子育て・シニア・単身…属性別で異なる家づくりの基本とは?

住宅着工の減少が続いています。市況が厳しくなる中で、住宅会社としてはターゲットの幅を広げる施策を取っていきたいです。
これまでの住宅事業の多くは一次取得層、その中でも子育てファミリーをメインターゲットとしていました。年齢にして、20代後半から30代です。
しかし、国勢調査などによるとこの年齢層の人口は年々減少し続けています。つまり、この戦略だけでは業績拡大のハードルが高くなる一方です。
そこで新しいユーザー需要の掘り起こしは取り組みたい事柄の一つであり、例えば、シニア夫婦やシングル世帯などが挙げられます。実際にこのようなユーザーにマッチするような商品を開発する住宅会社も出てきています。
平屋人気はこれからも続く?ユーザーが重視したいのは「暮らしやすさ」
住宅の形態として、年齢や家族形態を問わず人気が高いのは、「平屋」。圧倒的に暮らしやすさが要因の一つです。階段の昇降がないだけで、生活、掃除がラクになる。
ただ、ある程度の敷地面積が必要になりますが、建物価格は抑えられるといったメリットもあります。建物の重心が低くなる分、耐震性という観点でも有効です。土地探しから始めるユーザーにとっては2階建てながら、平屋のように暮らせる住宅というのも選択肢になります。
例えば子育てファミリーが施主のケースであれば、1階にLDKと水まわり、主寝室、2階に子ども部屋といった間取りで、子育てが終わると1階だけで生活を完結できるというものです。
人生100年時代と言われる昨今、「高齢になった時」、「自身の体が不自由になった時」を想定した家づくりは重要で、長く自宅で暮らしたいということであれば、やはり平屋がフィットしやすいです。
2024年度の建築着工統計によると、平屋の着工棟数は67,628棟(居住専用住宅)でした。5年前の2019年度と比較すると、当時が43,258棟だったので、2.4万棟ほど増えていることになります。
都道府県別では、新潟や富山、石川など雪国と言われるような県では2倍以上に増えています。また、2024年度の居住専用住宅の着工棟数に占める平屋の割合が高い県は、宮崎と鹿児島で、それぞれ50%を超えています。平屋需要は今後も底堅いものと見られ、このような商品ラインナップを揃えるのも選択肢の一つです。
単身・二人暮らし世帯の家づくり、シニア夫婦などにマッチするコンパクト住宅
最近は、子育てが終了したシニア夫婦などをターゲットとする二人暮らしサイズの住宅商品を扱う住宅会社が増えています。それぞれの商品に共通して言えるのは、建物がコンパクトであること。
子ども部屋を想定していない2LDKで、延床面積は20坪前後。老後を見据えて平屋が好ましいですが、土地探しから家づくりを始めるユーザーでグロスの予算を抑えたいのであれば、2階建ても検討対象となりやすいです。
2階建ての延床面積20坪であれば、建築面積が10坪と非常にコンパクトです。この建築面積であれば、フィットする土地の選択肢がより多いはずです。建築面積15坪の建物は入らないが、10坪なら建築できるという掘り出し物が安価に出てくることもあります。
施主自身のための家づくり、キーワードは「自己実現」
シニアのユーザーが家づくりを進める上では、子育てファミリーとは重視するポイントが変わってきます。
例えば、土地探しに関して言えば、子育てファミリーであれば、これから子どもが成長して小学校、中学校に通うことを見越して、「自治体の子育て支援」や「子どもを育てる上での環境」、「学区」などでエリアを絞ることが多いですが、余暇時間を充実させたいミドルシニアのユーザーは、もっと自身の理想にフォーカスした地域を選ぶケースが多いです。
自然豊かな地域や街中などの繁華街に近い地域などのほか、既に仕事をリタイアしているユーザーであれば、それこそ都道府県をまたいでの移住も選択肢になり得ます。
新築住宅の価格上昇が続く中、「中古住宅」の提案ノウハウも培っていきたい
そして、これからは新築だけでなく、中古住宅もユーザーに訴求していきたいです。新築か中古か限定するのでなく、選択肢としていずれも用意するのがいいでしょう。
今は中古住宅でも耐震補強、断熱改修によって、一定レベル以上の性能向上が期待できます。近年は中古住宅の流通量が増加傾向にあり、中古に対するイメージも変わりつつあります。新築では予算が合わないユーザーが増えている中では、この中古住宅の訴求も強化していきたいです。

●関連コラムはこちら



