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<新着>赤伝処理とは?建設業法違反となる行為とトラブルを防ぐポイント3つをご紹介

赤伝処理とは?建設業法違反となる行為とトラブルを防ぐポイント3つをご紹介

赤伝処理とは、建設現場で発生する諸費用を整理するために元請負人が下請代金から差し引く行為を指します。この記事では、赤伝処理の具体的な内容や、建設業法違反となるケース、適法に行うためのポイントについて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.赤伝処理とは何か?
  2. 2.赤伝処理と建設業法
  3. 3.赤伝処理が建設業法違反となるケース
  4. 4.赤伝処理を適法に行うための3つのポイント
    1. 4.1.①下請負人との協議・合意を行うこと
    2. 4.2.②見積条件・契約書面への明示
    3. 4.3.③下請負人の過剰負担となることがないような配慮
  5. 5.執筆者
    1. 5.1.弁護士法人コスモポリタン法律事務所杉本 拓也(すぎもと たくや)

赤伝処理とは何か?

赤伝処理とは、元請負人が下記を、下請代金の支払時に差し引く(相殺する)行為のことをいいます。

① 一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の費用
② 下請代金の支払いに関して発生する諸費用(下請代金の振込手数料等)
③ 下請工事の施工に伴い、副次的に発生する建設副産物の運搬処理費用
④ 上記以外の諸費用(駐車場代、弁当ごみ等のごみ処理費用、安全協力会費並びに建設キャリアアップシステムに係るカードリーダー設置費用および現場利用料等)


(出典:国土交通省不動産・建設経済局建設業課「建設業法令遵守ガイドライン(第11版)」31頁

赤伝処理と建設業法

建設業法に赤伝処理そのものに関する規定があるわけではありませんが、赤伝処理を行う場合には、元請負人は、その内容や差引額の算定根拠等について、見積条件や契約書面に明示する必要があり、当該事項を見積条件に明示しなかった場合については建設業法第20条第4項に、当該事項を契約書面に記載しなかった場合については同法第19条に違反することになります。

赤伝処理として、元請負人と下請負人双方の協議・合意がないまま元請負人が一方的に諸費用を下請代金から差し引く行為や下請負人との合意はあるものの、差し引く根拠が不明確な諸費用を下請代金から差し引く行為又は実際に要した諸費用(実費)より過大な費用を下請代金から差し引く行為等は、建設業法第18条の「建設工事の請負契約の原則」(各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結する。) を没却することになります。

したがって、元請負人の一方的な赤伝処理は、建設業法第28条第1項第2号の「請負契約に関する不誠実な行為」に該当するおそれがあります。

なお、赤伝処理によって、下請代金の額がその工事を実施するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」に違反するおそれがあります。

赤伝処理が建設業法違反となるケース

建設業法令遵守ガイドラインによると、建設業法上違反となるおそれがある行為事例は以下のとおりです。

【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】

① 一方的な費用差引
元請負人が、下請負人と合意することなく、一方的に提供、又は貸与した安全衛生保護具等に係る費用、下請工事の施工に伴い副次的に発生した建設副産物(建設発生土等の再生資源および産業廃棄物)の運搬および処理に要する費用および下請代金を下請負人の銀行口座へ振り込む際の手数料等を下請負人に負担させ、下請代金から差し引く場合


② 発生していない費用の名目で差引
元請負人が、建設副産物の発生がない下請工事の下請負人から、建設副産物の処理費用との名目で、一定額を下請代金から差し引く場合


③ 根拠が不明確な費用の差引
元請負人が、元請負人の販売促進名目の協力費等、差し引く根拠が不明確な費用を、下請代金から差し引く場合


④ 過大な使用料の請求
元請負人が、工事のために自らが確保した駐車場、宿舎を下請負人に使用させる場合に、その使用料として実際にかかる費用より過大な金額を差し引く場合


⑤ 責任が曖昧なやり直し工事費用の負担
元請負人が、元請負人と下請負人の責任および費用負担を明確にしないままやり直し工事を別の専門工事業者に行わせ、その費用を一方的に下請代金から減額することにより下請負人に負担させた場合


