<新着>躯体工事とは? 構造ごとの種類と流れ・工期短縮のコツを解説
躯体工事は、建築工事の土台ともいえる、非常に重要な工程のうちの1つです。
柱や梁、床、壁、基礎といった建物の“骨組み”がしっかりしていないと、どんなに内装がきれいでも安心して住めません。
構造のタイプによって工法や使う材料も変わってきます。鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)、木造(W造)など、それぞれに特徴や注意点があり、工事の進め方にも違いがあります。
本記事では、そもそも躯体工事とは何か?という基本から、構造ごとの違いや工程の流れ、トラブルを防ぐためのチェックポイントまで、わかりやすく解説していきます。
目次[非表示]
- 1.躯体工事とは?
- 2.躯体工事の種類| RC造・S造・W造の構造別の工事種類
- 2.1.RC造(鉄筋コンクリート造)の躯体工事の種類
- 2.2.S造(鉄骨造)の躯体工事の種類
- 2.3.W造(木造)の躯体工事の種類
- 3.躯体工事(RC造)の流れと工事期間の目安
- 4.躯体工事の工期を短縮するための活用法
- 4.1.プレキャスト工法・ユニット工法の活用
- 4.2.型枠の再利用・特定支柱の活用
- 4.3.構法・工法の見直し
- 5.躯体工事でトラブルになりがちな3つの注意点
- 6.執筆者
- 6.1.瀧澤 成輝(二級建築士)
躯体工事とは?
躯体工事とは、建物を支える構造の「躯体」をつくる工事のことを指します。そもそも「躯体」とは、建物を支える構造部分を指し、基礎・柱・梁・床・壁・屋根などが含まれます。
これらは建築基準法施行令第1条第3号で「構造耐力上主要な部分」として定められており、建物の構造的に極めて重要な部分となります。
(出典:建築基準法施行令第1条第三号)
建築物における重要な部分のため、「骨組み」とも呼ばれます。
躯体工事の種類| RC造・S造・W造の構造別の工事種類
躯体工事は、建物の骨組みとなる「構造体」を築く工事を指しますが、大きく分けて2つの工程に分かれています。
- 基礎工事
- 本体工事
基礎工事は、地盤改良や杭打ちなど、建物の荷重を地盤に伝えるための基礎をつくる工程を指し、本体工事は、柱・梁・床・壁など、建物の骨組みを構成する主要構造部を施工する工程を指します。
さらに、構造の材質によっても工事種類が異なります。
本章では、以下の3つの構造別に、躯体本体工事の工事種類とその概要についてわかりやすく整理していきます。
- RC造(鉄筋コンクリート造)
- S造(鉄骨造)
- W造(木造)
では、1つずつ紹介していきます。
RC造(鉄筋コンクリート造)の躯体工事の種類
RC造は、鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造で、耐震性や耐火性に優れているのが特徴です。
以下に主な種類を表にまとめました。
工事種類 |
概要 |
配筋工事 |
構造計算に基づき、鉄筋を図面どおりに配置する |
型枠工事 |
コンクリート打設用に型枠を組み立てる |
コンクリート工事 |
打設、締固め、養生まで一連の工程を行う |
S造(鉄骨造)の躯体工事の種類
S造は、主要な構造部に鋼材(鉄骨)を使う構造で、軽くて強いのが特徴です。
以下に主な種類を表にまとめました。
工事種類 |
概要 |
鉄骨製作 |
工場で主要部材(柱・梁)を溶接・加工する |
建方工事 |
現場でクレーンを使用し鉄骨を組み上げる |
接合部処理 |
ボルト締結または現場溶接で部材を固定する |
W造(木造)の躯体工事の種類
W造は、木材を構造の中心に使った建物で、日本の住宅の8割がこれに該当します。
木造建築物には主に2種類の工法があります。
- 土台・柱・梁などの骨組みで建てられる「在来軸組工法」
- 6面の天井と壁と床で囲うことで建てられる「ツーバイフォー工法」
これらは、それぞれ工事種類が異なります。
以下に主な種類を表にまとめました。
工事種類 |
概要 |
土台・柱・梁の組立(在来軸組工法) |
現場で木材を組み上げて骨組みを構成する |
天井・壁・床の構築(ツーバイフォー工法) |
工場または現場で天井・壁・床をパネル化し、六面体を形成する |
