電気工事の見積書の作成方法とは?流れやポイント、作成する際の注意点を解説
電気工事の依頼を受ける際には、見積書を作成して依頼主に分かりやすく提示する必要があります。見積書は依頼者が発注を判断するうえで重要な材料となるので、正確に作成しなければなりません。
この記事では、電気工事の見積書の作り方と作成のポイント、作成時の注意点について解説します。
目次[非表示]
- 1.電気工事の見積書に記載する項目
- 1.1.宛名・差出人の情報
- 1.2.発行日と見積もりの有効期限
- 1.3.見積もりの内訳・合計金額
- 1.4.法定福利費
- 2.見積書を作成するポイント
- 3.見積書を作成するまでの流れ
- 3.1.概算見積もりを提示する
- 3.2.内容のすり合わせを行う
- 3.3.見積金額を確定し、正式な見積書を送付する
- 4.見積書を作成する際の注意点
- 4.1.金額や工事内容は曖昧にしない
- 4.2.有効期限を忘れずに設定する
- 5.見積書をインボイスとして発行するケースはほとんどない
電気工事の見積書に記載する項目
電気工事における見積書は、依頼主に費用の目安を知らせる目的で作成します。見積書の作成にあたっては、以下の項目を盛り込む必要があります。
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ここでは、主な項目について、記載すべき内容と注意点をご紹介します。
宛名・差出人の情報
宛名には依頼主の氏名や住所、担当部署などを記載しますが、状況によっては担当者名も記載することもあります。差出人の情報についても、基本的には宛名と記載内容をそろえるとよいでしょう。
なお、内容を確認する際などに連絡を取り合う必要があるため、差出人の電話番号も添えることが重要です。
発行日と見積もりの有効期限
発行日と見積もりの有効期限は、売り上げや支出の計算を行ううえで重要な情報となります。あらかじめ日にちを明確に記録しておくことで、無用なトラブルや手間の省略につながります。
見積もりの内訳・合計金額
内訳には品目名、単価、個数、合計を記載します。単価については、記載が難しい品目があれば、空欄でも問題ありません。
また、個数についても、工事内容ごとの記載が難しい場合には「工事一式」のような書き方をすることも可能です。各項目の小計欄にはそれぞれの算出金額(=単価×個数)を記載し、合計金額の欄には小計金額の合計に消費税の金額を加えたものを記載します。
法定福利費
法定福利費とは、社会保険や労働保険に関する経費のことです。すべての法人と従業員が常時5人以上いる個人事業所のうち、特定の業種(サービス業や一次産業など)を除くものについては、社会保険や労働保険の加入が必須とされています。
2013年から、下請企業が元請企業に見積書を提出する際には、法定福利費も含めて計算することが義務づけられているので注意が必要です。
参考:国土交通省 「法定福利費を内訳明示した見積書」について
(出典:国土交通省『法定福利費を内訳明示した見積書について』)
見積書を作成するポイント
見積書は、一般的に「表紙」「見積内訳書」「見積条件書」の3つで構成されます。作成や管理における利便性を考慮して、統一したフォーマットを用意し、案件ごとに調整しながら活用していくとよいでしょう。
なお、表紙や見積内訳書を作成する際には、以下の公共工事用標準書式を参考にしてみるのもおすすめです。
(参考:国土交通省『公共建築工事見積標準書式【設備工事編】電気設備工事』)
表紙
表紙にはタイトルや合計金額、見積もり番号、日付、工事に関する基本情報、差出人の情報、法定福利費などを記載します。表紙の役割は、重要な情報を見やすく整理することにあるため、詳細な情報の説明は見積内訳書に記載しましょう。
見積内訳書
見積内訳書には、工事の合計金額の内訳についてまとめます。具体的には見積もり対象の品目、仕様、摘要、項目ごとに金額を記載し、合計金額とのズレが生じないようにまとめる必要があります。
なお、現場管理費及び一般管理費などの諸経費は、原則として工事費とは別に取り扱わなければなりません。大がかりな工事ほど、記載しなければならない項目が増えるため、抜け漏れがないように注意する必要があります。
見積条件書
見積条件書とは、工事範囲を明確にするために依頼者が作成する書類です。工事に含める事項と含めない事項を明確にし、依頼者が希望する見積もり対象範囲や施工条件を正確に伝えることを目的としています。
また、工事の請負業者に正しく見積もり条件が伝わったことを確認し、後からトラブルが発生するのを防ぐといった目的もあります。
見積書は社内で共通のテンプレートを利用すると業務効率化が図れるでしょう
見積書を作成するまでの流れ
電気工事の見積書を作成する流れは次のとおりです。
