<新着>工事現場の仮囲いとは? 設置基準・種類・費用・法的注意点を解説
工事現場では、安全・環境保護の観点から仮囲いの設置が建築基準法により定められています。そのため仮囲いが適切に設置されていないと、事故や周辺環境への悪影響を引き起こす恐れがあるのと同時に、違反した場合には法的な罰則が科されることもあります。
本記事では、工事事業者が仮囲いの役割や設置基準を正しく理解できるように、工事現場で求められる仮囲いの基本的な目的や法律上の基準、種類ごとの特徴や費用相場を解説していきます。
記事の後半では、設置する際の注意点も紹介していますので、工事現場での参考となれば幸いです。
目次[非表示]
- 1.工事現場の仮囲いとは? 目的を解説
- 2.建築基準法で定める工事現場での仮囲いの設置基準
- 2.1.仮囲いの法的設置基準
- 2.2.違反した場合の罰則
- 3.仮囲いの種類
- 4.工事現場における仮囲い設置にかかる費用相場
- 5.仮囲いで注意すべき2つの法的事例
- 6.執筆者
- 6.1.瀧澤 成輝(二級建築士)
工事現場の仮囲いとは? 目的を解説
工事現場の「建設工事」や「解体工事」を行う際に設置される設置される仮囲いですが、何のために設置されるのか、しっかりと理解できていますでしょうか。
本章では、仮囲いとは何か?と目的について詳しく解説します。
仮囲いとは?
仮囲いとは、「外部と隔てるために設置される一時的な囲い」のことです。一般的には、「パネル」や「フェンス」などが使用され、さまざまな用途に合わせて設置されます。
仮囲いは、主に以下のような場所に設置されます。
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仮囲いは、工事現場だけなく「資材置き場」や「市街地などの美観維持」などにも使用されることがあります。
仮囲いの目的
仮囲いの主な目的は、外部と内部を隔てることにあり、用途ごとによって目的が異なります。
具体的には、以下のような目的があります。
用途 |
目的 |
工事現場 |
無断侵入を防ぎ、作業員や通行人の安全を確保するため |
資材置き場 |
資材の盗難やいたずらを防止するため |
市街地 |
周囲の景観を保つため |
住宅地や学校周辺 |
騒音や粉塵の影響を軽減するため |
法律・規制の適用区域 |
建築基準法や自治体の条例に従い、無断侵入を防ぐため |
都市部では、歩行者や車両の安全を守るためにも、仮囲いが使用されます。
建築基準法で定める工事現場での仮囲いの設置基準
工事現場での仮囲いは、安全確保や周囲への影響防止のために、建築基準法で設置基準が定められています。仮囲いの設置義務は、建物の種類や規模によって異なり、特定の条件を満たす場合にのみ必要とされます。
本章では、仮囲いの法的な設置基準と、違反した場合の罰則について詳しく解説します。
仮囲いの法的設置基準
建築基準法では、大きく「木造」と「木造以外」の2つに分けられており、それぞれの規模により条件が異なります。
設置義務がある建築物の詳しい基準は以下のとおりです。
建築物の種類 |
設置義務が生じる条件 |
木造建築物 |
高さが13m以上、または軒の高さが9mを超える場合 |
木造以外の建築物 |
階数が2階以上の場合 |
仮囲いの仕様は以下のようにしなくてはいけません。
● 高さ1.8m以上であることが原則 ● ただし、以下の条件に該当する場合は設置義務が免除される 〇同等またはそれ以上の効果がある、別の囲いがある
〇工事現場の周辺環境や状況から見て、危険防止に問題がないと判断される
|
(出典:e-Gov法令検索『工事現場の危害の防止(仮囲い)』)
このように、仮囲いの設置基準は建物の規模や周辺環境によって異なりますので設置を計画する際は、対象になるか必ず確認しましょう。
違反した場合の罰則
仮囲いの設置基準を守らずに工事を進めた場合、建築基準法に基づき罰則が科される可能性があります。
仮囲いに関する主な罰則は以下のとおりです。
違反内容 |
罰則 |
仮囲いの基準を守らずに工事を実施 |
100万円以下の罰金刑 |
虚偽の報告や届け出を行った場合 |
30万円以下の罰金 |
(出典:東京都都市整備局『工事現場の危害防止に関する規定と工事安全の工夫等について』)
特に、仮囲いを適切に設置しなかったことが原因で事故が発生した場合、さらなる責任追及や損害賠償の可能性もあるため、注意が必要です。
仮囲いの種類
工事現場の仮囲いには、数多くの種類があり、選定の際は、安全性、耐久性、設置費用、景観への影響などを考慮することが重要となります。
ここでは、代表的な以下の3種類について解説します。
1.フラットパネル 2.安全鋼板 3.ポリガード |
では、一つずつ解説していきます。
1.フラットパネル
フラットパネルは、表面が平らなパネルを指します。
メリットとしては、比較的容易に設置が可能な点と企業ロゴや広告を掲載しやすいため、建設現場やイベント会場などによく使われます。
しかし、平面ではない地形では設置が難しい点と、平面構造であるため、強風などには弱いというデメリットもあります。
2.安全鋼板
安全鋼板は「仮囲い鋼鉄」とも呼ばれ、鋼鉄製の平坂のことを指します。
主に建設現場や工事現場でよく使用され、高い強度と耐久性があるのが特徴です。
