住宅トレンド

小型・平屋住宅のトレンドを活かした商品開発と顧客提案術

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近年、小型・平屋住宅が注目を集めています。
住宅着工統計から居住専用住宅の床面積の合計を建築物の数で割り、住宅1棟あたりの平均床面積を算出してみると、2024年度は157.19m2。コロナ特需により、分譲住宅の勢いが凄まじかった2021年度に比べると徐々に戻してきているものの、それでも10年前の2014年度と比べると、3m2以上床面積が縮小していることとなります。

また、2024年度の1階建ての居住専用住宅の棟数は67,628棟。こちらは10年前と比べると、倍以上の数となっています。

このような小型化、平屋人気の背景には、高齢化の進行やライフスタイルの多様化、限られた土地をいかに工夫して使うかという意識、建築費が高騰している中でのコスト意識の高まり等があり、工務店にとっては商品ラインナップの見直しや顧客提案の仕組みを再構築すべきタイミングだと言えます。

今回は、小型・平屋住宅の商品開発の着眼点や、顧客提案の手法などのアイデアをお届けしていきます。

工務店が取るべき商品開発の着眼点

小型・平屋住宅の商品開発では、限られた延床での空間効率、住まい手のライフステージに合わせた可変性(将来の間仕切りや、在宅ワークへの対応)、エネルギー性能とメンテナンス性の両立などがテーマになり得ます。

特に平屋では、屋根形状を活かして大容量の太陽光発電を搭載しやすいです。そのことを活かし、蓄電池なども提案しながら、ライフサイクルコストからの訴求をテーマとすることも良いでしょう。

また、「ならでは」の生活提案も忘れないようにしたいところ。例えば小型住宅であれば、面積が限られていることを逆手に取り、「掃除がしやすい」などの提案が考えられます。平屋であれば、和テイストとの相性が良く、縁側などの提案も良いかもしれません。ほかにも平屋では、室内と室外のつながりを強調したアウトドアな生活提案も散見されます。

いずれにせよ、世の動向を受けて、小型・平屋商品というのは市場に溢れてきています。その中で埋もれることのないような尖った提案や、目を惹くような商品ブランディング・プロモーションが必要になってくることは間違いないでしょう。業界の垣根を越えたコラボレーションや、有名人を活用しての宣伝などを検討してみましょう。

価格戦略はどうする?

小型・平屋住宅はコストを抑えやすいため、そこを強調することは大切です。コストメリットをより強化するために、プランや仕様の規格化を行うことも業界ではよく見られる手段です。

一方、低価格だけで差別化すると薄利に陥りやすいことにも注意が必要です。そこで低価格以外の価値を持っておくことも大切になります。

例えば、自然素材や木の質感を前面に打ち出す、スマートホーム連携などの暮らしを手助けするサービスを導入する等、安い「だけではない」価値を持たせるようにしましょう。住友林業が平屋向けに打ち出す「GRAND LIFE」は木が持つ質感を活かして付加価値を高めている例です。平屋市場でもブランド化が成立することを意識すると良いでしょう。

小さくても広く感じさせるプランニング技術

小型・平屋住宅の魅力には、ワンフロアの回遊性と、内外のつながりで拡張感を出せることがあります。これらを強調するプランニングの具体的手法は、視線の抜けを作る(大開口+中庭の活用など)、可変性のある間仕切りを採用する(引き戸や可動収納など)、天井高の変化で空間にメリハリを付ける、ゾーニングで生活動線を短くする等が挙げられます。

こういった点をうまく織り交ぜている商品の1つが、無印良品の家「陽の家」です。同商品は、大開口と庭との連続を重視した平屋住宅となっており、参考の1つとなるかもしれません。

ほかにも平屋は屋根面積が大きくなるため、構造的な配慮(耐震・耐風)、屋根・外壁の防水処理、基礎断熱の設計が重要になります。また、小さい延床面積で収納を確保するための造作計画や、将来に備えたバリアフリー対策(段差の解消・手すり設置の余地)を組み込むと、引き渡し後の満足度が上がりやすくなると考えられます。

こういった設計手法をモデルハウスや実例に組み込み、実物を通して魅力をアピールすることが良いでしょう。昨今は平屋のモデルハウスを導入する会社も増えてきており、そういった建物の集客力は高いと聞きます。

営業・提案トークはどういったものが良い?

提案フェーズでは、顧客のライフイベント(子育て期、将来の介護想定、在宅ワーク)を聞き取り、その未来像に合わせた「その家だからできる解」を示すのが有効な手段の1つです。

モデルハウスや完成見学会で「動線体験ツアー」のようなものを設定し、階段の有無や家事動線の短さを体感してもらうことが良いでしょう。小型・平屋住宅のコストメリットを活かす場合は、「初期費用が違う分を、お子さまの学費に/老後の貯蓄に回すことができます」、など、住宅購入時に限らず、お客様の人生に寄り添って提案を行うようにしましょう。

小型・平屋住宅の流行は、住宅を小さくして建築費を抑えるだけでなく、暮らしを最適化したり、豊かな人生を提供したりするためのチャンスとも言えます。お客様の要望をしっかりとヒアリングし、最適な提案ができるように小型・平屋商品を強化しておきましょう。

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株式会社住宅産業研究所(JSK)
株式会社住宅産業研究所(JSK)
1976年設立、住宅業界専門の調査会社。「月刊TACT」などの情報誌・調査資料・セミナー・研修・コンサルティングなどを通じて全国の住宅会社に情報を提供する。

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