<新着>コンクリートの品質を左右する養生ポイントや失敗しないためコツをご紹介
コンクリートの品質を上げるためには、施工場所の「環境」や施工時期の「季節」などさまざまな問題に合わせてコンクリート養生を行う必要があります。養生を怠ると、「強度」「耐久性」などに大きく影響し、施工不良につながるため、事業者は必ず正しい処理方法を把握しておかなければなりません。
この記事では、コンクリート養生で失敗しないための重要なポイントや具体的な注意点について解説します。後半では、失敗しないためのポイントについてまとめた解説もしますので、今後のコンクリート養生の際の参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.コンクリート養生とは?
- 1.1.コンクリート養生の目的
- 1.1.1.1.水和反応の促進
- 1.1.2.2.湿度管理
- 1.1.3.3.温度管理
- 1.1.4.4.耐久性を高める
- 1.1.5.5.外部環境による影響を防ぐ
- 1.2.コンクリート養生しないとどうなる?
- 2.5種類のコンクリート養生方法
- 2.1.1.湿潤養生
- 2.2.2.保水養生
- 2.3.3.保温養生
- 2.4.4.促進養生
- 2.5.5.有害作用からの保護養生
- 3.コンクリート品質を高める養生期間の目安
- 3.1.一般的なコンクリート養生期間
- 3.2.季節ごとのコンクリート養生期間
- 3.2.1.①夏季(高温時)の養生期間
- 3.2.2.②冬季(低温時)の養生期間
- 3.2.3.③春季・秋季(中間期)の養生期間
- 4.コンクリート養生で失敗しないための養生ポイントと注意点
- 4.1.1.湿度・温度管理
- 4.2.2. 養生方法と養生期間の確保
- 4.3.3.施工後(養生中)の管理
- 5.執筆者
- 5.1.瀧澤 成輝(二級建築士)
コンクリート養生とは?
コンクリート養生とは、「コンクリート打設後に所定の強度になるまで行う管理作業」のことをいいます。ここで、特に多い疑問は以下の2つです。
- コンクリート養生の目的は?
- コンクリート養生をしないとどうなるのか?
では、それぞれ詳しく解説していきます。
コンクリート養生の目的
「コンクリート養生」はなぜ行う必要があるのでしょうか。
ここでは、養生の目的を5つ紹介します。
1.水和反応の促進
コンクリートはセメントと水が化学反応を起こし「水和反応」によって固まります。そのため「水和反応」が円滑に進むように養生が必要となります。
2.湿度管理
コンクリートは急な湿度の変化に弱く、特に乾燥に弱いという性質があります。乾燥によって、表面にひび割れが生じると著しく強度の低下を招くため注意が必要です。
3.温度管理
コンクリートは急な温度の変化にも弱く、水を使用するため温度の管理も重要になります。
季節によって「寒冷期は凍害による強度低下」「夏場は急激な乾燥によるひび割れのリスク」があるため注意しましょう。
4.耐久性を高める
コンクリートの耐久性を上げるためには、「水和反応」をじっくり進行させ、内部の微細構造をしっかり形成することが不可欠です。
5.外部環境による影響を防ぐ
施工後のコンクリートは、雨風や直射日光、汚染物質などの多くの影響を受けます。養生シートや保護膜を活用するなど、外的要因から防ぐことも理由の一つです。
コンクリート養生しないとどうなる?
