建設業界でZ世代の若者を採用するために| 調査と成功事例から読み解く重要ポイント

国内人口の減少が進むなか、引退していくベテランたちの穴を埋める若手の採用競争はますます激化していきます。
工務店をはじめとする建設業界でも、事業を継続していくためにはZ世代の若者が持つ職への関心や考え方を十分に把握し、戦略的に情報を発信していくことが必要です。
この記事では、公開されているアンケート調査や採用ブランディングの成功事例を参照しながら、建設業界でZ世代の若者を採用するための重要なポイントを考察していきます。
手に職をつけたい若者は建設業界に興味あり!
若手と呼ばれる世代の人々のうち、建設業界に関心を持つ人はどのくらいいると思いますか?
BRANU(株)が2024年に18歳~39歳の若年層に対して行ったアンケート調査では、回答者400人のうち28%は建設業が就職・転職先の選択肢に入ると答えています。これはつまり、若者世代の4人に1人はアプローチ方法次第で建設業への就業を選びうるということです。
建設業が就職・転職先の選択肢に入る理由としては、まず「給与が高そうな、稼げそうな業種だから」と答えた回答者が過半数(52.7%)に上り、次いで「業務を通じて手に職をつけたいから」と答えた回答者が4割超(43.8%)に上りました。

(出典:BRANU(株)『若年層の建設業界への就職意識に関する調査結果を発表』)
(株)ウィルオブ・コンストラクションは2023年に、実際に建設業界に就業している「20~30代かつ建設業界での就業年数が3年以内の若手社員」を対象として意識調査を行っています。
このなかで「建設業界で働きたいと思ったきっかけ」が男女別に集計されており、男女とも「手に職をつけたいから」と答えた回答者が最多となっていました。女性では「いろいろなスキルを身に付けられて、自己成長につながると感じたから」との回答も2番目に多くなっています。
また「建設業界で働いていて良かったこと」の集計でも、男女とも「手に職をつけられる」と答えた回答者が最多でした。関連して「いろいろなスキルを身に付けられて、自己成長につながる」との回答も、男性で26.0%、女性で25.0%とそれぞれの4分の1に上っています。


(出典:(株)ウィルオブ・コンストラクション『【 建設業界で働く若手社員の意識調査 】 手に職をつけるために建設業界に飛び込む若手が約 4 割。 半数近くの若手が「研修時間と内容が不十分」だと回答』)
2つの調査から、Z世代をはじめとする若者と建設業界とを結びつける最大の関心は“手に職をつけたい”という意向であることがうかがえます。したがってこの意向に沿った訴求が、建設業界で若者を採用するために重要となります。
スキル習得・スキルアップの見通しが差別化ポイント
(株)ウィルオブ・コンストラクションの調査では「建設業界で働いていて後悔したこと」も尋ねています。このうち「手に職をつけるまでに時間がかかる」と答えた回答者は男性で半数近く(45.6%)、女性でも3分の1超(35.3%)に上っており、建設業界への就業に際して期待が大きい半面、不満の要因にもなりやすいことがうかがえます。
また「若手社員が働くうえでの建設業界の課題」を尋ねた結果でも、スキル習得に関連して「研修の時間や内容を充実させたほうが良い」と答えた回答者が男性の過半数(53.3%)、女性の4割近く(39.2%)に上っていました。


(出典:(株)ウィルオブ・コンストラクション『【 建設業界で働く若手社員の意識調査 】 手に職をつけるために建設業界に飛び込む若手が約 4 割 。半数近くの若手が「研修時間と内容が不十分」だと回答』)
期待が大きく、不満の要因にもなりやすい項目は、業界内での差別化を狙えるポイントでもあります。入社後のスキル習得の機会を十分に設け、スキルアップの道筋を具体的に示すことが、Z世代をはじめとする若者の採用競争を勝ち抜くための効果的な一手であるといえるでしょう。
認識のギャップに要注意! 若者の関心に合わせた情報発信を
BRANU(株)の調査では、若者側と事業者側の認識の乖離も浮き彫りにされています。
「現場作業を中心とした建設業が転職・就職の選択肢に入らない理由」について若年層の調査対象者とBRANU(株)の顧客である建設事業者の双方に尋ねており、このうち「高所作業や重機の使用等、事故やケガのリスクを懸念して」を選択肢に入らない理由として挙げた若者は回答者の44.8%に上りましたが、事業者側でこの項目を建設業が選ばれない理由になると予想していたのは27.5%のみでした。
安全性を確保するための取り組みについては、社内の認識以上に力を割いて情報発信に努めたほうがよいかもしれません。

(出典:BRANU(株)『若年層の建設業界への就職意識に関する調査結果を発表』)
自社の情報開示と役に立つ情報提供が良質な応募を生む
インターネット上を探せば、採用ブランディングにおいてSNSでの情報発信を工夫し応募の増加に成功した経験談もいろいろと見つかります。そのうちの一社が成功要因として語っているのは、自社の正直な情報開示と就活生の役に立つ情報提供でした。
現場作業の苦労や営業の難しさなど、業務における厳しい側面も含めて自社の情報を正直に開示することは、入社に際しての期待値と実態の乖離を埋め、その後の労働意欲と定着率の向上にもつながります。従業員の業務の実態や人柄、経営者の思想なども伝わるように発信するとよいでしょう。実際に働く人の写真や動画を投稿することで、安心感と親近感の醸成につながります。
その際、従業員の出身高校や出身大学の名前をハッシュタグ付きで添えることもよく行われているようです。
自社のアピールだけでなく、情報を受け取る就活生のニーズについても考慮に入れましょう。就活生の役に立つ情報を提供することは、SNSアカウントのフォロワー獲得や自社の認知度と企業イメージの向上につながります。就活生は将来の顧客にもなり得ることを忘れてはなりません。同じ地域内の他の事業者への応募に関する内容も含めて発信するとよいでしょう。
そうした情報の中で自社が採用活動において重視するポイントも明示しておくと、志望度合いの高い応募者を集めることにも役立つようです。
記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:Z世代の若者で建設業界に関心を持つのはどんな人?
A:Z世代をはじめとする若者のうち“手に職をつけたい”という意向を持つ人が、建設業界の採用活動における主なターゲット層となります。入社後のスキル習得の機会を十分に設け、スキルアップの道筋を具体的に示せると業界内での差別化を狙えます。
Q:若者に向けてはどんな情報を発信すればいいの?
A:事故やケガのリスクは、事業者側が思う以上に懸念されています。安全性を確保するための取り組みについては、社内の認識以上に力を割いて情報発信をしましょう。SNSでは自社の正直な情報開示と就活生の役に立つ情報提供が成功のポイントとなります。
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執筆者
杉山 啓(IMASSA認定マーケティング実務士、行政書士、統計調査士)
インターネット行動履歴データに基づくマーケティング支援を行うベンチャー企業に勤めていた際に、住宅、情報通信、出版、化粧品など多岐にわたる業界の大手企業を対象とするコンサルティングや法人営業に従事した。
2018年にマーケティング・ビジネス実務検定A級(IMASSA認定マーケティング実務士)、統計調査士、統計検定2級に合格。Uターン後は愛媛県内の道の駅でEC運営を担当し、月間のサイト訪問者数を前年比約2倍、売上を前年比約1.3倍に増やした経験ももつほか、非営利で哲学対話・哲学カフェのワークショップも継続的に主宰している。2024年に行政書士に登録し、企業間の契約書類作成等の法律業務も担う。



