建築・施工管理

建設業法第22条「一括下請負の禁止」とは? その判断基準と違反した場合の罰則についても解説!

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一括下請負(丸投げ)とは

建設業界で「丸投げ」とも呼ばれる「一括下請負」とは何でしょうか。建設業法第22条では、元請け会社が受注した建設工事をそっくりそのまま他社に任せる行為を明確に禁じています。

本記事では、この「一括下請負の禁止」の内容と背景、守るべきポイントや違反リスクについて分かりやすく解説します。

一括下請負とは、受注した建設工事の全部または主要部分を、自社では施工せずすべて下請け会社に委ねてしまうことです。

たとえば、A社がビル建設を請け負った後、工事の実作業を丸ごとB社に任せ、A社自身は現場管理や技術的な作業を一切行わない。これが典型的な「丸投げ」のケースです。このように元請負人が工事に実質的に関与せず、名義だけを貸す状態になるため、法律で禁止されています。

建設業法第22条第1項では「建設会社は、その請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない」と定められています。

また第2項では逆に建設会社(下請け会社の側)も、他の建設会社が受注した工事を一括して引き受けてはならないと規定され、丸投げの受発注双方が禁止対象です。
(出典:e-GOV法令検索『建設業法』)

なお、一部例外として民間工事(住宅など)で発注者から事前に書面による承諾を得た場合は、一括下請負の禁止が適用除外となります。

ただし公共工事や共同住宅の新築工事では一切認められず、どんな理由があっても全面的に禁止されています。許可されたケースでも、元請けは主任技術者等を配置し品質・安全を管理する責任を負う点に注意が必要です。

一括下請負が禁止される理由

なぜ丸投げはこれほど厳しく禁じられているのでしょうか。
主な理由は以下のとおりです。

発注者の信頼を裏切るから

発注者は元請け会社の実績や能力を信頼して契約します。それにもかかわらず、全く別の会社が工事を行うと、発注者の信頼を損ねることになります。

中間搾取や品質低下のおそれ

丸投げを許すと、元請けが中間マージンを抜くだけで実作業に関与せず、工事品質の低下や労働条件の悪化を招くおそれがあります。十分な施工費用が確保されず手抜き工事や事故リスクが高まりかねません。

責任の不明確化

受注者と実際の施工者が異なると、発注者の要望が現場に伝わりにくくなったり、トラブル発生時に元請け・下請けがお互いに責任転嫁し合ったりするおそれがあります。施工管理責任が曖昧になれば、現場で問題が起きても迅速な対応が困難になります。

不良会社の蔓延・業界健全性の阻害

施工能力のない「ブローカー」的会社が受注だけ行い丸投げするようになると、健全な建設業の発展を阻害します。技能や資力のない会社が下請けいじめを生み出す温床ともなりかねません。

以上のような理由から、建設業法は一括下請負を厳禁としており、発注者の保護と工事品質の確保、業界の健全化を図っているのです。

一括下請負に関する注意点

一括下請負の禁止規定は実務上いくつか注意すべきポイントがあります。「それって丸投げになるの?」と判断に迷いやすいケースを押さえておきましょう。

部分的に施工しても主要部分を任せれば違反の可能性

たとえ元請け自ら一部の作業だけ施工しても、肝心の主要工事を他社に任せて自社はほとんど関与しない場合、一括下請負とみなされます。たとえば住宅の新築工事で、建具工事だけ自社施工し他のすべての工事を他社に下請けさせるケースは典型的な違反例です。契約を小分けにするなどの形式的な操作をしても、実態が丸投げであれば「いかなる方法をもってするかを問わず」禁止されます。

複数の下請けに分散しても要注意

一社に丸ごと任せず複数の下請け会社に振り分けた場合でも、元請けが全体を管理せず主要部分の施工を下請け任せにしていれば違反となり得ます。下請け契約の数や下請け割合に明確な基準はなく、元請けの関与度合いで判断される点に注意が必要です。極端に言えば、仮に10社に分けて施工しても元請け自身が何も管理していなければ丸投げと変わりありません。

「実質的な関与」がカギ

一括下請負かどうかの判断基準は、元請負人が工事の施工に「実質的に関与」しているか否かです。実質的関与とは、元請けが自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、完成検査、安全管理、下請け会社への指導監督などの役割を主体的に果たすことを指します。

単に現場に名義上の技術者を置くだけでは不十分で、元請けの社員である有資格者を常駐させて上記管理業務を全うする必要があります。こうした関与があれば、実際の施工作業の多くを下請けに任せていても一括下請負には該当しません。逆に言えば、主任技術者等を形だけ配置し元請けが現場管理を放置しているとみなされれば、契約形態に関係なく違反となるおそれがあります。

誤解されやすいケース

よくある疑問として「外注割合が何%なら丸投げとみなされるのか?」があります。しかし何%までなら安全という明確なラインはありません。また「上請け」「横請け」といったケースも、元請けとしての実質的関与がなければ結果的に一括下請負と同様に違法となります。いずれの場合も、元請け企業が主体的に施工管理・監督を行っているかが判断基準になることを覚えておきましょう。

一括下請負の判断基準と違反時の罰則

では具体的にどこからが「一括下請負違反」になるのでしょうか。国土交通省の通知では以下の2パターンが示されています。

  • 工事全体または主要部分をまとめて下請けに出す場合(元請けが実質関与していないと認められるケース)
  • 工事の一部分で、他の部分と独立した機能を持つ部分の工事を丸ごと下請けに出す場合(こちらも元請けの関与なしと認められるケース)

上記に該当すれば、一括下請負の禁止違反となります。判断は請負契約ごとに行われ、工事ごとの状況(施工範囲や下請け構成)を見て総合的に判断されます。元請けがほとんど関与せず、実質的に下請け会社だけで工事が進められているような場合は要注意です。

違反が認定された場合のペナルティも重いものとなっています。行政当局によれば、違反した建設会社には建設業法に基づく監督処分(行政処分)が科され、厳正に対処されることになっています。

具体的には営業停止処分(一定期間の営業停止)が科されるのが原則です。情状次第では建設業許可の取り消し(営業禁止)といった、さらに重い処分に至る可能性もあります。また法律上、元請けだけでなく丸投げを引き受けた側の下請け会社も処分対象になり得る点にも注意が必要です。

行政処分だけでなく、企業としての信用失墜というリスクも見逃せません。一括下請負違反で処分を受けた事実が公表されれば、元請け・下請けいずれの企業も社会的信用を大きく損ない、今後の受注に支障を来すでしょう。

そうした事態を避けるためにも、日頃から施工体制を適正に整え、関係法令を順守することが不可欠です。

記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:発注者の承諾があれば一括下請負(丸投げ)をしてもいいのですか?
A:民間工事の場合に限り、共同住宅の新築工事を除いて発注者から事前に書面承諾を得れば一括下請負が可能です。ただし元請け会社は主任技術者等の配置や品質管理などの責任を負う義務があります。公共工事では承諾があっても一切認められません。

Q:下請け工事への外注割合が高いと一括下請負と疑われますか?
A:外注割合に明確な基準はありません。重要なのは元請けが工事全体にどれだけ関与・管理しているかです。外注が多くても元請けが主体的に施工管理を行っていれば違反ではなく、逆に関与が乏しければ丸投げとみなされる可能性があります。

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執筆者

弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)

単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。

編集部
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