適切な養生を行わないと、コンクリートの品質が大きく低下し、以下のような問題が発生します。
1.温度変化による「ひび割れ」 2.水和反応の遅延 3.寒冷期での凍害 4.水密性の低下による漏水や中性化 5.外的要因による不純物の混入 |
この5つの問題は、品質に大きな影響を与えるだけでなく、一つでも発生すると建物の構造に大きな悪影響を及ぼします。そのため、コンクリート養生は確実に実施しましょう。
5種類のコンクリート養生方法
コンクリートの品質を確保するためには、適切な養生方法で施工することが非常に重要です。ここでは、次の代表的な5種類の養生方法を紹介します。
1.湿潤養生
湿潤養生は、コンクリートの養生方法の一つで、表面や内部の水分を保ち、湿潤状態を維持する方法のことをいいます。
種類 |
概要 |
湛水養生 |
コンクリート表面に水を溜めて養生する方法 |
散水養生 |
水を撒いてコンクリート表面を湿らせる方法 |
湿布養生 |
コンクリートに布などを被せて水分を保持する方法 |
湿砂養生 |
砂をコンクリート表面に敷き詰め、その上から水を撒いて水分を保持する方法 |
水中養生 |
完全に水中に沈めて養生する方法 |
湿潤養生がよく使用されるケースは次のとおりです。
- 外気温が高い
- 乾燥地域や季節
- 風が強い
- 打設後、養生初期
この養生方法は、乾燥地域や夏季などによく使用されます。急速な水分不足はひび割れを発生する原因となりますので、必ず温度管理は徹底しましょう。
2.保水養生
保水養生は、コンクリート表面の水分の蒸発を防ぎ、適切な水和反応を促進する養生方法です。水を供給するのではなく、既存の水分を保持することが特徴です。
種類 |
概要 |
ビニールシート養生 |
コンクリート表面をビニールシートで覆う方法 |
紙シート養生 |
特殊な紙シートをコンクリート表面に敷く方法 |
プラスチックシート養生 |
厚手のプラスチックフィルムで覆う方法 |
保水養生がよく使用されるケースは次のとおりです。
- 湿潤養生ができない場合
- 大規模な施工現場で水の供給が難しい場合
- 屋内や風の影響を受けやすい場所
- 気温が高い環境や乾燥しやすい環境
保水養生は、水を継続的に供給する手間が少なく、簡単に施工できるため効率的な養生方法としてよく使用されます。
3.保温養生
保温養生は、コンクリートの温度を一定に保ち、特に寒冷環境下での凍結防止を防ぐために行う養生方法です。
コンクリート養生中に凍結してしまうと、表面の剥離(ポップアウト現象)が起こり、ひび割れにつながる恐れがあります。
種類 |
概要 |
シート保温 |
保温シートをコンクリート表面に被せる方法 |
保温マット養生 |
断熱性の高い保温マットをコンクリート表面に敷く方法 |
テント・仮囲い養生 |
仮設テントや囲いを設置し、寒風や低温の影響を防ぐ方法 |
ヒーター養生 |
コンクリート周囲にヒーターを設置し、加温する方法 |
保温養生がよく使用されるケースは次のとおりです。
- 冬季や気温の低い環境
- 日中と夜間の気温差が大きい地域
保温養生は、寒冷地や冬季の施工では極めて大切になります。「寒冷地」や「冬季」では、温度管理を必ず実施しましょう。
4.促進養生
促進養生は、コンクリートの強度発現を早めるために行う養生方法です。通常よりも短期間で必要なまでの強度が確保できるため、「後の工程が変更できない時」や「工期短縮が求められる現場」で多く使用されます。
種類 |
概要 |
蒸気養生 |
高温の蒸気を用いてコンクリートを加熱し、水和反応を促進させる方法 |
電気加熱養生 |
コンクリート内部に電熱線を埋め込み、通電して加熱する方法 |
温水循環養生 |
コンクリート型枠や周囲に温水を循環させ、温度を一定に保つ方法 |
赤外線養生 |
赤外線ヒーターを利用し、コンクリートを加熱し、水和反応を促進させる方法 |
促進養生がよく使用されるケースは次のとおりです。
- 工期を短縮したい場合
- 寒冷環境下での強度発現を早めたい場合
- 早期の強度確保が必要な場合
促進養生は、通常よりも早く硬化させることにより、デメリットも伴います。急な温度変化によるひび割れのリスクがありますので注意しましょう。
5.有害作用からの保護養生
有害作用からの保護養生は、コンクリートが外部環境から受ける悪影響を防ぐための養生方法です。たとえば、外部環境から受ける悪影響では、「振動」「衝撃」「荷重」「化学的影響」などがあります。
