を持っていると証明できるトップランナー基準を満たした住宅は、建築コストがかかる面もありますが、住み心地がよいため暮らす人にはメリットが多く、消費者の関心も高い住宅といえます。
消費者の購買意欲を高められるメリットについて見ていきましょう。
夏は涼しく冬は暖かい
断熱性能が高い家では、空調の使用を抑えることが可能になります。冬場に起きやすいヒートショックや、結露によるカビの繁殖なども防ぐことが期待でき、暮らす人の健康を守る住宅になるでしょう。
また、空調の使用を抑えることで光熱費も抑えることができるため、お財布にも優しい暮らしが可能になります。
節税や金利優遇
高い省エネ性能を持ち合わせることで、長期優良住宅と認められると、新築物件購入時に支払う“登録免許税”が2021年3月31日までは軽減対象となり、少ない税金で登記ができます。
また、一次エネルギー消費量等級5などの高い基準が認められると、ローンでも金利優遇を受けられる商品があることもあり、金利を安く抑えることができる点も、住宅購入を検討する消費者の背中を後押しする要因となります。
住宅トップランナー制度は快適な暮らしにもつながる制度
エネルギーは人が暮らすうえで必要不可欠なものですが、省エネの住宅にすることによって、地球にも人々にも快適な環境にすることができます。
自社の建築している住宅がトップランナー基準に到達していない場合は見直し、トップランナー基準がある背景にも注目しながら、省エネな住宅づくりをしていきましょう。