【工務店向け】事業再構築補助金とは?利用するメリットと申請の流れ、注意点を解説
「事業再構築補助金」とは、主に中小企業の事業支援を目的とした制度です。工務店でも利用可能であり、条件を満たしたうえで採択されれば、数千万円単位の大きなサポートを受けることができます。
今回は事業再構築補助金の基本的な仕組みや要件を解説したうえで、工務店が利用するメリットや申請の流れ、利用時の注意点について詳しくご紹介します。
目次[非表示]
- 1.事業再構築補助金の基本的な仕組み
- 1.1.事業再構築補助金の目的
- 1.2.事業再構築補助金の内容
- 1.3.補助対象となる経費
- 2.事業再構築補助金を利用できる企業・事業内容
- 2.1.共通要件
- 2.2.各枠組みの要件の概要
- 2.3.補助の対象外となる事業の例
- 3.工務店が事業再構築補助金を利用するメリット
- 3.1.工務店でも十分に活用可能
- 3.2.幅広い採択事例がある
- 4.事業再構築補助金を申請する流れ
- 4.1.1.公募内容の確認
- 4.2.2.認定経営革新等支援機関の選定
- 4.3.3.申請書類の準備
- 4.4.4.電子申請
- 4.5.5.事務局による審査・採択通知
- 4.6.6.交付申請・決定
- 4.7.7.補助事業の実施
- 4.8.8.状況報告・実績報告
- 4.9.9.確定検査
- 4.10.10.補助金の請求・交付
- 4.11.11.事業化状況報告・知的財産権等報告
- 5.事業再構築補助金を申請するときの注意点
- 5.1.必ずしも申請が通るとは限らない
- 5.2.申請の手続きに多くの労力を要する
- 5.3.補助金の支給は後払い
- 5.4.支給後も数年間の実績報告が必要
- 6.この記事を監修した人
- 6.1.廣石 倫(ひろいし ひとし)
事業再構築補助金の基本的な仕組み
事業再構築補助金は、経済産業省が実施している補助金制度の一つです。主に中小企業等の支援を目的とし、2021年から導入されています。
まずは、事業再構築補助金の基本的な仕組みについて見ていきましょう。なお、事業再構築補助金に関する最新の情報(要件や申請方法など)は、公式ホームページなどでもチェックしてみてください。
(出典:中小企業等事業再構築促進事業『事業再構築補助金』)
事業再構築補助金の目的
事業再構築補助金が実施された背景には、新型コロナウイルス感染拡大の影響が長期化していたことが挙げられます。人々の生活様式が大きく変わったことによって、売り上げが落ち込んでしまった企業も少なくなく、事業の再構築を支援する必要性が高まったことから導入される運びとなりました。
基本的な目的は、アフターコロナ、ウィズコロナの時代を生き抜くために、事業の再構築を行う企業をサポートすることにあります。そのうえで、業種転換や事業再編、新たな事業にチャレンジするなど、事業の再構築に取り組む中小企業を支援する仕組みとなっています。
事業再構築補助金の内容
事業再構築補助金の内容は、ビジネス環境の変化に応じて柔軟に変更されています。当初は「緊急事態宣言特別枠」などの緊急性が高い枠組みも設けられていましたが、現在では既存の事業類型を見直し、「今なおコロナの影響を受ける事業者の支援」と「ポストコロナに対応した事業再構築を行う事業者の支援」に重点化された内容となっています。
2024年5月に公開された、第12回公募の全体像を簡潔にまとめたものが次の表です。
■公募枠と補助上限
1. 成長分野進出枠
2.コロナ回復加速化枠
3.サプライチェーン強靭化枠
|
※短期に大規模賃上げを行う場合
なお、補助率については、成長分野進出枠で「中小企業1/2、中堅企業1/3(短期に大規模賃上げを行う場合は中小企業2/3、中堅企業1/2)」、コロナ回復加速化枠の通常類型は「中小企業2/3、中堅企業1/2」、最低賃金類型は「中小企業3/4、中堅企業2/3」、サプライチェーン強靭化枠は「中小企業1/2、中堅企業1/3」となっています。
補助対象となる経費
第12回公募の事業再構築補助金では、補助対象経費がサプライチェーン強靭化枠とそれ以外で分かれています。ここでは、一般的な中小規模の工務店が利用する可能性のあるサプライチェーン強靭化枠以外の枠組みについて、補助対象となる経費の例をご紹介します。
■経費の例(サプライチェーン強靭化枠以外)
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なお、補助対象の経費については、本事業の対象として明確に区分できる必要があるとされています。
(出典:経済産業省『事業再構築補助金第12回公募の概要』)
事業再構築補助金を利用できる企業・事業内容
事業再構築補助金はすべての企業が対象となる制度ではなく、国内に本社を構える中小企業等もしくは中堅企業等に限定されています。そのうえで、利用するためには全枠に共通する要件と、各枠組みで規定された要件のそれぞれを満たす必要があります。
ここでは、企業・事業の具体的な要件について見ていきましょう。
共通要件
全枠に共通する必須要件は以下の3つです。
|
事業再構築とは、次の6つの類型に当てはまるものを指します。
