建築・施工管理

転落防止!建築基準法で設置が必要な手すりの高さとは?法令・規格・基準について徹底解説

転落防止!建築基準法で設置が必要な手すりの高さとは?法令・規格・基準について徹底解説

法令などには建物の安全性に関する規定が数多く存在しており、転落防止の観点から、手すりに関するルールも細かく設けられています。特に高所の手すりは人命にも関わるため、決まりを守るのは当然として、ルールの根拠についても正しく理解しておくことが重要です。

今回は手すりに関する法令や規格、基準について詳しくご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.手すりに関する法令|建築基準法施行令・品確法
    1. 1.1.建築基準法施行令
    2. 1.2.品確法
      1. 1.2.1.「高齢者への配慮に関すること」における等級5の手すりに関する基準
  2. 2.手すりの規格・基準|JIS・BL基準・建築工事標準詳細図
    1. 2.1.日本産業規格(JIS)
    2. 2.2.優良住宅部品認定基準(BL基準)
    3. 2.3.建築工事標準詳細図
      1. 2.3.1.建築工事標準詳細図における手すりの基準
  3. 3.手すりのガイドライン|子育てに配慮した住宅のガイドライン
      1. 3.0.1.東京都都市整備局の「子育てに配慮した住宅のガイドライン」における手すりの基準
  4. 4.手すりの高さや間隔はほぼ共通している
  5. 5.この記事を監修した人
    1. 5.1.岩納 年成(一級建築士)

手すりに関する法令|建築基準法施行令・品確法

手すりに関係する法令としては、「建築基準法施行令」と「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の2つが挙げられます。まずは、それぞれの法令のポイントを確認しておきましょう。

建築基準法施行令

建築基準法施行令は建築基準法を施行するためのルールを定めたものであり、内閣が制定します。施行令では手すりの設置義務そのものが定められており、建築基準法と同様に法的拘束力があることから、必ず適合させなければなりません。

たとえば第25条では「階段には手すりを設けなければならない」といった規定が行われています。さらに、続く第2項、第3項では「階段及びその踊り場の両側には側壁やこれに代わるものを設けなければならない」「階段の幅が3mを超える場合においては、中間に手すりを設けなければならない」(例外あり)と定められており、高さ1m以下の部分を除き、すべての階段に設置が義務付けられています。

これは、上り下りの補助だけでなく、おもに落下防止の観点から設けられた規定であると判断できるでしょう。また、第126条においては、一定の建物において、「屋上広場または2階以上の階になるベランダなどの周囲には、高さ1.1m以上の手すり壁、柵、または金網などを設けなければならない」とされています。

第126条の一定の建物についても、第117条で具体的に定められており、3階建て以上の建物や延べ面積1,000平米を超える建築物などが対象となります。2階建て以下の一戸建て住宅のベランダなどは適用外となるので、厳密に言えば1.1mよりも手すりを低くすることは可能ですが、落下の危険性を踏まえて適度な高さのものは必要です。

(出典:e-GOV法令検索『建築基準法施行令』)

品確法

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)では、「住宅性能表示制度」を利用する場合に、手すりに関する基準が定められています。住宅性能表示制度とは、構造耐力や省エネ性、遮音性といった10分野において、客観的な数値や等級を用いて性能を証明する仕組みのことです。

高い性能評価が得られれば、ローンや保険などで優遇措置が適用されるなどのメリットがあります。評価方法基準の一つには「9.高齢者への配慮に関すること」という分野があり、等級1から等級5までの各等級ごとに、手すりの高さや間隔の寸法が定められています。

もっとも高い等級である等級5の基準は次のとおりです。

「高齢者への配慮に関すること」における等級5の手すりに関する基準

■手すりの高さ

  1. 腰壁その他足がかりとなるおそれのある部分(以下「腰壁等」という。)の高さが650mm以上1,100mm未満の場合にあっては、床面から1,100mm以上の高さに達するように設けられていること
  2.  腰壁等の高さが300mm以上650mm未満の場合にあっては、腰壁等から800mm以上の高さに達するように設けられていること
  3. 腰壁等の高さが300mm未満の場合にあっては、床面等との距離が1,100mm以上となるように設けられていること。

■ 転落防止のための手すりの手すり子で床面(階段にあっては踏面の先端)及び腰壁等又は窓台等(腰壁等又は窓台等の高さが650mm未満の場合に限る。)からの高さが800mm以内の部分に存するものの相互の間隔が、内法寸法で110mm以下であること。


■建築基準法施行令第126条第1項に定める基準に適合していること。(手すりの高さ1.1m以上)


品確法の基準では、手すりの高さだけでなく、手すり子の間隔についても具体的に規定されているのが特徴です。

(出典:e-GOV法令検索『住宅の品質確保の促進等に関する法律』)

手すりの規格・基準|JIS・BL基準・建築工事標準詳細図

手すりの規格・基準としては、ほかにも「日本産業規格(JIS規格)」や「優良住宅部品評価基準(BL基準)」、「建築工事標準詳細図」が挙げられます。いずれの規格・基準にも適合義務はありませんが、設計時には安全性を考慮するうえで重要となるケースもあります。

日本産業規格(JIS)

日本産業規格における手すりに関した規格としては、JIS A6601:2020「低層住宅用バルコニー構成材及び手すり構成材」があります。低層住宅でのバルコニーや手すりの構成材について規定したものであり、手すり子の幅について「床調整面から高さが 800mm以内の部分にあるものの相互の間隔にあっては 110mm以下の構造とする。」と定められています。