⑥ 免税事業者への消費税差引
工事完了後、下請負人が免税事業者であることが判明したため、下請負人が提出してきた請求書の金額から、一方的に元請負人が消費税相当額を支払わなかった場合

上記のような行為事例は、下請負人との合意がなく一方的に行われるものであるか、正当な根拠を欠く費用を差し引く行為であり、建設業法に反する行為となります。

実際の相談事例として、とび・土工・コンクリート工事を請け負う1次下請業者が、一戸建て住宅の基礎工事を実施している最中、3次下請業者が誤って第三者の塀を破損させる事故を起こした件について、元請業者や関係者と協議した結果、被害者への賠償対応は1次下請業者が行うことで合意されました。

しかし、その後、被害者が元請業者に直接申し入れを行ったため、元請業者は1次下請業者の同意を得ることなく、独自の判断で高額な賠償金を被害者に支払いました。その後、元請業者はこの賠償金相当額を下請代金から一方的に差し引く旨を通知してきました。

このような元請業者の対応は、合意に反して支払った費用を代金から一方的に差し引く行為です。この事例は、元請業者と下請業者の間での協議不足や、一方的な赤伝処理が引き起こすトラブルの典型例といえます。

(出典:令和6年10月 建設業適正取引推進機構 市毛 俊博「建設業の適正取引に向けて~実際のトラブル事例を踏まえて~」21~22頁国土交通省不動産・建設経済局建設業課「建設業法令遵守ガイドライン(第11版)」31頁

赤伝処理を適法に行うための3つのポイント

上記を踏まえると、赤伝処理を適法に行うためのポイントは、以下の3つとなります。

①下請負人との協議・合意を行うこと

赤伝処理を行うこと自体は、直ちに建設業法上違法となることはありませんが、赤伝処理を行うためには、その内容や差し引く根拠等について元請負人と下請負人双方の協議や合意が必要となります。

②見積条件・契約書面への明示

下請代金の支払いに関して発生する諸費用、元請負人が一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の労働災害防止対策に要する費用および下請工事の施工に伴い副次的に発生する建設副産物の処理費用について赤伝処理を行う場合には、元請負人は、その内容や差引額の算定根拠等について、見積条件や契約書面に明示する必要があります。

③下請負人の過剰負担となることがないような配慮

赤伝処理は、下請負人に費用負担を求める合理的な理由があるものについて、 元請負人が、下請負人との合意のもとで行えるものです。元請負人は、赤伝処理を行うに当たっては、差引額の算出根拠、使途等を明らかにして、下請負人と 十分に協議を行うとともに、たとえば、安全協力会費については下請工事の完成後に当該費用の収支について下請負人に開示するなど、その透明性の確保に努め、赤伝処理による費用負担が下請負人に過剰なものにならないよう十分に配慮する必要があります。

また、赤伝処理に関する元請下請間における合意事項については、駐車場代等、建設業法第19条の規定による書面化義務の対象とならないものについても、後日の紛争を回避する観点から、書面化して相互に取り交わしておくことが望ましいと言えるでしょう。

(出典:国土交通省不動産・建設経済局建設業課「建設業法令遵守ガイドライン(第11版)」31~33頁


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:赤伝処理とは何ですか?
A:
赤伝処理とは、元請負人が下請代金の支払時に諸費用を差し引く行為を指します。この諸費用には、安全衛生保護具の費用や振込手数料、副次的に発生する建設副産物の処理費用などが含まれます。ただし、この行為をするには、下請負人との協議と合意が必要であり、内容や差引額の根拠を見積条件や契約書に明示しなければ建設業法違反となる可能性があります。

Q:赤伝処理が建設業法違反となるのはどのような場合ですか?
A:
赤伝処理が建設業法違反となるのは、元請負人が下請負人との協議や合意を行わずに一方的に費用を差し引く場合や、正当な根拠を欠く費用を差し引く場合です。また、差し引く額が実際に発生した費用を超える場合や、差引によって下請代金が通常必要と認められる原価を下回る場合も違反に該当する恐れがあります。


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執筆者

弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)

​​​​​​​単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。

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編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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