【建設業界のちょっとした豆知識】建築現場でよく使われるユニークな言葉まとめ
建設業界には、ほかの業界では見られないようなユニークな言葉が数多く存在します。代表的なものとしては、「うま」「ねこ」のような動物になぞらえた言葉や、「ラーメン」「ドーナツ」のように食べ物になぞらえた言葉などが挙げられます。
名称は身近なものばかりですが、その内容は専門的な意味を持つケースも多いです。今回は、建築業界に普及している独特な用語について、代表的なものを見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.建設用語とは
- 2.「道具」にまつわる建設用語
- 3.「作業」を表わす建設用語
- 4.「場所」にまつわる建設用語
- 4.1.見込み
- 4.2.雑巾摺り(ぞうきんずり)
- 4.3.入隅・出隅
- 5.「食べ物」の名称の建設用語
建設用語とは
建設業界で建設用語が用いられるのは、共通の言葉で意思疎通を図るという狙いがあります。道具の名称や作業内容などは、会社や地域によって呼ばれ方が異なる場合も少なくありません。
また、共通の名称は存在していても、正式名称にすることで文字数が長くなり、コミュニケーションの効率が下がってしまうケースもあります。建設現場などでは、必要最小限の言葉で的確なコミュニケーションを図らなければならない場面も多いため、独自の用語が生まれていったと考えられます。
こうした背景から、建設業界ではどの建築現場でも通じる独自の用語が使われているのです。今回は多種多様な用語を以下のグループに分けてご紹介します。
「道具」にまつわる建設用語 |
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「作業」を表わす建設用語 |
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「場所」にまつわる建設用語 |
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「食べ物」の名称の建設用語 |
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「道具」にまつわる建設用語
まずは、道具にまつわるユニークな建設用語を見ていきましょう。
ねこ
ねこは「ねこ車」とも呼ばれ、一輪の手押し車を表す用語です。資材やコンクリート、土砂などを運ぶ際に用いられ、狭い場所でも運搬できるのが特徴です。
なお、「根子」と表記されるときには、床下の通気を確保するための土台と基礎の間にかませる部材や工法それ自体を指します。また、「ねこ足場」は建築現場の高所に設置された点検用の狭い通路を表します。
ウマ
ウマとは、建設現場で用いる四本脚の作業台のことです。作業台の形状が馬に似ていることが名称の由来とされており、カンナをかける木材を置いたり、加工する木材や鉄筋を渡しかけたりするために用いられます。
また、2台のウマに丈夫な足場板を渡し、作業用の足場にするといった使い方もできる万能アイテムです。
キャラメル
キャラメルとは主に鉄筋コンクリート工事で用いられるコンクリートブロックのことです。鉄筋の間隔や鉄筋の被り厚さ(鉄筋表面からコンクリート表面までの最短距離)を確保するために用いられ、一般的には各辺3cm程度の小さな立方体であることから、サイコロとも呼ばれます。
メガネ
メガネレンチの略語であり、持ち手の両端に12角の穴を持つレンチのことです。主にボルトやナットの締めつけに用いられ、使用するボルトのサイズに合うようにさまざまなサイズのものをそろえるのが基本です。
ウエス
ウエスとは業務用の布のことであり、汚れの拭き 取りや機械の清掃などに用いられます。一般的には車の拭き取り用などで市販されるものを指す場合が多いですが、建設現場では布の切れ端や古着などを適当にカットして用いるのが一般的です。
カラス
カラスとは「ウォーターポンププライヤー」の俗称です。形状がカラスのくちばしに似ていることから、「カラスプライヤー」と呼ばれることもあります。
プライヤーは物をつかんだりパイプを回したりする際に用い、水道管やガス管の接続には欠かせない工具です。そのなかでも、つかむ物の大きさに合わせて、口の開き方を数段階に調節できるものをカラスプライヤーと呼びます。
手押しの一輪車は「ねこ」とも呼ばれます
「作業」を表わす建設用語
続いて、作業を表す建設用語をご紹介します。
トンボ
トンボは正式には「丁張り」と呼ばれ、土木工事を行う際に、土を盛り立てる目標の高さを示すもののことです。土に埋め込んだ複数の杭に印をつけ、印に合わせて水平の板を取り付けることで、どこまで土を盛ればよいかがすぐに判断できるという仕組みです。
なお、グラウンドの土慣らしなどで用いられるT字形の用具も、その形状からトンボと呼ばれています。
養生
