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<新着>いま“平屋住宅”が人気の理由とは?少子化&高齢化を見据えた住宅のあり方

いま“平屋住宅”が人気の理由とは?少子化&高齢化を見据えた住宅のあり方

LIFULL HOME’S総研の中山です。
2024年の住宅新設着工戸数は79万2,098戸と2009年のリーマンショック直後以来15年ぶりに80万戸を下回りました。注文住宅も21万8,132戸と前年の22万4,352戸から3%弱減少しており、市場規模が徐々に縮小する状況にあります。

円安による資材価格の高騰および原油などエネルギー関連価格の急騰、2024年問題を端緒として人手不足が解消できないまま続く人件費の上昇に加え、新たに住宅ローン金利の上昇傾向も明確になってきたことで、住宅に対する需要全般が薄れる状況にあるというのが一般的な見方です。

確かに高過ぎて買えない、通勤・通学可能なエリアでは予算オーバー、賃金が上がらないから住宅購入は当面見送らざるを得ない、といったネガティヴな話が聞こえてくるのも事実ですが、住宅業界でも大変注目されている話題があります。

それが今回のテーマ“平屋住宅”です。

目次[非表示]

  1. 1.小世帯&お一人様向けでコストも比較的安価 自由度が高いのが魅力
  2. 2.少人数での生活を前提とした平屋住宅にはメリットしかない

小世帯&お一人様向けでコストも比較的安価 自由度が高いのが魅力

平屋というと旧来の日本家屋で、土地を広く取ってゆとりのある配置が可能な住宅というイメージがあります。1960年代以降、高度成長期を迎えた日本ではなるべく効率良く居住スペースを確保する手段として、宅地開発によって2階建ての一戸建てが急速に普及し始め、並行して公団型の専ら4階建ての団地が郊外のベッドタウン(ニュータウン)に建設されていきました。

その後、分譲タイプのマンションが普及し、賃貸住宅の質も徐々に向上するなかで、一戸建て住宅は2階建てが当たり前の社会になりました。2階建て住宅は、同じ敷地でも居住可能面積=延床面積を増やすことができるためコスパに優れており、家族が増えたり親戚・友人が来訪したりした際にも対応可能ですし、日照や通風も良好で快適に過ごせます。

また部屋数を増やすことができるため一定のプライバシーが確保されることも大きなメリットと言えますから、2~3世代が同居する1980年代までの生活スタイルには最適な居住形式だったと言えます。

ただし、厚生労働省の調査では、4人家族の世帯数のピークは1985年の約937万世帯、5人家族は1983年の約453万世帯で、6人家族だと1971年の約374万世帯が最多となっていますから、1970年代以降は既に核家族化の兆しが表れていることがわかります。

その後、都市圏への人口集中、女性の社会進出など日本の社会構造が変化するに連れて職住近接の生活スタイルが定着し、1980年代以降は核家族化が明確に進行します。核家族化によっても夫婦に子供2人という典型的な家族像は維持されていたため2階建て住宅のニーズも堅調でしたが、1960年に4.14人だった平均世帯人員は1980年には3.22人に減少し、1990年には2.99人と3人を割り込みます。

以降も平均世帯人員は減少を続け、2000年に2.67人、2025年の推計では2.37人となっており、辛うじて2人以上の数値を維持しているものの最早2人暮らしが前提であり、単身世帯も大幅に増加する社会=核家族化から“少人数世帯化”へとさらに世帯人員の減少が進む状況が訪れているのです。

国立社会保障・人口問題研究所の推計では1970年に554万世帯だった単身世帯は、2025年には1,716万世帯と3倍強になっていますから、この変化に適合し単身世帯が安心して暮らせる住宅の需要が今後さらに高まることは必至です。

単身世帯であっても住宅は狭いよりは少し余裕があったほうが良い、という考え方は既に時代にフィットしていないのかも知れません。現代は“断捨離”の時代ですし、時々必要になるものは所有せずレンタル&シェアして活用しようという意識も高いですから、住宅にも快適で安全で性能が高く、さらに“身の丈に合った広さ”が求められるようになっていると考えておくべきでしょう。

少人数での生活を前提とした平屋住宅にはメリットしかない

ごく簡単にこれまでの核家族化の進行や少人数世帯への移行、単身世帯の増加などについて説明しましたが、経緯を踏まえて足元の状況および今後をイメージすれば、単身および2人世帯=少人数世帯はこれからも増加することが確実視され、少子化による総人口・世帯数の本格的な減少が始まれば、そのシェアも着実に拡大することになります。

ではこのような未来に向けて住宅産業が提示できる住まいとは何か、と考えると“平屋住宅”が最適解である可能性が高まります。もちろん、平屋=狭小住宅ではありませんから、サイズはユーザーの予算や生活スタイルに合わせて自由に設定可能ですし、平屋であっても屋根を高くしてロフトを設けることもできるでしょう。

また、現在賃貸であれ分譲であれ、集合住宅に居住しているユーザーは基本的に住戸内では平屋と変わらない生活をしており、階段のない生活が子どもにも高齢者にも安心であること、移動が少なく効率の良い生活ができること、各部屋に役割を持たせて機能的に暮らせること、上階がないことで耐震性にも優れていること、光熱費や維持・管理コストを含めて経済的なメリットがあること、などは既に感覚的に理解していることと思います。

さらに、平屋住宅の最大のメリットは少ない投資額で“我が家”を建設・購入できることです。大雨による浸水などの自然災害についても、予めハザードマップを確認し、必要があれば床を嵩上げしておくなどの対策を講じることで十分対応可能です。

平屋=コンパクトでも快適で居住性に優れた住まいが提供できれば、ユーザーは賃貸住宅に住むことなく、自由度が高い注文住宅を選択する可能性が高まります。単身世帯や2人世帯に向けた平屋住宅の提案&メリットの訴求を是非積極的に展開していただきたいと思います。


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中山 登志朗
中山 登志朗
株式会社LIFULL / LIFULL HOME'S総合研究所 副所長 兼 チーフアナリスト 出版社を経て、 1998年より不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演多数。2014年9月より現職。

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