工務店におけるプロジェクト管理とは?管理目的や流れ・コツについて徹底解説
日々さまざまな工事を請け負う工務店において、すべての案件を滞りなく完了させるためには、全体を見渡したプロジェクト管理が重要となります。「規模の拡大に応じて案件の管理が複雑化している」「納期の遅れが目立つ」といった場合には、プロジェクト管理に目を向けて、仕組みの改善を図ることも大切です。
今回は工務店におけるプロジェクト管理の目的や重要性、取り組み方、成功させるためのコツについて解説します。
目次[非表示]
- 1.工務店におけるプロジェクト管理とは
- 1.1.工務店のプロジェクトとは
- 1.2.プロジェクト管理の対象
- 2.プロジェクト管理の目的
- 2.1.条件内でプロジェクトを完遂させること
- 2.2.会社の利益を最大化させること
- 3.建設業のプロジェクト管理の流れ
- 3.1.1.目的の明確化、達成目標の数値化
- 3.2.2.タスクの洗い出し
- 3.3.3.スケジュールの確定
- 3.4.4.進捗の把握、軌道修正
- 4.プロジェクト管理で求められるスキル
- 4.1.プロジェクト管理に関する知識
- 4.2.ツールを扱えるスキル
- 4.3.コミュニケーションスキル
- 5.プロジェクト管理の失敗を避けるためのコツ
- 5.1.計画段階で実現可能性を見極める
- 5.2.リアルタイムで進捗や予実を把握する
- 5.3.品質のチェックリストを活用する
- 5.4.トラブルに備えて優先順位を決めておく
工務店におけるプロジェクト管理とは
プロジェクト管理とは、一つひとつの「プロジェクト」を成功させるための取り組みのことです。プロジェクト管理そのものはさまざまな業界で用いられている用語ですが、ここでは工務店における意味や考え方について見ていきましょう。
工務店のプロジェクトとは
工務店において、プロジェクトとは基本的に案件のことを指しており、プロジェクト管理は案件管理と同義であると考えて問題ありません。多数の案件を抱える工務店において、プロジェクト管理は納期・予算・人員などの面をきちんとマネジメントすることで、クライアントの要望に応えるためには必須の業務といえます。
ただし、どの範囲を単一のプロジェクトと捉えるかは、工務店ごとの実情によって異なります。たとえば、同じ現場であっても1期2期と期間が分かれている場合は、それぞれを独立したプロジェクトと考えるケースもあります。
そのため、管理すべき範囲の広さなどに応じて、臨機応変に捉えることが大切です。
プロジェクト管理の対象
プロジェクト管理では、基本的な経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の4要素に加えて、「時間」も管理対象となります。工務店でいえば、「ヒト」は工事に携わる人員のことであり、単純な人数だけでなくスキルや経験なども含めて考えた概念です。
「モノ」は資材や事務用品といった作業に必要なものであり、設計業務と施工業務で管理すべき対象は異なります。「カネ」は予算や補助金などの収入、人件費・建材費・外注費・経費などの支出をまとめて捉えたものです。
また、「情報」はプロジェクトや外部環境に関するデータなど、「時間」はスケジュールや進捗などを指しています。プロジェクト管理は、これらの幅広い要素を一元的に管理し、必要に応じてコントロールしていく重要な業務です。
プロジェクト管理の目的
プロジェクト管理には、大きく分けて2つの目的があります。
条件内でプロジェクトを完遂させること
1つめの目的は、決められた条件内で滞りなくプロジェクトを成功させることにあります。各工事には、それぞれ予算やスケジュールなどの制限があり、与えられる条件は案件によって異なります。
プロジェクト管理がなければ、「スケジュール内で完遂するために必要な人員はどのくらいなのか」「予算をどのように振り分ければよいのか」が不明確になり、適切な計画を立てることができません。また、そもそもその条件内で工事を請け負うべきかどうかを判断することも難しいといえるでしょう。
このように、制約があるなかで工事に必要な経営資源を見極め、適切な工事計画の立案・遂行を実現するのがプロジェクト管理の重要な目的です。
会社の利益を最大化させること
もう一つの目的は、利益の最大化です。プロジェクト管理が適切に行われていれば、工事における材料費や人件費、経費のムダを素早く見極めることができます。
また、プロジェクト管理によって得られたデータを活用すれば、納品の遅れを回避したり、歩留まりを改善したりすることも可能です。このように、経営資源を効率的に活用し、利益の確保につなげるのもプロジェクト管理の大切な役割です。
建設業のプロジェクト管理の流れ
それでは、プロジェクト管理は実際にどのような方法で行うのでしょうか。ここでは、基本的な流れについて、以下の4つのステップに分けて解説します。
■建設業のプロジェクト管理の流れ
1 |
目的の明確化、達成目標の数値化 |
2 |
タスクの洗い出し |
3 |
スケジュールの確定 |
4 |
進捗の把握、軌道修正 |
1.目的の明確化、達成目標の数値化
まずは、各プロジェクトの目的を明確にし、具体的な達成目標を設定します。達成すべきゴールが数値化されていれば、プロジェクト全体で何を優先すべきかが明らかになるため、スムーズに計画を立てられます。
また、「チーム内で意思疎通を図りやすくなる」「完了後に客観的な評価や反省がしやすくなる」といった効果が得られるのも重要な理由です。
2.タスクの洗い出し
プロジェクトの目的や目標が明確になったら、具体的なタスクとして落とし込んでいきます。達成までにどんな条件や作業が必要となるのか、一つずつタスクを洗い出したうえで、それぞれの重要度や完了期間、優先順位を設定しましょう。
タスクがきちんとリストアップされていれば、作業漏れのチェックや進捗の把握を行う際にも便利です。
3.スケジュールの確定
