建設業許可とは?種類・取得要件・申請方法・注意点を詳しく解説
建設業を始めるにあたってはさまざまな準備が必要です。資金や資材、人材などの経営資源を用意するとともに、開業に必要な手続きも確実に進めていきましょう。
今回は、新たに建設業を始める際に必要となる「建設業許可」について、知っておきたい基礎知識をご紹介します。許可の種類や許可が不要なケース、申請方法、申請時の注意点などをまとめて見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.建設業許可とは?種類と許可が不要なケース
- 1.1.知事許可と大臣許可
- 1.2.一般建設業と特定建設業
- 1.3.業種による区分
- 1.4.許可が不要なケース
- 2.建設業許可の取得要件
- 2.1.1.建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者
- 2.2.2.専任技術者の設置
- 2.3.3.誠実性
- 2.4.4.財産的基礎等
- 2.5.欠格要件
- 3.建設業許可の申請方法と必要書類
- 4.建設業許可申請の注意点
- 4.1.有効期間は登録から5年間
- 4.2.許可失効によるリスク
- 5.更新申請が間に合わない場合の対応
- 5.1.後から更新申請を行う
- 5.2.更新忘れを防ぐためのポイント
- 6.この記事を監修した人
建設業許可とは?種類と許可が不要なケース
「建設業許可」とは建設業を営むうえで必要となる許可のことであり、建設業法第3条に規定されたルールです。後述する例外を除いて、すべての建設会社に必要な手続きで、取り扱う工事が公共工事であるか民間工事であるかは問われません。
建設業許可の区分には「許可行政庁による区分(知事許可と大臣許可)」と「下請け契約の規模による区分(一般建設業と特定建設業)」「業種による区分」の3種類があり、会社によって必要となる許可の種類が異なります。
知事許可と大臣許可
建設業許可は、営業所をどのように設置するかによって許可を出す主体(行政庁)が異なります。具体的な種類は次のとおりです。
<許可行政庁による建設業許可の種類>
- 知事許可:1つの都道府県に営業所を設置する場合
- 大臣許可:2つ以上の都道府県に営業所を設置する場合
上記のように、どの行政庁が許可を行うかについては、営業所の設置場所のみによって決められます。たとえば、全国のエリアを対象に工事を請け負う場合であっても、営業所が単一の都道府県にしか設置されないのであれば知事許可となります。
一方、たとえ単一の都道府県でしか工事を行わない場合でも、営業所が異なる都道府県に設置されるのであれば大臣許可となるため注意が必要です。なお、営業所を複数設置する場合であっても、すべての営業所が同じ都道府県内に設置されるのであれば知事許可となります。
一般建設業と特定建設業
建設業許可は、さらに下請け契約の規模によって「一般建設業」と「特定建設業」の2つに区分されます。
■下請け契約の規模による区分
特定建設業 |
発注者から直接請け負った工事代金について、1件あたり4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上となる下請け契約を結ぶ場合 |
一般建設業 |
上記以外 |
つまり、元請け会社として工事を受注し、一定以上の金額で下請け会社に依頼をする場合には特定建設業の許可が必要になるということです。ただし、あくまでも元請け会社であることが一つの条件となるため、たとえば「下請け会社Bが元請け会社Aから依頼を受け、孫請け会社Cに4,500万円以上の下請け契約を結ぶケース」などでは、下請け会社B自体は一般建設業で差し支えないとされています。
また、比較的に規模の大きな工事を元請けするとしても、その大半を自社で施工するなどして、常時下請け契約の総額が4,500万円未満になるのであれば一般建設業の許可でも問題はありません。なお、工事の請負代金には「消費税および地方消費税を含める」必要があるので注意しましょう。
業種による区分
建設業の許可は、さらに建設工事の種類別に取得する必要があります。建設工事には「土木一式工事」と「建築一式工事」の2つの一式工事と、27の専門工事の「計29種類」があります。
異なる業種にまたがって施工する場合は、実施する工事の種類ごとに許可を取得する必要があるので注意が必要です。なお、許可業種については、後から追加で新しいものを取得することも認められています。
許可が不要なケース
例外として、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、必ずしも建設業の許可を受けなくてもよいこととされています。軽微な建設工事とは、具体的に次のようなものを指します。
<軽微な建設工事の範囲>
- 建築一式工事以外の工事:1件の請負代金の額が500万円未満の工事
- 建築一式工事:請負代金の額が1,500万円未満、または延べ面積が150平米未満の木造住宅の工事
建設業許可の取得要件
建設業の許可を得るには、建設業法第7条の4つの許可要件を満たし、第8条の欠格要件に該当しないことが条件となります。ここでは、4つの許可要件と欠格要件について具体的にご紹介します。
