建築・施工管理

工期遅れの対処法と事前にリスクを減らすための対策を解説

工期遅れの対処法と事前にリスクを減らすための対策を解説

工務店にとって、工期の遵守は最重要課題の一つといえます。工期遅れが発生すれば、さまざまなトラブルにつながるとともに、自社の評判に傷がつく恐れもあるでしょう。

今回は工期遅れによって起こる影響を解説したうえで、実際に発生してしまったときの対処法を6つのステップに分けてご紹介します。また、工期遅れを防ぐための対策についても詳しく見ていきましょう。

目次[非表示]

  1. 1.「工期遅れ」はいつからカウントされる?
  2. 2.工期遅れが起こる原因と影響
    1. 2.1.施工会社側に原因がある場合
    2. 2.2.施主側に原因がある場合
    3. 2.3.どちらにも原因がない場合
  3. 3.工期遅れの対処法
    1. 3.1.社内での情報共有
    2. 3.2.原因の特定と対策の検討
    3. 3.3.工程の組み直し
    4. 3.4.工事関係者への連絡・相談
    5. 3.5.施主様への連絡・代替案の相談
    6. 3.6.原因の究明と再発防止策の検討
  4. 4.工期遅れのリスクを減らすための対策
    1. 4.1.工期遅れにつながる要素を工程表に反映させる
    2. 4.2.早めの発注を徹底する
    3. 4.3.工期に関する基準をチェックする
    4. 4.4.保険に加入する場合は補償内容をチェックする

「工期遅れ」はいつからカウントされる?

そもそも「工期」とは、「建築工事の開始から完成まで」の期間を意味します。建築請負契約においては、施主と施工会社との間でスケジュールが話し合われ、双方が合意したうえで工期が設定されます。

そして、合意した内容を明確に記録するために、建設工事請負契約書に着手~引き渡しまでの工期を記載するのが一般的です。たとえば、国土交通省中央建設業審議会が作成したいわゆるテンプレートにあたる「標準請負契約約款」では、契約書の冒頭で「工期自 令和○年○月○日 至 令和○年○月○日」という記載欄が設けられています。

しかし、住宅の場合は完成日以上に「引き渡し日」のほうがお客さまに与える影響が大きいと考えられます。そのため、工期遅れと表現される場合には、引き渡し日の遅延を指すケースが多いです。

さらなるトラブルを防ぐためには、予定された期日に引き渡しを行えないことが想定された時点で工期遅れであると判断し、速やかに手を打たなければなりません。

(出典:国土交通省中央建設業審議会『建設工事標準請負契約約款』)

工期遅れが起こる原因と影響

工期遅れが発生したからといって、ただちに施工会社の責任が問われるわけではありません。遅れてしまった原因によって、当然ながら責任の所在や影響は異なります。

施工会社側に原因がある場合

職人不足や施工ミスの発生など、施工会社側の原因によって工期が大幅に延長した場合は、請負契約の債務不履行に該当します。たとえば、「十分な人員を確保できなかった」「急な欠員に対して補充が間に合わなかった」「途中で施工ミスが見つかり、修正に時間がかかってしまった」といったケースです。

施工会社側の過失が原因である場合は、違約金の支払いや損害賠償請求、契約解除が行われる可能性もあるため、速やかに対処する必要があります。

施主側に原因がある場合

「施主の希望で追加変更工事が発生した」「着手金や中間金の支払いが遅れた」など、施主側の原因によって工期が遅れるケースもあります。この場合は、施主側に責任があるとみなされるため、基本的に施工会社側は責任を問われることはありません。

ただし、予定通りに引き渡しが行えないことは事実であるため、あらかじめスケジュールに影響が出ることを伝えておくなどの配慮は必要となります。

どちらにも原因がない場合

どちらにも原因がない場合とは、「想定外の台風や地震に見舞われた」「国際情勢に伴う資材不足で工事がストップしてしまった」など、不可抗力で工期遅れが発生したケースです。この場合も施工会社側には責任がないとされますが、トラブルを避けるためには、こまめに関係者とコミュニケーションを図ることが大切です。

工期遅れの対処法

工期が遅れると判明したら、まずは速やかに関係者と連絡をとり、正確に状況報告を行う必要があります。そのうえで、トラブルを最小限に抑えるために、適切な形で対処を行わなければなりません。

ここでは、工期遅れの対処法を6つのステップに分けて見ていきましょう。

社内での情報共有

社内においては、工期遅れにつながる要因が見つかった段階で、管理者、担当営業、設計などの関係者へ速やかに情報伝達することが大切です。施主様や工事関係者にどのように伝えるべきかを話し合い、正確な情報を共有しておかなければなりません。

原因の特定と対策の検討

社内での情報共有が済んだら、速やかに工期が遅れた原因を特定し、具体的な解決策を検討します。たとえば、人手不足が原因である場合は、具体的にどのスキルを持った人材が何人不足しているのかを明らかにしたうえで、応援の人員を確保しなければなりません。

工程の組み直し

遅れの原因と解決策を明らかにしたら、改めて工程を組み直します。修正後の工程表は、対応策を反映させたうえで、実現可能なものであるかどうかを丁寧に確認することが大切です。

工期遅れが繰り返し発生すれば、施主様との信頼関係が大きく損なわれてしまいます。希望的観測などはできるだけ除外して、確実性の高い工程表を作成し直しましょう。

工程表が完成したら、社内で速やかに共有するとともに、口頭で変更点を伝えたうえで確認や協力を求める必要があります。

工事関係者への連絡・相談

社内での情報共有が済んだら、工事関係者と連携を図り、組み直した工程表をもとに工事の再手配を行います。ただし、必ずしも施工会社側が検討した工程表どおりに手配が行えるとは限りません。

