【住宅会社向け】会社がネット上で誹謗中傷を受けた際の対応・対策について徹底解説
目次[非表示]
- 1.誹謗中傷の判断基準
- 2.企業に対する誹謗中傷の事例と影響
- 3.誹謗中傷に対する法的責任の追及方法
- 3.1.1.削除請求
- 3.2.2.発信者情報開示請求
- 3.3.3.損害賠償請求
- 3.4.4.刑事告訴
- 4.誹謗中傷を防止するために
- 5.執筆者
誹謗中傷の判断基準
インターネットの普及に伴い、企業がネット上で誹謗中傷を受けるケースが増えています。特に住宅業界では、競争が激しく、顧客の口コミや評価が重要な役割を果たします。誹謗中傷が広がることにより、会社の評判や信頼が損なわれる可能性があります。
本記事では、誹謗中傷に対する企業の対応策について、具体的な事例とともに解説します。
まず、誹謗中傷は法律用語ではありません。法的には、名誉毀損や侮辱に該当するかが論点 となります。
1.名誉毀損
名誉毀損とは、ある人(または法人)の社会的評価を低下させるような事実を公然と流布することです。たとえば、事実に基づかない内容や誤った情報を公開することで、相手の名誉を傷つける行為が該当します。名誉毀損には、発言や書き込みが「事実の適否」に関係しており、虚偽の事実が社会的評価を低下させた場合に成立します。
2.侮辱
侮辱とは、事実の有無にかかわらず、相手を公然と侮辱し、軽蔑する表現を用いることです。たとえば、誹謗中傷の内容が事実であっても、その表現方法が極端に侮辱的であれば侮辱行為とみなされます。侮辱の場合、事実を明示しなくても、単に侮辱的な言葉を使うことが問題となります。
なお、法人に対する侮辱罪も成立するとされていますので、侮辱を理由として後述する削除請求等の手段をとることも可能です。
企業に対する誹謗中傷の事例と影響
住宅会社がネット上で誹謗中傷を受ける事例としては、顧客の不満がネット掲示板やSNSで発信され、その内容が虚偽や過度に誇張されたものである場合が多く見受けられます。
たとえば、「施工不良があった」「契約条件を守らなかった」「顧客対応がひどかった」といった主張がネット上で広まり、悪評が広がることがあります。
このような投稿により、住宅会社は信用を失い、売り上げや営業機会の損失につながる事態に至る可能性があります。また、社員のモチベーションが低下し、労働環境が悪化する可能性もあります。したがって、誹謗中傷を受けた企業としては、これを放置することなく対応することが重要であるといえます。
誹謗中傷に対する法的責任の追及方法
ネット上で誹謗中傷を受けた際の法的な対応としては、主に以下のような対応が考えられます。
1.削除請求
投稿が書き込まれたSNSや掲示板の運営者やインターネットサービスプロバイダーに削除を請求する方法と、裁判所に当該投稿の削除を命じる仮処分を申し立てる方法があります。
前者については、本人から削除請求があれば比較的簡単に削除に応じてくれることもありますが、表現の自由の保護などを理由に、すぐには削除に応じない方針のSNSや掲示板も珍しくありません。他方でインターネットサービスプロバイダーについては、本人に対して意見聴取をしてくれますので、本人による任意の削除が期待できる場合もあります。
後者の仮処分手続きは、裁判所の仮の判断が迅速に下される手続きです。誹謗中傷に当たる投稿の削除であれば、通常は仮処分を申し立ててから1ヶ月程度で結論が出ます。ただし、任意の削除請求よりも弁護士費用がかかることになります。
2.発信者情報開示請求
誹謗中傷に該当する投稿を削除するだけでは、同じ人物が誹謗中傷を繰り返す可能性があります。そこで投稿者を特定するために、発信者情報開示請求という方法が検討されます。発信者情報開示請求は、概ね次のような手続を経ることになります。
(1)掲示板などの運営者に対するIPアドレス開示請求
通常は投稿者のIPアドレスを任意には開示してくれないため、裁判所に対して発信者情報開示の仮処分を行います。
(2)インターネットサービスプロバイダーに対する契約者情報の開示請求
インターネットサービスプロバイダーに対して、開示されたIPアドレスを割り当てていた契約者の氏名・住所の開示請求をします。原則として、投稿者の同意がない限り任意での開示はできないため、発信者情報開示請求の訴訟を提起することになります。
3.損害賠償請求
投稿者の氏名・住所を特定できた場合、当該投稿者に対して損害賠償請求を行うことが可能となります。
通常は任意の交渉から開始し、交渉によって金額に折り合いがつ かない場合は、訴訟を提起することが一般的です。ただし、訴訟については相応の弁護士費用がかかりますので、弁護士費用が賠償金を上回ることも少なくありません。
4.刑事告訴
投稿の内容や態様が悪質で刑事上の責任を追及したい場合、刑事告訴することも一つの選択肢となります。具体的な罪名としては、名誉毀損罪や侮辱罪が成立する可能性がありますが、内容によっては、脅迫罪や信用毀損罪、偽計業務妨害罪なども成立する可能性もあります。
誹謗中傷を防止するために
誹謗中傷を事前に防ぐためには、企業としての対応策をあらかじめ準備しておくことが重要です。
むやみに反論しない
ネット上で誹謗中傷を受けた場合、感情的に反論することは避けるべきです。無駄な言い争いや過剰な反論は、逆に状況を悪化させる可能性があります。冷静に、必要な対応だけを行うことが大切です。
弁護士へ速やかに相談、対応を依頼する
誹謗中傷が発生した際には、早期に専門の弁護士に相談し、法的対応を依頼することが重要です。弁護士は、企業の立場に立った適切な対応を行い、必要な法的手続きをサポートしてくれます。また、誹謗中傷の拡大を防ぐためにも、専門家の知識と経験を活用することが求められます。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:誹謗中傷を受けた場合、企業はどのような法的対応が可能ですか?
A:誹謗中傷を受けた際、企業は主に以下の法的対応が可能です。まず、投稿の削除を求める「削除請求」を行い、SNSや掲示板運営者に依頼します。任意の削除請求が難しい場合、裁判所に仮処分を申し立てることもできます。また、投稿者の特定のために「発信者情報開示請求」を行い、その後、損害賠償を請求することも可能です。最終的には、悪質な誹謗中傷がある場合、刑事告訴をする選択肢も考えられます。
Q:企業が誹謗中傷を防止するためにはどうすればよいですか?
A:誹謗中傷を防止するためには、事前に対応策を準備しておくことが重要です。企業は、無駄な反論を避け、感情的にならず冷静に対応することが求められます。また、誹謗中傷が発生した場合、早期に専門の弁護士に相談し、法的対応を依頼することが効果的です。弁護士の支援を受けることで、迅速かつ適切な対応が可能となり、企業の評判を守ることができます。
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執筆者
弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)
単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。