1.建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者
建設業許可を受けるためには、建設業の経営において、一定以上の能力・経験を持った人が少なくとも1人は必要とされています。
■要件
1 |
建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者経験がある |
2 |
建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位がある者として、経営業務管理の経験がある |
3 |
建設業に関して6年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位がある者として、経営業務管理の補佐経験がある |
4 |
①5年以上役員などの経験を持ち、かつ建設業に関して2年以上役員などの経験がある |
②財務管理、労務管理または業務運営に関して5年以上役員に次ぐ職制上の地位として業務の経験を持ち、かつ建設業に関して2年以上役員などの経験がある |
ただし4.の場合には、該当する役員を補佐する者として、「財務管理」、「労務管理」、「運営業務」について、5年以上の業務経験を有する者をそれぞれ置く必要があります。
なお、許可を取得したあとに該当する担当者が退職し、後任が不在になった場合は許可取り消しとなってしまうので注意が必要です。
2.専任技術者の設置
許可を受けるためには、営業所ごとに「専任技術者」を設置する必要もあります。一般建設業と特定建設業で、専任技術者の要件は次のように異なります。
■専任技術者の要件
一般建設業 |
1.指定学科修了者で高卒後5年以上もしくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者 |
特定建設業 |
1.国家資格者 満たしている者で、かつ許可を受けようとする建設業に関して、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4,500万円以上であるものについて2年以上指導監督的な実務経験を有する者) |
3.誠実性
誠実性とは、請負契約の締結や履行にあたって、不正・不誠実な行為をするおそれがないことを指します。誠実性は許可を求める法人や個人に求められるのはもちろんのこと、営業取引で重要な地位にある役員にも必要とされます。
4.財産的基礎等
建設業許可においては、建設業を営むにあたって十分な準備資金が用意されているか、あるいは用意する能力を持っているかも問われます。具体的な要件は、一般建設業と特定建設業とで異なります。
■財産的基礎に関する要件
一般建設業
|
次の「いずれか」に該当すること。 |
特定建設業 |
次の「すべて」に該当すること。 |
上記のように、特定建設業のほうがより厳しい要件を満たす必要があります。なお、流動比率とは1年以内に現金化が可能な資産(流動資産)が、1年以内に返済が求められる負債(流動負債)に対してどのくらいの割合で用意されているかを示す指標です。
比率が高いほど短期的な財務の安全性が高いと判断することができ、特定建設業許可を受けるには75%以上が条件となります。
欠格要件
建設業法第8条では、次の欠格要件が示されています。代表的な欠格要件は次のとおりです。
<欠格要件>
- 破産者で復権を得ない者
- 一般建設業許可または特定建設業許可が取り消され、取り消し日から5年経過していない者
- 営業停止処分の期間が経過していない者
- 禁錮刑以上の刑に処せられ、執行が終わってから、もしくは刑の執行を受けることがなくなってから5年経過していない者
- 精神機能の障害により適切な認知や判断、意思疎通ができない者
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年経過していない者
上記の要件にひとつでも該当する場合は、許可を受けることができません。また、許可申請書や提出書類に虚偽の記載が見られた場合、重要な事実に関する記載が欠けている場合も欠格の対象となります。
建設業許可の申請方法と必要書類
建設業許可を申請する際には、許可行政庁に必要書類を提出しなければなりません。先にも述べたように、記載漏れがあれば欠格になるおそれもあるので注意しましょう。
ここでは、申請手続きの流れと必要書類について解説します。
申請手続きの流れ
基本的な申請の手順は次のとおりです。
■申請手続きの流れ
1 |
取得する許可の種類をチェックする |
2 |
許可取得の要件をチェックする |
3 |
必要書類(許可申請書・添付書類)を収集・作成する |
4 |
許可行政庁に申請して手数料を支払う |
5 |
審査を受ける |
6 |
建設業許可通知書を受け取る |
許可の申請時には、知事許可で9万円、大臣許可で15万円の手数料がかかります。申請先によって支払い方法が異なる場合もあるので、事前に調べておくと安心です。