1.概算見積もりを提示する 2.内容のすり合わせを行う 3.見積金額を確定し、正式な見積書を送付する |
概算見積もりを提示する
依頼主との意思疎通をスムーズに図るためにも、まずは概算となる金額を算出して、確認をとるとよいでしょう。依頼主が相見積もりの金額をもとに相談を行ってきた場合は、その金額や依頼主の考えを確認しながら、丁寧に見積もりの提示を進めることが大切です。
内容のすり合わせを行う
続いて、細かな工事内容の確認を行い、認識のズレがないことを双方で確認する必要があります。工事内容が複雑な場合などであれば、必要に応じて、提案書や仕様書なども作成するとよいでしょう。
費用面に関する問題をクリアにするとともに、工数、納期、部材の調達コストなどを踏まえて、正確なスケジュールを割り出すことも重要です。
見積金額を確定し、正式な見積書を送付する
正確な見積金額を算出するには、細かな費用を丁寧に積み上げる「積算」のプロセスが必要となります。工事の設計書を基に、必要な部材の調達コストや人件費、施工単価を一つずつ計算し、正確な工事原価を割り出さなければなりません。
人件費については、公共工事であれば国土交通省が都道府県ごとに設定した「公共工事設計労務単価」が用いられます。民間工事でもこの単価を参考にしながら計算するケースが多いといえます。
令和6(2024)年3月からは労務単価の設定変更が行われているので、以下の資料を参考しながら適切な金額を決めていくとよいでしょう。
(参考:国土交通省『令和6年3月から適用する公共工事設計労務単価について』)
見積書を作成する際の注意点
最後に、見積書を作成する際の基本的な注意点について確認しておきましょう。
金額や工事内容は曖昧にしない
見積書を作成するうえでは、後からのトラブルを避けるためにも金額や工事内容は曖昧にせず、明確に記載する必要があります。内容に不明瞭な点があれば、それだけでも依頼主からの信用を損なってしまう恐れがあるので、繰り返しチェックしましょう。
有効期限を忘れずに設定する
見積書における有効期限は、発注者にスピーディーな意思決定を促す役割があります。有効期限が過ぎた後であれば、基本的に同一の工事内容であっても、金額を変更することが可能です。
期限内に資材の高騰や人件費の変更といった変化があった場合、有効期限後であれば受注者側が金額を変えることができるのです。そのため、有効期限を設定することで、依頼主には「期限までに依頼するかどうかを決めなければならない」と心がけてもらいやすくなるでしょう。
見積書をインボイスとして発行するケースはほとんどない
2023年からスタートしたインボイス制度は、基本的に請求書の発行にひもづいた仕組みです。見積書を作成する段階で、インボイスとして発行するケースは少ないといえるでしょう。
ただし、見積書の時点でインボイスの条件に適合する内容を記載しておけば、仮に請求書や納品書がその条件を満たさない場合でも、両者を照合することでインボイスとして認められるケースもあります。そのため、見積書もインボイスを意識したつくりにしたうえで、後から照合がしやすいように、請求書の登録番号と一致させておくのがおすすめです。
電子データの見積書は電子データのまま保存する
原則として、見積書は個人で5年間、法人で7年間の保存が義務付けられています。見積書を電子データで作成・送付した場合は、原則として保存も電子データのまま行う必要があるので注意しましょう。
(出典:国税庁『電子帳簿保存法一問一答』)
見積書作成に関する最新の情報は国税庁などのホームページを参照ください
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:電気工事の見積書には何を記載すべき?
A:主な記載項目としては、「宛名(依頼主の氏名、住所、担当部署など)」「差出人の情報(差出人の氏名、住所、担当部署など)」「発行日」「見積もりの有効期限」「見積もりの内訳(工事内容、単価)」「見積もりの合計金額、消費税」「法定福利費」「工事日、工事を行う場所」「備考欄(補足説明)」が挙げられます。
Q:法定福利費とは?
A:法定福利費とは、社会保険や労働保険に関する経費を指します。2013年から、下請企業が元請企業に見積書を提出する際には、法定福利費も含めて計算することが義務づけられています。
Q:見積書を作成する際の注意点は?
A:後からのトラブルを避けるためにも金額や内訳を明確に記載し、有効期限も忘れずに設定しておくことが大切です。また、見積書は個人で5年間、法人で7年間の保存が義務付けられています。電子データで作成・送付した場合は、電子データのまま保存しなければなりません。
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