つまり、一般的な形状の手すりであれば、転落を防止するために格子の間隔を11cm以下にするのが望ましいということです。

優良住宅部品認定基準(BL基準)

「優良住宅部品認定基準」とは、一般財団法人「ベターリビング」が取り扱う認定制度で用いられる基準です。品質・性能・アフターサービスなどが評価され、認定を受けた住宅部品には「BLマーク証紙」が貼付されるとともに、瑕疵保証と損害賠償の両面からBL保険がつきます。

手すりについても、ユニット天端までの高さや笠木天端の形状、部材の間隔などに関する基準が細かく設けられています。BL認定そのものはメーカーが準拠する基準であり、建築の設計者に直接の関係があるわけではありませんが、BL認定された既製品を採用すると、住宅金融支援機構の割り増し融資の対象になるなどのメリットがあります。

建築工事標準詳細図

「建築工事標準詳細図」とは、主に公共工事の設計を行う際に用いられます。官庁などの設計業務に用いられるほか、公共性の高い建物の工事にも準用されるなど、汎用性が高いのが特徴です。

手すりに関する標準図も掲載されており、屋上と階段のそれぞれについて以下のような基準が設けられています。

建築工事標準詳細図における手すりの基準

  • 屋上:手すり高さ1,100mm以上、手すり子ピッチ110mm以下
  • 階段:階段の上端、バルコニー等では足がかりから高さ1,200mm以上、手すり子ピッチ110mm以下

手すりのガイドライン|子育てに配慮した住宅のガイドライン

自治体によっては建築物の施工者や管理者向けに、子育てに配慮した建築物を建てるのに役立つ情報をまとめたガイドラインを配布しているところもあります。ここでは、東京都都市整備局の「子育てに配慮した住宅のガイドライン」をご紹介します。

子どもの転落事故を防ぐためには、通常よりも厳しい基準を適用し、より高度な安全性を追求しなければなりません。そのため、「手すりの高さは1.2m推奨」「手すり子の間隔は90mm推奨」など、その他の規格よりも高い基準が設けられているのが特徴です。

東京都都市整備局の「子育てに配慮した住宅のガイドライン」における手すりの基準

■転落防止のための手すりの設置

  • 手すりの設置高さ 次のアからウまでのいずれかとする。

 ア 床面(階段にあっては踏面の先端)から1,100mm(1,200㎜推奨)以上
 イ 高さが650mm未満の腰壁等がある場合、腰壁等から1,100mm(1,200㎜推奨)以上
 ウ 高さ650㎜以上800㎜未満の部分に腰壁等がある場合は、腰壁等から900㎜以上


  • 居住者の日常の利用に供する屋上の手すりの設置高さ 床面から1,800mm以上
  • 手すり子の間隔 床面(階段にあっては踏面の先端)及び腰壁等(腰壁等の高さが650mm未満の場合に限る)からの高さが800mm以内の部分に存するものの相互の間隔は、内法寸法で110mm(90㎜推奨)以下
  • 窓、開放廊下や階段の直下に道路、通路、出入口がある場合における落下物による危険防止措置を講じる。


東京都では、このガイドラインをベースに「子供を守る」住宅確保促進事業を行っており、ガイドラインに認定されると一定の工事について補助金の支給が受けられます。具体的には、マンションに住む子育て世帯で、同居者に小学生以下の子どもがいるという条件を満たせば、一定の改修工事について30万円を上限に経費の2/3が支給されるという仕組みです。

(出典:東京都住宅政策本部『子育てに配慮した住宅のガイドライン』)
(出典:東京都住宅政策本部『子育て世帯向け補助事業(「子供を守る」住宅確保促進事業)』)

手すりの高さや間隔はほぼ共通している

今回ご紹介したように、手すりに関して必ず守らなければならないルールは、建築基準法施行令のみです。しかし、住宅性能表示制度や各自治体の支援制度を利用するうえでは、それぞれが設けた規定に適合させる必要があります。

利用する制度に応じて、規定の内容を細かくチェックしておきましょう。ただし、手すりに関する規格や基準については、おおむね「手すりの高さは1.1m以上」「手すり子の間隔は110mm以下」といった点で一致しています。

各規格や基準の共通点を押さえて、自社の手すり施工のスタンダードにしておくのが望ましいといえるでしょう。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:建築基準法施行令における手すりのルールとは?
A:
転落防止の観点から、屋上広場や2階以上の階にあるバルコニーには、原則1.1m以上の高さの手すり壁、柵、または金網を設けなければなりません。また、原則としてすべての階段に手すりの設置が義務付けられています。

Q:手すりに関する規格や基準にはどんなものがある?
A:
代表的なものとしては、「JIS規格」や「BL基準」「建築工事標準詳細図」が挙げられます。それぞれ細かな内容の違いはありますが、手すりの高さ(1.1m以上)や手すり子の間隔(11cm以下)は共通しています。


●関連コラムはこちら

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この記事を監修した人

岩納 年成(一級建築士)

大手ゼネコン会社にて、官公庁工事やスタジアム、免震ビル等の工事管理業務を約4年経験。その後、大手ハウスメーカーにて注文住宅の商談・プランニング・資金計画などの経験を経て、木造の高級注文住宅を主とするビルダーを設立。

土地の目利きや打合せ、プランニング、資金計画、詳細設計、工事統括監理など完成まで一貫した品質管理を遂行し、多数のオーダー住宅を手掛け、住まいづくりの経験は20年以上。法人の技術顧問アドバイザーとしても活動しながら、これまでの経験を生かし個人の住まいコンサルテイングサービスも行っている。

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編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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