建築・施工管理

2026年建基法の変更点|注文住宅づくりへの影響は? 工務店の必須対応まとめ

catch-img

2025年の法改正で注目を集めた建築基準法ですが、2026年にはさらに動きがあり、特に注文住宅を検討している方や工務店にとっては、業務に直結する重要な変化となります。

本記事では、2026年の建築基準法改正が注文住宅にどのような影響を及ぼすのか、そして工務店が今から取り組むべき具体的な準備について、わかりやすく解説します。

ぜひ最後までご覧ください。

建基法改正を行う3つの要因

大きく変更になった2025年建築基準法の改正は、単なる規制の見直しにとどまらず、日本社会が抱える多様な課題に応えるための大きな転換点となります。

その背景には、主に次の3つの要因があります。

  • 脱炭素に向けて建物全体の省エネ強化が必要になる
  • 地震や豪雨に備え、構造安全性の強化が必要
  • 既存建築物の活用を推進する必要がある

では、それぞれ解説していきます。

脱炭素に向けて建物全体の省エネ強化が必要になる

2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、建築物の省エネルギー性能の向上が欠かせません。

今後は、現行基準を上回る断熱性能や設備効率が求められるだけでなく、新築住宅に限らず既存住宅の省エネ改修も一層推進されていくでしょう。

工務店にとっては、高断熱・高気密住宅の設計・施工技術の習得に加え、ZEHをはじめとする先進的な省エネ住宅を提案できる力を高めることが重要です。

さらに、再生可能エネルギーの導入支援にも積極的に取り組む姿勢が求められます。

地震や豪雨に備え、構造安全性の強化が必要

近年頻発する自然災害を踏まえ、建築物の構造安全性を確保することは喫緊の課題となっています。

特に木造住宅においては、耐震性や耐風性に関する基準が一段と厳格化されつつあり、今後は構造計算や地盤調査の対象範囲もさらに広がる見込みです。

工務店には、これらの最新基準に対応できる設計・施工体制を整えることが求められます。そのためには、構造計算に関する知識や技術の習得・向上が欠かせません。

加えて、顧客に対して「災害に強い家づくり」という観点から的確な提案ができる力も、これから一層重要になっていくでしょう。

既存建築物の活用を推進する必要がある

新築中心だった住宅政策は、近年、既存住宅の活用へと重点が移りつつあり、良質な住宅ストックの形成がこれまで以上に重視されています。

今後は、長期優良住宅の普及促進に加え、既存住宅の性能向上を目的としたリフォームへの支援も一層強化されていくでしょう。

このような流れのなかで、工務店にとってはリフォーム・リノベーション事業の重要性がますます高まっています。既存住宅に対する診断技術や改修提案力の習得はもちろん、住宅履歴情報の整備や中古住宅の流通促進といった取り組みも視野に入れることが求められます。

2026年建基法改正の変更内容まとめ

こ2026年の建築基準法改正の主な変更点は以下の2点です。

BIM図面審査の本格開始
(確認申請)
PDF図面に加えてIFC形式を活用するBIM(Building Information Modeling)図面審査が始まる。

確認申請用CDEを用いた電子申請と併用され、以後は段階的に対象が拡大していく予定

木造の壁量計算・柱の小径など“新基準”
「経過措置終了→完全適用」
2025年4月に施行された新基準については、2026年3月末までは旧基準の適用も認められる経過措置が設けられている。