養生は完成した部分、あるいは作業範囲外の部分を汚れや傷から守るために保護する作業を意味します。養生に用いるシートやテープのことを養生と呼ぶこともあり、建設現場だけでなく清掃や引越し作業などにも用いられます。
ふかし
ふかし(付加し)とは、決まった寸法よりも余分に厚くする作業のことです。たとえば、配管スペースを確保するために壁を厚くしたり、外観をよくするために柱や梁を前面に出したりする作業をふかすと表現します。
また、コンクリートを扱う作業では、被り厚さの確保やひび割れ対策で、余分にコンクリートやモルタルと重ねることをふかしということもあります。
はつり
はつりとは、コンクリートを削る、壊す、穴を開ける、切るといった作業全般を指す用語です。「コンクリートはつり」と表現するときには、ドアやサッシをはめるためにコンクリートの形を整える作業を表し、「はつりこわし」と表現するときにはクラッシャーなどでコンクリートを粉砕する作業を意味します。
また、「はつり仕上げ」と表現するときには、デザイン性を持たせるために意匠として表面を削る作業のことを表します。
しまい
しまいには「仕上げ処理(仕舞い)」と「仕事を終えて片づける(終い)」という2つの意味があります。前者は張り仕舞いや巻き仕舞いのような表現で用いられることが多く、該当する部分の端の納まりを表します。
後者は作業の終了を意味する言葉であり、仕事が完了したときだけでなく、一日の作業を切り上げるときにも用いられます。
目潰し
目潰しとは、基礎工事や道路工事などにおいて、隙間を埋めることを指します。基本的には、割栗石のような大きな石を並べた後に、砂利や砂で隙間を埋める作業またはその材料を意味するケースが多いです。
汚れや傷から守る養生は、建築関係だけでなく使われる用語です
「場所」にまつわる建設用語
次に場所にまつわる建設用語を見ていきましょう。
見込み
見込みとは、窓枠などの部材を取り付けた際に、正面から見たときの奥行きを意味する言葉です。仕上げ材や化粧材、窓枠などの建具枠を施工する際に、奥行きの長さを調整する意味合いで「見込み寸法」と呼ばれることもあります。見込み寸法は建具の耐久性や耐風性に影響を与え、建具が高くなれば見込み寸法も大きくなります。
雑巾摺り(ぞうきんずり)
雑巾摺りとは、和室において、押し入れの壁と床の間に取り付ける部材のことです。もともとは雑巾がけをする際に、壁紙に雑巾が触れて汚してしまうのを防ぐために付けられたものです。基本的な役割は、洋室における「巾木」と同じといえるでしょう。
入隅・出隅
入隅(いりずみ)、出隅(でずみ)とは、壁と壁や壁と柱が直角に交わってできる角のことです。壁と壁が交差して出っ張る場合は「出隅」、壁と壁が交差して引っ込む場合は「入隅」と呼びます。
「食べ物」の名称の建設用語
建築用語には、食べ物にまつわるユニークな表現も数多くあります。ここでは、代表的なものを4つピックアップしてご紹介します。
ドーナツ
ドーナツとは、コンクリートを打設するときに、鉄筋同士や鉄筋と型枠の位置を確保するために用いる丸形の道具のことです。同心円の形状をしているため、鉄筋にはめるだけで均等に被り厚さを確保することができるのが特徴です。
ラーメン
ラーメン(ラーメン構造)とは、主に重量鉄骨造のマンションなどで用いられる構造形式の一種です。頑丈な柱と梁でフレームを構成するのが特徴であり、対照的な方法にあたる壁式構造と比べると、自由な空間をつくりやすいのが利点とされます。
チーズ
チーズとは、T字形になっている配管用の継手ことです。三方に接続口があることから、分岐と呼ばれるケースもあり、給排水設備には欠かせない部品の一つです。
栗
栗とは割栗石のことであり、15cm程度の比較的に大きい砕石を指します。主に基礎工事で用いられ、コンクリートと地盤をつないで安定させるために敷き込みます。住宅や土木建築の基礎工事だけでなく、大きなサイズのものは防波堤の基礎工事に用いられるなど、さまざまな使い道がある石材です。
建設現場で用いられることが多い用語は、ほかにも専門的なものを含め多くあります
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:建設用語でねこ・ウマは何を意味する?
A:ねこは一輪の手押し車のことです。また、ウマは4本脚の作業台を意味し、部材加工時の土台として用いるほか、2台のウマに足場板を渡しかけて高所作業の足場として活用することもあります。
Q:食べ物にまつわる建設用語にどんなものがある?
A:食べ物に関する建設用語にはさまざまなものがあります。代表的なものとしては、重量鉄骨造の構造の一種であるラーメン構造を表す「ラーメン」や、配管用のT字形継手を意味する「チーズ」、コンクリート打設時に用いる丸形の工具である「ドーナツ」などが挙げられます。
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