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工務店の倒産が急増! その理由と対策

工務店の倒産が急増! その理由と対策

工務店の倒産が急増しています。帝国データバンクの調査によると、2023年の建設業の倒産件数は1,671件で、前年比38.8%と急増。2000年以降、増加率が30%を超えるのは初めてであり、8年ぶりの1,600件超えとなっています。

建設業の倒産数の推移を単月で見ても、2024年3月の数は前年同期比19.2%増の180件で、15ヶ月連続で前年同月を上回っている状況にあります。

今回は、この倒産急増の背景には一体どのようなことがあるのか、また工務店の倒産を防ぐためには何が求められるのかを探っていきます。

目次[非表示]

  1. 1.さまざまな外部要因による棟数減、利益確保難…。事業多角化がベターか
  2. 2.人手不足にどう対応していく?
  3. 3.業界一体となって壁を乗り越える時期か

■建設業倒産件数の推移

さまざまな外部要因による棟数減、利益確保難…。事業多角化がベターか

工務店の倒産が増加している理由について、そもそも住宅着工数が大きく落ち込んでいることがあります。2023年の新設住宅着工戸数は約82万戸。この数は着工統計開始以降、リーマンショックの影響を受けた2009年と2010年、コロナの影響を強く受けた2020年に次ぐ、4番目に少ない数です。

これまでも少子高齢化や世帯人数の減少等で着工数はマイナスの傾向にありましたが、そこに景気の低迷が重なり、さらなる建築需要の減少につながりました。家を建てたいと考える人そのものが減れば、工務店が受注を獲得する機会も当然減っていきます。

コロナ、ウッドショック、物価高騰など、マイナスとなる出来事が続けざまに起こったことも倒産数増加の要因です。これらにより多くの工務店に工期の遅延や収益の減少が発生し、経営に影響がありました。

特に、建設コストの上昇が与えた影響は大きく、価格転嫁が間に合わないケースも多数発生しました。帝国データバンクの「価格転嫁に関する実態調査(2024年2月)」によると、どの程度価格転嫁ができているかを示す価格転嫁率については全業種で40.6%という数値。これはコストが100円上昇した際、売価に反映できているのが40.6円、企業負担が59.4円ということを示します。この時点でも苦しさを感じますが、建設関連業の転嫁率は、建設業が38.0%、不動産業が23.9%とさらに低い数値となっています。

このような厳しい外的要因に対し、工務店はどう立ち向かえばいいのでしょうか? そのヒントは事業や受注先の多角化にあるかもしれません。注文住宅などの単一の需要に依存せず、商業施設や公共工事、リフォームなどさまざまな分野に事業を展開することができれば、収益の安定化や経営リスクの分散につながります。

大手ハウスメーカーは海外事業が柱となってきているところも多いほか、地方の有力ビルダーのなかには建設業という垣根を越えて食品業等に進出しているような会社もあります。

人手不足にどう対応していく?

工務店の倒産には、人手不足という内的要因も関与しています。建設業界では長年、職人の高齢化や技術熟練者の不足が深刻な課題となっており、労働力の確保が難しい状況が続いています。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)」によると、建設業では正社員において69.2%の企業が人手不足を感じているとのことです。

人手不足のなかでも、後継者の不在は大きな問題です。総務省の「2023年個人企業経済調査」によると、後継者の有無について、建設業では「後継者がいる」は18.5%、残りの81.5%が「後継者がいない」と回答した状況でした。

このような人手不足にはどう対応するのがいいのでしょう? 方法の一つが、テクノロジーの活用です。施工管理アプリの活用、ドローンを用いた点検などは住宅業界にも定着し始めています。さらに、AIを活用する事例も見られるようになってきました。

例えば住友林業は全自動構造設計システムを開発し、住友林業アーキテクノでの運用を開始しています。このシステムの導入により従来、構造設計者が約5時間費やしていたCAD入力作業を10分程度に短縮できるとしています。2024年問題による就業時間の規制等もあり、さらなる人手の逼迫が予測される今後、このようなテクノロジーを用いて人手を補うことは、より大切になっていきます。

いかに人材を確保していくかということも大切なところです。建設業界には3K(きつい、汚い、危険)のイメージがいまだにありますが、働き手を集めるためには、そこを払拭するような自社アピールをしていく必要があります。住宅会社のなかにも、月1回の完全週休3日制を導入している会社も現れてきており、そのような会社を見習うこともよいかもしれません。優秀な人材が集まれば、後継者にふさわしい人が見つかる可能性もあります。

業界一体となって壁を乗り越える時期か

ここまで、工務店の倒産が急増している理由とその対策を紹介してきましたが、生き残るためには業界全体での協力と連携も欠かせません。工務店のなかには、隣県の有力な会社と情報共有を頻繁に行っているような会社もあります。同業他社とライバルとして対立するのではく仲間として手をつなぐと、新たな発見があるかもしれません。また、ノウハウなどの共有を図る住宅関係の団体もいくつか見られるようになってきました。そのような団体に積極的に参加して情報を集めることも有効かもしれません。

工務店の倒産が急増していることは深刻な問題ですが、適切な対策を講じて乗り越えれば、より強い会社となるとも考えられます。広い視野を持って、持続可能な発展のために前進できるといいですね。


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株式会社住宅産業研究所(JSK)
株式会社住宅産業研究所(JSK)
1976年設立、住宅業界専門の調査会社。「月刊TACT」などの情報誌・調査資料・セミナー・研修・コンサルティングなどを通じて全国の住宅会社に情報を提供する。

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