種類 |
概要 |
防振シート養生 |
振動を軽減するために防振シートを設置する方法 |
荷重制限養生 |
コンクリートが所定の強度になるまで、上部構造や重機の荷重を制限する方法 |
化学物質防止シート養生 |
専用のシートや膜を使用して、外部からの有害物質の浸入を防ぐ方法 |
風・雨よけ養生 防塵・防汚養生 |
風や雨又は粉塵や汚れの影響を避けるため、専用シートや膜を使用してコンクリート表面を保護する方法 |
有害作用からの保護養生でよく使用されるケースは次のとおりです。
- 振動の影響を受けやすい場所
- 雨や風が強い場所
- 化学的劣化が懸念される場所
- 施工後すぐに人や車両が通行する可能性がある場所
- 粉塵や汚れが多い場所
特に外部環境の影響が大きい現場では、必ず事前に確認し保護対策を行いましょう。
コンクリート品質を高める養生期間の目安
コンクリートの品質を高めるためには、正しい養生期間を確保することが不可欠となります。養生期間が不足すると、強度が十分に発現せず、ひび割れの原因となり、結果的に耐久性の低下につながる恐れがあります。
ここでは、コンクリートの品質を確保するために、必要な養生期間の目安について解説します。
一般的なコンクリート養生期間
コンクリート養生期間は種類によって目安となる期間が変わってきます。
今回は一般的である「湿潤養生」を例に解説します。
「湿潤養生」における養生期間の目安をまとめた表は、以下のとおりです。
普通ポルトランドセメント |
混合セメントB種 |
早強ポルトランドセメント |
|
15℃以上 |
5日 |
7日 |
3日 |
10℃以上 |
7日 |
9日 |
4日 |
5℃以上 |
9日 |
12日 |
5日 |
(引用:土木学会_コンクリート標準示方書(2017年度版))
注意すべき点として、気温が低い環境では水和反応が遅くなるため、通常よりも養生期間を長めに設定することが重要となります。
季節ごとのコンクリート養生期間
前記でも解説しましたが、コンクリートの養生期間は、気温や環境条件によって調整が必要になります。ここでは、季節ごとのコンクリート養生期間の目安について解説していきます。
①夏季(高温時)の養生期間
夏季では外気温が高くなるとコンクリートの乾燥が早まり、ひび割れなどにより強度発現が不十分になるリスクが非常に高まります。一般的に、日平均気温が25℃を超える期間には「暑中コンクリート」と呼ばれる養生方法が使用されます。この期間は、通常よりも湿潤養生を強化し、適切な温度・水分管理を徹底する必要があります。
一般的な目安として、普通ポルトランドセメントは約5日間、早強ポルトランドセメントは約3日間、混合セメントB種は約7日間の養生が推奨されています。
(引用:四国技術事務所)
②冬季(低温時)の養生期間
冬季は外気温が低いため、コンクリートの硬化反応が遅くなり、強度の発現に時間がかかる傾向があります。特に気温が5℃を下回ると硬化が大幅に遅れ、0℃以下では内部の水分が凍結し、コンクリートに損傷を引き起こすリスクが高まります。
一般的に、日平均気温が4℃以下となる期間には、「寒中コンクリート」と呼ばれる養生方法を行いコンクリートの温度を5℃以上に保ち、さらに2日間は0℃以上に維持しなくてはなりません。
養生期間の目安としては、普通ポルトランドセメントを使用し、断面が標準的な大きさの構造物の場合、気温が5℃以上であれば約9日間、10℃以上であれば約7日間の養生が推奨されています。
(引用:寒中コンクリート 資料)
③春季・秋季(中間期)の養生期間
「春季」や「秋季」の中間期は、外気温の変化が少ないため、コンクリートの養生に適した時期とされています。
しかし、朝晩の寒暖差が大きくなることもあるため、全く養生管理が不要なわけではありません。一般的に、日平均気温が10℃以上20℃未満の場合、普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートの養生期間は約6日間とされています。
コンクリート養生で失敗しないための養生ポイントと注意点
コンクリートの養生を適切に行わないと、建物の強度が低下するだけでなく、工期の遅延やさまざまなトラブルの原因となります。
