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未払いの工事代金は回収できる?取るべき対応と具体的な回収方法について解説

未払いの工事代金は回収できる?取るべき対応と具体的な回収方法について解説

工事代金の未払いは、建設業界で頻発する問題の一つです。このようなトラブルが発生すると、資金繰りや財務状況に影響を与え、経営に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、工事代金の滞納を防ぐ方法や、未払いが発生した際の具体的な回収方法、特に契約書がない場合の対処法について詳しく解説します。

目次[非表示]

  1. 1.未払い工事代金の問題とその原因とは?
    1. 1.1.信用調査が不十分
    2. 1.2.契約書なしでの取引
    3. 1.3.工事に瑕疵(かし)や不備がある
    4. 1.4.発注者の経営状況の悪化
  2. 2.工事代金の未払いを事前に防ぐためには
    1. 2.1.信用調査の徹底
    2. 2.2.契約書を必ず締結
    3. 2.3.定期的な進捗管理
    4. 2.4.前金や分割払いの導入
  3. 3.未払いが発生した際の具体的な回収方法と注意点
    1. 3.1.当事者間の交渉
    2. 3.2.内容証明郵便の送付
    3. 3.3.裁判手続き
    4. 3.4.時効期間
  4. 4.契約書がない場合の対応策
    1. 4.1.メールやSNSでのやり取りを証拠化
    2. 4.2.見積書や請求書の提出
    3. 4.3.工事履行を示す記録
  5. 5.執筆者
    1. 5.1.弁護士法人コスモポリタン法律事務所杉本 拓也(すぎもと たくや)

未払い工事代金の問題とその原因とは?

未払いの工事代金が発生する問題の主な原因として、以下が挙げられます。

信用調査が不十分

取引相手の支払い能力や信用状況を十分に確認しないまま契約を結ぶと、後々トラブルになる可能性があります。特に新規の取引先では、経営状況の確認が欠かせません。

契約書なしでの取引

契約書を締結せずに工事を開始した場合、支払い条件が曖昧になることでトラブルが発生しやすくなります。特に、請求金額や納期の認識に齟齬(そご)があると未払いにつながります。

工事に瑕疵(かし)や不備がある

工事の仕上がりに問題がある場合や発注者の期待を満たしていない場合、発注者が代金の支払いを拒否することがあります。これは工事の品質管理の不備から発生するケースが多いです。

発注者の経営状況の悪化

発注者が経営難や資金繰りの問題を抱えている場合、工事代金の滞納が発生するリスクが高まります。この場合、早期の対応が鍵となります。

工事代金の未払いを事前に防ぐためには

未払い問題を未然に防ぐには、以下のような対策を講じることが重要です。

信用調査の徹底

新規の取引先と契約を結ぶ際には、相手方の信用情報を確認しましょう。法人の場合は登記簿謄本の取得や信用情報等の確認を行い、支払い能力がありそうかを判断します。

契約書を必ず締結

工事代金の契約書なしの取引は、トラブルの温床となります。工事内容や工事代金、支払い条件、支払期日、および工期などを明確に記載した契約書を作成することで、リスクを大幅に軽減できます。さらに、支払い遅延が発生した場合の遅延損害金についても契約書に盛り込んでおくといいでしょう。

定期的な進捗管理

工事の進捗状況や代金の支払い状況を定期的に確認し、異常があればすぐに対応することが重要です。特に大規模な工事の場合、途中段階での確認を怠らないようにしましょう。

前金や分割払いの導入

工事代金を全額後払いにするのではなく、工事の着手段階の着手金や中間段階の中間金を徴収する段階的な支払い方法を採用することで、工事代金の未払いリスクを分散することができます。

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未払いリスクに対処するために必ず契約書の締結が必要です

未払いが発生した際の具体的な回収方法と注意点

万が一、工事代金の滞納が発生した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。以下に具体的な工事代金の回収方法と注意点を解説します。

当事者間の交渉

最初のステップは、相手方に直接連絡を取り、未払いの原因や支払いの意思を確認することです。交渉の際には、記録を残しておくと後々の証拠になります。発注者の状況によっては、分割の支払いに応じることも検討します。

内容証明郵便の送付

当事者間での交渉で解決しない場合、弁護士に依頼し、内容証明郵便を送付することが一般的です。弁護士からの内容証明郵便は、法的手続きに進む可能性があることを示す効果的な手段であり、法的手続きの前段階として相手にプレッシャーを与え、任意の支払いを促す手段として有効です。

内容証明郵便には、工事代金の金額、支払期限、支払先の振込口座、期限までに支払いがなければ訴訟等の法的手段を取ること、訴訟の際は、債権金額だけでなく遅延損害金や弁護士費用も請求に加えることを記載することが一般的です。

