<新着>建築用木材はどう選ぶ? 種類・特徴・補助金について徹底解説
建築で使用される木材には、構造材や内装材など、幅広い用途に適した種類があります。
これらそれぞれの特性に合わせて木材を選ぶことは、建築物にかかる費用や構造の耐久性などのほか環境へも影響をもたらすため、建設事業に関わる方は、適切な知識が求められます。
最近では、国産材や県産材などの木材を使用することを推進する法律や補助金制度も行われております。
本記事では、建築用木材の基本的な種類や特徴、仕入れ方法、さらに木材利用に関する補助金制度について詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.建築用木材の基本|種類・特徴・メリット
- 1.1.建築用木材のメリットとは?
- 1.2.建築用木材の種類と特徴一覧
- 1.3.国産材・輸入材の違いとは?
- 2.建築用木材を安く仕入れるための方法と注意点
- 2.1.1.製材所から直接購入する
- 2.2.2.材木店・建材商社を利用する
- 2.3.3.インターネット通販を利用する
- 2.4.4.森林組合や自治体の取り組みを利用する
- 3.建築建材の価格高騰はいつまで?
- 4.木材利用促進法とは? 建築業界に起こるメリット
- 4.1.木材利用促進法とは?
- 4.2.木材利用促進法で建築業界が受けられるメリット
- 5.建築用木材に関する知って得する補助金制度
- 5.1.林業・木材産業成長産業化促進対策交付金
- 5.2.サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)
- 5.3.各都道府県の補助事業
- 6.執筆者
- 6.1.瀧澤 成輝(二級建築士)
建築用木材の基本|種類・特徴・メリット
建築用木材は、構造材や内装材として幅広く使用されています。種類によってさまざまな特徴やメリットがあります。
ここでは、建築用木材の種類とメリットについて詳しく解説します。
また後半には、よくある質問の国産材と輸入材の違いについても解説していきます。
建築用木材のメリットとは?
建築用木材は、鉄やコンクリートと並ぶ建築材料の一つですが、独自の特性を持つことで多くのメリットがあります。
主なメリットは以下のとおりです。
メリット |
内容 |
環境負荷が低い |
木材は再生可能な資源であり、加工時のCO2排出量が少ない |
軽量で加工しやすい |
鉄やコンクリートに比べて軽量で現場加工がしやすい。 |
断熱性・調湿性に優れる |
木材は熱を伝えにくく、室内の温度と湿度を調整する特性もある |
デザイン性が高い |
木目の風合いや温かみのある質感は、意匠性の高い空間づくりに好まれる |
耐震性が高い |
適切に施工された木造建築は柔軟性があるため、地震の揺れに強い |
日本家屋では、ほとんどの建物が木造で建てられているのに対し、海外では木造の建築物はそれほど多くありません。
その理由として挙げられるのか、日本では地震が頻繁に起きているからとされています。
建築用木材の種類と特徴一覧
木材には多くの種類があり、それぞれに異なる特徴があります。
ここでは、代表的な建築用木材を表にまとめました。
木材の種類 |
特徴 |
主な用途 |
杉(スギ) |
軽量で加工しやすく、耐久性も高い |
柱・梁・内装材 |
檜(ヒノキ) |
耐水性・耐久性に優れ、香りもよい |
土台・柱・高級内装材 |
松(マツ) |
強度が高く、粘り強い |
梁・桁・フローリング |
栗(クリ) |
防腐性・耐水性が高い |
土台・床材 |
ブナ(ブナ) |
硬くて粘りがあり、加工性が高い |
造作材・家具 |
オーク(ナラ) |
重厚で耐久性が高い |
フローリング・家具 |
ウォールナット |
高級感があり、耐久性が高い |
造作材・家具 |
木材の特性を理解し、建築の目的・用途に合った種類を選定するようにしましょう。
国産材・輸入材の違いとは?
