新築価格高騰に伴う「中古シフト」とは| 参入メリットと取るべき戦略

新築住宅の価格高騰が続くなか、地域の工務店や住宅会社の経営者には、従来の「新築中心」の事業モデルを見直す必要性が高まっています。
限られた予算の中でも「立地」や「広さ」を重視する生活者が増えつつあり、住宅市場では「中古住宅へのシフト」が着実に進んでいます。この流れを正しく読み取り、事業戦略に反映させることが今後の鍵となります。
本記事では、新築価格高騰に伴う「中古シフト」の現状を整理し、一戸建てリノベーション市場への参入がもたらすメリットを解説します。
新築価格の高騰はいつまで?
新築住宅の価格は、資材費・人件費・土地価格の上昇を背景に、依然として高止まりの状態が続いています。
BCCI(建築費指数)や労務単価は上向きで、地価も堅調に推移。さらに、省エネ基準の適合義務化によって仕様コストが下がりにくい状況です。木材PPI(生産者物価指数)はピークからは下がったものの、コロナ前と比べれば依然として高水準にあります。
こうした要因を踏まえると、2026年末までは小幅な上下を伴いながらも高止まりが続き、価格が緩み始めるとしても、早くて2027年後半以降という見方が現実的でしょう。
急激な下落の可能性は低く、賃上げと慢性的な人手不足がコストを押し上げ続けるためです。地価も再開発やインバウンド需要を背景に底堅く、仕様強化の流れも避けられません。
原価が明確に落ち着くとすれば、資材価格がもう一段下がり、為替が円高に振れるといった条件がそろった場合に限られるでしょう。
新築価格高騰に伴う「中古シフト」とは?
中古シフトとは、予算の範囲内で希望する立地や広さを優先し、中古住宅を購入したうえで、リノベーションによって理想の住まいをつくる考え方です。
新築住宅の価格が、資材高や人件費・地価の上昇を背景に高止まりしている中、こうした「中古+リノベーション」という選択肢を取る人が増えています。
新築よりも総額を抑えながら、設備や内装は自分たちの好みやライフスタイルに合わせて刷新できる点が大きな魅力です。
家計への負担と暮らしの質の両方を重視する層にとって、有力な選択肢となりつつある流れだといえるでしょう。
急成長する一戸建てリノベ市場と工務店の参入メリット
新築価格の高騰や空き家の増加を背景に、一戸建て住宅のリノベーション市場は近年大きく拡大しています。
ここでは、工務店がこの分野に参入することで得られる主なメリットを整理していきます。
中古一戸建てストックを生かした安定受注が可能に
中古一戸建てや空き家を再生の対象とすることで、新築着工数の増減に左右されにくい、安定した受注を確保できます。地域にすでに存在する住宅ストックを仕入れ、改修して販売・請け負うことで、景気や新築需要の波をある程度吸収できる点が大きな強みです。
国の住生活基本計画でも、既存住宅の流通やリフォーム市場の拡大が明確に掲げられており、ストック活用型の事業は長期的にも追い風が期待できます。
※具体的な制度内容や支援策の適用条件については、公的機関や専門家による最新情報をご確認ください。
性能・デザイン提案で単価と利益を上げられる
性能向上とデザイン提案を掛け合わせた一戸建てリノベーションは、工事単価と粗利を上げやすいメニューです。断熱・耐震・窓・設備といった基本性能を底上げしつつ、間取り変更や内装デザインを提案することで、「老朽住宅の修繕」から「資産価値を高める再生」へとポジションを転換できます。
新築では予算の関係で実現しにくいものの、より低い総額で高性能かつ好立地を求める層の需要を取り込むことで、付加価値の高い案件を継続的に受注しやすくなるでしょう。
人件費の上昇と工期の長期化でコスト負担が増大する
売上総利益率(粗利率)は建設業で概ね20〜25%前後が目安とされ、これを下回る状態が続くと販管費を吸収できず資金繰りが悪化します。資材高騰や工期長期化で粗利が細ると、与信の低下や赤字案件の連鎖を招き、倒産リスクが顕在化します。
決算動向でも原価高と長工期による粗利率低下の事例が報じられており、早期の実行予算管理と価格転嫁の徹底が不可欠です。
紹介やリピートにつながり、長期的に売り上げが積み上がる事業になる
一戸建てリノベ事業は、アフターフォローを通じて紹介やリピートが生まれやすく、長期的に売り上げが積み上がるビジネスです。
リノベ完了後も、定期点検やメンテナンス、家族構成やライフスタイルの変化に合わせた追加リフォームを提案し続けることで、OB客との関係性がより深まります。新築着工数が減少し、既存住宅の活用が進む時代においては、既存顧客のアフター需要を確実に拾える体制づくりこそが、地域工務店の安定経営につながるでしょう。
中古シフト+価格高騰時代に工務店が取るべき戦略
新築価格の高騰と中古シフトの進行により、工務店には、従来の「新築中心モデル」からの転換が求められています。
ここでは、そのための実務的な戦略を解説します。
新築・中古・リノベを組み合わせた収益構造にシフトできる
新築請け負いに依存しない体制をつくるには、「中古仲介+リノベーション」「買取再販」「性能向上リノベ」などを組み合わせたポートフォリオ型の収益構造への転換が有効です。
地域に眠る中古一戸建てや空き家を、仕入れ・再生の対象として活用することで、着工棟数の減少や新築価格高騰の影響を分散できます。いわゆる「ストック住宅時代」を前提に、中古流通とリフォーム需要を一体で捉える発想が、安定した受注と粗利の確保につながります。
価格高騰のなかでも粗利を守りながら「選ばれる見積もり・提案」ができる
原価上昇が続く局面では、「値上げを避ける」のではなく、上昇分を適切に価格へ転嫁しながら、その理由をお客さまに納得してもらえる形で示すことが重要です。