1.新市場進出(新分野展開、業態転換) 新たな製品等で新たな市場に進出する 2.事業転換 3.業種転換 4.事業再編 5.国内回帰 6.地域サプライチェーン維持・強靭化 |
ただし、国内回帰と地域サプライチェーン維持・強靭化は、「サプライチェーン強靭化枠を利用する事業者のみ」選択可能とされています。
事業再構築補助金の共通要件。要件などの最新情報はホームページを参照ください
(出典:経済産業省『事業再構築補助金第12回公募の概要』)
各枠組みの要件の概要
上記の共通要件に加えて、成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠、サプライチェーン強靭化枠にはそれぞれ個別の要件が定められています。詳しい要件については公的なホームページで確認する必要がありますが、概要を簡潔にまとめると次の通りです。
■各枠組みの要件の概要
●成長分野進出枠(通常類型) ●成長分野進出枠(GX進出類型) ●コロナ回復加速化枠(通常類型) ●コロナ回復加速化枠(最低賃金類型) ●サプライチェーン強靭化枠 |
補助の対象外となる事業の例
事業再構築補助金を利用するうえでは、事業そのものが補助の対象外となってしまうケースに注意する必要があります。たとえば、補助の対象外となる事業の例としては、次のようなものが挙げられます。
■対象外となる事業の例
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また、それ以外にも「法令や公序良俗に反する」「併用が禁止されている制度との重複」「虚偽の内容」なども当然ながら対象外とされています。
(出典:経済産業省『事業再構築補助金第12回公募の概要』)
事業再構築補助金 補助対象外事業。詳細は経済産業省の公募要領を参照ください
(出典:経済産業省『事業再構築補助金第12回公募の概要』)
工務店が事業再構築補助金を利用するメリット
事業再構築補助金はさまざまな業界で活用されていますが、ここでは工務店が利用するメリットについて整理してみましょう。
工務店でも十分に活用可能
事業再構築補助金は対象外となる事業の範囲が決められていますが、一般的な工務店であれば、十分に活用可能な制度です。工務店関係の採択者数は毎回30~40件ほどあり、特に新型コロナウイルスの影響を強く受けた業種であることから、比較的に採択されやすい業種と考えられています。
(出典:国土交通省『新型コロナウイルス感染症による関係業界への影響について』)
幅広い採択事例がある
実際に採択された事例を見ていくと、リフォームやリノベーション、グランピング事業、飲食店事業など幅広いケースが存在していることが分かります。たとえば、「余剰在庫を使った空き家リフォームと空き家流通促進事業」や「地域活性化と利用者の利便性を考慮した飲食業への事業展開」「ショールーム兼用型グランピング事業への参入」など、工務店であることを活かした独創的な事業アイデアが数多く採択されています。
モデルハウスなどの事業でも利用できるケースがあるため、工務店ならではの技術や仕組みを活かせる可能性があるのが、事業再構築補助金の大きなメリットです。
事業再構築補助金を申請する流れ
事業再構築補助金の申請から支給されるまでの手順は、以下の通りです。実施する事業の期間にもよるものの、公募内容の確認から補助金の交付までには1年~1年半ほどかかるので、スケジュールをきちんと逆算する必要があります。
1 |
公募内容の確認 |
2 |
認定経営革新等支援機関の選定 |
3 |
申請書類の準備 |
4 |
電子申請 |
5 |
事務局による審査・採択通知 |
6 |
交付申請・決定 |
7 |
補助事業の実施 |
8 |
状況報告・実績報告 |
9 |
確定検査 |
10 |
補助金の請求・交付 |
11 |
事業化状況報告・知的財産権等報告 |
ここでは、各ステップにおける注意点をご紹介します。
1.公募内容の確認
公募内容は事務局公式サイトやサポートサイトなどで確認することができます。応募資格や申請に必要な書類、申請の締め切り日、補助金額などが細かく記載されているので、必ず事前にチェックしましょう。
2.認定経営革新等支援機関の選定
事業再構築補助金を利用するには、事業計画が認定経営革新等支援機関の確認を受けている必要があります。認定経営革新等支援機関とは、中小企業等経営強化法で定められた機関のことであり、具体的な機関の一覧は以下のページから調べられます。
(出典:中小企業庁『認定経営革新等支援機関』)
3.申請書類の準備
続いて、事業計画書や決算書、財務情報などの申請書類を準備します。必要書類は利用する枠組みによっても異なるので、漏れがないように注意しましょう。
4.電子申請
申請方法は電子申請のみとなっており、公式サイトからアクセスできる「Jグランツ」というシステムで行う必要があります。操作マニュアルが用意されているので、それに沿って入力を行えばスムーズに手続きを進めることができます。
5.事務局による審査・採択通知
申請手続きが完了すると、事務局や外部の有識者による審査が行われます。制度の利用枠には限りがあるため、より優れた事業計画であると判断された事業者のみが、補助金交付候補者として採択される仕組みです。採択通知はメールで個別に行われるほか、公式サイトでも事業計画の概要や商号とともに公表されます。
