【2025年展望】住宅業界の現状の課題と2025年以降の展望について解説
2023年・2024年は住宅着工戸数が激減し、休業・廃業する住宅会社も増えてきています。住宅業界は現状どのような課題を抱えているのでしょうか。そして2025年以降の住宅業界ではどのような課題が考えられるでしょうか。厳しさを増す住宅業界を生き抜くための対応策を考えてみましょう。
目次[非表示]
- 1.住宅業界の現状の課題
- 1.1.“実需”よりも“投資”で建てる動きが上向いている
- 1.2.世帯構成の変化と住まいの選択肢の広がり
- 1.3.住宅価格の高騰
- 2.2025年以降の住宅業界の展望
住宅業界の現状の課題
“実需”よりも“投資”で建てる動きが上向いている
住宅着工統計を見ると、2024年度上期(4月~9月)の住宅着工戸数は41.2万戸で前年とほぼ同水準です。ただし利用関係別に見ると、持家は11.3万戸で前年同期比4.9%減、低層分譲(建売)は12.1%減という厳しい状況が続いています。単月で見ると、持家は2021年12月から34ヶ月連続、建売は2022年12月から22ヶ月連続で前年同月を下回っています。
一方で、貸家の着工は増加傾向で推移しています。現在は、住まい手が購入する住宅の“実需”よりも、収益物件として建てる“投資”の需要が高まっていると言えそうです。
2023年度の持家着工戸数は21.9万戸。2000年度の43.8万戸と比較するとちょうど半分に減っていますが、人口や世帯数が当時よりも半減しているわけではありません。日本の世帯数は2030年頃まで増加し続けることが予測されています。つまり、世帯数当たりの着工戸数が減っている≒家を建てる人が減っているということです。
世帯構成の変化と住まいの選択肢の広がり
日本の世帯数は増えていますが、その中身は変化してきています。夫婦と子どもで構成されるファミリー世帯は減少が続き、増えているのはひとり親と子ども世帯、夫婦のみの世帯、単独世帯です。住宅の購入層の中心であるファミリー世帯が減っていることが、持家着工戸数が減少していることの一因と言えそうです。
この対策の一つとして、最近では1人暮らし向け・2人暮らし向けのコンパクトなプランを商品ラインナップに加える住宅会社が増えてきています。子どもが独立したシニアの夫婦やDINKs、シングルマザーや独身者でも、住みやすい広さで買いやすい価格の住宅を供給することは、住宅需要の裾野を広げることになるでしょう。
また、住まいの選択肢が増えたことも、新築戸建て住宅の着工が減っている要因でしょう。注文住宅と建売住宅、新築住宅と中古住宅、戸建て住宅とマンション、持家と貸家を比較検討した上で、土地を購入して注文住宅を建てることにこだわらない人が増えてきているのではないでしょうか。
このことへの対策は2つ考えられます。1つは注文住宅を新築で建てることや建売住宅を購入することのメリットを、住宅会社自身が積極的に発信することです。もう1つは住宅会社が住まい手の様々な選択肢に対応できる“住まいの総合窓口”になること。即ち事業の多角化です。住宅市場の縮小が予測されている中で、住宅会社は新築の戸建て住宅以外でも売上・利益を確保する事業戦略を検討するべきでしょう。
住宅価格の高騰
世帯構成の変化と住まいの選択肢の広がりは今に始まったことではありません。2023・2024年度に住宅着工が激減した要因として大きいことは、インフレによって住宅の建材・資材価格が高騰し、職人の人工代も上がり、地価も上昇して、住宅の販売価格が高騰したことでしょう。
一方で実質賃金の上昇はまだ緩やかであるため、住宅を購入することのハードルは以前よりも上がっています。家計の将来が不安な今こそ、住宅を買うことの経済的なメリットを訴求するべきです。
省エネ性能の高い家に住むことで光熱費などのランニングコストを削減できること、持家は将来的に貸したり売却することもできる資産であること、何より持家に住むことで得られる幸せを説明して、「高く見えるようだけど、何十年という長い期間で考えれば価格に見合った買い物である」ことを理解してもらうようにしましょう。
2025年以降の住宅業界の展望
2024年も持家の月次着工戸数は前年同月を下回り続けていますが、その減少幅は徐々に小さくなり回復に向かってはいます。しかしながら年間25万戸・30万戸という5年前や10年前の水準までは戻らないでしょう。低層分譲着工も同様に、減りこそはすれ大きく増えることはなく、新築戸建て市場は縮小の一途を辿ることが予測されます。
住宅市場全体のパイが減るわけですから、現状の受注棟数・売上を維持し続けることは難しくなります。売上の確保以上に難しくなるのが利益の確保です。建材価格の高騰に合わせて適正な値上げをしていかないと利益を残しにくくなります。
さらに2025年4月からは省エネ基準適合が義務化され、4号特例が縮小されます。現時点で省エネ基準に満たない住宅を提供している会社は、より性能の高い建材や設備を採用する必要があり、これも原価が上がる要因になります。
4号特例も同様に、これまで壁量が不足していた会社は耐力壁を増やす必要があります。確認申請の設計図書の作成という業務が増えることで、社員の労働時間が増え、アウトソースするとすればその経費もかかります。
また、確認申請の審査業務が逼迫することも予測され、契約から着工、引き渡しまでの期間が長引けば、売上を確保するのも先送りになります。現状で利益率が低く、内部留保を貯めていない住宅会社の倒産が増え、大手企業による市場の寡占化の流れが加速するでしょう。
2025年以降の住宅業界においては、良い家を提供することは大前提として、それを消費者に届けるプロセスの効率化が進むことが予測されます。集客から商談、設計、施工に至るまで、業務フローを見直して生産性を高められる住宅会社が生き残っていくでしょう。
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