知っておきたい!建築士、設計士、建築家の違いとは?
建築にかかわる職業にはさまざまな呼び名があります。建築士や設計士、建築家はどれもよく耳にする機会のある職業ですが、具体的な役割や担当業務についてははっきりとイメージできないという方も少なくないでしょう。
今回は建築業界の基礎知識として、建築士と設計士、建築家の違いについて解説します。
目次[非表示]
- 1.建築士と設計士の違い
- 1.1.建築士は国家資格
- 1.2.設計士は資格を必要としない
- 2.建築士と建築家の違いは?
- 3.建築士と設計士の仕事内容と平均年収
- 3.1.建築士の仕事内容と平均年収
- 3.2.設計士の仕事内容と平均年収
- 4.建築士になるためには
- 4.1.一級建築士になるには
- 4.2.二級建築士になるには
- 4.3.木造建築士になるには
- 5.設計士になるためには
- 6.まとめ
建築士と設計士の違い
まずは、建築士と設計士の違いについて見ていきましょう。
建築士は国家資格
建築士とは、建築物の設計と工事監理を行う国家資格を持った専門家のことです。これらの業務は建築士の独占業務とされており、それ以外の人はたとえ十分なスキルや知識を持っていたとしても担えません。
建築士には、一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があり、それぞれ対応可能な業務範囲が異なります。平たく言えば、二級建築士は中小規模の建物建築、木造建築士は木造住宅の建築の設計・工事監理が行えるのに対し、一級建築士はあらゆる建物の設計・工事監理が行えます。
設計士は資格を必要としない
設計士は主に企業に所属して、設計にかかわる業務を行う職業のことを指します。
建築士のように国家資格を取得しなくても名乗ることができますが、建築士の独占業務を担うことは認められません。
そのため、基本的に建築士の業務としては、設計を行うのがメインの役割となります。ただし、建築法では「100平米未満の木造住宅」については建築士の資格がなくても設計が可能とされているため、木造一戸建てなどでは設計士が設計業務を行うケースもあります。
建築士と建築家の違いは?
建築家とは、建築にかかわる仕事の総称です。建築士のように明確な定義があるわけではなく、建築に携わる仕事をしていれば、資格の有無にかかわらず建築家と名乗ることができます。
建築士も設計士も建築家に含まれますが、一般的な建築家としてのイメージは、どちらかと言えば工事監理よりも設計やデザインを担う人を指す場合が多いでしょう。そのため、より専門性の高い設計士を指して建築家と呼ぶケースもあります。
いずれにしても、建築家という呼び名に明確な定義はないため、独占業務における資格の有無などの正確性が求められる際には「建築士」という呼び名を用いるほうが無難といえます。
建築士と設計士の仕事内容と平均年収
前述のように、設計士については明確な定義がなく、実際には設計に携わるさまざまな仕事が含まれます。ここでは、設計士を100平米以下の木造建築物の設計や建築士の補助業務に携わる人と定義したうえで、建築士と設計士の仕事内容や平均年収について解説します。
建築士の仕事内容と平均年収
建築士の仕事内容は、工事監理と設計図の作成の2つに分けられます。工事監理とは、図面通りに工事が進んでいるのかをチェックし、ミスや欠陥を防ぐ業務のことです。
品質証明書や検査結果報告書などの確認、鉄筋やコンクリートの検査など、専門的な業務も多いため、工事管理は建築士の有資格者の独占業務とされています。また、建築許可や道路使用許可申請などの行政手続きも行います。
設計図の作成については、お客さまの要望をヒアリングして、予算や法規制の範囲内で納得してもらえる建物の設計を考えるのが主な仕事です。設計図面は意匠設計(デザインや間取りの設計)、構造設計(基礎や柱の設計)、設備設計(電気、ガス、給排水などの設計)の3種類について作成します。
建築士の平均年収は500~800万円程度ですが、所属している会社の規模や扱う仕事によっても異なります。たとえば、政府の統計によれば、企業規模1,000人以上の会社に勤める一級建築士の平均年収は800万円超です。
設計士の仕事内容と平均年収
設計士は小規模な木造建築物の設計と、建築士の補助的な役割を担うのが主な仕事です。補助業務といっても、専門的な知識や経験が問われる場面は少なくなく、施主との打ち合わせなどでも重要な役割を果たします。
設計士の平均年収は350~500万円程度とされており、国家資格である建築士と比べると全体的な水準は下がります。資格が不要であることから、まずは設計士として建築に関する経験を積み、建築士の資格を取得してステップアップするといったキャリア形成のパターンも一般的です。
