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<新着>建築中に工事契約の下請け会社が倒産したらどうすればいい? その対処方法とは?

建築中に工事契約の下請け会社が倒産したらどうすればいい? その対処方法とは?

目次[非表示]

  1. 1.建設業の破産・倒産とは?
  2. 2.建築中に下請け会社が倒産したらどうなる?
  3. 3.出来高部分の報酬金の支払いはどうなるか
  4. 4.孫請け会社への立て替え払いについて
  5. 5.執筆者
    1. 5.1.弁護士法人コスモポリタン法律事務所杉本 拓也(すぎもと たくや)

建設業の破産・倒産とは?

「倒産」とは会社が資金繰りに行き詰まり、借金や支払いができなくなる状態を指します。一般に「会社が倒産した」というと、経営破綻による事業停止全般を意味します。

一方、破産とは法律上の清算手続きのことで、支払い不能に陥った会社につき裁判所が財産を整理する正式な手段です。建設業の破産手続きも他業種と基本は同じですが、取引額が大きく未完成の工事案件が残るため影響も大きくなります。

破産手続きの流れは、大まかに次のとおりです。下請け会社が事業継続を断念して裁判所に破産申し立てを行い、裁判所が「破産手続き開始決定」を出します。その際に破産管財人(裁判所が任命する破産手続き中の財産管理人)が選任され、以後は破産管財人が倒産会社の資産や契約処理を担当します。

建設業では仕掛かり中の工事契約があれば、破産管財人はその契約を続行するか途中で解除するかを判断することになります。

建築中に下請け会社が倒産したらどうなる?

建築工事の途中で下請け会社が突然倒産すると、その会社による作業は止まり、工事全体が中断してしまいます。

たとえば、ビル建設中に電気工事の下請け会社が破産すれば、その部分の作業が止まり工期に遅れが生じかねません。当然、元請け会社は発注者から遅延の責任を問われるリスクがあります。したがって、工事をどう再開して納期を守るかが喫緊の課題となります。

元請け会社がまずすべきは、倒産した下請け会社の破産管財人に早急に連絡を取り、工事続行の方法を協議することです。破産管財人とは、倒産した会社の財産を管理する裁判所が任命する人物で、契約の処理権限も持っています。直接下請け会社とやり取りできないため、以後は破産管財人を通じて話を進めます。

協議の結果、多くの場合は下請けとの請負い契約を途中解除し、元請けが新たな会社に残りの工事を依頼する対応を取ります。倒産した下請け会社には工事を続行する余力がないのが通常だからです。

ただし、工事がほとんど完成しているなど特別なケースでは、破産管財人が契約を引き継いで工事を完了させる可能性もあります。

契約を解除した場合、元請け会社は速やかに代替の会社を手配して工事を再開させる段取りを進めます。同時に、発注者(建築主)には事情を説明し、必要に応じて工期の延長など契約内容の変更について了承を得ることも重要です。

出来高部分の報酬金の支払いはどうなるか

下請け会社との契約を途中で解除した後は、それまでに完成している出来高部分に対応する報酬金を精算する必要があります。工事の途中まででも、下請け会社が施工した部分についてはその対価を支払う必要があります。

破産管財人は工事の進捗状況を査定して出来高を算出し、契約金額に占める割合などから報酬額を計算します。そして、元請け会社が既に支払った前渡し金や中間金と照らし合わせて過不足を精算します。

たとえば契約金額1,000万円の工事が50%完成していた場合、出来高は500万円です。元請けが既に400万円を支払っていたなら、不足の100万円を破産管財人に支払う必要があります。逆に600万円支払っていたなら、払いすぎの100万円を破産管財人に返還請求できることになります。

実際の破産手続きでは、未払い分の請求権(元請けから見れば下請けへ支払う義務)は破産債権として扱われ、払いすぎ分の返還請求権は財団債権(優先的に返済される債権)として扱われます。財団債権は優先的に弁済されますが、破産債権は弁済されない可能性が高いことになります。

孫請け会社への立て替え払いについて

下請け会社が倒産すると、さらにその下で作業を請け負っていた孫請け会社(下請けの下請けに当たる会社)も本来受け取るはずだった代金が宙に浮いてしまいます。そこで孫請け会社から「下請け会社の代わりに支払ってほしい」と元請け会社に求められるケースがあります。元請け会社としても工事を止められないため、やむを得ず立て替え払い(孫請けへの直接支払い)に応じることがあります。

しかし、元請け会社が孫請けに立て替え払いをした場合、その金額について後で倒産した下請け会社に請求できる求償権を取得します。元請けはこの求償権と自らの下請けへの支払い債務を相殺したいと考えますが、破産手続き開始決定後に取得した債権を使った相殺は認められません(破産申し立て後や支払い停止後に立て替えた場合も同様です)。そのため、立て替え払いに応じても元請け会社が二重払いのリスクを負う可能性が高いのです。

一方、破産手続き開始前に行った立て替え払いで得た求償権については、相殺が認められる場合もあります。特に、契約書であらかじめ「元請けが孫請けへの支払いを立て替え、その分を下請けへの支払いと相殺できる」旨の特約を定めていた場合など、例外的に相殺が認められた例もあります。

とはいえ、開始前であっても下請け会社の経営危機を元請けが知りながら立て替えたような場合には相殺が禁止される可能性があり、結局のところ極めて限定的です。

以上のことから、孫請け会社への立て替え払いを行うかどうかは慎重に検討すべきです。工事続行の必要に迫られてやむを得ない場合でも、実施にあたっては事前に弁護士等の専門家に相談し、法的リスクを確認することが望ましいでしょう。

また、平時から元請け・下請け間の契約書に倒産時の立て替え払いと相殺に関する特約を入れておくと、万一の場合の対応策として有効です。平時の備えと早めの対応により、下請け会社倒産という非常事態にも慌てず対処できるでしょう。


●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:建築工事の途中で下請け会社が倒産した場合、工事はどうなるのでしょうか?
A:
下請け会社が倒産すると、その会社が担当していた工事は一時的に中断します。工事の再開には、破産管財人と協議し、契約の解除や新たな下請け会社の手配が必要です。元請け会社は発注者と工期延長や契約変更の交渉を行い、遅延リスクを最小限に抑えることが重要です。

また、倒産した下請け会社の出来高分の精算も必要となり、破産手続きにのっとって対応することが求められます。

Q:倒産した下請け会社の代わりに、孫請け会社への支払いを元請け会社が立て替えることは可能ですか?
A:
立て替え払い自体は可能ですが、破産手続きの状況によっては後で元請け会社が二重払いのリスクを負う可能性があります。特に破産手続き開始後の立て替え払いは、後で元請け会社が倒産した下請け会社に求償することが難しくなります。

契約書に相殺特約を設けるなど、事前の対策が重要です。実施前に弁護士に相談し、リスクを十分に検討することをおすすめします。

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執筆者

弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)

単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。

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編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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