しかし、2026年4月1日以降は新基準へ一本化され、設計や審査はすべて新基準を前提に行われる

これにより、工務店や設計事務所には、BIMへの対応や新しい構造基準に適合した設計体制の確立が急務となります。

さらに、施主への丁寧な説明やコスト調整も含め、早期に社内教育を実施し、申請フローを見直すことが不可欠です。

2026年建基法改正による注文住宅づくりへの影響

2026年の建築基準法改正は、注文住宅の設計や施工の進め方だけでなく、コストや施主への説明方法にまで大きな影響を及ぼすと考えられます。

①設計方法の変化による影響

意匠設計と並行して、構造計算や省エネ計算を進める体制の整備が必須となります。

その結果、設計初期の段階から多角的な検討が求められ、準備期間が長期化しやすくなることが想定されます。

こうした課題に対応するためには、BIMなどのデジタルツールを活用し、各工程を連携させながら効率的な設計方法を構築することが重要です。

②施工方法の変化による影響

断熱・気密・防湿性能については、これまで以上に高い精度が求められるようになります。

施工品質を確保するためには、詳細な施工監理を徹底するとともに、不備が発生した際の迅速な是正フローを強化することが欠かせません。

加えて、職人の技術力向上や品質管理体制の見直しも、今後ますます重要な課題となるでしょう。

③住宅の建設費用への影響

高性能化や設計・施工方法の複雑化に伴い、初期的な建築コストは上昇傾向にあります。

しかし、省エネ性能の向上による光熱費の削減効果や、国・自治体による補助金・税制優遇を活用することで、施主の実質的な負担は軽減することが可能です。

工務店においては、こうした情報を積極的に発信し、施主の理解と納得を深めていく姿勢が求められます。

2026年建基法改正|工務店の必須対応まとめ

本章では、2026年に予定されている建築基準法の改正に対し、工務店が具体的にどのような対応を取るべきかを詳しく解説します。

工務店の必須対応は以下の5つです。

  • 社内教育+申請体制を整える
  • ZEH相当の基準を標準仕様とする
  • 省エネ計算の内製化または外部連携を行う
  • BIMや電子申請などの導入を行う
  • 補助金・税制優遇提案の強化をする

では、それぞれ解説していきます。

社内教育+申請体制を整える

2026年の建築基準法改正により、省エネ適合や構造安全性の確認が必須となります。

工務店は、設計担当や営業担当を含む全社員への教育を徹底し、法改正の内容を正しく理解させることが重要です。

併せて、確認申請や審査機関との質疑応答に対応できる体制を整え、標準化されたチェックリストやマニュアルを導入することで、申請業務の効率化と品質確保を実現できます。

ZEH相当の基準を標準仕様とする

改正後は、省エネ基準がすべての住宅で義務化されるため、ZEH相当の断熱性能や設備仕様を標準化することが求められます。

初期コストは上昇するものの、光熱費の削減効果や補助金の活用によって、施主の実質的な負担は軽減できます。

工務店にとっては、「高性能住宅は当たり前」という姿勢を示すことが施主からの信頼につながり、同業他社との差別化を図る大きなカギとなります。

そのためにも、将来的な市場ニーズを見据えた標準仕様の見直しが急務といえるでしょう。

省エネ計算の内製化または外部連携を行う

改正後は、外皮性能や一次エネルギー消費量の計算がすべての住宅で必須となります。

そのため工務店は、自社で計算を行える人材を育成するか、専門の外部機関と連携する体制を早急に整える必要があります。

内製化はコスト削減や柔軟な対応に優れる一方で、外部委託には精度と効率を確保しやすいという利点があります。

いずれにしても、確実に適合判定をクリアできる体制を構築することが、今後の生き残りに不可欠な前提条件となるでしょう。

BIMや電子申請などの導入を行う

BIMや電子申請システムを段階的に導入する必要があります。

図面の整合性や数量計算、説明資料の一元管理が可能となり、業務効率化と品質向上を同時に実現できます。

さらに、今後の建築確認申請の電子化や設計業務の高度化に対応するためにも、これらのデジタルツールの導入は不可欠です。

業界全体でデジタル化が加速するなか、導入の有無が工務店の競争力を大きく左右することになるでしょう。

補助金・税制優遇提案の強化をする

省エネ基準の義務化に伴い、施主の初期コスト負担は増加する傾向にあります。

そのため工務店は、国や自治体が提供する補助金制度や税制優遇措置を積極的に提案することが重要です。

たとえば、「住宅省エネ2025事業」や「長期優良住宅に関する減税」を活用すれば、建築費の実質的な負担を大きく軽減できます。

また、最新の制度情報を常に把握し、シミュレーション資料を提示することで、施主に安心感を与えると同時に、契約率の向上にもつながります。

注文住宅づくりで予想される今後の傾向は?

