<新着>増築時に必須の建物表題変更登記とは? 手続きと実務ポイント
建物を増改築したり住宅を店舗へ用途変更したりすると、登記簿の内容と現況にズレが生じます。
表題変更登記を怠ると、1ヶ月以内の申請義務違反で過料を科されるだけでなく、融資・売却・相続でも手続きが滞り、余計なコストやトラブルを招きかねません。
この記事では、表題変更登記を円滑に進めるための申請手順、必要書類、スケジュール管理のコツと、期限超過・未登記で起きる問題について解説します。
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表題変更登記とは?
表題変更登記とは、建物を増築・減築したり、住宅から店舗などへ用途を変更したりする際に、実際の状態と登記簿の表題部を一致させるために行う手続きです。
登記内容が最新の状態であれば、不動産の売買や相続、融資の際に権利関係が明確になり、固定資産税の評価も正しく行われます。その結果、取引リスクを抑えることができるというメリットがあります。
たとえば、増築によって床面積が広がれば、それに応じて固定資産税が見直され、減築を行った場合には保険料が下がる可能性もあります。こうした情報は、不動産に関するさまざまな手続きを進めるうえで、重要な前提資料となります。
建物の面積や構造に変更があった際は、できるだけ早めに専門家へ相談することをおすすめします。
増改築後の表題変更登記を申請するタイミング
増改築工事が完了したら、すぐに登記の準備を始めましょう。建物の増改築工事が完了し、規模や構造が確定した時点で、表題変更登記の準備に取りかかることが重要です。
法定の申請期限は「変更があった日から1ヶ月以内」と定められており、遅れると10万円以下の過料が科される可能性があります。引き渡し直後には、土地家屋調査士に速やかに連絡を取り、検査済証の交付日や現地測量の予定などを事前に工程表へ組み込んでおきましょう。
また、必要書類をあらかじめ収集しておけば、金融機関の融資実行や不動産売買にも支障をきたさず、申請期限の超過や法務局からの差し戻しといったトラブルを未然に防ぐことができます。
工事の終盤には「登記申請」のタスクを工程に組み込み、引き渡しから申請までをワンストップで管理する体制を整えておくことが、安全で確実な進行につながります。
増築後に行う表題変更登記申請の流れ
増築後の表題変更登記は、以下の流れで進めます。
1.増築工事完了 2.土地家屋調査士が現地測量・変更点確定 3.申請書類の作成 4.所有者押印のうえ法務局へ申請 5.登記完了証・更新後登記事項証明取得 |
増築が完成した日が変更日となり、1ヶ月以内に表題変更登記を申請する必要があります。
検査済証を受け取ったら次に土地家屋調査士へ連絡し、外壁やバルコニーなどを実測して差異を確認します。
調査士が申請書や図面を作成し、所有者が実印を押印して提出します。補正に即応すれば5〜7営業日で完了証と登記事項証明書が交付され、固定資産税評価や融資・売却・相続に活用できます。
期限を過ぎると取り引き遅延や10万円以下の過料の恐れがあるため、工期終盤に登記タスクを工程表へ組み込むと安心です。
表題変更登記に必要な主な書類一覧
ここでは、増築後の表題変更登記に必要な主な書類について解説します。
必要な書類は下表のとおりです。
表題変更登記申請書 |
増築前後の種類・構造・床面積を併記し、変更点を明確に記載。 |
所有権証明関係書類 |
建築確認済証・検査済証、工事完了引渡証明書、固定資産評価証明書、上申書などから適切なものを選び添付。 |
図面類 |
増築後の建物図面・各階平面図。土地家屋調査士が作成し整合性をチェック。 |
委任状 |
調査士が代理申請する場合に必要。所有者実印を押印。 |
印鑑証明書・本人確認資料 |
所有者の印鑑証明書(3ヶ月以内)と運転免許証等の写し。 |
表題変更登記を円滑に済ませるには、まず増築前後の「種類・構造・床面積」を比較した表題変更登記申請書を用意するのが出発点です。続いて、建築確認済証・検査済証、工事完了引渡証明書、固定資産評価証明書など、変更内容に応じた所有権関連書類を添付します。
さらに、土地家屋調査士が実測に基づいて作成する「建物図面」と「各階平面図」は必須で、既存登記との整合性をミリ単位で確認する慎重さが求められます。代理申請を調査士に依頼する場合は、実印を押した「委任状」に加え、発行から3ヶ月以内の「印鑑証明書」と顔写真付き身分証の写しを本人確認書類として準備してください。