建築用木材を選ぶうえでは「国産材」と「輸入材」の違いについて理解することが大切です。
主な違いは以下のとおりです。
項目 |
国産材 |
輸入材 |
流通量 |
限定的(地域差あり) |
安定供給が可能 |
価格 |
比較的高め |
国産材より安価なものが多い |
品質 |
品質管理がしやすい |
品質にばらつきがある場合も |
環境負荷 |
輸送時のCCO2排出が少ない |
遠距離輸送によるCO2排出あり |
主な樹種 |
杉、檜、松 など |
ホワイトウッド、レッドウッド、パイン など |
国産材は品質の安定性や環境配慮の面で優れていますが、価格が高くなる傾向があります。
一方、輸入材は費用を抑えやすいものの品質にばらつきがあるため、注意が必要です。
建築用木材を安く仕入れるための方法と注意点
建築用木材を仕入れる方法は複数あります。
特に最近ではウッドショックの影響で木材価格が高騰し、多くの建築会社が費用削減の方法を模索していることだと思います。
本章では、建築用木材を安く仕入れるための方法と、仕入れ時に注意すべきポイントを解説します。
主な入手方法は以下の4つです。
1. 製材所から直接購入する |
では、それぞれ解説していきます。
1.製材所から直接購入する
製材所から直接木材を仕入れることで、仲介会社を通さずに済むため、中間マージンを抑えられるのが大きなメリットです。
特に、大量に発注する場合は価格交渉がしやすく、費用を抑えられる可能性があります。また、実際に木材の品質を目で確認しながら仕入れられるため、品質管理の面でも安心感があります。
ただし、小ロットの注文では価格交渉が難しいことが多く、安定供給が保証されない場合もあるため、信頼関係を築きながら長期的な取引を視野に入れることが重要です。
2.材木店・建材商社を利用する
材木店や建材商社では、さまざまな種類の木材を取り扱っており、必要な分だけ購入しやすいのが特徴です。品質管理が行き届いているため、安定した品質の木材を確保しやすく、供給の安定性も高い傾向にあります。
取引実績のある会社であれば、支払い条件の交渉ができるケースもあります。しかし、製材所からの直接仕入れと比べると価格がやや高くなる傾向があり、市場価格の変動にも影響を受けやすい点には注意が必要です。
3.インターネット通販を利用する
近年のデジタル化に伴い、インターネット通販を利用した木材の調達が選択肢の一つとして注目されています。オンライン上で手軽に価格を比較できるため、費用を管理しながら効率的に仕入れができる点が大きなメリットです。
特に、小規模なプロジェクトやDIY向けの木材を必要な分だけ購入する場合に適しています。ただし送料が発生することが多く、大量発注にはあまり向かないことがあります。
また、実物を確認できないため、品質にばらつきが生じる可能性がある点には注意が必要です。信頼できる販売元を選び、事前に口コミや評判を確認することが重要になります。
4.森林組合や自治体の取り組みを利用する
地域の森林組合や自治体の制度を利用すれば、国産材を比較的安価に仕入れられる可能性があります。各地域では、森林資源の活用を促進する取り組みが進められており、場合によっては補助金や助成金の対象となることもあります。
こうした制度を活用することで、費用を抑えながら地域経済の活性化にも貢献できる点は、大きな魅力といえるでしょう。
ただし、供給量に限りがある場合や、取り扱い可能な樹種が限定されるケースもあるため、事前に条件をしっかり確認しておく必要があります。
木材の調達方法には、それぞれメリット・デメリットがあるため、費用面だけでなく、品質や供給の安定性といった観点も含めて総合的に判断し、自社にとって最適な調達方法を選択することが重要です。
建築建材の価格高騰はいつまで?
建築用木材の価格は、世界的な需給バランスの変化や物流の問題に大きく左右されます。2021年のウッドショック以降、輸入木材の供給が不安定となり、日本国内の木材価格も大幅に上昇しました。
しかし近年では、アメリカにおける住宅需要の落ち着きや、国内での国産材活用の推進により、一部では価格の安定が見られるようになっています。
一方で、欧州における環境規制の強化や国際情勢の影響を受け、短期的には依然として価格変動が続く可能性があります。今後は、国産材のさらなる活用や市場の調整が進むことで、中長期的には価格の安定が期待されます。
こうした状況を踏まえ、木材の調達においては、価格動向を注視しながら安定的な供給ルートを確保することが、これまで以上に重要となるでしょう。詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
≫ おすすめの記事:建築資材の価格高騰はいつまで続く? 高騰の理由と今後の見通し
木材利用促進法とは? 建築業界に起こるメリット
木材利用促進法は、日本国内の森林資源を有効活用し、持続可能な管理を行うことを目的とした法律です。特に、公共建築物や民間施設における木材利用を推進することで、環境負荷の軽減や国産木材市場の活性化を図っています。
本章では、木材利用促進法の概要と目的、そして建築業界が受けられるメリットについて解説します。
木材利用促進法とは?