また、審査には知事許可で1ヶ月程度、大臣許可で3~4ヶ月程度の時間がかかるのが一般的であり、手続きのタイムラグには十分に気をつける必要があります。申請先によっては、審査の標準処理期間(申請が行政庁に到達してから処分をするまでの標準的な期間)が公開されている場合もあるので、気になる場合は事前にチェックしておくとよいでしょう。
必要書類
許可申請に必要な書類は、許可申請書と添付書類の2つに大別することができます。許可申請書は許可行政庁のホームページなどでダウンロードできるので、早めに取得して準備を進めましょう。
添付書類については、個人と法人で求められる内容に違いがあるので注意が必要です。具体的な書類の種類は、以下のページからご確認ください。
(国土交通省:『許可申請に必要となる書類の一覧』(令和4年3月31日より適用))
建設業許可申請の注意点
続いて、建設業許可に関する注意点を2つに分けて見ていきましょう。
有効期間は登録から5年間
建設業許可には有効期間があり、登録してから5年間となっています。期間満了後も引き続き登録する場合は、有効期間の満了日となる「30~90日前まで」に更新申請を行う必要があります。
なお、有効期間は登録日から5年目の「許可日の前日」をもって満了となり、その日に行政庁が休日である場合も例外はありません。更新手続きでは、許可を受けていた期間に関する変更届などの書類提出を済ませておく必要があるので、ゆとりを持って準備しましょう。
許可失効によるリスク
更新手続きを怠ったまま期間が満了し、建設業許可が失効した状態で業務を続けていると、無許可営業として業務改善命令や営業停止処分となる恐れがあるので注意しましょう。さらに、場合によっては最大で「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」の刑罰が科されるおそれもあります。
なお、建設業を廃業する予定の場合は、放置したまま許可の失効を待つのではなく、きちんと廃業届を提出しなければなりません。正しく廃業の届出が行われない場合、過去の実績がすべて抹消されるため、新たに許可申請を行う際に不利に働くおそれもあります。
更新申請が間に合わない場合の対応
これまで見てきたように、万が一建設業許可が失効すれば、そのまま営業を続けることはできなくなります。ここでは、やむを得ず更新申請期間を過ぎてしまった場合の対応について見ていきましょう。
後から更新申請を行う
更新期日を過ぎてしまった場合でも、基本的には後から更新申請の手続きを行うことが可能です。自治体によっても取扱いは異なりますが、有効期間満了までに仮受付を行うことで一定の猶予期間が与えられ、その間に手続きを済ませれば更新が認められるケースもあります。
そのため、更新期日を過ぎた場合にはできるだけ早いタイミングで許可行政庁の窓口に連絡し、すぐに更新手続きを行う旨を伝えましょう。なお、申請によって審査中となっている間は、許可が「有効扱い」となるため、建設業の営業そのものは続けられます。
更新忘れを防ぐためのポイント
更新忘れの代表的な原因として、「更新日の異なる許可手続きが複数ある」といったケースが挙げられます。更新日の異なる業種については、バラバラに管理をしていると抜け漏れにつながるため、更新時に一本化してしまうとよいでしょう。
つまり、更新期日を迎えた許可の更新を行うタイミングで、まだ期日のきていない許可も前倒しで更新申請するという方法です。各許可の有効期間などの条件はありますが、まとめて申請できれば次回以降の手続きを管理しやすくなります。
また、本店と支店など複数の事業所で許可申請を行っている場合は、各許可についてどこが申請の主体になるのかを明確にしておくことが重要です。更新手続きの担当者を決め、各事業所のデータを一元管理するなど、情報の行き違いがないような仕組みを構築しましょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:建設業許可とは?
A:建設業を営むうえで必要となる許可のことであり、建設業法第3条に規定された決まりです。「軽微な建設工事」のみを請け負う場合を除き、すべての建設業者が取得する必要があります。
Q:建設業許可の種類は?
A:建設業許可には、「許可行政庁による区分(知事許可と大臣許可)」「下請け契約の規模による区分(一般建設業と特定建設業)」「業種による区分(計29種類)」の3つの区分が存在します。営業所の所在地や下請け契約の規模、請け負う工事の種類によって必要な許可が異なるので注意が必要です。
Q:建設業許可の要件は?
A:「建設業の経営業務の管理を適正に行う能力を有する者が1人以上いること」「条件を満たした専任技術者を設置すること」「誠実性」「財産的基礎等」の4つの要件をすべて満たしたうえで、建設業法第8条の欠格要件に該当しないことが条件となります。
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この記事を監修した人
廣石 倫(ひろいし ひとし)
行政書士/宅地建物取引士/2級ファイナンシャルプランニング技能士/貸金業務取扱主任
不動産売買やノンバンクでの業務経験を生かし、農地や山林、再建築できない空き家の相続から、代償分割で現金が足りない際の資金調達など、「ちょっと難しい相続」を積極的にサポートしています。