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[重要]省エネ基準適合住宅に欠かせない手続き、申請や判定に必要な書類は?

[重要]省エネ基準適合住宅に欠かせない手続き 申請&判定に必要な書類は?

LIFULL HOME’S総研の中山です。
今回は、2025年4月から施行される「改正建築物省エネ法」によって、すべての新築建築物に課せられる省エネ基準適合義務はどのように担保されるのかについて、もっぱら申請や必要書類などの手続き的な側面を解説します。

目次[非表示]

  1. 1.総論:省エネ基準適合住宅と認められるために判定を受ける必要がある
  2. 2.省エネ適合性判定を受けるために必要な書類は?
  3. 3.省エネ適合性判定を受けるまでの基本的な手続きの流れ
  4. 4.省エネ適合性判定に関わる計画変更が生じた場合は?
  5. 5.各論1:長期優良住宅認定通知書の場合
  6. 6.各論2:低炭素住宅認定通知書の場合
  7. 7.今回のまとめ:今後は省エネ基準に適合していないと確認済証も検査済証も交付されない

総論:省エネ基準適合住宅と認められるために判定を受ける必要がある

基本的に省エネ基準に適合しているかどうかはもちろん自主判断ではなく、所管の行政庁や第三者機関(民間の登録住宅性能評価機関といいます)の判定:省エネ適合性判定を受けなければなりません。

これから建築する住宅が省エネ基準に適合していることが着工前と完工後の検査でそれぞれ確認できないと、確認済証や検査済証の交付を受けることができませんから、着工も引渡しもできなくなりますので、注意が必要です。

なお、評価機関の省エネ適合性判定の審査は、時期にもエリアにもよりますが通常最短でも1~2週間程度かかると言われていますから、時間的余裕を考慮して着工の1~2ヶ月前には省エネ適合性判定の申請に必要な省エネ計算や書面準備に対応しておく必要があります。

省エネ適合性判定を受けるために必要な書類は?

主なものを列挙すると、

①建築計画書、通知書(計画通知物件の場合)、変更計画書(計画変更物件の場合)、変更通知書(計画変更・通知物件の場合)、軽微変更該当証明申請書(軽微変更の場合)のうちいずれか一通


②添付図書:設計内容説明書、付近見取図、配置図、仕様書、各階平面図、床面積求積図、用途別床面積表、立面図、断面図又は矩計図、各部詳細図、各種計算書など


③委任状兼同意書:建築主からの委任状および同意書


④その他:所管の行政庁や評価機関によっては、別途提出すべき書類が必要


​​​​​​​上記は、いずれも建築を請け負う設計事務所や工務店、ハウスビルダーであれば日常的に対応している書類ばかりですが、数が多いので漏れがないようご留意ください。

省エネ適合性判定を受けるまでの基本的な手続きの流れ

①建築確認申請

建築主が建築主事または指定確認検査機関に建築確認申請を行う

②省エネ計画書類提出

建築確認申請後、所管の行政庁または登録住宅性能評価機関に、省エネ基準に適合した省エネ計画書類を提出して審査を申請する

③審査

所管の行政庁または登録住宅性能評価機関が提出書類を審査する(1~2週間程度)

④省エネ適合判定通知書の交付

書類の不備や漏れがなく、省エネ基準に適合していると判定されれば、省エネ適合判定通知書が交付される

⑤省エネ適合判定通知書の提出

建築主が建築確認申請を行った建築主事または指定確認検査機関に省エネ適合判定通知書を提出する

⑥確認済証の交付

建築主事または指定確認検査機関が、省エネ適合判定通知書と建築確認申請書の整合性を確認して確認済証を交付する


これまでは、建築確認申請後に確認済証が交付されるのを待って着工、という“単純な流れ”だったのですが、これからはすべての新築建築物について、建築確認を申請した後に所管の行政庁または登録住宅性能評価機関に出向いて省エネ適合性判定を受けるための申請を行い、交付後に再び建築主事または指定確認検査機関にその書面を提出して整合性を確認してもらわないと確認済証が交付されませんから、手続き的にはかなり煩雑ですし、時間も手間もかかると認識するべきでしょう。

特に2025年4月の義務化直後は手続きで現場が混乱する可能性が高いので、時間的な余裕をしっかり持っておくことが必要です。また、今後は完工後の書類検査も実施されますが、省エネ適合性判定に必要な項目に建築中に変更がなければそのまま検査を受けられます。計画変更や軽微な変更がある場合は、別途手続きが必要になります。

省エネ適合性判定に関わる計画変更が生じた場合は?

