<新着>コア抜き工事とは?3つの工法の特徴と全体の流れを分かりやすく解説
建設現場では、さまざまな目的でコンクリートの「コア抜き工事」が行われています。コア抜き工事には、「乾式穿孔」「湿式穿孔」「ウォータージェット穿孔」の3種類の方法があり、それぞれに異なる特徴があります。
今回はまず、コア抜き工事の目的や手順について確認したうえで、3種類の工法のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.コア抜き工事とは
- 2.コア抜き工事を行う全体の流れ
- 2.1.1.事前調査
- 2.2.2.騒音・粉塵等の対策
- 2.3.3.アンカー打ち
- 2.4.4.コア抜き作業
- 2.5.5.後片付け
- 3.コア抜きの3つの工法
- 3.1.乾式穿孔
- 3.2.湿式穿孔
- 3.3.ウォータージェット穿孔
- 4.3つの工法のメリット・デメリットを比較
- 4.1.乾式穿孔のメリット・デメリット
- 4.2.湿式穿孔のメリット・デメリット
- 4.3.ウォータージェット穿孔のメリット・デメリット
- 5.この記事を監修した人
- 5.1.岩納 年成(一級建築士)
コア抜き工事とは
コア抜き工事は、コアボーリングやコア穿孔とも呼ばれており、一口で言えば建物や基礎などに穴を開ける工事のことです。ここではまず、コア抜き工事の概要や目的について見ていきましょう。
コア抜き工事の概要
コア抜き工事とは、専用のドリルを用いて、コンクリートの基礎や壁に円筒状の穴を開ける工事のことです。もちろん、すでに完成している部分に穴を開けるため、必要以上に行えば建物の強度を損なってしまう恐れもあります。
そのため、目的に応じてあらかじめ穴の大きさを決めておき、さらにコンクリート内の鉄筋を切らないように慎重に工事を進める必要があります。
コア抜き工事の目的
工事の主な目的としては、「配管や配線を通すためのスリーブづくり」や「コンクリート壁へのフェンスの設置」「コンクリート背面にある空洞の確認」などが挙げられます。たとえば、リフォームなどでコンクリートのマンションや工場にガス・水道管を入れるため、後から穴を開ける必要があるときにコア抜き工事が行われます。
また、コンクリート壁にフェンスを設置する際、フェンス材の脚部を差し込むためにコア抜きが行われることも多いです。そのほかには、「耐震診断」のサンプル採取のために行われることもあります。
建物のコンクリート部分に亀裂などが生じたときに、コア抜きで内部のコンクリートを採取し、劣化の状況を試験するのです。一例としては、普段アルカリ性に保たれているはずのコンクリートが排ガスや二酸化炭素で中性化していないか、採取した内部のコンクリートに薬液を噴霧してチェックする検査などがあります。
コア抜き工事を行う全体の流れ
コア抜き工事は、以下のような手順で行います。
1.事前調査 |
ここでは、各ステップの内容や注意点について解説します。
1.事前調査
事前調査では、穴を安全に開けられる場所を確認し、鉄筋の場所を調べるためにレントゲン撮影を行います。完成している建物に穴を開けるため、内部には鉄筋のほかに電線、光回線といったさまざまなコードが通っている可能性もあります。
誤って切断しないためにも、図面上で確認するとともに、レントゲンで詳細な状況を把握しなければなりません。そして、検査の結果、穴を開けても問題がないと判明した箇所に印をつけておきます。
なお、レントゲン検査を行うためには、国家資格である「エックス線作業主任者」の有資格者が現場にいる必要があります。
2.騒音・粉塵等の対策
コンクリートに穴を開けるコア抜き作業では、大きな騒音が発生するため、トラブルを予防するための対策を行う必要があります。防音シートの利用などの基本的な対策を行うとともに、近隣への事前周知を済ませ、影響を最小限に抑えることが大切です。
また、コンクリートを削ったときに粉塵も発生するため、騒音と併せて対策する必要があります。
3.アンカー打ち
アンカー打ちとは、コア抜き用の機械を固定するためのアンカーの打ち込みを行う作業のことです。スペースの問題などでアンカーを打ち込む場所がない場合には、ハンディタイプのドリルで穴を開けることになります。
4.コア抜き作業
機械の設置が完了したら、コア抜き作業を行います。作業時には安全を確保するため、直接関わらない人員には距離を保たせ、車両や通行人への注意喚起などに協力してもらいましょう。
5.後片付け
最後に、コア抜きで取り除いた穴のコンクリートや飛び散ったコンクリートの破片、粉塵対策で使った水の処理などを行います。作業で発生した廃材は、それぞれ処理方法が異なる場合もあるので、事前に段取りを決めておくとよいでしょう。
コア抜きの目的や箇所、依頼主の意向によっては、すべての作業が済んだ後に元へ戻さなければならないケースもあります。その場合は、コンクリートやモルタルで復旧する作業も行うこととなります。
コア抜きの3つの工法
