建築・施工管理

【建築業界の職種】建設業の専任技術者とは?必要な資格や要件、実務経験について解説

【建築業界の職種】建設業の専任技術者とは? 必要な資格や要件、実務経験について解説

建設業における専任技術者は、建設業許可を受ける営業所において、常時配置することが法律によって義務付けられています。主な役割として、工事の請負契約を適正な形で締結し、その履行を図ることが求められます。

専任技術者は誰でもなれるというものではなく、一定の資格や経験を備えていなければなりません。この記事では、専任技術者の主な役割や必要とされる資格、実務経験などについて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.建設業の専任技術者の主な役割
  2. 2.専任技術者の要件と必要とされる資格
    1. 2.1.一般建設業における専任技術者の資格
    2. 2.2.特定建設業における専任技術者の資格
  3. 3.専任技術者の兼任はできる?
    1. 3.1.兼任が認められるケース
    2. 3.2.兼任が認められないケース
  4. 4.専任技術者の実務経験を証明する際の注意点
    1. 4.1.工事の種類によっては専任技術者になれない
    2. 4.2.工事の間隔が12ヶ月以上空いていない
  5. 5.この記事を監修した人

建設業の専任技術者の主な役割

建設工事の請負契約を結び、適正に履行することを確保するには、専門的な知識が必要とされます。見積書の作成や入札の実施など建設業に関する業務は営業所単位で行われることから、各営業所において一定の資格や経験を持った専任技術者を置くことが求められます。

具体的には、建設業法第7条・第15条に規定があり、専任技術者の配置が義務付けられている点を押さえておきましょう。専任技術者の配置は、建設業許可の要件のひとつであるため、退職などによって前任者がいなくなる予定の場合、早めに人員配置を行う必要があります。

また、一般建設業と特定建設業では求められる要件が異なるので気をつけておきましょう。

(参照:e-Gov「建設業法」

専任技術者の要件と必要とされる資格

専任技術者は営業所に常勤し、一定の資格または実務経験があることなどが要件として定められています。一人で複数の業種の専任技術者となることは可能ですが、必要とされる資格や実務経験は一般建設業・特定建設業によって異なります。

それぞれの違いについて、詳しく紹介します。

一般建設業における専任技術者の資格

一般建設業の専任技術者となるためには、一定の国家資格を保有しているか、指定学科を卒業したうえで学歴に応じた一定期間以上の実務経験を備えているか、もしくは10年以上の実務経験があるかのいずれかの要件を満たしている必要があります。

まず国家資格についてですが、建設業の種類によって求められる資格の種類は異なります。たとえば、「土木一式」であれば以下の国家資格が必要です。

■一般建設業「土木一式」で専任技術者になれる国家資格

  • 1級建設機械施工管理技士、2級建設機械施工管理技士
  • 1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(土木)
  • 技術士

(参照:国土交通省「建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧」

次に、指定学科を卒業している場合ですが、建設業の種類ごとに学歴に応じた一定期間以上の実務経験が求められます。具体的には、高卒であれば5年以上、大卒で3年以上、専門学校卒で5年以上(専門士もしくは高度専門士であれば、3年以上)の実務経験が必要です。

実務経験は建設工事の施工に直接関わる経験であれば問題ありませんが、営業や経理などの間接的な業務は実務経験に含まれないので注意しましょう。そして、指定学科を卒業していなくても、10年以上の実務経験があれば一般建設業の専任技術者になれる点も押さえておきましょう。

特定建設業における専任技術者の資格

特定建設業の場合は、一定の国家資格を保有しているか、一般建設業の要件を満たしたうえで2年以上の指導監督的経験があれば専任技術者となれます。要件に該当する国家資格は一般建設業と重なる部分も多いですが、より上位の資格が求められる点に注意が必要です。

たとえば、一般建設業の専任技術者となることができる「建築一式」の資格は、2級建築施工管理技士(種別:建築)や2級建築士も該当します。しかし、特定建設業においてはそれぞれ1級しか認められていません。

(参照:国土交通省「建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧」

次に、一般建設業の要件を満たしたうえで2年以上の指導監督的経験があるという要件について見ていきましょう。許可を受けようとする建設業において発注者から直接請け負い、請負代金が4,500万円以上である工事において2年以上の指導監督的な実務経験がなければなりません。

指導監督的な実務経験とは、建設工事の設計や施工の全般にわたって指導監督する経験を指します。工事現場の主任や現場監督者のような立場で、工事の技術的な部分を総合的に取り仕切った経験をいいます。

専任技術者の兼任はできる?