建築士になるためには
建築士になるには、国家資格(一級建築士・二級建築士・木造建築士)試験に合格する必要があります。ここでは、それぞれの資格の受験資格と免許登録要件をご紹介します。
一級建築士になるには
一級建築士になるには、一級建築士試験に合格し、申請を経て登録をする必要があります。一級建築士試験には、以下の受験要件と免許登録要件が定められています。
受験資格要件 |
免許登録要件 |
|
---|---|---|
建築に関する学歴または資格 |
建築に関する学歴または資格 |
実務経験 |
大学・短期大学・高等専門学校 |
大学 |
2年以上 |
短期大学(3年) |
3年以上 |
|
短期大学(2年)、高等専門学校 |
4年以上 |
|
二級建築士 |
二級建築士 |
二級建築士として4年以上 |
国土交通大臣が同等と認める者 |
国土交通大臣が同等と認める者 |
所定の年数以上 |
建築設備士 |
建築設備士 |
建築設備士として4年以上 |
なお、登録の際、実務経験と試験合格の順番は問われません。たとえば大学卒業直後に資格を取得して、その後に実務経験を2年以上積んでから登録をする場合、先に実務経験を積んでから試験に合格する場合、試験合格前後に実務経験を合計2年以上積む場合のいずれも認められます。
二級建築士になるには
二級建築士の資格要件と免許登録要件は以下のとおりです。
受験資格要件 |
免許登録要件 |
|
---|---|---|
建築に関する学歴または資格 |
建築に関する学歴または資格 |
実務経験 |
大学・短期大学・高等専門学校 |
大学・短期大学・高等専門学校 |
なし |
高等学校・中等教育学校等 |
高等学校・中等教育学校等 |
2年以上 |
建築設備士 |
建築設備士 |
なし |
その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等) |
その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等) |
所定の年数以上 |
学歴・資格等なし |
- |
7年以上 |
建築系の学歴や資格がない場合でも、7年以上の実務経験があれば、試験合格によって二級建築士として申請することが可能です。
木造建築士になるには
木造建築士の資格要件、免許登録要件は二級建築士と同様です。
受験資格要件 |
免許登録要件 |
|
---|---|---|
建築に関する学歴または資格 |
建築に関する学歴または資格 |
実務経験 |
大学・短期大学・高等専門学校 |
大学・短期大学・高等専門学校 |
なし |
高等学校・中等教育学校等 |
高等学校・中等教育学校等 |
2年以上 |
建築設備士 |
建築設備士 |
なし |
その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等) |
その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等) |
所定の年数以上 |
学歴・資格等なし |
- |
7年以上 |
ただし将来的に一級建築士の取得を目指したい場合や、木造以外の建物も扱いたいという場合は、二級建築士を目指すほうがよいでしょう。
設計士になるためには
前述のとおり、設計士は資格を必要としません。建築系の大学や専門学校で基礎知識や技術を学び、設計事務所や工務店に勤務するのが一般的なコースです。
設計士としての実務経験は、建築士の登録要件にも該当するので、企業で経験を重ねながら最終的に一級建築士を目指すのが理想的なキャリアパスといえます。
まとめ
建築士と設計士はどちらも建築業に携わる職種ですが、建築士が国家資格であるのに対して、設計士はそもそも資格を必要としません。また、建築家といった場合はより専門性の高い設計士を指すことがあります。
それぞれの職種の特徴や業務内容の違いを押さえ、正しく理解しておくことが大切です。
●記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:建築士と設計士の違いは?
A:建築士は国家資格であり、設計と工事監理の独占業務を持つ専門家です。設計士は資格を必要とせず、主に小規模な木造住宅の設計や建築士のサポート業務などを行う職業です。
Q:建築士になるには?
A:建築士になるには、該当する国家資格(一級建築士・二級建築士・木造建築士)の資格をとり、登録申請を行う必要があります。各資格の受験・登録にはそれぞれ学歴や実務経験などの要件が設けられています。
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