重量があり取り扱いが非常に難しいデメリットがありますが、防音防塵や盗難防止対策として大きなメリットもあるため多くの建設現場に使用されています。特に都心部の工事現場で頻繁に見かけることができます。
3.ポリガード
(出典:建材工業株式会社)
ポリガードは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチック素材のパネルを指します。
特徴としては、軽量でありながら十分な強度があり取り扱いがしやすい点にあります。一般的な用途は、資材保管場所の囲いや仮設的な区分けなどの場面で使用されます。
ただし、金属製の仮囲いと比較すると強度が低く、防音や防塵の効果も限られるため、大規模な建設工事には不向きです。
工事現場における仮囲い設置にかかる費用相場
仮囲いにかかる費用相場は、「1メートル当たり約3,200円〜6,800円」です。
ただし費用は、仮囲いの種類・設置面積・設置期間・施工条件によって大きく変動します。
以下に、仮囲いの種類ごとの高さ2mで1メートル当たりの設置費用相場をまとめました。
仮囲いの種類 |
1メートル当たりの費用相場(設置費込み) |
フラットパネル |
約5,900円~6,800円 |
安全鋼板 |
約3,200円~4,200円 |
ポリガード |
約1万7,500円 |
※上記は一般的な相場であり、地域や会社によって異なる場合があります。
費用が変動する主な要因としては以下の要因が挙げられます。
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これら費用を抑えるためには、短期間の工事ならレンタルを活用するなど検討してみましょう。反対に長期間使用する場合は、リース契約を利用するのも選択肢の一つでしょう。
また見積もりを依頼する際は、必ず複数の会社の価格を比較することが大切です。
仮囲いで注意すべき2つの法的事例
工事現場に仮囲いを設置する際、間接的に注意すべき点がいくつかあります。
特に以下の2点には、注意しましょう。
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では、一つずつ解説していきます。
手続きを怠ると、罰則の対象となる可能性があるため、事前に必ず確認しておきましょう。
道路占用許可
仮囲いが歩道や車道にはみ出す場合、道路占用許可を取得しなければなりません。
道路法に基づき、自治体の管理下にある道路を使用する際には許可が必要とされており、無許可での設置は違法行為になり行政指導が入ったり罰則が科されたりする可能性があります。
申請先は各自治体の道路管理者で、占用理由・設置期間・占用面積の詳細を記載した申請書を提出することが必要になります。
許可が下りるまでには時間がかかることがあるため、工事計画の初期段階で余裕を持った申請を行うようにしましょう。市町村によって申請方法が異なりますので必ずチェックを行いましょう。
(出典:国土交通省『道路占用許可手続』)
建築基準法
仮囲いの設置には建築基準法の規定が適用されるため、基準を満たさない設置は違法となります。
たとえば、前章で解説しました「高さ1.8m以上の仮囲い」を設置することが義務付けられており、木造建築の場合は「高さ13m以上または軒高9m以上」、非木造建築では「2階以上の建物」を建設する際に適用されます。
ただし、周辺環境や工事の状況によって危険防止のための別の方法が適用される場合は、必ずしも仮囲いを設置する必要はありません。
基準を守らずに工事を進めた場合は、最大100万円の罰金が科される可能性があり、さらに虚偽の申請や報告を行った場合は30万円以下の罰金が科されます。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:仮囲いの主な目的は何ですか?
A:工事現場での無断侵入の防止、安全確保、資材の盗難防止、周囲の景観維持、騒音や粉塵の影響軽減などがあります。
Q:仮囲いの設置基準はどのように決められていますか?
A:建築基準法により、木造では高さ13m以上または軒高9mを超える場合、木造以外では階数が2階以上の場合に設置義務があります。仮囲いは原則1.8m以上の高さが必要です。ただし、周辺環境や工事の状況によって危険防止のための別の方法が適用される場合は、必ずしも仮囲いを設置する必要はありません。
Q:仮囲いにはどのような種類がありますか?
A:主にフラットパネル(広告掲載に便利)、安全鋼板(耐久性が高い)、ポリガード(軽量で設置が容易)の3種類があります。
Q:仮囲い設置時に注意するべき法的手続きは何ですか?
A:道路占用許可と建築基準法の規定に基づく申請が必要です。道路占用許可は歩道や車道に仮囲いがはみ出す場合に取得が必須であり、無許可の場合は行政指導が入ったり罰則が科されたりする可能性があります。
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執筆者
瀧澤 成輝(二級建築士)
住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。
大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。
特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。