<新着>住宅を引き渡し後に直し工事を要求された場合の対処方法とは?
目次[非表示]
施主からやり直し工事を要求されたときの建設会社の対応
住宅の引き渡し後に施主から「ここをやり直してほしい」と要求された場合、施工会社としてまず何をすべきでしょうか。まずは指摘箇所を早急に確認し、対応することが大切です。クレームを放置すれば施主の不信感を招き、軽微な問題でも重大なトラブルに発展しかねません。施主からやり直し工事を求められたら、まずはその箇所を入念に確認し、写真を撮るなど記録を残すことが大切です。
次に、その箇所が本当にやり直し工事を要するか検討します。契約書や図面、仕様書に記載された内容と実際の施工状況を照合し、相違がないかを確認します。契約どおりに施工されていれば、施主の好みに合わなくても法的な瑕疵(かし:契約不適合)ではないため、無償でのやり直し義務はありません。
一方、施工内容が契約と異なる場合は契約不適合となり、施主には修補(やり直し)を求める正当な権利があります。施工会社も契約どおりの状態に直す追完義務を負うことになります。
瑕疵(不具合)があった場合の対応
施工ミスなどにより契約と食い違う瑕疵(不具合)が判明した場合、施工会社は速やかに適切な対応を取る必要があります。民法上の「契約不適合責任」に基づき、施工会社には契約内容に適合させるための追完義務(修補義務)が生じます。
引き渡した住宅が契約書や図面どおりの内容になっていないのであれば、施工会社の責任で契約どおりの状態に修復しなければなりません。これは旧来の「瑕疵担保責任」に代わる制度で、施主は原則として不適合箇所の無償修補を請求できます。
施工会社としては、指摘された不具合が法的に契約不適合に当たるか慎重に判断することが求められます。判断に迷う場合は建築問題に詳しい専門家に相談し、対応方針を決めるとよいでしょう。万一必要なやり直し工事を誤って拒めば、施主から訴訟を提起されるリスクもあります。そのため、契約不適合の有無や修補範囲については早めに的確な判断を行うことが重要です。
実際にやり直し工事を行う際は、施主と十分協議をして工事内容やスケジュールを決め、合意事項を書面に残しておきましょう。口頭の約束だけでは後日食い違いが生じる恐れがあるため、記録を残すことがトラブルの防止につながります。
やり直し工事を下請け会社にさせることができるか
やり直し工事が必要になった場合、その工事を下請け会社に任せることはできるのでしょうか。住宅建築では大工工事や設備工事など、多くの下請け会社が関与するのが一般的です。不具合の原因が元請けである施工会社自身にあるのか、下請け会社の施工ミスによるものなのかによって、対応や費用負担の仕方が異なります。
明らかに下請け会社のミス(図面の指示を見落とした施工など)が原因で発生した不具合であれば、元請け会社は下請けに無償でのやり直しを求めたり、修補費用を請求したりできます。しかし、下請け会社に落ち度がないにもかかわらず、無償でやり直し工事を押しつけることは建設業法上問題があります。
下請け会社に責任がないのに一方的にやり直しを引き受けさせて費用まで負担させる行為は、建設業法19条の3(不当に低い請負い代金の禁止)に違反する可能性があります。
下請け会社に非がないケースでも、作業自体を下請けに依頼することは可能です。しかしその場合は元請けが費用を負担したうえで正式に契約変更を行い、適正な追加料金を支払う必要があります。
契約変更を文書で行わないと、契約書面の締結義務を定めた建設業法19条にも違反する恐れがあります。つまるところ、元請け会社が下請け会社任せにせず、自ら責任を持って最後まで対処する姿勢が求められます。
施主とトラブルになった場合の対処法
施主からのやり直し要求をめぐるトラブルが深刻化した場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。建築問題に詳しい弁護士であれば、法律の観点から適切なアドバイスを受けられるうえ、必要に応じて施主との交渉を代理してもらうこともできます。建築トラブルは追加工事や代金未払いなど複雑な要素が絡みがちなので、建築士と連携した実績のある弁護士に依頼すると安心です。
また、トラブル解決にあたっては、不具合ごとの責任の所在と、修補費用・損害の負担を誰がどの程度負うべきかを明確にする必要があります。必要に応じて第三者の助言を仰ぎ、責任割合や費用負担の妥当性を検討することになるでしょう。
新築工事で施主が最終金の支払いを留保し、施工会社が弁護士を通じて請求した結果、紛争に発展するということもあり得ます。こうした事態に陥る前に、専門家を介して円満な解決策を模索することが望ましいといえます。
引き渡し後のやり直し工事トラブルも、法律にのっとった適切な対応と冷静な話し合いによって解決できます。施主と施工会社の双方が歩み寄り、互いに納得できる解決策を探る姿勢が何より重要です。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:施主からやり直し工事を求められた場合、まず何をすればよいのでしょうか?
A:まず、施主が指摘する箇所を入念に確認し、写真を撮るなど記録を残します。次に、契約書や設計図と照合し、施工が契約内容に適合しているかを判断します。契約どおりであれば無償での修補義務はなく、施主と協議が必要です。
一方、契約不適合が認められる場合は、民法の契約不適合責任に基づき、無償でやり直す義務が発生します。
Q:下請け会社のミスではないのに、やり直し工事をさせることは可能ですか?
A:下請け会社に過失がない場合、無償でやり直しをさせることは建設業法上問題となります。建設業法19条の3では、不当に低い請負い代金の禁止が規定されており、下請け会社に過度な負担を強いることは認められません。元請け会社が費用を負担し、正式な契約変更を行ったうえで下請け会社に依頼することが適切な対応となります。
また、元請け会社自身が責任を持って修補工事を行うことも検討すべきでしょう。トラブル回避のため、契約変更は必ず書面で行うことが重要です。
。
●関連コラムはこちら
≫ 建築確認申請とは?申請に必要な書類とよくあるトラブルの対処法を解説!
≫ 工務店の倒産が急増! その理由と対策
執筆者
弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)
単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。