また、内容証明郵便では、今後、一切の連絡は弁護士宛てにお願いしますということを記載して、交渉の窓口が弁護士になったことを明記します。

裁判手続き

弁護士による交渉でも解決しない場合は、裁判手続きによる回収を検討します。この際、工事に関する合意内容を表す契約書や、工事の履行を示す証拠が重要となります。

訴訟提起前に相手方の財産(預金口座等)が判明している場合には、仮差し押さえ(訴訟の前に発注者の財産を凍結してしまい、処分できなくする手続き)を行うことも検討します。

仮差し押さえを行わないと、裁判で勝訴しても相手方から支払いを確保できないリスクがあります。この手続きにより、相手の財産を裁判の判決が出るまで動かせないようにし、回収の可能性を高めることができます。

具体的には、仮差し押さえをすることで、相手の銀行預金を引き出すことや、不動産の売却ができない状態にすることが可能です。その後、裁判で工事代金の支払いを命じる判決が得られれば、仮差し押さえした銀行預金を差し押さえたり、不動産を競売にかけて売却代金から未払い分を回収したりできます。

次に、訴訟手続きにおいては、裁判所に対して未払い金額と請求理由を記載した訴状を提出します。この際、契約書、工事の進捗を記録した写真、メールや請求書などが証拠となります。裁判所が審理を行い、請求に理由があると認められれば、勝訴判決を得られます。訴訟提起から判決までは通常1年近くかかりますが、審理の途中で裁判所から和解できないか打診されることが一般的であり、和解による解決の場合は訴訟提起から1年以内に終了することもあります。

訴訟判決後、相手が支払いに応じない場合は、強制執行をせざるを得ません。これは相手方の財産や売掛金を差し押え、そこから未払い金を回収する手続きです。裁判所は相手方の財産を調査してくれませんので、自らが相手方の財産を調査する必要があります。

相手方の財産を調査する方法としては、弁護士会照会により銀行預金口座の有無や残高を調査する方法、財産開示手続という裁判手続きにより相手方に財産を開示させる方法があります。

ただし、相手方の資産状況によっては回収が困難な場合もあります。

時効期間

工事代金は、工事代金の支払期限から起算して5年で時効消滅してしまいます(民法166条)。したがって、時効によって消滅する前に訴訟手続き等の法的なアクションを取ることが必要になります。

契約書がない場合の対応策

工事代金の契約書がない場合でも、回収を試みることは可能です。ただし、以下のポイントに留意して対応する必要があります。

メールやSNSでのやり取りを証拠化

工事に関するやり取りや合意が記録されている場合、それを証拠として活用できます。金額や工事内容、納期などの具体的なやり取りが残っていれば、工事代金の請求の根拠となります。

見積書や請求書の提出

見積書や請求書が発行されていれば、それも契約の存在を示す有力な資料です。特に発注者が工事の内容や代金を承認している場合、支払い義務を主張する際の強力な証拠になります。

工事履行を示す記録

工事の進捗や完成を示す写真、日報、納品書などの記録は、工事が行われたことを証明する資料となります。

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万が一に備え、工事進捗を記録した日報や写真、見積書などを保管しておくと後々役立つ可能性があります

●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:工事代金の未払いを防ぐために重要な対策は?
A:
工事代金の未払いを防ぐためには、まず取引相手の信用調査を徹底することが大切です。特に新規の取引相手の場合、経営状況や支払い能力を事前に確認しておくことでリスクを大幅に減少させることができます。

また、契約書を締結し、工事内容や支払い条件、納期などを明確に定めることで、後々のトラブルを防止できます。さらに、工事の進捗状況や代金の支払い状況を定期的に確認し、必要に応じて前金や中間金を徴収する段階的な支払い方法を導入することも効果的です。

Q: 未払いが発生した場合、どのように対応すべきか?
A:
未払いが発生した場合は、まず相手に直接連絡を取り、未払いの原因や支払いの意思を確認することが重要です。この際、交渉内容を記録として残しておくことが後々役立ちます。

交渉が不調に終わった場合は、弁護士を通じて内容証明郵便を送付し、支払いを促します。さらに、それでも解決しない場合には、訴訟手続きや仮差し押さえなどの法的手段を検討します。この際、契約書や請求書、工事履行を示す証拠が回収の鍵となります。


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執筆者

弁護士法人コスモポリタン法律事務所
杉本 拓也(すぎもと たくや)

​​​​​​​単なる法的助言を行う法律顧問ではなく、企業内弁護士としての経験を活かして、事業者様により深く関与して課題を解決する「法務コンサルタント」として事業者に寄り添う姿勢で支援しております。国際投融資案件を扱う株式会社国際協力銀行と、メットライフ生命保険株式会社の企業内弁護士の実績があり、企業内部の立場の経験も踏まえた助言を致します。

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編集部
編集部
工務店・ビルダー、新築一戸建て販売会社様を支援すべく、住宅営業のノウハウや人材採用、住宅トレンドなど、様々なジャンルの情報を発信してまいります。

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