これまで解説してきた中で、特に失敗を防ぐために押さえておくべき重要な3つのポイントについて以下にまとめます。
1.適切な湿度・温度管理 2.正しい養生方法と養生期間の確保 3.施工後(養生中)の管理 |
では、1つずつおさらいしていきましょう。
1.湿度・温度管理
コンクリートの養生期間は、気温や環境条件によって適切な管理が必要になります。夏季の日平均気温が25℃を超える期間には「暑中コンクリート」と呼ばれる養生方法を使用し、この期間は通常よりも湿潤養生を徹底しましょう。
冬季では日平均気温が4℃以下となる期間には、「寒中コンクリート」と呼ばれる養生方法を行いコンクリートの温度を5℃以上に保ち、さらに2日間は0℃以上に維持しなくてはいけません。
2. 養生方法と養生期間の確保
コンクリートの品質を確保するためには、「気温」や「環境条件」によって正しい養生方法で施工することが非常に重要になります。
以下は環境に対しての養生方法の例になります。
環境 |
養生方法(例) |
気温が高い |
湿潤養生(散水・シート養生) |
気温が低い |
保温養生(シート・断熱材養生) |
風が強い |
湿潤養生(シート・散水) |
日中と夜間の気温差が大きい |
膜養生(養生剤の塗布) + 湿潤養生 |
また、コンクリート養生期間は種類によって目安となる期間が変わってきます。
施工する前にどのくらいを目安として養生期間を設けるのか事前に確認しておきましょう。
普通ポルトランドセメント |
混合セメントB種 |
早強ポルトランドセメント |
|
15℃以上 |
5日 |
7日 |
3日 |
10℃以上 |
7日 |
9日 |
4日 |
5℃以上 |
9日 |
12日 |
5日 |
(「湿潤養生」における養生期間の目安)
3.施工後(養生中)の管理
養生期間中は、コンクリートを外的要因からしっかりと強度が発現するまで守ることが重要になります。しかし、外的要因は多岐にわたり、防止策も数多く存在するため、施工する前に必ず確認しておくことが重要です。
「環境と対策例」の具体例として以下のものが挙げられます。
環境 |
対策例 |
気温が高い |
コンクリート表面を常に湿潤状態に保ち、乾燥を防ぐ |
気温が低い |
コンクリートが凍結しないよう加熱し5℃以上を保つ |
風が強い |
養生マットやシートを使用し水分逸散や乾燥から守る |
日中と夜間の気温差が大きい |
コンクリート表面を湿潤状態に保ち、ひび割れを防ぐ |
また、施工後は強度が十分に出る前に人や車両が乗ることを避け、強度確認を必ず行い、基準値を満たしていることを確認したうえで、型枠の撤去など行うようにしましょう。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:コンクリート養生とは?目的はなんですか?
A:コンクリート養生は、「コンクリート打設後に所定の強度になるまで行う管理作業」のことをいいます。コンクリート養生することで、水和反応の促進・湿度管理・温度管理・耐久性向上・外部からの影響防止これら5つの問題からコンクリートを守り、品質を向上させます。
Q:よく使われる養生方法はなにがありますか?
A:よく使われている養生方法は、湿潤養生・保水養生・保温養生・促進養生・有害作用からの保護養生の5つがあります。また、季節ごとに適切な養生期間が異なります。工程や環境に合わせて養生方法を決定するように注意しましょう。
Q:コンクリート養生で失敗しないためのポイントはなんですか?
A:コンクリート養生で失敗しないためには、「湿度と温度の管理」「適切な養生方法と養生期間の確保」「養生中の管理」これら3つが重要となります。コンクリート養生で失敗すると、建物強度の低下だけではなく「工期の遅れ」や「予算の増加」にも直結し工事全体に悪影響を与えるため注意が必要になります。
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執筆者
瀧澤 成輝(二級建築士)
住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。
大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。
特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。