コア抜きには「乾式穿孔」「湿式穿孔」「ウォータージェット穿孔」の3つの方法があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
乾式穿孔
乾式穿孔とは、ハンマードリルにコンクリート専用のキリを取り付けて穴を開ける方法です。最大の特徴は「水を使用せずに作業を行う」という点にあり、周囲の環境などによって水が使えないケースで用いられることが多いです。
湿式穿孔
湿式穿孔とは、先端にダイヤモンドビットが付いたコアドリルを使い、水でビットを冷却しながら穴を開ける方法です。ビットの熱を取り除きながら作業できるため、乾式穿孔よりもスムーズに穴を開けられるのが特徴とされます。
ウォータージェット穿孔
上記2つの方法とは異なり、ウォータージェット穿孔は水圧で切削を行うのが大きな特徴です。高水圧のウォータージェットを該当箇所に設置し、レバーを引くだけで作業が完結するため、もっともスピーディーに穴を開けることができます。
3つの工法のメリット・デメリットを比較
乾式穿孔、湿式穿孔、ウォータージェット穿孔にはそれぞれ異なるメリット・デメリットがあるため、目的な状況に合わせて最適なものを選ぶことが大切です。
それぞれの主な特徴を比較すると、次のようにまとめることができます。
乾式穿孔 |
湿式穿孔 |
ウォータージェット穿孔 |
|
作業スピード |
遅 |
中 |
速 |
作業者への負担 |
大 |
中 |
少 |
建物のへの影響 |
中 |
中 |
少 |
コスト |
低 |
中 |
高 |
孔壁 |
平滑 |
平滑 |
凹凸 |
乾式穿孔のメリット・デメリット
乾式穿孔のメリットは、水を使わないためどこでも手軽に作業ができるという点にあります。一方、作業者への負担は大きく、場合によっては鉄筋を傷つけてしまうリスクもあるのがデメリットです。
メリット |
デメリット |
|
|
湿式穿孔のメリット・デメリット
湿式穿孔もドリルを用いる点は乾式穿孔と同じですが、水を使えることでさまざまなメリットが生まれます。作業そのものの効率が高まるとともに、ダイヤモンドビットを冷却しながら使えるので、負担が軽くなって長持ちするというのもメリットです。
メリット |
デメリット |
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|
ただし、水を使うことから汚水やノロ(コンクリートの削りカスと水が混合したもの)などの後処理や周囲の養生などに留意することが必要です。また、乾式穿孔と比べると施工コストは高くなります。
ウォータージェット穿孔のメリット・デメリット
水圧で切削を行うため、鉄筋を傷つける心配がなく、作業者への負担も大幅に軽減できるのがウォータージェット穿孔のメリットです。また、ドリルとは違って内部の鉄筋を傷つけるリスクが小さく、建物への影響も抑えられます。
さらに、ウォータージェット穿孔では穴を開けると同時に砕かれた廃材を吸引し、処理水もヘドロ状にならないため後処理が簡単なのも利点です。
メリット |
デメリット |
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|
孔壁が凹凸状になるメリットは、コア抜き後の穴を埋めるための充填材との付着強度が高まる点にあります。平滑な穴よりも充填材が付着しやすくなるため、建物の強度を向上させられるのもメリットです。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:コア抜き工事の目的は?
A:コア抜き工事はコンクリートの壁や基礎に穴を開ける作業であり、主に「配管や配線を通すためのスリーブづくり」や「コンクリート壁へのフェンスの設置」「コンクリート背面にある空洞の確認」「耐震診断・コンクリートの中性化検査」などを目的に行われます。
Q:コア抜き工事にはどんな方法がある?
A:水を使わずにドリルで穴を開ける「乾式穿孔」と、水を用いながらドリルで穴を開ける「湿式穿孔」、水圧で穴を開ける「ウォータージェット穿孔」の3種類があります。それぞれ異なる特徴があるため、目的や作業環境に応じた方法を選ぶことが大切です。
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この記事を監修した人
岩納 年成(一級建築士)
大手ゼネコン会社にて、官公庁工事やスタジアム、免震ビル等の工事管理業務を約4年経験。その後、大手ハウスメーカーにて注文住宅の商談・プランニング・資金計画などの経験を経て、木造の高級注文住宅を主とするビルダーを設立。
土地の目利きや打合せ、プランニング、資金計画、詳細設計、工事統括監理など完成まで一貫した品質管理を遂行し、多数のオーダー住宅を手掛け、住まいづくりの経験は20年以上。法人の技術顧問アドバイザーとしても活動しながら、これまでの経験を生かし個人の住まいコンサルテイングサービスも行っている。