6.交付申請・決定
採択通知を受け取ったら、事務局に必要書類を提出して交付申請を行います。事務局での確認が済んだら、正式に交付決定となります。
7.補助事業の実施
交付決定後は、事前に提出した事業計画に沿って、実際に補助事業を実施していきます。やむを得ない事情で計画変更・中止を行う場合は、必ず別途書類で申請しなければならないため注意しましょう。なお、実施期間中には事業の進捗や各種物品の調達状況、支払い状況などを確認する中間検査が行われることもあります。
8.状況報告・実績報告
実施期間中は、必要に応じて状況報告を求められることがあります。所定の様式に沿って状況報告書を作成し、適切な形で進捗状況を伝えましょう。また、補助事業の終了後には、必ず実施結果をまとめた実績報告書を提出しなければなりません。完了期限日までに提出する必要があるので、事前にマニュアルをチェックしておき、スケジュールを逆算して作成を進めておきましょう。
9.確定検査
補助事業が終了したら、補助金が支払われる前に事務局による確定検査が行われます。必要に応じて担当者が現地を訪問し、提出された報告書に沿った成果が表れているか、取組みに問題がないかなどを検査していきます。
10.補助金の請求・交付
確定検査に問題がなければ、補助金の支払いの決定通知が行われます。通知書を受領したら、所定の様式に沿って補助金精算払請求書を作成し、補助金の請求を行いましょう。書類の内容に不備がなければ、8営業日ほどで指定の口座に補助金が振り込まれます。
11.事業化状況報告・知的財産権等報告
補助金の交付完了後は、事業化状況報告書や知的財産権等報告書を提出する必要があります。
事業再構築補助金を申請するときの注意点
事業再構築補助金は、中小企業であっても数千万円の高額な支援を受けられる強力な制度ですが、利用にあたってはいくつか注意しなければならないポイントも存在します。ここでは主な注意点を4つに分けてご紹介します。
必ずしも申請が通るとは限らない
事業再構築補助金は、さまざまな応募内容から優れた事業計画が採択されるというコンテストのような制度です。申請要件を満たしているからといって、必ずしも補助金が支給されるわけではないため、補助金のみを前提にした事業計画にならないように注意する必要があります。
申請の手続きに多くの労力を要する
事業計画が採択されるには、事業の内容や資金の使途などを十分に練ったうえで応募しなければなりません。申請のために必要な書類や事業計画書の作成などに、多くの時間や手間がかかるため、事前に十分なリソースを確保することが重要です。
また、多くのリソースを費やしても採択されるとは限らないため、できるだけ早い段階で申請すべきかどうかを見極めることも大切となります。
補助金の支給は後払い
申請の流れでも解説したように、補助金の支給は後払いとなる点に注意が必要です。実際に事業を進める段階では、何らかの手段で資金を準備しなければなりません。
事業費の総額を自己資金で用意するのが困難な場合には、いわゆる「つなぎ融資」などの利用も検討する必要があります。これらの資金調達コストにも注意すべきでしょう。
また事業再構築補助金には、支払い済みかつ納品済みの経費に限って補助金の一部を事業期間中に受け取れる「概算払い」という仕組みが用意されています。
概算払いを受ける場合にも審査が必要ですが、利用できれば資金繰りが有利になる可能性もあり得ます。
支給後も数年間の実績報告が必要
事業再構築補助金を受けた事業者は、支給された補助金 がどのような成果につながったのかも含めて、モデルケースとして情報を提供する役割を担います。支給完了後も、数年間にわたる実績の報告が必要となるため、手続きの全体像を把握したうえで利用すべきかどうかを慎重に判断することが大切です。
補助金の申請にあたっては、支給完了後に数年間の実績報告をすることも踏まえて判断する必要があります
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:事業再構築補助金とは?
A:アフターコロナ、ウィズコロナの時代を生き抜くために、事業の再構築を行う企業をサポートするための制度です。具体的には、業種転換や事業再編、賃上げ、新たな事業へのチャレンジなど、事業の再構築に取り組む中小企業を支援する仕組みとなっています。
Q:工務店が事業再構築補助金を利用するメリットは?
A:工務店はコロナによる影響を大きく受けた業種の一つであることから、比較的に採択されやすい傾向にあると考えられており、これまでにもさまざまな事例が存在しています。工務店ならではの技術や既存のサービスを活かしたアイデアを計画できれば、高く評価される可能性があります。
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この記事を監修した人
廣石 倫(ひろいし ひとし)
行政書士/宅地建物取引士/2級ファイナンシャルプランニング技能士/貸金業務取扱主任
不動産売買やノンバンクでの業務経験を生かし、農地や山林、再建築できない空き家の相続から、代償分割で現金が足りない際の資金調達など、「ちょっと難しい相続」を積極的にサポートしています。