木材利用促進法とは、国産木材の利用を推進し、森林資源の持続的な管理と活用を図るために制定された法律です。主な目的は以下の2つです。
1.地球環境保護の推進 木材はCO2を吸収・固定する環境負荷の少ない建築材料。木造建築の推進により、炭素貯蔵を強化し、脱炭素社会に貢献することを目的とする。 2.国産木材の利用拡大と経済活性化 国産木材の活用により、林業振興と地域経済の活性化を促進する。輸入材への依存を減らし、安定供給と価格変動リスクの低減を目的とする。 |
(出典:林野庁『都市(まち)の木造化推進法)』)
この法律は、もともと「公共建築物等木材利用促進法」として2010年に制定されましたが、2021年に改正され、公共建築物だけでなく、民間建築物にも適用範囲が拡大されました。
これにより木材利用の機会が広がり、国産木材の市場がさらに活性化することが期待されています。
木材利用促進法で建築業界が受けられるメリット
木材利用促進法によって、建築業界が得られるメリットは大きく3つあります。
1.地球環境保護への貢献 2.費用削減の可能性 3.補助金制度の活用 |
(出典:林野庁『都市(まち)の木造化推進法)』)
このように、木材利用促進法は環境保護だけでなく、建築業界にとっても経済的なメリットをもたらします。
今後の建築やリフォーム計画において、国産木材の活用を検討する際には、補助金制度の活用を検討するとよいでしょう。
建築用木材に関する知って得する補助金制度
建築用木材の利用を促進するため、国や自治体ではさまざまな補助金制度が用意されています。本章では、代表的な補助金制度として以下の3つについて解説します。
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では、一つずつ解説していきます。
林業・木材産業成長産業化促進対策交付金
「林業・木材産業成長産業化促進対策交付金」は、国産木材の利用を促進し、林業・木材産業の成長を支援するための補助金制度です。
国産材を使用して建築物を施工する場合、一定の条件を満たせば、補助金を受け取ることができます。主に、木材の安定供給体制の整備や、木材の高付加価値化を目的とした取り組みに対して支援が行われます。
詳細な要件や申請方法については、林野庁の公式情報を確認してください。
(出典:林野庁『林業・木材産業成長産業化促進対策交付金』)
サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)
「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」は、環境負荷の低減や木材の特性を生かした建築物の普及を目的とした補助金制度です。
この事業では、木造建築を活用した環境負荷の低いプロジェクトに対し、工事費用の一部が補助されます。たとえば、二酸化炭素を吸収する木造建築の推進や、耐震性・耐火性に優れた木造建築の普及を支援する取り組みが対象となります。
補助の対象となるプロジェクトには、設計・施工の段階で環境性能の向上が求められるため、適用条件を事前に確認することが重要です。
詳細な申請条件については、関連機関の公式サイトを参考にしてください。
(出典:『サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)及び優良木造建築物等整備推進』
各都道府県の補助事業
国の補助金制度に加えて、各都道府県でも独自の補助事業を実施している場合があります。
たとえば、地域産材を利用した建築やリフォームに対する補助金や、木造住宅の推進を目的とした支援制度などが設けられています。地域ごとに制度の内容や補助金額が異なるため、各自治体の公式サイトで詳細をご確認ください。
特に、地方自治体では地域産材の活用を推奨しているケースが多く、国の補助金と組み合わせることが可能になる場合もあります。補助金の活用を検討する際は、自治体の制度も併せてチェックしてみてください。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:建築用木材の主なメリットは?
A:建築用木材は、環境負荷が低く、軽量で加工しやすい点が特徴です。さらに、耐震性に強く地震の多い日本に適した材料とされています。
Q:国産材と輸入材の違いは?
A:国産材は品質が安定し、環境負荷が少ないが、価格が高めになりがちです。一方、輸入材は流通量が多く、比較的安価で仕入れやすいですが、輸送費用や品質のばらつきが発生しやすいという点に注意しましょう。
Q:建築用途ごとに適した木材の選び方は?
A:使用する用途に応じて木材を選ぶことが重要です。たとえば、構造材には強度や耐久性の高い杉や檜、内装材には見た目が美しいオークやウォールナット、造作材には加工しやすいブナなどがおすすめです。
Q:建築用木材を安く仕入れる方法は?
A:木材を安く仕入れるためには、主に「製材所から直接購入する」「材木店・建材商社を利用する」「インターネット通販を利用する」「森林組合や自治体の支援を利用する」などの4つの方法があります。
Q:木材利用促進法とは?
A:木材利用促進法は、国産木材の利用を推進し、森林資源の持続的な管理と利用を図ることを目的とした法律です。公共建築物だけでなく、民間建築物にも適用範囲が拡大され、環境保護や林業の活性化が期待されています。
Q:建築用木材に関する補助金制度にはどのようなものがある?
A:「林業・木材産業成長産業化促進対策交付金」「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」「各都道府県の補助制度」などがあります。
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執筆者
瀧澤 成輝(二級建築士)
住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。
大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。
特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。