これらの書類が一つでも欠けると、法務局から補正指示が出て再提出となり、期限超過による過料リスクも高まります。工事終盤にはチェックリストで書類を総点検することをおすすめします。
表題変更登記遅れまたは未登記で生じる問題点
ここでは、表題変更登記遅れまたは未登記で起きる問題点について解説していきます。
主な問題点は以下の3つが挙げられます。
- 申請期限超過で過料発生・再手続き費用で負担コストが上がる
- 未登記放置で税追徴・売却交渉が不利になる場合も
- 相続・融資時に権利立証が困難化しもめる原因に
では、それぞれ解説していきます。
申請期限超過で過料発生・再手続き費用で負担コストが上がる
変更から1ヶ月を過ぎて表題変更登記を怠ると、不動産登記法第164条により10万円以下の過料が科される可能性があります。
過料通知が届けば即納付が必要なうえ、法務局の是正指導に従い再測量・追加図面作成・利害関係者への再押印など作業が山積。調査士報酬や行政書類取得費が二重に発生し、現場責任者のスケジュール再調整も不可避となるため、工事終盤で確保した利益が目減りするリスクが高まります。
特に期末決算前の経理処理が煩雑になり、キャッシュフローも圧迫されかねません。
未登記放置で税追徴・売却交渉が不利になる場合も
未登記のまま固定資産台帳が更新されないと、課税庁は後年の調査で増築部分を把握し、過去5年分までさかのぼって追徴課税を行う場合があります。追加税額に加え延滞金・加算税も課されるため負担は数十万円規模に膨張します。
売却時には登記簿と現況の食い違いで買主側金融機関が融資実行を保留し、契約締結が延びるか最悪破談のリスクも。登記修正費用を売主負担とする条件交渉で価格が数%下がる事例も珍しくなく、資本回収計画に深刻な影響を与えます。
また、仲介会社が重要事項説明書を作り直す手間賃を上乗せ請求するケースも見受けられます。
相続・融資時に権利立証が困難化しもめる原因に
相続や融資申請の際、登記簿が現況と異なると金融機関や法務局が追加調査を要請し、処理が長期化します。
増築未登記の場合、遺産分割協議書や担保評価書に矛盾が生じ、相続人間で権利割合をめぐる紛争が発生することもあります。住宅ローンでは担保価値算定ができず審査落ちや借入額減額となり、資金計画が頓挫。後日登記修正を試みても、所有者死亡で書類がそろわず相続登記と並行して複雑な手続きが必要になり、登記完了まで半年以上要するケースが少なくありません。
結果として不動産の流動性が低下し、急な現金化ニーズに応えられず機会損失が拡大します。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:表題変更登記とは?
A:増改築や住宅から店舗への用途変更などにより、建物の「種類・構造・床面積」が変わった場合、登記簿の表題部を現況に合わせて更新するための法定手続きです。
Q:申請期限は?
A:工事完了日から1ヶ月以内。遅れると不動産登記法164条により10万円以下の過料を科される恐れがあります。
Q:そろえるべき書類は?
A:
1.表題変更登記申請書
2.所有権証明関係書類
3.図面類
4.委任状(調査士が代理申請する場合に必要)
5.印鑑証明書・本人確認資料
Q:期限超過・未登記で生じるリスク
A:期限を過ぎて未登記を放置すると、過料に加え、再測量・追加図面費などの二重コスト、追徴課税、融資・売却の遅延、相続紛争まで損失と手間が雪だるま式に膨らみ、長期的には資産価値の低下を招く恐れもある。
Q:手続きをスムーズに進めるためには?
A:
・工程表に“登記申請”タスクを組み込む
・チェックリストを活用し書類漏れゼロを徹底する
・土地家屋調査士へ早めに依頼・相談をする
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執筆者
瀧澤 成輝(二級建築士)
住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。
大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。
特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。