耐力壁の設置(在来軸組工法) |
筋交い・構造用合板で耐力を確保する |
躯体工事(RC造)の流れと工事期間の目安
RC造(鉄筋コンクリート造)の躯体工事は、建物の耐震性や耐久性を左右する重要な工程です。本章では、RC造における躯体工事の流れと、工事期間の目安について詳しく解説していきます。
RC造(鉄筋コンクリート造)躯体工事の流れ
RC造(鉄筋コンクリート造)の躯体工事は、以下のような工程で進行します。
工事内容 |
解説 |
① 墨出し作業 |
建物の基準線を現場に正確に描き、柱や壁の位置を決める作業 |
② 鉄筋工事 |
設計図に基づいて柱・梁・壁などに鉄筋の組み立てを行う かぶり厚さや定着長さを確保する |
③ 型枠工事 |
コンクリートを流し込むために型枠の組み立てを行う |
④ 配管・配線の設置 |
給排水管や電気配線などをコンクリート内部に埋設するため、型枠設置後にあらかじめ必要な位置に配管・配線の設置を行う |
⑤ コンクリート打設 |
型枠内にコンクリートを流し込み、バイブレーターで気泡を除去しながら締固めを行う |
⑥ 養生期間 |
コンクリートの強度が十分に発現するまで湿度・温度を管理しながら養生を行う |
⑦ 型枠解体 |
コンクリートが所定の強度を満たしたのを確認後、型枠を解体する |
この工程は1階ごとに繰り返され、RC造の建物全体が少しずつ積み上がっていきます。それぞれの段階で品質を確保するのが、耐震性・耐久性に優れた建物づくりには不可欠です。
【躯体工事】建物規模別の工期目安
RC造の躯体工事に要する期間は、建物の規模や設計によって異なります。
一般的な目安は以下のとおりです。
建物規模 |
工事期間の目安 |
2〜3階建て |
約3〜4ヶ月 |
4〜5階建て |
約5〜6ヶ月 |
6階建て以上 |
約7ヶ月以上 |
工期は、天候や資材の供給状況、施工体制などによって変動する可能性があります。
躯体工事の工期を短縮するための活用法
前章でも解説したとおり、RC造の躯体工事には相応の工期がかかり、特に中高層の建物では半年以上に及ぶケースも少なくありません。
工期が長引くことで、現場管理費の増加や資金回収の遅延、さらには近隣への影響や天候リスクの拡大といったさまざまなデメリットが生じる恐れがあります。
こうした課題を回避するために、計画段階から「工期短縮」を意識した工法の選定が重要です。
工期を短縮するための方法は以下の3つです。
- プレキャスト工法・ユニット工法の活用
- 型枠の再利用・特定支柱の活用
- 構法・工法の見直し(乾式工法やモジュール設計など)
それぞれの手法について詳しく解説していきます。
プレキャスト工法・ユニット工法の活用
プレキャスト工法は、鉄筋コンクリートの部材をあらかじめ工場でつくっておき、現場で組み立てる工法です。現場での型枠づくりやコンクリートの打設作業が減るため、工期を短くできるのが大きなメリットです。
工場で安定した品質管理のもとで製造されるので、部材の仕上がりにバラつきが出にくく、騒音や振動の軽減にもつながり、周囲の環境にもやさしい工法といえます。
ユニット工法は、住宅の一部を“ユニット”として工場であらかじめ製造し、それを現場で組み立てる工法です。基礎工事とユニットの製造を同時に進められるため、全体の工期を大幅に短縮できます。
現場での作業が少なくて済むため、天候による影響を受けにくく、安定した品質が確保しやすいのも特徴です。
型枠の再利用・特定支柱の活用
型枠の再利用では、従来の木製型枠に代わって、繰り返し使える「システム型枠」を使うことで、型枠の組立てや解体の手間が減り、工期の短縮ができます。
型枠を再利用することで廃材の発生を抑えられて、環境への負荷を軽くするメリットもあります。
特定支柱の活用は、工事現場の条件や構造に応じて、適切な支柱を選定・配置することで、作業効率の向上と工期の短縮できます。
たとえば、支柱の間隔や配置を最適化することで、型枠の設置や解体作業の効率が向上し、全体の工期を短縮できます。
構法・工法の見直し
構法や工法を見直すのは、設計の段階から工期短縮を意識した構造や施工方法を取り入れることを意味します。部材をモジュール化したり、プレハブ化・乾式工法を導入したりすることで、現場での作業がシンプルになり、全体の工期を短縮できます。