2026年の建築基準法改正をきっかけに、注文住宅の設計や施工方法だけでなく、実際に暮らす人々のライフスタイルにも新たな流れが生まれるでしょう。

本章では、この法改正によって今後どのような動向が予測されるのか、主要なものを解説していきます。

高性能・省エネ住宅が標準になる

耐震性や断熱性に加え、創エネルギー機能まで備えた「高性能住宅」が、新たな標準として定着していくと見込まれます。

これにより、住宅選びの基準は「購入時の価格」から「生涯にわたるコスト」へと大きくシフトしていくでしょう。

初期費用の多寡だけでなく、光熱費やメンテナンスといったランニングコストを含めた長期的な経済性が重視されるようになり、高性能住宅への投資は、より賢明で持続的な選択として広く受け入れられていくと考えられます。

スマート設備による付加価値提案が必要になる

太陽光発電や蓄電池、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)といったスマート設備は、今後ますますパッケージ化されていく見通しです。

工務店には、これらを効果的に組み合わせ、付加価値の高い提案を行うことで競争力を高めることが求められます。

エネルギーの自給自足と効率的な活用を実現するスマートハウスは、快適性と経済性を両立させるだけでなく、暮らしそのものの質を大きく向上させる存在となるでしょう。

地域材活用と木質デザインの差別化が重要視される

地域材の活用や、木の質感を生かした木質デザインは、住宅を差別化する重要な要素として注目を集めています。

地域の風土に寄り添った家づくりは、住まいに個性と温もりを与えるだけでなく、環境意識の高い消費者層からの支持をさらに広げていくでしょう。

デジタル化で実現する効率と品質の両立

設計プロセスの前倒しや標準化、そしてデジタル化の進展によって、短納期でありながら高品質な注文住宅が主流となっていきます。

BIMの活用や電子申請の普及により、設計から施工、さらに維持管理に至るまでのプロセスが効率化され、施主にとっても透明性の高い家づくりが可能になります。

記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:近年の建築基準法改正の主な目的は何ですか?
A:今回の改正は、脱炭素社会の実現に向けた省エネ性能の強化、頻発する自然災害への備えとしての構造安全性向上、既存建築物の有効活用、さらにBIMの活用や電子申請の普及による審査・設計の高度化を主な目的としています。

Q:今回の改正で注文住宅にはどのような影響がありますか?
A:2025年の新基準の本格的な適用により、設計段階では、構造計算と省エネ計算を並行して行うことが必須となり、準備期間の長期化が予想されます。施工においては断熱・気密・防湿性能に関する基準が厳格化され、初期コストは上昇傾向にあります。ただし、高性能化による光熱費削減や各種補助金の活用によって、施主の負担軽減も期待できます。また、工務店には施主への説明責任がこれまで以上に求められるようになります。

Q:工務店は今回の改正に対し、具体的にどのような対応をすべきですか?
A:社内教育や申請体制の整備に加え、ZEH相当の標準仕様の策定、省エネ計算の内製化または外部パートナーとの連携が必要です。さらに、BIMや電子申請システムの導入、補助金や税制優遇を活用した提案力の強化も不可欠です。これらを通じて業務効率と品質を高め、競争力の向上につなげていくことが求められます。

Q:今後の注文住宅市場ではどのような傾向が予想されますか?
A:高性能・省エネ住宅が新たな標準となり、住宅選びの基準は「購入時の価格」から「生涯コスト」へとシフトしていきます。太陽光発電や蓄電池、HEMSなどのスマート設備による付加価値提案が一層重視され、地域材の活用や木質デザインによる差別化も進むでしょう。さらに、長期優良住宅などの第三者認証による価値の証明や、デジタル化による効率と品質の両立も市場の主流になると考えられます。

●関連コラムはこちら

執筆者

瀧澤 成輝(二級建築士)

住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。

大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。

特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。

編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

関連する最新コラム