工期遅れによってスケジュールが変更されれば、資材の納入や段取りに大きな影響が出るため、さまざまな問題が予想されます。次のような点に配慮し、さらなるトラブルを避けることが重要です。

■想定される影響

  • 現場工事の時間延長で複数の依頼先がバッティングしてしまう
  • 異なる作業を行う職人同士が干渉してしまう
  • 駐車台数の変更に伴い、駐車スペースの追加確保が必要になる
  • 資材の納入が重なることで、在庫置き場が不足する
  • 廃材・残土の仮置き場が不足する
  • 必要な重機が足りなくなる
  • 工事に関連する保険の期間延長が必要になる


各所とのすり合わせを経て、改めて工程表を調整しましょう。当初の予定を変更すれば、工事現場の状況が煩雑になってしまうことは避けられないため、それまで以上に安全性と品質の管理が求められます。

施主様への連絡・代替案の相談

施主様への連絡では、当然ながら遅れてしまっている事実を正確に伝えなければなりません。そのうえで、現状だけでなく今後の対応も一緒に報告することが重要です。

組み直した工程表をもとに、「なぜ工期が遅れてしまっているのか」「今後の工期がどうなるのか」「引き渡しはいつになるのか」などを丁寧に共有する必要があります。また、住宅の引き渡しが遅れれば、仮住まいの追加費用が発生したり、引越しのキャンセル料が発生したりする可能性も考えられます。

遅れの原因が施工会社側にある場合は、その分の費用も施工会社が持つ必要があるため、自社が負担する旨を伝えたうえで、具体的な金額を確認しましょう。なお、完成後に支払われる最終金の入金日も遅れるため、キャッシュフロー計算にも大きな影響が発生します。

入金日の変更についても忘れずに打ち合わせておき、変更後の日程を社内の経理部門に伝えましょう。

原因の究明と再発防止策の検討

施主様への連絡が済んだら、まずは再設定した工期に遅れないためにも、現場のスケジュール管理を徹底する必要があります。そのうえで、再発防止につなげるためには、改めて根本原因を究明し、適切な対処法を検討することが重要です。

ここからは、工期遅れを防ぐための具体的な対策方法について見ていきましょう。

工期遅れのリスクを減らすための対策

工期遅れを発生させないためには、工程表のクオリティを改めて見つめ直す必要があります。ここでは、工期遅れのリスクを軽減させるための対策を3つのポイントでご紹介します。

工期遅れにつながる要素を工程表に反映させる

まずはどのような原因で工期遅れが発生するのか、原因や傾向をしっかりとつかんだうえで、工程表に反映させることが大切です。たとえば、梅雨や台風シーズン、大型連休を挟むようであれば、あらかじめ工程にゆとりを持たせ、不測の事態を吸収できるようにしておく必要があります。

特に、連休前などは資材搬入にも影響が出る場合があるため、納入会社にも事前に確認をしておくとよいでしょう。また、工事内容に合わせて予備日を設けることも重要です。

たとえば、地下水位が不明瞭な現場では、地盤の補強や排水処理のために予想以上に時間がかかる可能性があります。不確定な情報が多いほど、工期遅れのリスクも上がってしまうため、予備日の重要性も高まるといえるでしょう。

早めの発注を徹底する

スケジュール管理においては、特に職人の確保が難しい課題となります。必要なタイミングで十分な人員を確保するには、やはり「工程が確定した段階で早めに連絡をとる」のが基本です。

そのうえで、情報の行き違いを防ぐためにも、確実に発注書を送り、発注請書を受け取っておく必要があります。

工期に関する基準をチェックする

工程表に無理がある場合は、そもそも建設業法違反に該当する恐れもあります。建設業法第19条の5では、注文者が下請け会社に対して、著しく短い工期を設定した状態で契約を結ぶことが禁じられています。

無理な工期設定は、工期遅れの原因になるのはもちろん、国土交通大臣による勧告・公表といった事態に発展するリスクもあるので注意が必要です。国土交通省の中央建設業審議会では、不当な工期設定を避けるためのガイドラインとして、「工期に関する基準」が作成されています。

適正な工期設定を行うためにも、一度は資料全体に目を通しておきましょう。

(出典:e-Gov『建設業法』)
(出典:国土交通省:『工期に関する基準の実施を勧告~建設工事の適正な工期の確保をするための基準が作成されました!~』)

保険に加入する場合は補償内容をチェックする

工事関連保険のなかには、工期遅れに伴う損害を補償しているものもあります。しかし、補償の内容・範囲は商品ごとに異なるため、原因や発生状況によっては補償が受けられない可能性もあります。

万が一の事態に対応するためにも、保険はできるだけ広範囲な補償を行っている商品を選ぶとともに、必ず契約内容を確認しましょう。

●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:工期遅れとは?
A:
さまざまな考え方がありますが、基本的には引き渡しに遅れてしまうことを工期遅れと表現する場合が多いです。工期遅れを防ぐためには、工程ごとに目標スケジュールとのズレをチェックし、こまめに状況把握を行うことが大切です。

Q:工期遅れが発生するとどうなる?
A:
施工会社側に原因がある場合は、損害賠償請求や契約の解除といったリスクにつながります。一方、施主様側に原因がある場合や不可抗力の場合は、原則として施工会社側が責任を負うことはありません。ただし、その場合も速やかに連絡をとり、今後の対応について丁寧に相談する必要があります。

Q:工期遅れが判明したときの対処法は?
A:
まずは社内で速やかに情報共有し、原因と解決策を明らかにしたうえで工程表を作成し直します。そして、工事関係者との調整を行ったうえで施主様に連絡します。施主様に対しては、遅れた事実とともに今後の対応や変更後の引き渡し日、遅れに伴って発生する追加費用の負担などについても明確に共有することが大切です。


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工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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