躯体工事でトラブルになりがちな3つの注意点
躯体工事は建物の骨組みを形成する重要な工程であり、施工ミスや管理不備が後々の大きなトラブルにつながる可能性があります。
本章では、躯体工事で特に注意すべき3つのポイントを解説いたします。
1.施工管理・監督業務における資格の有無
躯体工事の施工管理や現場監督を行ううえで、必ずしも資格がなければできないわけではありません。とはいえ、「建築施工管理技士」などの資格を持っていると、工事の品質や安全をしっかり確保するうえで、大きな強みになります。
資格がない場合でも、現場を管理するには豊富な経験や確かな技術が求められます。
資格の有無は発注者からの信頼にも関わるため、企業の信用や評価にも影響してくる重要なポイントです。
(出典:日本建設業連合会 改修工事の落とし穴)
2.元請け会社とサブコン間でのトラブル
躯体工事では、元請け会社と下請け会社(サブコン)との間で、工期や仕上がりの品質、コスト面で食い違いが生じたりと、さまざまなトラブルが起こることがあります。
こうしたトラブルを防ぐには、契約の段階で工事範囲・仕様・スケジュール・費用について、細かく取り決めておくことが大切です。
3.資金繰りの悪化による「黒字倒産」
躯体工事は工程が長く、資材費や人件費といったコストが先にかかるため、資金繰りが厳しくなりがちです。
特に注意すべきなのが、会計上は黒字でも、手元の現金が足りずに支払いができなくなる「黒字倒産」のリスクです。こうした事態を避けるには、事前の資金計画と、日々の現金の動きの管理が欠かせません。
工事の進み具合に応じて適切に請求・回収を行い、資金の流れの計画を常に把握しておくのが重要です。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:躯体工事とは何ですか?
A:躯体工事とは、建物を支える柱・梁・床・壁・基礎などの構造体をつくる工事です。建物の安全性・耐久性・耐震性を左右する非常に重要な工程です。
Q:RC造・S造・W造の躯体工事の種類は?
A:RC造は鉄筋とコンクリートを用いた打設工事、S造は工場製作の鉄骨を現場で組み立てる工事で、W造は木材を使った在来軸組工法や枠組壁工法による施工です。
Q:躯体工事はどのように分類されますか?
A:大きく「基礎工事」と「本体工事」に分けられます。基礎工事では地盤改良や杭打ちなどを行い、本体工事では柱・梁・床などの骨組みを施工します。
Q:構造形式によって、躯体工事の内容はどう違いますか?
A:RC造では、鉄筋・型枠・コンクリートによって構造体を形成します。S造では、工場製作の鉄骨を現場で建て込み、接合して構造体をつくります。木造では、在来工法やツーバイフォー工法などを用いて木材で構造体を組み上げます。
Q:RC造の躯体工事にはどれくらいの期間がかかりますか?
A:建物の規模によりますが、2〜3階建てで約3〜4ヶ月、4〜5階建てで約5〜6ヶ月、6階建て以上で7ヶ月以上が目安です。
Q:資金繰りで注意すべきことは?
A:躯体工事は支出が先行するため、キャッシュフロー不足による「黒字倒産」のリスクがあります。適切な資金計画と、工事進捗に応じた請求・回収が重要です。
Q:工期を短縮するにはどうすればいいですか?
A:プレキャスト工法やユニット工法の導入、型枠の再利用、工法の見直し(乾式工法・モジュール設計)などが有効です。施工効率と品質の向上を両立できます。
Q:躯体工事でよくあるトラブルには何がありますか?
A:施工管理者の資格者不足、元請けとサブコン間の認識ズレによる工期・コスト・品質のトラブル、資金繰りの悪化による「黒字倒産」などが挙げられます。事前の計画と情報共有が非常に重要です。
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執筆者
瀧澤 成輝(二級建築士)
住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。
大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。
特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。