続いて、各タスクを人員の能力や希望に応じて割り振り、担当者を決めます。そのうえで、プロジェクト全体のスケジュールを確定し、実際にプロジェクトを始動させます。
万が一作業や納品が遅れた場合でも調整が行えるように、スケジュールにはある程度の余裕を持たせておきましょう。
4.進捗の把握、軌道修正
プロジェクト始動後は、「各段階における進捗目標との差」や「現在のタスクが完了する目安期日」などを細かくチェックしながら、進捗状況を丁寧に把握しておく必要があります。予定したスケジュールとズレが生じている場合は、素早くその原因を突き止め、必要に合わせた対応を行いましょう。
基本的に、長期のプロジェクトではスケジュールどおりに進行していくことはまれであるため、はじめからトラブルや状況の変化が起こるものとして想定しておくことが大切です。期限の変更や人員の追加・再配置、タスクの追加などの調整をはさみながら、柔軟に軌道修正をしていきましょう。
プロジェクト管理で求められるスキル
プロジェクト管理には幅広い視野とスキルが求められます。ここでは、特に重要性の高いスキルを3つに分けて見ていきましょう。
プロジェクト管理に関する知識
プロジェクト管理については、さまざまな手法やパターンが確立されているため、体系的な知識を身につけることが重要となります。プロジェクト管理の専門的な技術は、どちらかといえばITの分野で発展している側面が強いものの、以下のように建設分野で活用できるものも多数あります。
■プロジェクト管理に関する専門用語の例
用語 |
内容 |
PMBOK |
プロジェクト管理の方法をまとめた世界標準の知識体系 |
ガントチャート |
プロジェクトの進捗を視覚的に判断するための管理工程表 |
コンティンジェンシープラン(危機管理計画) |
オリジナルの計画がうまくいかない場合に備えて策定しておく計画 |
クリティカルパス法(CPM) |
各タスクの予定日や必要期間、相互関係を表にし、プロジェクト内のすべてのプロセスを一元的にまとめて、最適なスケジューリングを行うための手法 |
EVM |
プロジェクトを人件費や労力などのコストで管理する手法 |
ツールを扱えるスキル
さまざまなプロジェクトを同時に管理するうえでは、プロジェクト管理ツールを活用するのが便利です。ツールを用いれば進捗度やメンバーの状況、予実などをまとめて管理できます。
また、クラウド型の管理ツールなら出先や現場からでもアクセスできるため、各作業員に手元の端末でデータ入力してもらえば、速やかな情報収集も行えます。そのため、プロジェクト管理者には、ツールをある程度まで使いこなせるITスキルも求められるといえるでしょう。
コミュニケーションスキル
プロジェクト管理では、さまざまな関係者との情報共有が必要です。また、人員の確保のために外注を行う場合は、外部とのコミュニケーションも任されることになります。
そのため、物事を正確に伝えられるコミュニケーションスキルも、プロジェクト管理者の重要な条件といえます。
プロジェクト管理の失敗を避けるためのコツ
プロジェクト管理を成功させるためには、基本を押さえることが重要です。ここでは、重要なポイントを4つご紹介します。
計画段階で実現可能性を見極める
プロジェクト管理の失敗を避けるためには、実際に案件を引き受ける前の段階で、実現可能性を十分に検討することが何よりも重要です。プロジェクト管理では、営業担当者やお客さまが求めるプロジェクトの内容を確認し、自社の状況と照らし合わせながら実行すべきかどうかを判断します。
検討が不十分なまま始動させてしまうと、途中で無理が生じてプロジェクトが破綻する可能性も生じてしまいます。必要なリソースをできるだけ具体的に洗い出し、現実的な数字を基に判断することが大切です。
リアルタイムで進捗や予実を把握する
プロジェクト管理では、リアルタイムでのきめ細かな状況把握が成功を左右します。工務店の案件では、予定外の仕入れ遅れや欠員の発生、天候などの外部環境により、突発的にスケジュールにズレが生じるケースも珍しくありません。
できるだけ早く状況を察知するためにも、プロジェクト管理ツールを導入し、現場の担当者や責任者にも報告・連絡・相談ツールとして活用してもらえるように下準備しておきましょう。
品質のチェックリストを活用する
工事の作業段階に応じて、品質のチェックを行う際にはチェックリストを活用し、項目の抜け漏れがないように努めることも大切です。品質チェックリストを管理ツールと連携させておけば、情報共有もスムーズになり、速やかに状況把握が行えます。
トラブルに備えて優先順位を決めておく
プロジェクト管理の観点では、事前に決めたスケジュールどおりに業務が進まないことを前提に準備しておく必要もあります。トラブルによって喫緊のタスクを取捨選択しなければならない場合などに備えて、各作業の優先順位をあらかじめ明確化しておくとよいでしょう。
また、繰り返しになりますが、全体のスケジュールにゆとりを持たせておくこともリスクの軽減につながります。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:工務店におけるプロジェクト管理とは?
A:プロジェクト管理は単一のプロジェクトを成功させるための管理業務のことであり、工務店でいえば一つひとつの案件がプロジェクトに当たります。決められた条件(納期・予算・人員など)で工事を完遂させるために、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」「時間」を管理するのが主な役割です。
Q:プロジェクト管理に必要なスキルは?
A:プロジェクト管理に関する体系的な知識と、プロジェクト管理ツールを扱えるITスキルが求められます。また、さまざまな関係者とやりとりをする必要があるため、コミュニケーションスキルも求められます。
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