建築中に、建築計画のやや大幅な変更が生じた場合は、省エネ適合性判定の変更計画書を提出しなければなりません。この場合は、改めて省エネ適合判定通知書を受けなければ、確認済証が交付されないので、一からやり直しになります。

“やや大幅な変更”とは、①建築基準法上の用途の変更 ②モデル建物法を用いる場合のモデル建物の変更 ③計算方法の変更(モデル建物法から標準入力法に変更した場合など)が該当します。所管の行政庁または登録住宅性能評価機関と相談しつつ、適切に対応する必要があります。

また、上記3点以外の変更は“軽微な変更”として扱われ、

A:建築物の省エネ性能を向上させる変更
B:一定の範囲内で省エネ性能を低下させる変更
C:再計算によって、省エネ基準に適合することが明らかな変更

が想定・区分されています。
AおよびBの場合、完了検査申請時に「軽微な変更説明書」と添付図書を提出すれば、完了検査を受けることができるとされています。

Cの場合は、完了検査の申請前に所管の行政庁または登録住宅性能評価機関に軽微変更該当証明を申請し、証明書の交付を受ける必要があります。具体的には「軽微な変更説明書」と「軽微変更該当証明書」を提出することで、完了検査が受けられます。

各論1:長期優良住宅認定通知書の場合

上記が一般的な省エネ適合住宅の申請~判定~書類交付に関する一連の手続きですが、長期優良住宅については、現状では最も厳しい基準が適用されていますので、手続きも若干異なります。

長期優良住宅の場合、登録住宅性能評価機関は「品確法」に基づいて、所管の行政庁が行う長期優良住宅建築等計画の認定の前に、申請者の求めに応じて当該計画が長期使用構造等であるかの確認を行い、申請者に対して確認書等を交付することとしています。

つまり、長期優良住宅の認定申請をしようとする建築主は、認定申請書に登録住宅性能評価機関が発行した確認書等を添付して、所管の行政庁に提出する必要があるのです。これは、長期優良住宅の認定が所管の行政庁のみに認められているからです。

各論2:低炭素住宅認定通知書の場合

さらに、低炭素住宅の場合は依拠する法律が異なるため、手続きが微妙に異なります。

低炭素住宅の認定については、登録住宅性能評価機関は 「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づいて、所管の行政庁が行う低炭素建築物新築等計画の認定を支援するため、認定申請に先立って&申請者の依頼に応じて、当該計画に係る“技術的審査”を行い、申請者に対して適合証(確認書ではないことに注意)を交付することとしています。

したがって、低炭素住宅の認定申請をしようとする建築主は、認定申請書に適合証を添付して、所管の行政庁に提出します。

今回のまとめ:今後は省エネ基準に適合していないと確認済証も検査済証も交付されない

2025年4月以降は、すべての新築建築物、もちろん注文住宅も分譲マンションも建売の一戸建ても賃貸マンションも投資用ワンルームにも一次エネルギー消費量等級4以上かつ断熱等級4以上の適合が義務付けられますから、解説した建築確認申請後の省エネ計画書類提出、その後の審査~通知書交付および提出を経て初めて建築確認の「確認済証」が交付される流れになります。

また、物件の完工後にも一連の書類検査を経て「検査済証」が交付されるので、住宅建築についての建築主からの依頼にはじまり着工~竣工~引渡しまでの手続きは煩雑になることが確実です

2025年4月以降に備えて、今から手続き面について不安を残さないようしっかり確認し、不明な点や疑問・確認事項などがあれば、躊躇なく(一社)住宅性能評価・表示協会に問合せることをお勧めします。


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中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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