専任技術者は兼任が可能ではありますが、必ずしもすべてのケースで認められるわけではありません。兼任が認められるケースと認められないケースとに分けて解説します。

兼任が認められるケース

専任技術者の兼任が認められるものとして、まず専任技術者が一人で複数の業種を技術者として兼任しているケースが挙げられます。同じ営業所内であれば、一人で複数の業種を兼任しても問題ありません。

また、専任技術者と経営の管理責任者を兼任している場合も認められます。加えて、一人親方が専任技術者である場合に、以下の要件を満たしていれば兼任は可能です。

■主任技術者などと兼任できる場合の要件

  • 営業所が請負契約を結んだ工事である。
  • 営業所と工事現場が近接しており、常時連絡を取ることができる。
  • 専門性が求められる大規模工事ではない。


主任技術者とは、工事現場を管理するための資格を保有している者のことであり、常勤配置が義務付けられています。特定建設業における監理技術者においても、基本的に同様の要件です。

兼任が認められないケース

専任技術者の兼任が認められるのは、あくまで同一の営業所内の話です。そのため、他社の従業員として働いている場合や、他の営業所の専任技術者となっている場合は兼任が認められません。

専任技術者の実務経験を証明する際の注意点

専任技術者の要件は、国家資格による証明がスムーズですが、一人親方の場合などには思うように資格を取得するための学習時間を確保できないなどの課題もあるでしょう。そのため、実務経験によって証明する方法を選択することも考えられますが、いくつかの注意点があります。

工事の種類によっては専任技術者になれない

電気工事や消防施設工事、解体工事業などは、実務経験のみでは専任技術者になれない場合があるので気をつけておきましょう。実務経験あるいはその期間を証明するには、資料を用意する必要があります。

建設業許可を受けていない事業者の下で働いていた場合は、数年分の建設工事の内容や請負金額、工事期間などが確認できる工事契約書、注文書、見積書、請求書などが必要となります。建設業許可を受けていた事業者での実務経験の証明は、建設業許可申請書の副本と決算変更届の副本の確認によって行われる点を押さえておきましょう。

工事の間隔が12ヶ月以上空いていない

工事と工事の間隔が12ヶ月以上、空いていてはいけません。また、同じ期間内に2つの実務経験を同時に積むこともできないので注意が必要です。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:建設業の専任技術者とは?
A:
建設業法によって営業所ごとに配置が義務付けられており、建設工事の請負契約の締結とその履行の確保を主な役割としています。国家資格や指定学科の卒業、実務経験のいずれかの要件を満たすことでなることができます。

Q:専任技術者は兼任が可能?
A:
兼任は可能ですが、他社の従業員として働いていたり、他の営業所の専任技術者になっていたりすれば兼任は認められません。あくまで、同一の営業所内でしか兼任が認められていない点に注意しましょう。

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この記事を監修した人

岩納 年成(一級建築士)

大手ゼネコン会社にて、官公庁工事やスタジアム、免震ビル等の工事管理業務を約4年経験。その後、大手ハウスメーカーにて注文住宅の商談・プランニング・資金計画などの経験を経て、木造の高級注文住宅を主とするビルダーを設立。
土地の目利きや打ち合わせ、プランニング、資金計画、詳細設計、工事統括監理など完成まで一貫した品質管理を遂行し、多数のオーダー住宅を手掛け、住まいづくりの経験は20年以上。法人の技術顧問アドバイザーとしても活動しながら、これまでの経験を生かし個人の住まいコンサルテイングサービスも行っている。


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編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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