<新着>フーチング基礎とは?建物を支える基礎の種類、フーチングと地耐力の関係を解説
「フーチング基礎」とは建物を支える基礎の種類の一つです。建物の基礎にはさまざまなタイプがあり、どのようなタイプが適しているのかは地盤の状態や予定している建築物、地域などによっても異なります。
今回はフーチング基礎の基本的な仕組みと特徴について、その他の工法と比較しながらご紹介します。また、基礎工事で重要となる「地耐力」とフーチングの関係性についても詳しく見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.フーチング基礎とは
- 1.1.フーチングを用いた直接基礎
- 1.2.フーチング基礎の特徴
- 2.杭基礎・ベタ基礎・独立基礎との違い
- 3.フーチングと地耐力との関係
- 3.1.地耐力と接地圧
- 3.2.地耐力を踏まえた設計が必要
- 4.フーチング基礎の注意点
- 4.1.地盤の状態によって採用の可否が決まる
- 4.2.湿気対策・冷え対策が必要
- 4.3.防蟻処理が必要
- 5.この記事を監修した人
- 5.1.岩納 年成(一級建築士)
フーチング基礎とは
建物の最下部で荷重を支える基礎は、建物の自重による垂直下部方向への力と、地震などの揺れによる水平方向の力、建物を倒そうとするモーメント力などを地盤へ逃す重要な部位です。基礎にはいくつかの種類があり、地盤の状態や建物の構造に合わせて最適なものを選ぶ必要があります。
ここでは、代表的な基礎の一種である「フーチング基礎」について、基本的な仕組みと特徴を見ていきましょう。
フーチングを用いた直接基礎
フーチングとは、建物の基礎にかかる荷重を分散させるために、底部を幅広くした基礎の底盤部分のことです。フーチング基礎は、逆T字形のフーチングを使用した「直接基礎」のことであり、多くの場合、別名「布基礎」とも呼ばれます。
フーチングを建築物の外周と内部の必要な箇所に連続して、帯状につなげていくことから、布基礎のことを「連続フーチング基礎」と呼ぶこともあります。柱や壁の下に設置される基礎が連続して敷かれていくため、基礎の底盤部分であるフーチングと梁の役割を果たす壁部分が一体化した形状になっているのが特徴です。
フーチング基礎の特徴
フーチング基礎が属する直接基礎の中には、ほかにも「ベタ基礎」と呼ばれるものがあります。詳しい特徴は後述しますが、フーチング基礎は鉄筋コンクリートを建物下部全面に敷き詰めるベタ基礎と比べて、施工コストを抑えられるのが大きなメリットです。
一方で、基礎の内側では土が露出するため、湿気の影響を受けやすいのが弱点とされています。また、シロアリ被害も受けやすいため、木材への侵食対策が必要になるのもデメリットです。
杭基礎・ベタ基礎・独立基礎との違い
基礎工事にはフーチング基礎以外にも、「杭基礎」「ベタ基礎」「独立基礎」などのさまざまな種類があります。ここでは、それぞれの基礎について仕組みや特徴をご紹介します。
直接基礎と杭基礎
まず、建物の基礎を大別すると、基礎底盤を支持層に接するように置いて建物を支える「直接基礎」と、地中に設置した杭を通じて地盤に荷重を支持させる「杭基礎」の2つに分類できます。直接基礎は、地盤が良好かつ支持層までの深さがごく浅いケースに用いられる方法であり、フーチング基礎も直接基礎の一種です。
それに対して、杭基礎は地盤が軟弱な場合や支持層までの深さがあるケースで用いられます。杭を設置することで、基礎が受ける建物の自重を地中の深いまで伝え、支持させることができるため、幅広いケースで採用できるのがメリットです。
一方、直接基礎と比べると施工に高度な技術や特殊重機などが必要になるため、コストが高くなる点がデメリットといえます。なお、同一建物内における直接基礎と杭基礎の併用は、建築基準法施行令第38条により「建築物には、異なる構造方法による基礎を併用してはならない」と原則禁止されています。
ただし、パイルドラフト工法など、構造計算で安全性が認められれば採用可能なケースもあります。ベタ基礎+杭基礎などがその一例です。
杭基礎には「支持杭」と「摩擦杭」の2種類があります。
支持杭は支持層まで到達するように杭を設置する方法であり、摩擦杭基礎は支持層に到達させることが難しい場合に用いられる方法です。摩擦杭の場合は、支持層に直接支持されるわけではないため、杭を太くしたり長くしたりしてその表面積の摩擦力によって建物の荷重などを負担する方法です。
(出典:e-Gov『建設基準法施行令』)
ベタ基礎
ベタ基礎は直接基礎の一種であり、外周を布基礎あるいは連続フーチング基礎によって囲まれた内部全面に、鉄筋コンクリートを敷き詰め一体化させる工法です。建物の底部全面が鉄筋コンクリートの底盤になるため、やや軟弱な地盤にも採用可能であり、湿気やシロアリ被害にも強いのがメリットです。
コンクリートの使用量が多いため、コストが高くなりやすいのが難点とされますが、掘削や地業などの作業効率が上がり、施工しやすいのも特長といえます。