断熱や設備などの性能向上、保証内容、将来の光熱費シミュレーションといった要素を提案書に組み込み、高単価リフォーム・リノベの価値をビフォー・アフターで視覚的に伝えます。
その結果、「ただ高い見積もり」ではなく、「内容を踏まえれば妥当な投資だ」と感じてもらえるような営業・マーケティングの工夫が、「選ばれる工務店」づくりに直結していきます。
一戸建てリノベで利益を残すための実務ポイント
一戸建てリノベーションは1件あ当たりの単価が大きい一方で、工事内容や対応の仕方によっては「売り上げは立ったのに、思ったほど利益が残らない」という状況になりがちです。
ここでは、安定して粗利を確保するために、日々の実務で意識しておきたいポイントを解説します。
標準の工事パターンを決めて、赤字にならない価格をつけられる
まず、よく受注する工事は「標準セット」としてパターン化しておくことが有効です。キッチン・浴室・内装などの組み合わせごとに標準仕様を決め、材料の仕入れ価格や職人の歩掛を定期的に見直しておきます。
こうした標準化によって、見積もり段階で狙った粗利率を織り込みやすくなり、担当者による見積もりのばらつきも抑えられます。標準プランをベースにオプションを積み上げていく形にすると、お客さまへの説明もしやすく、結果として赤字リスクの低減につながります。
追加・アフター対応などルール化し、適正対価を確保する
一戸建てリノベでは、解体後に想定外の劣化が見つかり、追加工事が発生するケースが少なくありません。
その際、あらかじめ「追加見積もりの出し方」や「お客さまからの合意の取り方」を社内ルールとして決めておくことで、「言いづらくて請求しない」といった事態を防ぐことができます。
また、引き渡し後のメンテナンスや再リフォームについても、点検のタイミングや提案内容をあらかじめワークフローとして整理しておくと、「忙しくて後回し」のまま提案機会を逃すリスクを減らせます。追加対応やアフターフォローにかかった手間をきちんと売り上げにつなげていくことで、1件あ当たりの利益を着実に積み上げていくことが可能になります。
記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:新築価格の高騰はこれからどうなりますか?
A:新築価格は、資材費や人件費、土地価格の上昇が重なっており、当面は大きく下がりにくい状況が続きそうです。ウッドショック自体は沈静化しましたが、その後も構造的なコスト増が続いているため、少なくとも2026年末までは小幅な上下を繰り返しながらも「高止まり」の状態が続くと見ておくのが現実的です。価格がやや緩み始めるとしても、早くても2027年後半以降という見立てが妥当でしょう。
Q:中古シフトとは何ですか?
A:中古シフトとは、限られた予算の中で「立地」や「広さ」を優先して中古住宅を購入し、リノベーションで理想の住まいにつくり替えていく住まいの選び方です。新築よりも総予算を抑えやすく、その分、設備や内装を自分たち好みにカスタマイズしやすいため、家計への負担を抑えながら暮らしの質にもこだわりたい層に向いた選択肢といえます。
Q:工務店が一戸建てリノベに参入するメリットは何ですか?
A:工務店が一戸建てリノベに取り組むと、中古一戸建てや空き家など、地域に眠っている住宅ストックを活用できるようになり、新築着工数の増減に左右されにくく、安定した受注が見込めます。さらに、性能向上やデザイン性の高い提案を行うことで、工事単価や粗利を高めやすくなります。加えて、リノベ後のアフター対応を丁寧に行うことで、お客さまからの紹介やリピートも生まれやすく、長期的に売り上げを積み上げていける点も大きなメリットです。
Q:中古シフト時代に工務店はどのような戦略を取るべきですか?
A:中古シフトが進む今は、「中古仲介+リノベ」や買取再販、性能向上リノベなどを組み合わせ、新築請け負いだけに依存しない収益構造へシフトしていくことが重要です。そのうえで、原価上昇分を性能や保証内容などの“価値”とセットでわかりやすく説明し、ビフォーアフターの事例で見える化しておくと、お客さまも納得感を持って「妥当な投資」として選びやすくなります。
Q:一戸建てリノベで安定して利益を残すにはどうすればよいですか?
A:一戸建てリノベで安定して利益を残すには、自社でよく受注する工事パターンを標準メニューとして整理し、仕入れ価格や歩掛を正確に把握したうえで、見積もり段階から狙う粗利率を織り込んでおくことが欠かせません。あ併せて、追加工事やアフター対応の手順・ルールをあらかじめ明確にしておき、発生した手間やコストを適正に請求できる仕組みをつくることで、1件あ当たりの利益を守りやすくなります。
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執筆者
瀧澤 成輝(二級建築士)
住宅リフォーム業界で5年以上の経験を持つ建築士。
大手リフォーム会社にて、トイレや浴室、キッチンなどの水回りリフォームを中心に、外壁塗装・耐震・フルリノベーションなど住宅に関する幅広いリフォーム案件を手掛けてきた。施工管理から設計・プランニング、顧客対応まで、1,000件以上のリフォーム案件に携わり、多岐にわたるニーズに対応してきた実績を持つ。
特に、空間の使いやすさとデザイン性を両立させた提案を得意とし、顧客のライフスタイルに合わせた快適な住空間を実現することをモットーとしている。現在は、リフォームに関する知識と経験を活かし、コンサルティングや情報発信を通じて、理想の住まいづくりをサポートしている。