独立基礎
独立基礎とは、伝統的な日本家屋で多く用いられてきた基礎であり、建築物の主要な柱底部のみに独立したフーチング基礎を設置する工法です。比較的に安価かつ短期で施工できるのがメリットですが、主要な柱の直下部分にしか基礎がなく集中荷重かつ少ない箇所で建物荷重を負担することになるため、耐力は比較的に低いといえます。
そのため、住宅の玄関ポーチ部の柱や庇を支える柱の柱脚部、あるいはフェンスなどの基礎として用いられるのが一般的です。
フーチングと地耐力との関係
古い建物にはフーチングが用いられていないものもあり、それが原因で地盤に基礎がめり込む「不同沈下」が発生するケースがありました。不同沈下とは建物が不ぞろいに沈む現象であり、床の傾きや建物の大幅な劣化を招くトラブルのことです。
不同沈下を起こさないために意識すべき要素として、「地耐力」が挙げられます。ここでは、地耐力とフーチングの関係性について解説します。
地耐力と接地圧
地耐力とは、地盤が耐えられる荷重を表すものであり、数値が大きいほど固い地盤であることを意味しています。地耐力は「kN/m2」で表され、これは1平米当たりでどのくらいのキロニュートンに耐えられるかを示す単位です。
建築基準法施行令第93条では、地耐力の目安として地盤の種類ごとの許容応力度が規定されています。たとえば、岩盤であれば長期に生ずる力に対する許容応力度は「1000kN/m2」と規定されており、これは「1平米で100トンの荷重を支えられる」ことを意味しています。
また、「接地圧」とは、単位平米当たりにかかる荷重のことです。基礎から地盤にかかる接地圧よりも地耐力が弱い場合は、地盤沈下や崩壊の危険性があると考えられるので何らかの方法で改善しなければなりません。
(出典:e-Gov『建設基準法施行令』)
地耐力を踏まえた設計が必要
地耐力が接地圧を上回るようにするためには、「地盤改良により地盤を強化する」「接地圧が下がるように基礎を設計する」という主に2通りのアプローチが考えられます。フーチング基礎は後者のアプローチに該当し、フーチングによって底部の幅を広げることで、接地圧が分散されて基礎の沈下を防げるという仕組みです。
そのため、フーチング基礎の設計を行う際は、地盤の地耐力を計算したうえでフーチングの適切な幅を決定する必要があります。
フーチング基礎の注意点
フーチング基礎はコストを抑えて効率的に施工できるのがメリットである半面、導入時にはいくつか気をつけたいポイントもあります。ここでは、フーチング基礎の注意点をご紹介します。
地盤の状態によって採用の可否が決まる
フーチング基礎は、地盤の浅い部分にしっかりとした支持層がある場合にしか用いることができません。また、基礎の安定性は地盤の強さに依存してしまい、ベタ基礎と比べると弱い地盤に建物を建てたときの耐震性・安定性が低いです。
そのため、十分に地盤調査を行ったうえで、採用できるかどうかを慎重に判断することが重要です。
湿気対策・冷え対策が必要
基礎の内側は土が露出するため、湿気がこもりやすいのが難点となります。一方で、通気口をつくると冬場は床冷えの原因となりやすいため、建物の断熱性を高めたり床暖房を導入したりするなどの対策が重要です。
防蟻処理が必要
フーチング基礎はすき間ができやすいため、シロアリが侵入しやすいのもデメリットといえます。シロアリによる建材の腐食を防ぐためにも、防蟻処理された資材などを使用し、定期点検のスパンを短めにするなどの対策を行うとよいでしょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:フーチング基礎とは?
A:逆T字形になったフーチングを建築物の外周と内部の必要な箇所に連続して設置し、帯状につなげていく基礎のことです。底部を幅広くとることで、地盤にかかる圧力を分散するのが基本的な仕組みです。
Q:地耐力と接地圧とは?
A:地耐力とは地盤が荷重に耐えられる力のことであり、接地圧は地盤に加わる圧力のことです。基礎は地耐力が接地圧を上回るように設計する必要があり、フーチングは接地圧を分散させて低下させる効果があります。
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この記事を監修した人
岩納 年成(一級建築士)
大手ゼネコン会社にて、官公庁工事やスタジアム、免震ビル等の工事管理業務を約4年経験。その後、大手ハウスメーカーにて注文住宅の商談・プランニング・資金計画などの経験を経て、木造の高級注文住宅を主とするビルダーを設立。
土地の目利きや打合せ、プランニング、資金計画、詳細設計、工事統括監理など完成まで一貫した品質管理を遂行し、多数のオーダー住宅を手掛け、住まいづくりの経験は20年以上。法人の技術顧問アドバイザーとしても活動しながら、これまでの経験を生かし個人の住まいコンサルテイングサービスも行っている。